Welcome!! to the fog of world... 作:Rat man
archive 活気溢れるランナー
File 013
"お父さんはもういないのよ・・。"
あたしが小さい頃、父親がいないことを疑問に思ったとき、母親からこう告げられた。
"どういう事なの?もういないって。"
"・・トーマス、貴方はまだ小さいからお母さんの言っている事が分からないと思うけど、お父
さんは私たちを支える為に今まで頑張ってきたのよ。"
今まで・・頑張ってきた・・?
"そう、貴方が2歳を迎える時にね、仕事で色々あって・・・私たちを・・"
そこまで告げた時、急に口をつぐんだと思ったら母親の目から涙が溢れていた。
あたしは驚いたよ。生まれて初めて母親の泣いている姿を見たのだから。
"どうしたのお母さん!? 何で泣いているの!?"
心配するあたしに母親は、涙を拭いながら優しく語り掛けてきた。
"ごめんね、トーマス・・・心配を掛けさせて。もう大丈夫よ。お父さんがいないのは
辛いけれど、お母さんが貴方を大切に育ててあげるわ。
・・・・・
気付けばあたしは、雲一つない青空の下で、芝生で覆い被さるグラウンドを無尽蔵に走り回る
エネルギッシュな女の子として成長していった。元々じっとしていられない性格を持っていた
ので色んなスポーツを実践し、その中でも長距離のランニングはあたしにとって最も心から
楽しませてくれるものであった。
なので、よく地元の友達とランニングの競争をしていた。ある程度の距離を走っている頃には
皆な体力を消耗しているのに、まだまだ走れるあたしを見て驚いていたなぁ。
無論、通っていた学校で行われるスポーツの授業は、持ち前の運動神経を発揮して常に良い成績
を維持していた。担当の先生も驚いていたよ。
そんなある日、一人のコーチと出会ったの。その人がこう言ってきた。
"その類まれるスポーツの才能、もっと伸ばしてみないかい?"
この発言は、あたしの今後の人生を大きく左右するかもしれない、そう思ったのよ。決断に時間
は掛からなかったわ。それに、夢があるの。
テレビでスポーツ関連の番組を見た時現役で活躍する一流のランナーの姿をみて、あたしも
立派なスポーツ選手を目指したい!そう考えが芽生え始めたわ。
だけど、そのためにはあたしの苦手な勉強も兼ねて、より厳しい練習をこなさなければならない。
・・・いいえ、やるのよ。夢をかなえる為、あたしはどんな困難が来ても決して挫けないわ。
今まであたしを女手一つで育ててくれた母親の為にも。
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走れ・・・走れ・・・足を止めるな、息を整えろ。
振り向くな、ただ前を見て全力で走れ。
地面に注意しろ、そこに悪魔の装置が設置されているか確認しろ。
背後に怪物が迫ってくる。奴の息遣いが聞こえてくる。
幾ら逃げ回っても怪物のスタミナが尽きる事はない。
「・・ッグゥ!!」
背中を切られた。意識が一瞬途切れそうになる。
今にも崩れそうな態勢を、即座に左腕で腹を支え何とか持ち直す。
溢れる血が地面に滴り落ちる。
前方にボロ小屋を発見。開いている小さな窓を飛び越える。
一旦外に出て怪物が通る進行ルートを確認する。
・・・ゆっくり窓を乗り越えてきた。そのまま右折に角を曲がる。
「(今だ!!)」
立て付けてある大きなパレット(板)を、外に出ようとした怪物に思いきりぶつける。
"・・・!?"
怯んだ。その隙に一気に地面を駆け抜ける。
・・・後ろでパレットを破壊する音が聞こえる。
一直線だ。先程のチェイスで見えていた。
霞がかっていたが、赤色のランプが光っていた。
走り抜けろ。出口はもうすぐだ。
・・・開いたゲートが見えてきた。
あの怪物の気配はない。だが、油断はできない。
少し後ろを向き、しゃがみ歩きで慎重に駆け込む。
ゲート内に足を踏み入れた。
"ブォン!!"
え?
"ザシュッッ!!"
前のめりに倒れこむ。体に力が入らない。
あれ? さっきまで怪物は、あたしの後ろを追いかけていたはずなのに。
どうして? 奴の心音が聞こえなかったのに。
担ぎ上げられる。抵抗する力も残っていない。
肉フックに吊られる。吊られたら最後は・・
・・・や・・だ、いや・・だ、いやだ・・イヤだ・嫌だ!!
涙が溢れる。掠れて声すら出せない。
怖い。もうだめだ。死ぬ。
「メグ!!」
その時だ。担ぎ終わって奴が前を向いた途端、ひと際大きな声と共に光が照らし出された。
"グゥ!!?"
怪物が怯んだ一瞬、その一瞬に最後の力を振り絞り強引に腕から抜けて、出口まで這いずった。
"あぁ、邪悪の神は不機嫌だ"