バルト海 空母「オリョール」
CICにいるスカイアイは1人つぶやいた。
「見つかったか......」
甲板ではアラート待機中のチョッパーとナガセが迷っていた。周辺にはオラーシャ海軍艦艇とオラーシャ空軍機とウィッチ、そしてスオムス空軍機とウィッチ、カールスラント空軍機とウィッチが取り囲んでいる。現在20ノットでバルト海を南に進んでいるが、対空武装しか持たないオリョール級には分が悪い。発艦させるにも周辺を飛び回る航空機とウィッチが邪魔だ。
『ここはオラーシャ公国の領海である! 貴艦の航行目的を述べられよ!』
一隻の戦艦が悠然と隣に並ぶ。砲塔はこちらを向き、声は戦意に満ち溢れている。
「各員に通達、そのまま待機だ。撃たれない限りでないように」
スカイアイはため息を吐き、毅然とした声音で対応する。緊張している割には冷静に発声できた。
「こちらは第001統合戦闘航空団。貴艦らと刃を交えに来たわけではない。我々は味方だ」
『なんだと?』
「現在訳あって寄港できる港を探している。よろしければ寄港させていただけないだろうか」
『相談してみよう』
艦内ではその結果蜂の巣をつついたような大騒ぎに。貯蓄されている物資を消費しなくてはならない。
「できる限り怪しまれないように食料や飲料はなくすんだ! 奪われる!」
「燃料は別のところに隠しておけ!見つかってもばれないようなところだぞ! なんなら機体と艦、増槽にぶち込め!」
「出来る限り空にしろ!」
「スカイアイ! この干し肉カビてる!」
「それは捨てろ!」
「メビウスさん! これで何か作れますか?」
「おそらく肉じゃがくらいなら......。ナガセさん、アンタレスさん、手伝ってください!」
「了解!」
「えっ、俺料理できない」
「サイファーができるらしいっすよ!」
「......」
「頑張れ、相棒」
ドタバタと大騒ぎしているうちにサンクトペテルブルク基地に到着した。最初はカールスラントのケーニヒスベルク(現カリーニングラード)基地に寄港する予定だったようだが、現在は他国の艦隊が集まっているため寄港は不可能とのことだった。
ゆっくりと接岸し、タラップがかけられた。とつぜんあらわれた巨大な空母のような見慣れない艦船を見た民衆は驚きつつも快く迎えてくれた。補給物資を積み込み、歓迎会を開きたいという市長の発言で飛行甲板を一部開放し、見せられない内部は防火シャッターなどを閉じて完全に塞いでから甲板へと市民らを案内する。搭載している航空機とストライカーを甲板に展示し、彼らに見回ってもらいながらゆっくりと日は落ちていった。
ことが起こったのは宴もたけなわになってきた頃。
哨戒に出ていたNEMOが突然何者かによって撃墜されてしまった。NEMOは撃墜されるギリギリで機体との接続を解除し、CICに飛び込んだ。
「一体どうした?」
【何者かに撃墜されました。ステルス機なのか、レーダーにも映らず......】
「なんだと!? すぐにオラーシャ軍に通達!現在飛び立てるウィッチを出撃させるぞ!」
艦内にサイレンが響き渡った。急速に碇が引き上げられ、エンジンが低いうなりを立てて動き出す。艦内放送で避難指示がなされ、すれ違うように艦内の廊下を既に飛翔し始めていたアンタレスと13、ビショップが姿勢を低くして耳を塞ぎ、鼓膜が破れないように口を大きく開けた民衆の頭すれすれを飛んでいく。そのままエレベーターから飛び上がり、一気に高度を上げる。各国空軍の戦闘機もNEMOが撃墜された空域へと向かっていた。
ビショップが呟く。
「NEMOをやるほどの相手か......」
「ビショップ知ってるのか?あれは未来のAIなんだろ?」
「アンタレスは知らないのか? プログラムコード:NEMOはニューコムが元々開発してて、アメリカでも開発されていたんだ。それが13たちのいた世界では2040年頃に1人の技術者によって独立した思考を持つAIのNEMOが完成された。その時にNEMOは最強と言われたメビウスとガルム、そしてユージア革命軍のAI、Z.O.Eの空戦データから学んだほぼ最強とも言えるAIだな」
「へええ、そんなのが撃墜されるなんて、相当の腕前の相手なんだな」
13も無言で感心する。そして、スカイアイからの伝言を伝えた。
「まもなく当該空域だ。気をつけろ」
「「了解」」
その直後。赤い光線が雲の中から降り注いだ。
「「「回避!!」」」
蜘蛛の子を散らすように全機が散開。そこにできた空間に3機の不明機が飛び込んできた。真っ黒な外装で、ネウロイのようだ。だが何かが違う。ただのネウロイではない。
当たり前だが、海霧が発生し、暗い夜の海は視界も安定しない。装甲の黒い不明機はとても見にくかった。アンタレスがぼやく。
「ちっ、見にくいぜ。こいつはネウロイなのか? いやに人間臭い動きをしやがる」
「スカイアイ、こちら13。敵機を発見した。当該機種はSu-47、T-50、F-22とみられる。以前話に出たアルタイル隊か?」
『おそらくそうだ。だが彼らはまだブリタニアのはず。こんなところにいるはずはない。ネウロイの可能性が高いだろう』
「了解。攻撃を開始する」
3機は市街地へと向かう。悠長に追ってるわけにはいかなくなった。後ろに控えていた戦闘機隊が攻撃しているが、次々と撃墜されていた。
13がT-50に食らいついた。
「よし! いいぞ!」
「ファイア!」
機銃掃射。しかし見越していたかのように回避される。そして先頭のSu-47が突如反転、13に狙いを定めた。
「クルビット!? 13! シールドを!」
「くっ」
25ミリの重い衝撃が13を襲う。
「弾丸だと? レーザーじゃない!」
「おそらく旧型と呼ばれるネウロイのプロトタイプだ! 1度写真で見たことがある!」
漆黒の装甲に混ざった銀色の装甲がその証拠だろう。もしかしたらレーザーも出てくるのかもしれない。
「ウェポンベイが開いた! 来るぞ!」
対空砲が飛び交う民間人のいなくなった街にレーザーが着弾。自分たちではなく街を狙ったのだ。
「お前たちは、何が目的なんだ!」
『クク、知りたいか?』
アンタレスの叫びに謎の声が答えた。
「話した!? お前は一体何者だ!?」
『ククク、さあな。だが、これだけは教えてやろう。俺たちの目的はアイガイオンとエイセスの崩壊。そして俺たちが覇権を握ることだ。そのために邪魔なお前たちには消えてもらう』
「そう簡単にはそんなことさせねえ!」
『威勢だけはいいな。そういうことはこの攻撃を防いでから言うんだな』
レーザーと弾丸が同時に襲来した。シールドでは耐えれなさそうだ。しかしよければ街がなくなってしまう。
その時。
「アンタレス!上へ飛べ!」
とっさに回避した。そこに入れ替わるように現れたのはビショップ。巨大なシールドで全てを防いだが、次の瞬間。シールドが砕け散り、爆発。
「ビショップ!!」
白煙の中から現れたのはボロボロになったストライカーを履き、満身創痍になったビショップ。そのまま崩れ落ちるようにストライカーの破片を撒き散らしながら市街地に向けて落ちていく。
「アンタレス! 君は奴らを追ってくれ!」
「了解!」
13が意識を失ったビショップを抱えて低空を空母に向けて飛ぶ。
一方アンタレスは必死で3機を追っていた。ゆらゆらと光る6個の火の玉がアンタレスを挑発する。だが、その光はどんどんと遠ざかっていく。
「くそっ、頑張ってくれベルクート! あいつらに追いつかないと......!」
フラフラになりながらも飛ぶアンタレスの下を3機の戦闘機が追い越して行った。PJ、ナガセ、チョッパーだ。
『ヘイ、赤サソリ! もうフラフラじゃねえか。あとは俺たちに任せて空母に戻りな! 俺たちは追撃なら得意だ。それにもうガルムとブレイズが出てるから安心して休むんだ!』
「チョッパー......。でも!」
『つべこべ言ってんじゃねえ! そんな体で飛ばれた方が邪魔だ!』
チョッパーの激昂は最もだった。
「......了解、アンタレスRTB」
5つの光が遠ざかっていく。彼らを見送りながら悔しさを痛感し、唇が切れ、掌に爪が食い込むほど握りしめながら着艦した。
「また、負けた......」