501JFW
「どうだった。こっちのネウロイは」
「とても面白いよ! おやじさんも飛べばいいのに!」
「私はもう年だ。特に君達にはついてはいけないさ」
バーフォードとスノウが談笑している。こうしてみると親子のような仲の良さだ。アメリカの西海岸に娘がいるという。おそらく彼女くらいの年なのだろう。とても仲の良い家族なのだそうだ。
その光景を見ていると今回は留守番していた後席要員のフォレストがミーナを連れてきた。
「隊長、基地司令がお話があるそうですよ?」
「! ミーナ基地司令。俺に何か?」
「ええ、こちらに来てもらえるかしら?」
「俺だけでいいのか? バーフォードの親父とかは?」
「彼は可能性が限りなく0であるとは言えませんが、大丈夫でしょう。最大の問題は貴方なのよ大尉」
「バーフォードにはなくて俺にある問題?」
スリル溢れる戦闘機動のことかと思ったが、どうやら違うらしい。もっと根源的なことのようだ。
「当基地のルールは知ってるかしら?」
「いいや、全然」
「貴方達は扶桑からの正式な派遣部隊だから、この基地での行動はほぼ自由よ。どんなことをしてもらっても構わないわ。......けれど、できる限りウィッチ達との交流を避けて欲しいの」
「交流を避ける? なぜだ」
「貴方はバーフォード中佐とは違い若いわ。そこでウィッチ達と関係を持たれては困るのよ」
ウィッチは処女でなければならないと言う。それが本当なのかどうかはウィッチのいない世界からきたシャドウにはわからない。しかしここまで酷いとは知らなかった。ロマーニャだったかアフリカの方では男性との交流を許している部隊があると噂程度に聞いたことがあるが、ブリタニアでは必要最低限にする必要がある。ということはもしかしたら他に何か理由があるのではないか?
「そうか。そういうことなら善処はしよう。だが、無線で連絡するのくらいは許してくれよ?」
「ええ。必要であれば構わないわ」
「ここまで規制を厳しくするってことは、何か理由があるんだろう? これは俺の推測だが、あんたか誰かの恋人なり大切な男がネウロイによって殺された、とか」
「............」
ミーナが押し黙る。どうやら正解を当ててしまったようだ。
「そうか、嫌なことを詮索して悪かった。まぁ、必要最低限の関わり以外は持たないようにはするし、これ以上詮索することもしないから安心してくれ」
「え、ええ。ありがとう」
「あ、おかえりシャドウ! なんだったの?」
「ん? ただの世間話さ。気にすんな」
「ふうん? 本当にただの世間話なのかなー?」
こういう時のスノウの洞察力は恐ろしい。こういう時だけ、という前置詞がつくが。女の勘というやつだろうか。
「......この基地を自由に使っていいって確認取ってたのさ」
「ふーん」
嘘は言っていない。だがそのうち見破られるだろう。まあ、この基地で縛りを設けられているのは今のところ俺だけだ。整備班の連中は男だったからそこで仲良くさせてもらうさ。
AWACSであるカノープスの中にいるバーフォードやオペレーターたちの中にも何人か男がいる。だが、彼らはカノープスの中からあまり出る気はないようだ。まあAWACSはこの世界でなくとも最高機密に当たるレーダーサイトであり、未来の世界でも一般の人間にはそう簡単には見せられるものではない。ましてや触らせるなんてもってのほかだ。シャドウたちですら入れてもらえたことなんてないのだから、彼女らが入らせてもらえるわけもない。アルタイル隊と共に来た整備班の男たちも加わって厳重な警備を敷いていた。
その夜。
カノープスの近くから足音が聞こえた。整備隊の男が小銃を構える。
「誰だ!!」
「きゃっ、鉄砲は下ろしてー。私だよ私。お役目ご苦労さま」
「! 副隊長。失礼いたしました。お疲れさまです」
「うん、お疲れ! おやじさんいる?」
「司令ですか。少々お待ちください」
カノープスの中でアルタイル1のオペレーターであるマイケル・アリーナと話していたバーフォードが彼を連れてタラップを降りてきた。
「やっほー、おやじさんにアリーナくん」
「シャドウが来るものかと思ってたが、アテが外れたな」
「ちぇ、負けちまったぜ。よおスノウちゃん。元気かい?」
「うん! とても元気だよっ」
「夜は暗くて危ないから誰かに付き添ってもらったほうがいいんじゃないか?」
「あっ、アリーナくんからかったね!? 私はもう大人なんだよ! レディなんだから!」
「わかったわかった。なんか中佐に用事あるんだろ?」
「そうだった! おやじさん、あのね、シャドウが......」
スノウがバーフォードに耳打ちした情報は、彼がずっと探し続けていた情報だった。
「それは本当か?」
「信憑性は高いって!」
「わかった。あとはそれが本当なのか調べるだけだな」
その後、スノウを探しに来たフォレストが彼女を連れて行くと、早速バーフォードは情報をまとめる。
北の海でスオムスの偵察機が見つけたという巨大な灰色の空母のような艦船、同時に聞こえた聞き慣れない謎の轟音、この基地にいたという2人のジェットストライカーを履いたウィッチ、アドリア海に現れたネウロイではないが白鯨を思わせる巨大な航空機群、マーティネス・セキュリティー社のエンブレムとオレオ......もといオリビエリ・ライフ・インシュアランス社のエンブレム、IFFの反応。
やはりアンタレスだけでなく、スレイマニもこの世界にいるのかもしれない。そして、他にも消えたという国連空軍アローブレイズ隊のリッジバックス1とボーンアロー4、米空軍のウォーウルフ1。彼らもまた、この世界にいるのかもしれない。聞けばこの世界、特に北欧からアフリカにかけてのヨーロッパ近辺で耳慣れない音とともに高速で飛翔するウィッチや航空機が頻繁に目撃されているらしい。まだジェット航空機技術が発達していないこの世界ではMe-262や橘花などは出ていないだろう。だが、彩雲や百式司偵等の高速偵察機といつのも考えられない。耳慣れない音、というのはレシプロエンジンではないはずだ。となると、もちろんその「轟音とともに高速で飛ぶウィッチと航空機」という中には、自分たちも入っているが、それでもアフリカにも北欧にも行ったことはない。扶桑を出てから大陸中央の山岳地帯や砂漠地帯、ロマーニャ、ベルギカ、カールスラントを通ってブリタニア入りしただけだ。
(やはり他にもいるようだ。もう少し調べてみる必要はあると思うが、もしかしたらあいつらも......)
バーフォードは情報をまとめた手帳を閉じ、満天の星空を眺めた。
ロマーニャ 海辺の洞窟
ロマーニャの海辺にある切り立った崖にある洞窟の中の飛行場に彼らはいた。数人の男性の中に一人だけ女性がいる。
「奴らがこの世界に来てたって本当なのかい?」
「イエス、プリンセス。どうやら新設の504JFWにいたようです。現在はイギリスの501JFWに滞在しているとか」
「ほお? じゃあもう少しの間私らはここいらで好き放題できるわけだ。けど」
「けど?」
「あいつらは私らにとって目の上のタンコブだ。できるもんならさっさと潰しておきたいね」
「では、奇襲を仕掛けますか?」
「そんなにすぐにやる必要はないさ。悔しいが今の私らじゃあいつらには絶対勝てないんだからね。もう少し戦力を増強してからにするさ」
彼女の後ろには4機の新鋭戦闘機、F-35が駐機していた。そして後ろでギュイイイイという謎の音を立てる謎の物体。それはどう見ても戦闘機という形をしていない。もっとおぞましいものの形をしていた。
最近アンタレスたちをたちを動かせてない気がするのでそろそろ動かしていきます。次回こそは......