501統合戦闘航空団に扶桑皇国から派遣されてきた異世界からの戦闘機部隊の情報はアンタレスやスレイマニの元にも届いていた。
大西洋
アンタレスが彼らを知ったのはメビウスの持ち込んだ写真だった。戦闘機の尾翼に描かれたものであろう鷲座のエンブレム、AWACS、4人のパイロット、そしてマーティネズ・セキュリティー社の社章。
「アンタレスさんやエッジさん、ビショップさんの世界からきた部隊だと思うのですが、何かわかりませんか?」
「俺の知ってるマーティネズ・セキュリティー社の中にアルタイル隊ってのはなかったな。多分新設の部隊だと思うんだ。AWACSの画像の垂直尾翼部分を出せないか?」
メビウスに頼んで見せてもらうと、そこには見慣れたカノープスのエンブレム。
「やっぱりバーフォードのクソ親父か! てことはあれはM42飛行中隊所属の新設部隊だよ。スレイマニたちが抜けたあたりから作るとは聞いてたけど、ようやくできたのか!」
「ということはアンタレスさんも詳しくは知らないのですか?」
「ああ。誰がいるのかもわからないね。あのパイロット達の素性とかがわかればいいんだが......」
「その画像はあったかしら......」
メビウスがパラパラと画像をスライドしていく。その中の一枚にビショップが反応を示した。
「メビウス! 今の画像から3枚ほど戻してくれないか?」
「? 了解しました」
その画像はF-22の全景だった。塗装がサイファーのF-15とよく似ているが、この機体は胴体や翼端以外は薄青ではなく黒く塗られていた。他に特に気がつくような点はなかったのか、チョッパーが尋ねる。
「このラプターがどうしたってんだ? ビショップ中佐」
「このラプターは我々アメリカ空軍のモノだった機体だ。空軍博物館から試作1号機が盗まれた。この機体はそいつだ。よく見ると量産型のラプターとは形状が少し違うだろう?」
「え、F-35の主翼形状に、そっくり、......ですね」
「タリズマンの言う通りだ。わからなければ主翼を見てみるといい」
「オゥ、マジじゃねえか。主翼形状が少しちげえな」
「まあ、それは置いといて、だ。こいつはおそらく[氷の妖精]だ」
「氷の妖精?」
「元アメリカ空軍所属の優秀なパイロットで、我々に叛旗を翻し、マルコフらと共にアメリカ本土攻撃を行った最悪の女だ」
ビショップはマルコフにかかりきりで彼女と直接交戦したわけではないし、彼女がどこにいたのかもわからない。だが、赤い星をつけたロシア特有の薄青い制空迷彩を施したラプターが飛んでいるというのは交信の中で聞いていた。
「じゃあ、このベルクートもどきとPAK_FAはなにかわかりませんか?」
メビウスが見せたのは先のYF-22と同じく、翼端を青く塗り、その他は真っ黒に染められたSu-47らしき複座戦闘機とT-50。Su-47は前翼機だからか、少し塗装方法が違うようだ。アンタレスの機体とよく似た塗装をされている。そして、機首付近に黄色の帯が二本描かれていた。機番は015。
「んん? んんんんん?」
「どうしたんだ? アンタレス」
「黄色い二本の帯に、15番って何か思い出さないか? 永瀬?」
「......海軍343航空隊菅野"デストロイヤー"直、ですか?」
「いや、それもそうだけどさ。ほら、もう一人いたろ? あの人だよ。アグレッサーの」
「!! まさか。でも彼は昔の演習の事故で死んだはず」
「考えてもみろよ。あの人だぜ? あの後死んだことにしてどこかで生きててもおかしくはないさ」
「そう、ですね」
「彼?」
「ああ、ビショップ中佐たちは知らないんスね。俺らが空自にいた時代の最強のアグレッサーとか言われた男ですよ。見た目の割にかなり大胆で、編隊のど真ん中に単機で突っ込んでコックピットスレスレに垂直尾翼をぶち当ててくるような人なんスよ」
「演習であろうと容赦のないその大胆な体当たり戦法から≪菅野デストロイヤーの再来≫と言われ、空自のイーグルドライバーからかなり恐れられた男です。アンタレスが退官する直前の演習で日本海に沈んだはずなんです」
永瀬が持っているタブレットの画面をプロジェクタに映す。そこには黒と緑を基調とした迷彩塗装に、機首に二本の黄色い帯を入れた機番015のF-15DJそしてその前席コックピットに座る男。彼があのSu-47もどきを操縦しているかもしれない男。一見しただけでは普通の青年だが、見かけによらないとはこのことだろうか。
「「へっくし」」
「二人ともどうしたの? 風邪?」
「わからん」「噂されてるんじゃないかしらねぇ」
この時、ブリタニアでは、永瀬とアンタレスの思い出した男と、ビショップの話に出た女が同時にくしゃみをしたという。
アドリア海上空
アイガイオンに一機の偵察機が舞い降りる。扶桑皇国の彩雲だ。だが、扶桑皇国の国籍章ではなく、ついているのはアイガイオンが所属していたエストバキアの国籍章。乗っているのは二人の女性と一人の初老の男だ。
「お疲れさん、ゴルト1。ロマーニャの旅はどうだった?」
「おお、なかなかよかったよ。ついでに面白いものを見てきた。みんなを集めてくれないか?」
初老の男の名は、アントン・カプチェンコ。元ベルカ空軍第18航空師団第5戦闘飛行隊の隊長であり、テロリストグループ国境なき世界の創始者の一人である男。集団戦を得意とし、"ゴルトの巣"と呼ばれる、彼が僚機を管制して相手を追い込む戦法にはガルム隊のサイファーも苦労したという。
アイガイオンのブリーフィングルームに集められたエース達は、一枚の写真を見せられた。それは504JFWと共に写っているSu-47とT-50。その先に見切れているのはF-22だろうか。
「これは、先日ヴィルコラク遊撃隊、シュトリゴン1が好戦したと思われる部隊の写真だ」
ブリーフィングルームの中が騒々しくなる。ヴィルコラク遊撃隊がスレイマニを除いて全機撃墜され、三人の機体の一部は見つかったものの、それ以外は未だに見つかっていない。もちろん本人たちも。
「知っての通り、この三機はヴィルコラク遊撃隊を打ち破った実力者たちだ。もしかしたらアクーラ、君も何か知っているのではないか?」
「......。ミスター、この四人の中で一番小さい女を拡大できないか?」
アクーラと呼ばれた女は、元々男だった。本名はアンドレイ・マルコフ。元ロシア空軍の大佐で、反政府軍のエースパイロット。英雄勲章を授与された凄腕パイロット。 軍を脱退し、傭兵として反政府軍に雇われ、ビショップとワシントンで壮絶な空中戦を繰り広げ、敗北。その後この世界にやってきた男。
解像度を上げて拡大された写真をマルコフはじっと見つめる。マルコフの冷たい表情とは対照的に明るく笑う少女。そしてその後ろのT-50の機首に付けられた白百合のマークと023。
「この女だが、俺の後輩だ。名前はもう覚えていないが実力のある女だった。白百合と呼ばれたリディア・リトヴァクというソビエト軍の70年前の女性エースがいるが、彼女の再来と言われていた」
彼女はあの戦争にはいなかった。だが、今は同じ戦闘機で同じ空を飛んでいる。スレイマニたちと交戦したということはおそらく自分と交戦することもあるだろう。見かけによらず腕は化け物のような女だった。とても繊細な機動を行い、アクロバットチーム顔負けの曲技飛行を得意としていた。
「ふむ。なかなか厄介な相手だな。おそらく再び相見えることもあるだろう。対抗部隊を編成しなくてはならんな。やはり相手のことを知る者の方が良いか。部隊の編成は、ハミルトン少佐。君に任せる」
「了解」
アレン・C・ハミルトン。オーシアの軍人であったが、ウォードッグ隊を裏切り者として処分しようとした。後にラーズグリーズ隊となった彼らにスーデントール上空で戦いを挑み、ハミルトンネルへと彼らを追撃したが、そこで消息を絶った男。
彼が編成した部隊は第一部隊はハミルトン、カプチェンコ、Z.O.E、ディジョンの戦闘機部隊だ。そしてウィッチで編成された第二部隊はパステルナーク、アレクト1、マルコフ、スレイマニ。
ディジョンとZ.O.Eは電子化されたりAIだったりでウィッチにはなれないが、その分強力な武装を積んでいる。そのため機体は特別製だ。
ハミルトンが宣言する。
「今はこの編成で活動するが、編成入替がある場合もある。その時は必要に応じて各自行動してくれ」
『了解』
こうして二つの独立した部隊は彼らへの対抗策を少しづつ講じていく。
くじ引きの結果、カプチェンコ、ハミルトン、ディジョンは男性です。案外その辺は適当です。
アレクト1って本名でてないですよね?出てたら知りたいです