赤蠍と人狼と空飛ぶ少女   作:雪見雪乃

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自宅のルーター故障により執筆が遅れましたが、今回は少し長めになります。少し頑張った╭( ・ㅂ・)و ̑̑ グッ !


戦闘と相談と再来

とある森

 

「ハアッ、ハアッ、ここまでこれば......、もう安全だろう......」

「あの4人、本当に魔法使えないの? レベル高すぎるよ......」

「まてハルトマン、まだ奴の攻撃は終わってない! もう追いついたのか......」

「え?」

 

パパパ、パパッ、 チュンッ!

 

ぜえぜえと荒い息をする少女2人のすぐそこをオレンジ色の弾丸が掠めていく。

 

「うわわわ!」

「くそっ!」

 

少女の1人が応戦して持っていた拳銃で発砲する。パンッ、パンッと小気味良い音がした後に返ってくるのはタタタッ、タタッという圧倒的な連射速度を持つ小銃から飛び出す弾丸。

 

「援護はまだ!?」

〈こちら宮藤です! 無理です!戦闘機に阻まれてて......キャッ!〉

〈芳佳ちゃん!〉

 

ブゥゥゥゥウンという音と共に右ストライカーを橙色に染めた宮藤が片肺のみで大地を飛んでいく。彼女を追いかけるのはリベリオンではなくアメリカ合衆国という国のの国籍章を描いた戦闘機、P-51。P-51は森の中に入れるほど小さくないので木々のスレスレをなぞるように飛びながら彼女に機銃掃射を浴びせる。彼女からの援護は一切期待できないだろう。だが、P-51のすぐ後方にリーネとペリーヌの姿が見えた。敵方のMiG-3はまだ見えてない。おそらくシャーリーとルッキーニが応戦しているのだろう。これはチャンスだ。

 

《Enemy scuadron do you read?》

《Yeah. This is enemy 1. What's happen?》

《Don't engage enemy fighters. Concentrate on shooting down the grand enemy》

《This is enemy 2. Rather that》

《3 copy》

 

オペレーターから先に地上部隊であるハルトマンとバルクホルンを優先して倒せとの報告が入った。どうやら彼女らの近くに対空機銃座があるようだ。先に銃座を潰しておくのもいいだろう。だが対空機銃座の近くにはエイラとサーニャがフリーガーハマーを構えて待っているかもしれない。それに地上にはまだ坂本がいる。接近戦となればどうなるかわかったものではない。

 

〈美緒! 敵は対空陣地を狙ってます。トゥルーデたちも逃げながらそちらへ向かっているわ!〉

「了解!」

 

訓練用に刃を潰された刀を構えた坂本が対空陣地の目の前で仁王立ちしているその横にストライカーを履いたエイラとサーニャが待っていた。

 

「もうすぐ宮藤がこの上を通るゾ」

「ふむ。追われているようだな。撃て!」

「「了解!」」

 

エイラの援護を受けたサーニャがまるでSAMのように狙いを定める。発射。撃たれた数発の砲弾は宮藤のすぐそばを通ってP-51を狙う。宮藤に向けて機銃掃射を行っていたP-51は機首を急激に引き上げながら大地と垂直になった時点でヨーを行う。するとくるりといびつな円を描きながら回避に成功。不規則な回転をするなかで機銃掃射を開始。なんと急に接近してきたP-51を慌てて回避したリーネとペリーヌに着弾した。彼女達の全身が橙色に塗られた。

 

「「きゃあああ!!」」

「リーネちゃん! ペリーヌさん!」

《Kill》

「そんな......」

「屈辱ですわ......!」

 

しかし宮藤がその回避の間に後ろに回りこんでいた。

 

《Oh, shit!》

「よし!」

 

P-51の翼に橙色の花が数輪咲く。しかしそれと同時に宮藤の残されたもう片方のストライカーに橙色の花が咲く。

 

「そんな!」

《Splash 1. Next》

 

P-51を「撃墜」したもののそこで停止ししてしまったために下から小銃で狙われていたことに宮藤は気がつかなかった。それに弾丸の出処もわからなかった。撃墜のコールをされたP-51と宮藤は先に離脱した2人を追って空域から離脱する。

 

 

坂本たちは動くことができなかった。宮藤が「撃墜」されたのは自分たちのすぐそこだ。どこから狙われているかわかったものではない。

 

「どこだ?」

「見えません」

「見えないんダナ」

 

近くにはバルクホルンとハルトマンもいる。数ではこちらに分がある。なのに動けない。相手は異世界から来た対人戦をよく知っている歴戦の傭兵達だ。対人戦を経験したことのない彼女達は動こうにも動けなかった。

 

ーーーチュンッ!

 

坂本の右すぐそこを一発の弾丸が走った。弾丸は坂本の耳元を掠め、後ろの対空陣地の対空機銃の一つに着弾する。バルクホルン達がいる方向とは真逆だ。音も立てずにどうやって移動したというのか。しかもマズルフラッシュも銃声さえも聞こえなかった。消音器をつけているのか。

 

「くうっ、魔法を使えないのがここまでもどかしいとはな......!」

 

そのうえシールドも使うことができない。この訓練は魔法力の消費をできる限り抑えるためのものだが、自分たちがどれほどシールドに頼っていたかがよくわかった。

 

空のうえでは一機のMiG-3を相手にシャーリーとルッキーニは大苦戦していた。何度も弾倉をリロードしているが一発も当てることができない。相手は対ウィッチ戦にも慣れているということか。通常戦闘機に比べてはるかに小回りのきくウィッチを2人も相手にしているのに彼女らと対等かそれ以上の機動を見せつけてくる。しかも今まで一度も無駄弾を撃ってないのだ。すべてすんでのところで回避に成功したというだけでそれ以外はほとんど撃っていないのだ。

 

「なんて機動なんだ!」

「うじゅー、全然当たらないよー......」

《Haha. Hey you! Will you think me? I'm not human》

「なんだと?」

《I am a Neuroi!》

「自分をネウロイだと思えってか......? いいぜ、やってやる!」

 

えらく恐ろしいことを言う。だがあの挙動はまさしくネウロイのようだ。

 

「やるぞルッキーニ!」

「うん!」

 

2人は小さな箱の中で跳ね回るボールのように縦横無尽に飛び回る。流石のMiG-3もこれには対応しきれないのか、コックピットの中で小さな人影が身じろぎした。2人は勝てる、と確信した。だがもう弾倉は1つだけしか残っていない。決められるかはわからなかった。もしこれが無理なのなら自分たちの負けだ。まるで戦闘機に乗るエイラを相手にしているようだ。

 

しかしここで予想だにしないことが起こった。

 

「「《!?》」」

 

魔導エンジンが急にストップしたのだ。それも2人続けて。急機動などを続けたことによる魔力の過剰消費で魔力が枯渇してしまったのだ。こうなってしまえば2人はもう飛ぶことができない。

 

「ま、まずい!」

「わわわわわ!」

《Catch my wing! Are you OK?》

「た、助かった〜」

「うじゅー......」

 

次第に降下し始める2人を主翼に乗せる。元々そこまで剛性が強いわけではないMiG-3の翼はミシミシと嫌な音を立てていた。ゆっくりと空域を離れながらギリギリまで降下して2人を下ろし、地上で待つ残りの2人の援護のために空へと戻る。もちろん、2人を撃つのも忘れなかった。

 

 

坂本たちはまだ敵と睨み合いを続けていた。なんとかバルクホルン、ハルトマンと合流できたものの、ガサガサと何度か聞こえた瞬間にバルクホルンが発砲したのは野ウサギだったり野ネズミだった。

 

「一体どこにいる?」

「もう疲れた〜」

「気を抜くなハルトマン! いつ撃たれるかわかっーーー」

 

たものじゃない、と続けようとしたのだろうか。だがその途中で橙色の弾丸がバルクホルンを襲った。彼女の顔面がオレンジ色に染まると同時に別の方向から弾丸が。弾丸はサーニャのストライカーに着弾。エイラが庇わなければ今頃脱落していただろう。しかし2人とも片肺で飛行する必要があった。

 

「エイラ、ありがとう......」

「こ、このくらいどうってことないんダナ......」

 

エイラの顔が赤くなった瞬間、再び弾丸が襲ってきた。今度は上空から。MiG-3が戻ってきたのだ。機銃掃射で辺りは橙色に染まり、対空陣地に設置されていた対空砲はことごとく使えなくされてしまった。今度は逃すことなくサーニャに弾丸が直撃し、続いて跳弾がエイラを襲った。

 

「きゃっ」

「サーニャ! わぶっ」

《Hit!》

《Kill》

 

残りは2人。制空権は確保され、包囲されてしまっていた。

 

「うげー......」

「来い!」

 

面倒くさそうに銃を構えるハルトマンと潔く刀を構えた坂本。そして「敵」も1人は見たこともない小銃を構えて茂みの中から現れ、もう1人は別の茂みの中から現れた。手にはナイフと拳銃を携えている。ナイフが走り出した。ハルトマンが狙いを定めて撃つ。同時にナイフが伏せて回避する。そこに小銃が襲いかかる。回避を繰り返しながらの攻防が開始される。

 

ナイフはハルトマンの横を素通りし、坂本に一騎打ちを仕掛ける。刀を構える坂本の懐に飛び込み、袈裟に斬りあげるが、刀に弾かれ、今度は坂本がガラ空きの背中に向けて刀を振り下ろす。そこに現れたのは左手に持たれていた拳銃。少し不思議な形をしていた。三発の連射をすんでのところで回避し、飛び退く。それが悪かった。

 

「うわっ!?」

「むっ!?」

 

後方の確認をしていなかったので坂本とハルトマンがぶつかったのだ。そこに容赦なく飛び込んでくる小銃とナイフだが、ここで相手になったのは先ほどとは逆の相手。とっさに進行方向とは逆の相手にそれぞれの武器を構えたのだ。そして。

 

タァン!

 

という音とともにナイフが黒いマスクを橙色に染めて倒れた。小銃は目の前に坂本の刀が突きつけられている。これでもう動けない。そして持っていた拳銃で1発。勝負は決した。そして敵味方もろとも機銃掃射で全身橙色に染められてしまったのだった。

 

 

 

ブリタニア 501基地

 

「あー、楽しかったー!」

「まさか数で圧倒していたのにそれでも敗北を喫するとは......」

「むう、なんで当てられたんダ?」

「ふふん、それは秘密だよー」

 

ワイワイガヤガヤと身体の汗と汚れを落とした少女たちがお湯で火照ったまだ少し湿っている身体を拭きながら廊下を歩く。そこにこの戦闘部隊唯一の男性の姿はない。彼女たちは真相を知っているわけではないが、どれだけ誘っても逃げられていたのだ。

 

シャドウの後席、フォレストがエイラに話しかける。

 

「ねえ、エイラさん?」

「ん?なんダ?」

「どうしてあなたに弾丸が命中したのか、もしそれが知りたいならシャドウに聞いてみるといいですよ? 彼はあなたの魔法の欠点を見抜いたのだから」

「え? それはどういう......」

「さ、行きましょうスノウ。まだ訓練は残っています。フェアリもですよ」

「あ、まってよー!」

「はいはい」

 

戸惑うエイラたちをよそに彼女たちはスタスタと先を行き、廊下の角に消えた。

 

「彼がなにを考えてるのかは知らないですが、皆さんと仲良くして欲しいですからね」

「そうねえ、私たちと仲良くするだけではさすがにだめよ」

「けどシャドウが私たちにも隠すんだからもしかしたらミーナさんと何かあったのかもよ?」

 

スノウにはこれといった確証はなかったが、ここに来て初めての出撃のあとにシャドウだけがミーナに呼び出された理由を聞いてはぐらかされたことを覚えていた。もしかしたらあの時の呼び出しに何か原因があるのかもしれなかった。

 

「うーん、ミーナ司令官と、ねえ?」

「......まあ、もしかしたらその可能性もあるかもしれませんね」

 

フェアリはまだ疑問が残るようだがフォレストは一応は納得してくれたようだ。スノウはシャドウたちもみんなと仲良くして欲しいと考えている。シャドウたちは機体の周囲から動くことなくそこで生活している。機体の警備を整備班と交代交代で行い続けているのだ。さすがに体力だって回復しないだろう。これからも戦闘は続くだろうし、この生活状況の改善は必須だ。

 

「わたし、ミーナさんのところ行ってくる!」

「構わないけど私たちは行かなくても大丈夫かしら?」

「うーん、たぶん大丈夫! なんとかなるなるー!」

 

そう言うとスノウはミーナのいる部屋の真逆の方向に向けて走り出し、すぐに「行き止まりだった」と言って戻ってきた。フォレストがため息をついた。

 

「やっぱり私たちも行きましょう」

「え? 大丈夫だよ?」

「あなたは多分司令室まで行くのに1日はかかるもの。待ってられないわ」

「う、むむう......」

 

少し機嫌の悪くなったスノウではあったが、フェアリに頭を撫でられてすぐに機嫌を良くした。彼女はとても単純だ。まるで子供のまま大人になったかのような。いや、見た目も小柄でかなり子供っぽいが。

 

「さ、行きましょう」

「うん!」

「了解よ」

 

3人はミーナのいる司令室へと向かう。

 

 

一方のエイラはシャドウを探していた。彼らアルタイル隊とカノープスが扶桑から派遣されてきてからもう大分経つが、良く考えたら女性たちとは交流があったものの、シャドウやバーフォードたち男性陣とはほとんどというか一切交流がなかった。今まで気にしなかったし、むしろそれが暗黙の了解だった。同じ基地で働く仲間なのに関わりがないというのは今後の協力問題などにもつながるのではないか?現在はただでさえおかしなネウロイが増えつつあるのに、自分たちが連携をしっかり取れないとなるととても不安だ。もしかしたらそれだけでブリタニアが、いや、ヨーロッパが、世界がネウロイに席巻されてしまうかもしれない。

 

「一体どこなんダ?」

 

思いつく限りの場所はすべて探した。残っているのは、彼らの居住区画と格納庫。居住区画には人の気配はなかった。やはり格納庫か。

 

格納庫には小銃を構えた男たちが巡回していた。未来の世界から来たというだけあって警備も厳しい。彼らは整備員のようだが小銃を隙なく構えているということはライフルマンなのか。まるでリベリオンのマリーンのようだ。それでも臆せずエイラは彼らの1人に声をかける。

 

「すこし、いいカ?」

「なんでしょう?」

「あんたらの隊長、どこにいるか知らないカ?」

「バーフォード大佐ならAWACSに、アルタイル1なら機体格納庫にいますよ。アルタイル1から貴女が来たら通すように言われています。こちらにどうぞ」

 

案内を買って出た男は一旦詰所のようなところでもう1人を連れてきて警備を交代し、アルタイル1の元へ案内してくれた。

 

 

「ああ、来たか」

「まるで待っていたとでも言うみたいな口振りダナ」

「その通り、来るだろうと思ってあんたを待っていたのさ。ユーティライネン中尉」

 

こぢんまりとした格納庫いっぱいまで羽を広げた巨大な黒い異形のイヌワシから降りてきたシャドウはエイラに一つの映像を見せた。

 

「これは?」

「あんたの飛行を再現したものだ。大変だったんだぞ、作るの」

 

彼が持っている薄い板に簡単に作られたデフォルメのウィッチが画面に描かれた線をなぞるように飛行している。その右下にある拡大画面には顔の表情がわかるようになっていた。

 

「この顔を映した画面があんたの弱点だ。未来なんざいくらでも変わるし、予知と言っても完全じゃあないだろう?そして、これはほぼ遠距離からの攻撃にしか効果がない。にもかかわらずあんたの顔は敵のことを見ていない。だから咄嗟の動きには対応することができないんだ」

「なぜそんなことを教えるンダ?」

「そりゃあ強くなってもらうためさ」

「え?」

「最近は変なネウロイが出てくるんだろ? だったら俺たちがいない状況でそいつらに対抗する必要がある可能性だってあるじゃないか。そうだろ?」

「まあ、そうダナ」

「だったら強くなってもらう必要がある。さ、これでこの話は終わりだ。俺は訓練に行くからな。帰った帰った。あまりここにいるとミーナ司令にどやしつけられるぞ」

 

 

その頃ミーナはミーナで再び現れた来客の対応に追われていた。

 

「久しぶりだな。また来たわけだが人員変更があったようだな?」

「え、ええ。なぜそこまでご存知なので?」

「それは秘密だ。で、会わせてもらえるか?」

「......わかりました。呼びますので少々お待ちを」

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