Welcome!! to the fog of world... 作:Rat man
-ヘンリーの遺言 19XX年?月??日
残りの発電機を修理する為、ドワイトとジェイクは託児所でヘンリーと別れた後、狭く薄暗い廊
下を歩みながら故障した発電機を見つける為に捜索をしていた。不規則に点滅している電灯や窓か
ら差し込む月明かりを頼りに探し回るが、相変わらず視界が悪いので中々見つからない。この儀式
場に連れてこられたのが初めてなので闇雲に探しても見つからないのは当然だが、かれこれ二十分
は経過している。そろそろ一台見つかってもおかしくない。
ドワイト「うーん。何処か見落としたかなぁ?」
ジェイク「体感じゃあ、この建物を半周回った気がするが此処まで見つからないものか」
ドワイト「視界が悪いのもそうなんだけど、似たような構造をした部屋がいっぱいあるからね。
同じ場所をグルグル回っている感じだよ」
ジェイク「厄介なもんだ。迷わないように部屋の場所を覚えようにも、部屋の名前が書いてある
ネームプレートが擦れて読めないからな。かといってこのまま捜索してまた奴に出く
わしでもしたら・・・時間はあまりかけたくないな。爺さんもそうだが、メグの安否
も気になる」
ドワイト「・・・そうだね。彼女とは最初の発電機の修理中に襲撃されてから一度も会っていな
いからね。あぁ・・心配だなぁ」
ジェイク「出来る事なら、発電機を探しながらメグといち早く合流していきたい。ずっと単独行
動は未開の地では危険すぎる」
ドワイト「だったら尚更早く見つけないと!万が一のことがあったら・・・」
ジェイク「焦るなドワイト。それと声の音量が大きい。この場所は僅かな音でも奴らは察知して
やってくる。・・気持ちは分かるが取り乱すな」
そうジェイクが注意すると、たじろいてたドワイトはハッと顔を上げて謝った。気を取り直した
二人は今まで通ってきた廊下や途中に行き来できる小部屋をもう一度探索する。小さな埃が舞う中
で目を凝らしながら慎重に行動する。
ドワイト「廊下には設置されていないみたいだね」
ジェイク「そのようだな。左右ある大きな廊下に発電機らしきものはなかった。とすると、各小部
屋に設置されている可能性が高い」
重い足取りで探し出す。二つ三つ部屋の中を探索し終えて出ようとしたその時、ドワイトの動き
が止まる。一刻を争うときにいきなり体を止めたことに対してジェイクは不審に思い、彼に問いた
だす。
ジェイク「どうした?」
ドワイト「・・・」
ジェイク「おい。なにg」
ドワイト「ち・・・」
ジェイク「ち?」
ドワイト「床・・に血が・・・」
ジェイク「な!?」
青ざめた表情をしたドワイトが口にした言葉を頼りに床を見ると、確かに赤黒い球形のシミが
数滴こびり付いている。点滅している電灯の光を頼りに目を凝らしながら見ると、数十センチの
感覚で途切れながらも一直線に続いている似たようなシミが付着していた。指で恐る恐るなぞっ
てみると、赤黒いシミの形状が崩れていく。まだ乾いていない、ということは・・・
ジェイク「この場所で誰かが襲われた・・ついさっきまで。そうとしか考えられない」
ドワイト「まさか・・・」
最悪だ。最悪の事態に陥った。襲われたのは十中八九メグだ。彼女は一度、殺人鬼の攻撃を喰
らって負傷した後、一直線に廊下を突っ走ったのちに何処かの部屋に潜んだかあるいは・・・次
から次へと考えたくもない出来事が頭の中に過る。
ジェイク「急いで見つけるぞ。メグは確実に危険な状態に陥っている!」
ドワイト「うん!」
ぎこちなく震えていた足を無理やり動かして、二人は血痕の後を追っていくことにした。
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真っ暗。真っ暗だ。明かりもついていない部屋の中で一人、正方形のテーブルの上に寝かされ
ている。少し時間が経つと、意識を失っていた人がゆっくりと目を覚ます。目に映ったのは黒一
色の世界。その光景に唖然としていると、ある違和感に気付く。頭が異様に重く、ひどい頭痛が
襲ってくる。それにいつもより視界が狭まっていると感じる。後は息苦しいところだろうか?兎
も角、一度起き上がってみる。・・・体がふらついて非常に不安定な態勢になるが、どうにか力
を入れて真っすぐ立つ。長い間目を開け続けた事で暗闇の中でも、モノの輪郭が薄っすら見える
ようになった。少し慣れてきたら、壁に寄りかかりながらこの部屋の扉を手探りで探す。四苦八
苦していると"ゴン"という乾いた金属音が響いてきた。何かぶつかった。恐らく取っ手か何かだ
ろう。それに手を掛けてゆっくりと押し出す。
"ギイィ・・・"
開いたようだ。それと同時に電灯の明かりが視界に入ってくる。眩しいと感じながらも光が入
ってきたので少し安堵し改めて辺りを見渡す。そこには今回の儀式で飛ばされてきた場所と同じ
所であった。そこで漸く自分の事を思い出す。
メグ「・・・あれ?私は確か・・・!」
自分の身に起こったことを思い出そうとしたその矢先、遠くから足音が耳に入ってきた。混乱
している頭の中でも警戒心を強める。
メグ「またあいつか?」
ボロボロの着ぐるみを纏ったおぞましい殺人鬼。奴がまだ近くにうろついているのか?メグは
先程の部屋に静かに身を潜めて足音の主を確認することにした。
メグ「(ハァ・・、ハァ・・)」
体を満足に動かせない。もし、この状態で見つかったならば今度こそ逃げられない。あの無慈
悲な肉フックに肩を貫かれる羽目となる。それに無理して動いたせいか、さっきよりも息が荒く
なって苦しくなる。このまま過ぎ去ってくれは良いのだが。
メグ「(近い!)」
足音が徐々に大きくなってくる。もう数メートル先までの距離だ。心臓の鼓動が早まる。歯を
食いしばって息を殺す。
メグ「・・・話し声?」
確かに聞いた。男の声だ。薄っすらだが聞き慣れた声。一人ではなく二人分の声。足音も二人
分の大きさだ。もしやと思いゆっくりとドアから覗いてみる。
メグ「あ、あぁ・・・もう」
どうやら彼女の心配は杞憂に終わったようだ。そこには彼女が知っている二人組の男、ドワイ
トとジェイクが声量を抑えた声で何かを必死に探している姿があった。心の底から安堵したメグ
はいち早く二人の所へ合流するために部屋から飛び出した。
メグ「おーい!二人ともー」
ジェイク「・・・メグ!?今彼女の声が聞こえたぞ!」
ドワイト「本当!?あぁ、良かった・・・メグ!聞こえるかい?」
気が付けば二人が発している声量も自然と大きくなっていた。はぐれた仲間との再会で少し気
が緩んでしまったのだろう。
メグ「えぇ!聞こえるわよ。今そっちに行くね」
ひどく痛む頭痛を耐えながらおぼつかない足取りでメグは二人の元へ歩いていく。そして遂に
二人との再会を果たすことが出来たのである。
メグ「やぁ、さっきぶりね。二人とも」
ジェイク「全く。心配かけさせやがっ・・て?」
ドワイト「おかえりメグ。取り敢えず無事でよかっ・・た?」
二人はメグの声を聞いて返事しながら顔を振り向いたのだが、彼女の顔を見るや否や先程の安堵
した表情から一転、何かおぞましいものでも見たかのような怯えた顔になったのである。そんな二
人の様子に疑問を抱いたメグは二人に問いかける。
メグ「どうしたの二人とも?」
ジェイク「・・・おい、お前本当にメグか?」
メグ「は?」
しかし帰ってきた返事は彼女も予想だにしない回答であった。一瞬思考が停止したのち、素性を
疑われて気分を悪くしたのか、苛立ちの入った声で返答する。
メグ「おい、それどういう意味?私が偽物だというの?」
ドワイト「ひっ・・違う違う!君は紛れもない本物のメグだよ!」
ジェイク「・・・なぁ、今自分がどんな状態か分かるか?」
怒気の入った声に怯えたドワイトは即座に否定するがなお怯えている。この状況に見かねたジェ
イクが再び彼女に問いかける。
メグ「どんな状態って、さっきあの殺人鬼に襲われて背中がまぁまぁ惨状なことになっているから
体が糞だるいくらい・・あ、後なんか頭が痛くておまけに視界も狭くなってんのよ」
そこまで彼女が返答すると二人はおもむろに自分の手を掲げて頭を指してきた。頭を触ってみろ
とジェスチャーしているようだ。
メグ「何?頭触ってみろって?はぁ、あんたらさっきから私をおちょくってんの?」
ジェイク「いいから!」
此処まで念を押されてやれやれ、と思いながらも自分の手で頭を触ってみる。そこに手をかざし
てみれば、いつも繊細に手入れしているサラサラの髪が・・・髪?・・・違う。何かゴワゴワとし
た感触だ。硬く纏められた羽毛のような触り心地。それに鼻からは鉄臭い匂いが入ってくる。両手
で顔のあちこちを触ってみる。・・・肌の感触がない。まるで大きな着ぐるみを来たような感覚が
伝わってくる。そこで彼女自身も漸く異変に気付いた。
メグ「ねぇ?そういえばさ、何であんたらそんな怖い顔をしてるのよ」
沈黙していた二人は、顔を見合わせた後ジェイクがゆっくり口を開いた。
ジェイク「メグ、お前の顔に」
"血塗れに汚れたクマの頭部の着ぐるみが被せられているんだよ"
"HA-HA-HA.楽しいショーの始まりだよ!"