再び現れた客人と爆発と不穏
ブリタニア 501基地
応接室にバーフォードとアルタイル隊の4人が集められた。
「はじめまして。私はーーー」
「アドルフィーネ・ガランド。カールスラント空軍航空総隊司令官、でしょ?」
すかさずスノウが口を挟む。
「もう私のことを知っていたのか。なら話は早いな。私が来た理由もわかっているだろう?」
「もちろんよ。私たちの機体に使われている技術の情報提供もしくは機体の譲渡、でしょう?」
次はフェアリ。
「大当たりだ。これは命令だ。扶桑の加護は信じない方がいいぞ?」
「もう大使館には口止め料を払っている、ということですね」
そしてフォレストが微笑みながら答える。目は笑っていなかったが。
「以前ミーナ司令官からここにアンタレスがいた時にも同じようなことを聞いていたと聞いたが、断られたとか?」
今度はバーフォードだ。
「その通り。ジェットストライカーについて聞こうとしたのだがね、失敗してしまったよ。それで君たちはどうする? ちなみに今回はなんとしてでも手に入れるつもりだ」
ふむ、とバーフォードとシャドウは考える。ここでYesと返事をすればこの世界の歴史は大きく変わるだろう。ネウロイはかなり早い段階で殲滅されるかもしれない。しかし歴史を変えるということはここから人間同士の紛争に発展する可能性だってある。おそらくアンタレスたちはそれを見越してNoと答えを出したのだろう。しかし今回はなんとしても自分たちがもっている技術を手に入れるつもりだ。引く気はないようだし、難敵になる。ではこれを断るにはどうすればいいか? ここでシャドウがある結論に達した。バーフォードにそれを話し、承認を得て話し出す。
「よし、あんたの話はよくわかった答えはYesだ。だが、ウチの持ってる情報はこの世界には存在するはずのないものだ。だからおいそれとはいそうですかで渡すわけにはいかない。条件がある」
「条件とは?」
「カールスラント、ブリタニア、リベリオン、扶桑、オラーシャ、ロマーニャ、ガリアスオムスなどの情報を必要とした各国から情報一つにつき50万ドル、そして高オクタン価の航空燃料、武器弾薬の安定供給、さらにMe-262の実機を3機無償提供でどうだ? それだけで未来の技術が手に入るうえに262の改善点が見つかるんだ。安いもんだろう?」
かなり法外な要求だが、このくらいの無理難題を突破してもらわねば困る。
「これで安い、だと? ふざけるな。できるわけがないだろう」
「ふざけるなだと? こっちはいたって大真面目だ。そう簡単に技術協力なんてできるか。ただでさえ機密情報だらけなんだからな。その辺はアンタレスから聞いているだろう?」
「確かに聞いている。だが、こちらも手段は問わないと言われていてな。Yesと答えなければ申し訳ないが君たちの格納庫は大変なことになるぞ? 3、2、......1!」
ガランドは本当に申し訳なさそうな顔をしてから、ニタリと凶悪な笑みを浮かべ、カウントダウンを急に開始した。その直後。男たちの喚声と悲鳴が聞こえ、ドンッ!と基地が轟いた。今の音は格納庫からだ。
「一体なんの騒ぎだ!」
シャドウたちアルタイル隊が格納庫に飛ぶように駆けていく。
残ったバーフォードはガランドに詰め寄る。
「貴女方は一体何がしたいんだ!? 我々はネウロイからヨーロッパを解放するために扶桑から派遣してきた。言うなれば仲間だ。なぜ裏切るのか!」
「どうしたもこうしたもないさ。私はあんたたちを潰しに来たんだからね!」
「!?」
ドンッ! と再び爆発音。今度は二回連続している。何かが飛んできた。航空機の主翼だ。あの塗装は五式戦闘機のもの。一体なぜ格納庫が爆発している?
「ちっ、本命じゃないか」
ガランドの姿をした女は悔しそうに顔を歪めた。
「貴様!!! いったい何者だ!」
立ち上がって掴みかかろうとしたバーフォードを彼女は難なくその腕を躱し、流れるように掴んで一本背負いを決める。床に叩きつけられたバーフォードがうめいている間に女は部屋を飛び出す。もちろん廊下は待ち伏せをされている可能性があるため、窓から飛び出す。猫のように体を捻りながら、屋根の上に着地。そしてまた飛び降りる。バーフォードの悪態が遠くから聞こえた。
自分達の機体が燃えている。あれではもうレストアは不可能だろう。だが、あの機体が囮になってくれたおかげで元々の乗機は無事だ。整備兵たちが応戦している。カノープスは無事なのか? 走りながらシャドウは情報を分析していく。ここで戦っている者たちが多いということはまだベルクートたちは気づかれていないということだ。日に日に改造されていた格納庫には秘密の扉があった。そこに彼らの機体は置かれている。エイラがやってきたときは格納庫に置いていたが、普段は別の場所に駐機している。(この時レシプロ機は天井に吊り上げられていた)
床と同化した蓋を開け、梯子を降りると基地の地下洞窟につながる。以前発見された地下の泉のすぐそばだ。
「おそらく俺たちを標的に奴らはきている。この基地に迷惑はかけられねえ!」
「カノープスは!?」
「地上に出たらすぐに交信を取りましょう! 整備隊も危ない!」
機体に乗り込み地下の滑走路に編隊で進入。アフターバーナーを炊いてスキージャンプ台のようになった滑走路を飛び出す。もし地上から見ている者がいれば、洋上の小島から急に戦闘機が3機飛び出してきたように見えただろう。
「ちっ、まさか地下に置いているなんてね!航空隊! 追撃するよ!」
女は飛び去った3機を追うために乗ってきたトラックで近くの小さな森へと走っていく。その上を2機の戦闘機がすれ違うように飛んで行った。
洋上に出たアルタイル隊は機銃掃射を行うために基地へと戻る。
「こちらアルタイル1。カノープス、聞こえるか」
「......こちら、カノープスのサラです。なんとか生きていますがそちらは無事ですか?」
オペレーターのサラが息も絶え絶えといった様子で交信に応答してくれた。
「無事だ。状況は?」
「一応全員無事ですが数が多いために整備隊員は全滅、格納庫第一から第三まで全壊。現在敵はカノープスに侵入してきました。おそらくほとんどの敵がここにいます。少しでも敵の数を減らし、情報の流出を避けるためにまもなくカノープスを爆破します。なおこれ以降の交信はほぼ不可能です」
サラの声には覚悟と死への恐怖が同乗していた。機銃掃射を行おうとしていたアルタイル隊は焦る。
「おい待て! 機体もろともお前たちも死ぬつもりか!?」
「こちらアルタイル2! サラさん! 死なないで!」
「こちらアルタイル3。本気なの? サラ。他のオペレーターたちは?」
「グレアム、マイケル、キョウカ共に戦死、残っているのは私とたまたまここにいた整備員が3人だけです......」
「バーフォードは?」
「司令官はまだおそらく生きてると思います。それでは、ご武運を」
カノープスの中で交信しながら機器を破壊し、爆薬を設置していたサラは無線機を外した。まだ無線からはアルタイル隊が叫んでいる。整備員と頷き合い、手に持ったボタンを押し込んだ。
「さようなら、アルタイル隊」
閃光とともにカノープスの白い機体は3つに分裂し、粉々に爆発した。轟音が基地に響き渡る。
「なんだ!?」
「ば、爆発?」
「大変です! アルタイル隊の皆さんの格納庫が! それに機体も!」
宮藤が煤まみれになりながら501基地のブリーフィングルームに駆け込んできた。近くでトレーニングをしていた時に戦闘に巻き込まれたようだ。坂本とリーネが駆け寄る。
「芳佳ちゃん大丈夫?」
「ああ、把握している。大丈夫か宮藤?」
「あ、私は無事です! けどなにがあったんですか? 急に襲撃を受けたんです......」
「ああ、そのようだな。それで敵は?」
「白い大きな飛行機にみんな乗り込んで、それで、爆発......」
窓をバルクホルンが確認するとAWACSの入っていた格納庫は跡形もなく弾けとび、機体と格納庫の残骸を燃え盛る炎が包み込んでいた。瓦礫の山の中に伸びた人の腕らしきものもあったがそれもすぐに燃えて消えた。
「......なんて、ひどさだ」
「あっついねー、この火はなかなか消えないかもね」
「変なところで感心するな、ハルトマン。人が死んでるんだぞ」
「そうよ。なんとかしてあの瓦礫も避けなきゃいけないし」
坂本がミーナに尋ねる。
「どうする?」
「とりあえず生存者の確認と保護を優先しましょう。それと基地地下の確認と瓦礫の撤去を行います。宮藤さん」
「はい!」
ミーナは回復魔法が使える宮藤に救護を任せ、バルクホルンに瓦礫の撤去、ハルトマン、リーネ、ペリーヌ、サーニャ、エイラに生存者の保護と捜索、坂本、シャーリー、ルッキーニに基地地下の格納庫の探索を命じた。
「さて、布石は完璧だ。私たちの戦争を始めようじゃないか!」
トラックを止め、草原に隠れるように停められた戦闘機に乗り込んだ女はそう叫んで飛び立った。トラックの荷台の中身がもぞもぞと動いたことなど気にも留めなかった。
ということでなかなか中途半端な展開で終わった気もしますが、なんと次回は久しぶりに舞台がアイガイオンに移ります。忘れててごめんよスレイマニ......
番外編的なのもかけたら書いてみたいなあ......