Welcome!! to the fog of world...   作:Rat man

6 / 16
"お互いに共通しているのは、どちらも逃げ込める場所がない罠に掛けられたことだ。"


Chapter 1:Last night at the machine
1-1.老人と四人のサバイバー(出会い)


 夜が明ける事のない霧の森。小さな焚火と分厚い丸太が置かれている傍で数週間眠っていた

 

一人の老人が目を覚ました。老人の視界には奥行まで続く森の風景と一人の人間、そしてひと際

 

輝いている満月が映り込む。体を起こすと女性が近づいて話しかけてきた。

 

クローデット「・・あ!目を覚ましたんですね、お爺さん」

 

???「・・ん?あぁ。・・・君は?」

 

 老人は自分が今まで眠っていた事に今初めて気付く。この森の中で失神した記憶はあるのだが

 

何せ此処までやってきた経緯が思い出せない。なので一度深呼吸をして話しかけてきたその女性

 

の名前と、この森についての情報を詳細に説明するように尋ねた。

 

クローデット「あ、突然話しかけてすみません、名も名乗らずに・・。えっと、私の名前は

 

       クローデット、クローデット・モレルです。・・・え?"此処は何処だ"、ですか?

 

       ・・・その、実はちょっと・・う~ん、なんて説明すればいいのかしら?」

 

???「(困惑している。知らないのか?いや、彼女の反応を見るにこの森について全く知らない

 

    わけではない。だが、説明しようとする彼女の様子から、何かしら躊躇いが感じられる。

 

    ・・・言葉では言い表せない何かがあるのか?)」

 

 老人は困惑しながらも彼女の様子から、この場所について推測する。無論、答えは出ないまま

 

だが。少し時間が経った頃に彼女は何か思い出したのか、スッと立ち上がる。

 

クローデット「そうだ!貴方が目を覚ましたこと皆に伝えなきゃ。すみません、少し待ってて

 

       下さい。直ぐあなたの所に連れてきますから」

 

 そう口走るとクローデットは、急いで仲間を集めに森の奥に進んでいった。他にも人がいたのか

 

と、老人は思いながら一人静かに待つ。待っている間に辺りをスッと見渡す。しかし、焚火の光で

 

周りの状況を確認しようにも、やはり見えるのは生い茂る木々と果てしなく広がる暗闇だけだ。

 

???「仕方ない、彼女が仲間を連れてくるまで待っているとしよう」

 

・・・・・・・・・・・・・・

 

 少し時間が経過した後、彼女と連れてきた仲間が焚火の前に集まってきた。男性2名、女性1名の

 

計3名がクローデットから事情を聴き、改めて老人の所にやってくる。

 

ドワイト「お爺さん、体の調子はどうですか?」

 

???「状態は悪くない。至って健康的だ」

 

ジェイク「此処に来た経緯は未だに思い出せないのか?」

 

???「あぁ、生憎な。」

 

メグ「此処に来る心当たりもないの?」

 

???「あったらこんな事にはならんだろ」

 

メグ「そりゃ、そうだわ」

 

???「・・それよりも、先ず君たちの素性とこの森について話してくれないか?誰が誰だが分か

 

    らんし、こんな訳分からん森についてもさっぱりだ。いい加減推測するのも疲れた。情報

 

    がとにかく欲しい」

 

ドワイト「あ、すみません。自己紹介がまだでしたね。僕は"ドワイト・フェアフィールド"です。

   

     以前は広告関連の仕事に就いていた、しがないサラリーマンです。数年前この森に

 

     迷い込んで以来、年も取らずにずっとこの状態です。無論、夜が明けた事は一度もあり

 

     ません」

 

メグ「"メグ・トーマス"よ。気軽にメグと呼んでいいわ。走ることに関しては誰にも負けないよ。

 

   まぁ、あたしも1~2年前に迷い込んで嫌ほど走り回ってきたわ。・・・忌まわしき奴から

 

   逃げる為に」

 

ジェイク「"ジェイク・パーク"だ。親父と大喧嘩して都会から離れたところの森でサバイバル

 

     ライフを充実していたんだが、ある日深い霧に囲まれて気付いたらこの森にたどり

 

     着いた。俺は野外生活で身に付けた知識のおかげで、この森で行われる残虐な儀式を

 

     挫けずに乗り越えられている」

 

クローデット「私は・・・先程紹介しましたので説明を省きますね」

 

???「・・・君たちの素性は分かった。この森についても、君たちが知っている事を教えてく

 

    れた。だが、聞いてる限りあまり良くない場所に来てしまったみたいだね。その、そう

 

    君、メグがいった忌まわしき奴が住み着いているってね。脱出は考えなかったのかい?」

 

メグ「脱出?んなもん出来たら今頃、こんなところにはいないわよ。寧ろ私が知りたいもんよ」

 

ドワイト「残念ながら、此処から逃れる手段はありませんよ。迷い込んだ時点でね」

 

???「迷い込んだ時点で?」

 

ジェイク「そう。迷い込んだら最後、俺たちは終わることのない狩りの儀式を強制的に参加させ

 

     られる運命なんだ」

 

クローデット「・・・最初こそは皆な、奮闘しましたよ。恐ろしい儀式から逃れようと色んな策

 

       を考えて手あたり次第に実行して。でも、すべて無駄だったのよ。その儀式で

 

       死んでも、ゲートをくぐっても。結局はこの場所、焚火の前に戻ってくる。何度

 

       も同じことを繰り返してね。・・私はもう諦めましたわ」

 

???「成程。なるほどね・・・。(同じことを永遠に繰り返す儀式。何だろうこの感覚?まるで

 

    かつて私にもこんな経験を・・・)」

 

ドワイト「・・驚かないんですね、お爺さん」

 

???「何がだ?」

 

ドワイト「いえ、普通はこんな話を聞いて顔を青ざめるか、信じようとしないはずなんですが」

 

???「・・君達の話に少なくとも、嘘を言っているようには聞こえなかったからな。それに

 

    君達の衣類やむき出しの肌に、深い傷の跡と擦り切れた痕跡・血痕を見れば一目瞭然

 

    さ。普通の山でそんな傷は出来ないし、そもそも登山する服装に不向きだからな。

 

    何かに追い回されて出来たものだと自然に考えが行き着く」

 

ジェイク「鋭い観察と洞察力を持っているな。流石だな。ところで爺さん、そろそろ自分の素性

 

     について話してくれ。俺達がいま持っている情報は全て与えた。時間は随分経過した。

 

     少しは思い出してきただろう。今度はそっちが話してくれないか?」

 

???「・・・そうか、そうだな。だが、すまない。今私について語れることが何一つないんだ。

 

    未だに私の記憶が呼び起こされない。名前も、職業も、ここ最近の出来事も。何か・・

 

    何か切っ掛けさえあればいいんだが。唯一つだけ思い出せるのは、私は何か大きなこと

 

    を成し遂げた、その感情だけだ」

 

メグ「あんたまだ思い出せないの?こりゃ記憶障害起こしているね。困ったもんだわ」

 

ドワイト「どうしよう?記憶無くしたまま強制的に儀式に呼び出されたら大変だよ」

 

クローデット「う~ん、大きなことを成し遂げたと言われてもねぇ。私にはさっぱり分からない。

 

       それだけじゃ、あなたの記憶を呼び戻すヒントの参考にならないわね。あなたの

 

       力になれなくてごめんなさい」

 

ジェイク「・・・俺はあんたの名前を知っている」

 

???「!!」

 

ドワイト「え!?君、このお爺さんと知り合いなの?」

 

メグ「だったらどうして早く言わないのよ?」

 

ジェイク「・・・訳アリなんだよ。と言っても俺も実際会ったのはほんの数回程度、ガキの頃だし

 

     な。最初は俺の思い違いだと思って言えなかったんだが、あの懐かしい声とその風貌、

 

     そして先程発揮した観察力と洞察力をみて確信した」

 

???「私と君がかつて出会った?それが本当ならば教えてくれ!私は一体何者なんだい?」

 

ジェイク「名前だけ言えばあんたは思い出す筈だ。なぁ、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

    "Henry Smith"」

 

 

 

 その時である。名前を聞いた老人が突然頭を抱えて苦しんだ。4人一同驚き、老人のところに駆

 

けつけて、各々心配の声が上がる。必死に呼び起こしても老人は唸り声をあげるばかりだ。その

 

一方で老人の頭の中に、次々と過去の記憶が呼び起こされる。暗く閉ざされた一つ一つの思い出が

 

断片的に映り込み、感じた事のないような怒り、憎しみ、悲しみが一気に這い上がってくる。

 

ヘンリー「はぁ・・、はぁ・・、はぁ・・・」

 

 息が荒くなる。眩暈を起こす。視界がブレる。目が血走る。汗が全身から染み出る。自身がかつ

 

て行ってきた所業を思い出す。

 

ヘンリー「(あぁ、そうだ。私は成し遂げたんだ!!あの悪魔を!あの忌々しい人間を!旧友を!

 

     私のかけがえのない大切なものを全て奪ったあいつを!地獄へ送り込んだ!私が生涯

 

     かけて設計して開発した機械人形と、幸せと喜びに溢れる家族食堂を、己の欲望を満た

 

     す為だけに全てを壊して、通っていた子供たちを次々殺したあの男を、私の手で葬った

 

     んだ・・・。)」

 

ドワイト「お、お爺さん・・?」

 

ヘンリー「(だが、変だ。なぜ私はこの場所へいるんだ?本来はあの男と同じ場所へ永久に留まり

 

     続けるはずだが。何かの拍子にあの場所からこの森へ飛ばされた経緯が謎のままだ)」

 

メグ「爺さん・・・爺さん!!

 

ヘンリー「(・・・)! あ、すまない。君たちの呼びかけに気づけなくて」

 

メグ「一体どうしたっていうの?分からないとぼやいてたら、今度は頭を抱えて唸りだすし」

 

 老人・・・いや、ヘンリーが記憶を呼び戻した時、一人で今まで起きた出来事を振り返っている

 

最中、他のサバイバー達が幾ら呼び掛けても応答せずにいたので、業を煮やしたメグが半ば強引に

 

ヘンリーの体を揺すって声を荒げた。そのお陰か、ヘンリー自身も多少の冷静さを取り戻すことが

 

出来た。そして、ある一つの考えがヘンリーの頭に浮かび上がる。

 

ヘンリー「そういえば、ジェイク君。改めて聞くが何故私の名前を知っているのかね?」

 

ジェイク「・・・さっきも言ったはずだが俺は、ガキの頃あんたの店に数回通っていたんだよ。

 

     あんたは覚えていないが、親父と言い争いして家から飛び出して、当てもなくうろつ

 

     いていたら、小さなピザ屋店を見つけてな。特に深く考えないで店の中に入ったら、

 

     古いステージに立っているバカでかい機械人形と、それを眺めている男性を見かけて

 

     そこで立ち尽くしていたら、男性が俺に話しかけてきたんだ。その男性こそが今の

 

     あんたでさ。その時制服に身に付けている霞んだネームプレートを見て知ったんだよ。

 

     懐かしいなぁ。俺が抱えている問題について色々相談に乗ってもらってな。俺の個性と

 

     親父について話して、色々助言してくれてたんだよ」

 

ヘンリー「・・・そうなのか。」

 

ジェイク「そう。だが、ある日を境にあんたは突然いなくなっちまったのさ。それどころか、あの

 

     ピザ屋店舗もいつの間にか閉鎖されて、おまけに付近で児童行方不明事件まで起きて。

 

     一体全体どうなっているんだと俺は思ってな。・・・爺さん?」

 

 ジェイクがヘンリーと出会った過去の話をしている最中にある話を聞いた途端、それまで穏やか

 

な表情で聞いていた彼が、徐々に険しい顔に変化していくことに気付き、一旦話すのを止めて再び

 

ヘンリーに呼び掛ける。

 

ヘンリー「・・・ん?どうしたんだい?」

 

ジェイク「あ、いや・・どうしてそんな怖い顔をしているんだ?」

 

ヘンリー「・・・すまない。つい無意識でな」

 

ドワイト「あれ、何か不味い事でも聞いちゃいました?」

 

クローデット「ヘンリーさん。何かあったのですか?」

 

ヘンリー「・・・少し話が長くなるけどいいかな?ジェイク君も、私に聞きたいことがたくさん

 

     あるだろう。まぁ、あまりよろしくない内容だが」

 

ジェイク「別に俺は構わないが・・」

 

 他の三人も戸惑いながら同意する。

 

ヘンリー「ならば話そう。私の身に起きた出来事を。残虐と憎しみ・悲しみに溢れた復讐劇を」

 

 ヘンリーの過去、その物語をゆっくりと語り始めた。・・・そしてこの物語は決して明ける事

 

のない霧の森の中で、彼の暗い物語が静かに刻み込まれた。




参戦キャラクター元:Five Night At Freddy's
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。