中欧上空 アイガイオン
先日の襲撃で受けた被害を修復し、カールスラントを超えてベルギカの領空を通過したアイガイオン。現在はカールスラントからわざわざ追いかけてきたカールスラント空軍機とベルギカ陸軍航空隊機から逃げることだった。敵ではないが味方でもないので立ち向かうよりも逃げる方が良い。
「カールスラントの紳士たちはなかなかしぶといじゃないか」
と呑気に感心しているパステルナーク。さらにアイガイオンの通るルートの国にある戦闘機がおっとり刀で迫ってきていた。皆とても巨大で異形の姿なのにネウロイではないこの航空機をどう扱っていいものか迷っているのだ。だが鈍重とはいえアイガイオンもジェット機だ。70年以上前の技術を使われたレシプロ機には速度でも巡航高度でも負けることはない。ネウロイやジェット機が相手にならなければ、だが。
「なあスレイマニさんよ。あんたは何をしてるんだ?」
パステルナークの隣でどこを見るでもなく押し黙ったままのスレイマニは反応することなく立ち去っていった。
「......なんなんだ?ほんとに。おい、待ってくれよ!」
急ぎ足で格納庫に向かうスレイマニは何人かの新しい仲間と出会った。アレクト1にマルコフだ。
「どうした、ヴィルコラクにシュトリゴン」
「後ろから追ってきている戦闘機の後ろから何かが高速で近づいている」
「なんだって? じゃあすぐに様子を見に行こう」
格納庫で各々のストライカーを履き、4人はは飛び立つ。視界には10機ほどのレシプロ戦闘機が編隊を組んでアイガイオンを追っている表示とともにその後方から3つの点が高速で迫ってきていた。メッサーシュミットやスピットファイアをジェット気流で吹き飛ばしてやるかのようにすれ違う。そして見えたのはSu-47率いるF-22、T-50の3機編隊。
「「あいつらは!!」」
スレイマニとパステルナークには因縁の相手だ。漆黒の3機はアドリア海で彼らを破った。
「敵か?」
「ああ、それに、かなり強い。ウィッチでも難しい機動を軽々とこなしてくる。強敵だぞ」
アレクト1とマルコフに簡単な説明をする。油断はできなかった。
「増援を呼んだほうがいいのでは?」
「「「必要ない」」」
「「今度こそ俺が奴らを墜とす」」
「あ、はい。そうですか......」
アレクト1は彼らの剣幕に負けてしまったが、こっそりとアイガイオンに打電した。
「アレクト1から信号。増援要請」
「敵勢力は?」
「Su-47、T-50、F-22の3機編隊」
カプチェンコとハミルトンは交信を聴き、Z.O.E.とディジョンに出撃を促す。ただし、彼らが窮地に陥った時のみ参戦させることにした。本当は今すぐにでも参戦させたほうがいいが、そうすると彼らがうるさい。
「今度は、俺たちが勝つ!」
「交戦」
スレイマニたちが身構えた。しかし。
「……待て!」
だが、3機の戦闘機は彼女らを無視してレシプロ機の編隊へ、アイガイオンへと向かう。素早く彼女らも方向を変えて追うが、なかなか追いつかない。そして3機に追い抜かされたレシプロ戦闘機群が次々に黒煙を吐いて撃墜されていく。アイガイオンに到達するまでに最後のメッサーシュミットが撃墜されてしまった。間に合わなかった。相手の狙いはアイガイオンなのだ。これは彼らからの宣戦布告だ。そのまま彼らは続けざまにアイガイオンの直下を掠め、一番先頭にいたキュゲスを攻撃、撃墜した。ドンッと巨大な迫撃砲が炸裂したかのような爆発が起こった。
「なぜキュゲスがそんなに早く......」
「あの爆発、燃料気化弾じゃないか?」
「まずいな......」
「急ぐぞ!」
しかし続いてコットスが2機撃墜され、最後のキュゲスも満身創痍になっている。
「ちっ、この前のメビウスより強い!」
「全機発艦! アイガイオンだけは死守しろ!」
カプチェンコが指示を飛ばし、全員が飛び立つ。スレイマニらと敵編隊にすれ違う形だ。
「全機特殊兵装の使用を許可する。すれ違う直前に放て。スレイマニくんらも私たちに合わせて発射だ」
『了解』
「いまだ!」
放たれた数々のミサイルが3機に向けて突撃、炸裂する。しかし。
「なっ!? うわあああ!」
「しまっーーー」
「くっ」
悲鳴をあげたのはむしろ彼女らだった。アレクト1、ディジョン、カプチェンコ、ハミルトンが黒煙を吐きながら墜落していく。味方の放ったミサイルが炸裂したのは3機が躱した直後だった。そこに加速した彼女らが侵入、爆発を受けたのだ。
3機はまだ悠然と編隊を組んで飛んでいる。次はアイガイオンに狙いを定めたようだ。
「させるか......! モード・ガビリア起動」
スレイマニとZ.O.Eが追いすがる。偶然手に入れたガビリアのチューニングシステムを使うことでエンジン出力が上がり、速度的には優っている。3機に追いつくにはキリアコフのチューニングシステムも必要になるだろう。オルマのものは対地攻撃に特化しているために今回使うことはない。しかしオルマはどうやってあそこまでの空戦を可能にしていたのだろうか?
いらない考えが頭をよぎり、スレイマニは頭を振る。Z.O.Eがどうしたのかとメッセージで聞いてくるのでなんでもないと告げ、増速。だんだん影が大きくなる。対空砲火を潜り抜け、まもなくアイガイオンに向けて攻撃を開始するというところだった。
無言でミサイルが発射され、3機にむけて白煙を上げながら突撃、バレルロールで回避されるが3番機のF-22の真下にとりつく。振り落とそうとブンブンと機体を振る3番機はアイガイオンすれすれを低空飛行することでスレイマニをアイガイオンにぶつけて落とそうという考えのようだ。
「Z.O.E!」
[了解]
青い閃光が舐めるようにアイガイオンの上1m近くを飛ぶ。それを再びバレルロールで回避した3番機の後ろにはようやく追いついたパステルナークがロックオン開始。
「FOX2!」
ミサイルが再びF-22を襲う。スレイマニが離れたところで垂直尾翼を掠めて炸裂した。フラフラと煙を上げながら飛行しているF-22はそれなりの損傷を負ったようだ。
だが、敵は残り2機。2機の敵はなおもアイガイオンに攻撃しようとしている。だが、二機の真後ろにウイッチである特性を使ってスレイマニとパステルナークが張り付き、ロックオンしている。
「「......」」
攻撃しようとしていた二機は機体姿勢をすっと水平に戻し、そのままゆったりと3機編隊を組み直して帰って行った。
「これは、あいつらなりの宣戦布告だったのか?」
パステルナークが呟く。アイガイオンはキュゲス・コットスを全機喪失、そのうえ2人のパイロットと2人のウィッチを喪った。たった5機しかもう彼女には残ってないのだ。
「嘆いても仕方ないだろう。一度帰還するぞ。これからのことを考える」
「「「[了解]」」」
スレイマニの号令で全機はアイガイオンへと帰還した。
誤字や話上おかしなところがあれば教えていただきたいです。そして、こんな展開がいいというのもあれば言っていただけるとありがたいです!