Welcome!! to the fog of world... 作:Rat man
霧の森の中で目覚めた新たなサバイバー、ヘンリーは以前から此処に迷い込んだ四人のサバ
イバーと出会い、お互いの素性やこの場所についての情報を共有して、ある程度自身が置かれ
ている状況を理解する。特にジェイクから、ヘンリーの身の周りで起きた出来事について幾度
と聞かれたので、自身の過去を簡潔に纏めて打ち明けると、最初はあまりにも信じられない様子
で皆な面食らった顔をしていた。
無理もない。かつての相棒が、ヘンリーが立ち上げてきたピザ屋店舗や機械人形を全て奪った
だけでなく、己の欲望を満たすため数々の子供達を殺害し、機械人形にその遺体を埋め込んだ
挙句、その罪をヘンリーに擦り付けたのだ。そのせいで一度、彼は逮捕されて前科者扱いになり、
罪人呼ばわりされたが、当時の警察の捜査方法が杜撰なものだったので不起訴処分という扱いに
なった。不機嫌極まりになった彼だが、これで元の生活に戻れると思った矢先に相棒に殺される
という悲惨な最期を迎えたのである。無論、濡れ衣を着せられたままで。
あまりに惨い話を聞いて各々口に出す。
ドワイト「・・・只々気の毒ですね」
クローデット「酷い・・こんな事って・・」
メグ「あんたの相棒、人の皮被った悪魔じゃね?」
ジェイク「反吐が出る。そいつ、ろくな死に方しないな」
皆一同、その男に対して憤怒と憎悪、軽蔑を向けていた。ヘンリーは気にしなくていいと皆に
促した。過去の話だからと付け加えて。
・・・・・・・・・・・・・
暫く時間が経過した時、ふとドワイトが口に出す。
ドワイト「そういえば、ヘンリーさんにこの森で行われる儀式についてまだ教えていなかった
ですね」
ジェイク「あ!確かにそうだ」
ヘンリー「・・・そんな話あったな。確か殺人鬼に追われるとかなんとか・・・」
メグ「ねぇ、クローデット。さっき行われた儀式からどのくらい時間が経った?」
クローデット「え?えっと、体感だから曖昧になるけど、およそ3~4時間かな」
メグ「・・・だとしたらあまり猶予は残されていないわね。早いとこ、この爺さんに色々教えて
あげないと。儀式から生き残る方法やその手段について」
ヘンリー「猶予がない?もしかして、その儀式はもうすぐ始まるのかね?」
ドワイト「あ・・いえ、今すぐっていうわけではないのですが、時間的にそろそろ来る頃合いだと
いう事ですので」
ジェイク「まぁどのみち、悠長にしていられないのは確かだ。簡潔気味になるが今から儀式につい
て指導していくぞ、爺さん」
ヘンリー「そうか、それじゃあよろしく頼む」
ドワイト「それじゃあ先ずは、儀式の大まかな内容ですね。僕たちサバイバーは、このキャンプ場
から森の中に用意されている儀式場へ連れてこられます。そこで用意されている発電機
と呼ばれる機械を修理して、電力を脱出口であるゲートに通電させてそこから脱出する
のが主な流れです」
ヘンリー「ふむ・・」
ドワイト「ただ、先程も話した通りにゲートの通電を阻止するものが現れます。それがキラーと呼
ばれる殺人鬼です。彼らは僕らを見つけ次第、姿を見失うか追跡を諦めるまで追いかけ
てきます」
ヘンリー「彼ら?殺人鬼は複数人いるって事か?」
ジェイク「そうだ。しかも厄介なのが、殺人鬼達にはそれぞれ特殊な固有能力があるんだ。ある殺
人鬼はベアトラップを仕掛けてくるし、チェンソーを振り回して高速移動してくるやつ
もいる。挙句には姿そのものを消して追跡する奴もだ」
ヘンリー「・・・最後の奴は魔法でも使っているのか?それはともかく、一度の儀式に複数の殺人
鬼が現れるのか?」
メグ「んなわけないでしょ。それじゃあ脱出はおろか、発電機を修理できる暇すらないわ。一度の
儀式に出られる殺人鬼は一体だけ。(まぁ、例外もあるけど)」
ヘンリー「そうか。・・なら見つかって、追い付いたらすぐ殺されてしまうんだな」
クローデット「いえ。私たちも当初はそう思ったんですけど、彼らは直ぐには殺せないんです」
ヘンリー「どうしてだ?武器でも所持しているんだろ。鉈やらチェンソーやらで切り付けられたら
即死だろう。普通の人間の体なら」
ドワイト「えーと、それが・・・僕たちの体は一回武器で切られても走りぬくことが出来るんで
す。火事場の何とかってやつですかね?それでもう一回切られるまで逃げ回ることが
出来るんです。疲労も出血も気にせずに」
ヘンリー「いや待て待て。どうなってるんだ君たちの体は。切られても走り回れる?しかも重傷
を負いながらか!?・・・化け物じみた生命力だな」
ジェイク「普通はそうだろうな。まぁ、この森に来てから俺たちの体は、まともな状態ではなく
なったのは間違いないな。おっと、話がそれてしまったが続けるぞ。一回目に切られ
たら負傷状態になり、二回目で切られると倒れこんで瀕死状態になる。すると殺人鬼
は俺たちを担ぎ上げて肉フックと呼ばれるものに吊るすんだ。その時体力がある内は
フックから降ろして救助は出来るが、三回吊られるとフックの頭上から蜘蛛みたいな
触手が現れて、問答無用に体を貫かれて死ぬ。これが脱出失敗となる」
ヘンリー「(フックに吊られた時点で肺を貫かれて死ぬ気がするのだが・・・そこは突っ込まな
いでおこう)」
ドワイト「ですので、万が一殺人鬼に見つかった場合は捕まらないように逃げ回るんです。
儀式場に用意されているパレットと窓枠を駆使して」
ヘンリー「パレットと窓枠?」
メグ「パレットっていうのは、まぁ分かりやすく言えば木材で作られている大きな板の事よ。儀式
場の至る所に設置されていて、殺人鬼に追い付かれそうになったら横倒しにして通路を塞ぐ
のが主な使い方よ。それと窓枠は、建物内やジャングルジムと呼ばれている小さな迷路にあ
る人一人分通れる隙間の事で、私たちは素早く乗り越えられるけど殺人鬼は体が大きいから
早く乗り越えられないの」
ヘンリー「なるほど。つまり、見つかった場合はそれらを上手く利用して襲撃を回避し、他の人
がその間に発電機を修理していけばいいのか」
クローデット「そうですね。でも、殺人鬼に見つからずに上手く隠れながら修理も出来ますし、
わざわざ危険なことをしなくてもいいのですよ」
ヘンリー「そうか。・・・よし、取り敢えず儀式の内容については分かった。だが、いくつかの質
問がある。聞いてもいいかな?」
ジェイク「いいぜ。爺さん」
儀式の大まかな内容を聞いたヘンリーは、発電機の修理の仕方や殺人鬼が接近する予兆について
質問し、四人は今までの儀式で経験した中で分かりやすく説明する。他にも殺人鬼に気付かれない
ように上手く隠れるコツ・至る所に設置されている赤いロッカーの利用方法・現地調達した救急箱
や工具箱等の道具の使用について、簡潔に説明した。
ドワイト「ふぅ、取り敢えず一通り説明したけど、他に質問はありますか?」
ヘンリー「特にないな。全部頭の中に知識を叩き込んでおいた。」
ジェイク「それじゃあこれで最後だ。一番重要な内容になるから聞き逃すなよ」
ヘンリー「分かった」
ジェイク「俺たちはこの森に来てから、ある異質な能力を授けられるんだ。儀式に参加している時
限定だが、生き残るための力が発揮される。」
ヘンリー「異質な能力?何だそれは」
ドワイト「簡単に言いますと、僕たちが人生の中で、特に優れている能力や身に付けている技術を
そっくりそのまま具現化した力・・・と言えばいいですかね?」
ヘンリー「・・・分かりずらいんだが」
メグ「例えていうと、私は走ることが得意から誰よりも早く逃げれるし、運動神経がいいから物音
を立てずに素早く行動が出来るの。こういえば分かりやすいかしら。」
ヘンリー「すると君は、殺人鬼から逃げるのに一番適しているって事か」
メグ「そうよ」
クローデット「私は、植物の事について詳しいので、あちこち生えている雑草や薬草を利用して
怪我をいち早く直せますし、誰かが怪我をしたときに何処にいるか分かるように
なるんです」
ヘンリー「治療役か。優秀じゃないか。それに君の服装は闇に紛れるのに適している。殺人鬼か
らそう見つからないだろう」
クローデット「えぇ、ですけど走るのが苦手なので、見つかったら逃げるのが難しいの」
ジェイク「そこで俺の出番だ。いくら殺人鬼が俺たちを捕まえても、吊るすフックがなければ
意味がないから。そのフックをぶっ壊す方法を熟知しているし、万が一切られても
ある程度の痛みは我慢できる。呻き声さえ聞かれなければ上手く隠れられるからな。」
ヘンリー「何年も彷徨っているからこそ、儀式について熟知しているのか。まさに孤島のサバイバ
リストだな。ところで、ドワイトの能力は何だい?」
ドワイト「えぇっと、僕は、皆の動きをサポートするのが一番得意かな。発電機を効率的に修理し
たり、ある一定の範囲内であれば皆の姿が見えるってところかな・・・」
ヘンリー「なるほど。上手く連携すれば儀式から容易に脱出できるって事か。いいじゃないか」
ドワイト「あ、有難うございます・・」
ヘンリー「よくわかった。皆の付与される能力がそれぞれ違うが、それらを駆使して儀式から生き
延びろって事か。となると、私は・・・」
自身の能力と付与される力について暫く考えていると、突然ヘンリーの足元に黒い靄が現れ始め
た。それにいち早く気付いたのはドワイトだった。
ドワイト「あ、お爺さん!足元を見て!」
ヘンリー「ん?足元・・・!」
ヘンリーが今置かれている状況に気付いたのをきっかけに、他のサバイバー達の足元にも黒い靄
が立ち込めてきた。・・・クローデットを除いて。
ヘンリー「何だこれは!?」
ジェイク「・・・遂に始まるか」
メグ「はぁ~、まーたあいつらと鬼ごっことか勘弁してよ」
ドワイト「ヘンリーさん、落ち着いて。これが合図なんです」
ヘンリー「合図?」
ドワイト「えぇ・・・これが、殺戮の儀式が始まる合図なんです」
ヘンリー「・・・」
ジェイク「気を引き締めていけよ皆な。油断したらあっという間に死ぬぞ」
メグ「んなもん分かっているわ」
ヘンリー「・・・ところで、どうしてクローデットには黒い靄が立ち込めていないんだね。」
ドワイト「そういえば・・・」
クローデット「え!?こんな事今までなかったのに」
メグ「・・・どうせ定員オーバーとかじゃない?分かんないけど」
ジェイク「だとしたら、此処の焚火の番でもしてくれないか。俺たちが此処へ戻ってくるまで」
クローデット「わ・・分かったわ」
その言葉を発するのと同時に足元で立ち込めていた黒い靄が、やがて体全体を覆うようになり
次の瞬間、皆の姿は消えていった。取り残されたクローデットは一人寂しく焚火の前で座り込み
皆の安否を気遣った。
"悲鳴と絶叫、苦痛に満ちた儀式が始まるだろう"-アレッサの手記 1896年MM月DD日