坂本と宮藤、リーネに案内されて来た格納庫には空のストライカーユニットがたくさんあったが、隅に置かれたストライカーユニットに五つのストライカーがある。坂本と宮藤の零式艦上戦闘脚二二型甲、リーネのスピットファイアMk.IX、アンタレスのSu-47ベルクートとスレイマニのGAF-01ヴィルコラクだ。
「姫ーっ! ああっ、こんな姿になっちまって......!」
「これが、ストライカーか」
自分の機体を姫と呼ぶほど愛していたアンタレスは変わり果てた機体を見ておいおい泣いていたが、スレイマニは冷静に観察していた。
アンタレスのSu-47はコックピットが塞がれ、ノーズコーンのところに人の足が入るくらいの穴があいている。胴体を二つに割ったような感じだが、テイルコーンはちゃんと右が長く伸びていた。真っ黒な塗装の主翼と垂直尾翼にはMとSを組み合わせたマーティネズ・セキュリティ社のエンブレムと赤蠍の由来にもなったアンタレス隊を示す蠍座のエンブレムが描かれている。機首には白文字で01と書かれている。
スレイマニのヴィルコラクはコックピットの部分に穴があいていて、紺色の塗装に牙の噛み合わさった絵が描かれていて、主翼と尾翼に金の斧が合わさったGF計画のエンブレムとヴィルコラク隊を表す人狼のエンブレムが描かれている。やはり機体を縦に二つに割ったような形状だ。
「履く、と言うからにはこの穴に足を突っ込むんだろうが、どうなっているんだ?」
「安心しろ。足は魔法で別次元に移される」
よくわからないがそういうことらしい。気にしたら負けだと思うことにしたスレイマニは、宮藤とリーネがストライカーに足を突っ込んだのを確認してから、実際にストライカーを装着してみる。
ヴンッという音と共に魔法陣? が現れ、目にはHUDのような表示が出る。頭には狼の耳と腰には狼の尾。ミサイルと機銃の残弾まで表示されている。見れば機銃弾とAIM-9MとAMRAAMの全てがフル装填されている。
アンタレスは三つ編みのお下げが黒髪から赤髪に変化し、腰に蠍の尾が現れた。アンタレスの魔改造を施されたSu-47はもののついでにNATO規格に改造されていたため、同じように機銃弾とAIM-9MとAMRAAMがフル装填されていた。
「なんて魔法力だ。宮藤の数倍はあるんじゃないか?」
「元がでかいからじゃないか? 燃料もフルで入ってるのか。いや、これが魔法力ってやつかな?」
以外と順応の早いアンタレス。スレイマニもアンタレスに遅れること数秒だったが、すぐに慣れた。
「アンタレス1より管制塔(タワー)。離陸準備完了。いつでもどうぞ」
「ヴィルコラク1より管制塔。こちらも同じく」
『了解アンタレス1。離陸を許可する。ヴィルコラク1はその後に続け』
「いや、編隊離陸をさせてくれ」
『了解。そちらに任せる』
レシプロ用の滑走路なのでアンタレスは最後に離陸したネバダの廃空港の滑走路を思い出した。あそことは大違いだ。ミッドウェイくらいだろうか。
「アフターバーナーを使うぞスレイマニ」
「ツー(了解)」
キィィィィンという音から急にゴオオッ、と音が変わる。急加速した二人は滑走路の三分の二を使って離陸した。
「すごい音だね、リーネちゃん」
「そうだね、芳佳ちゃん」
「エンジン点火から即座に加速、そして離陸か。凄まじいな。宮藤、リーネ。私たちも行くぞ!」
「「了解!」」
離陸して海上に出て高度二千フィートで先行していた他のメンバーと集合する。見よう見まねで滞空してみて、何となく扱い方を理解した。これから行うのは動作確認だ。ミーナが指示を出す。
「あなたたちの要望通りこれから動作確認テストを行います。まずは水平飛行で加減速を行って、シャーリーとルッキー
ニのところまで行ったら帰ってきてください」
「「了解」」
今いる時代から見れば第五世代戦闘機である二人の機体はとんでもなくオーバーテクノロジーである。いま開発されているジェット戦闘機はカールスラントのMe-262とよくて扶桑の秋水くらいなのではないだろうか。F-86すら出来ていない、音速の壁も超えていない時代なのだ。だから二人は加速したとはいえマッハ1.3までの加速にする。ぐんっと加速してシャーリーとルッキーニを中心に大回りして今度は失速スレスレの速度で飛行し、元の場所に帰る。
「とっても速いね、シャーリー!」
「速い......。あれが超音速か!」
少しアンタレスがふらついているが、特に問題はないらしい。仕様なのだそうだ。スレイマニは終始安定していた。
「......次は上昇と下降です。上空一万フィートのところにサーニャさんとエイラさんがいます。また、百フィートのところにはペリーヌさんがいます。三人の周りを回って帰ってきてください」
「「了解」」
二人は散開し、アンタレスが右上方にいるエイラへ向かってバンク角四十度で急上昇。逆にスレイマニは左上方のサーニャに向かってアンタレスと同じくバンク角四十度で急上昇し、二人を中心に一回転半して逆方向へ。
「う、うわ、こっちくんナー!」
「きゃっ」
ヘッドオン勝負をするかのようにすれ違い、再び二人の周りを上下に一回転、下方のペリーヌへ向けて同時に急降下する。
「え? ちょ、ちょっと! きゃあっ!」
轟音と超音速から発生する衝撃波を三人に与え、元の場所へ。
「質問いいかい?」
「どうぞ」
「さっき大陸方面の雲間に見えたんだけど、あの黒い積乱雲みたいなの何かな?」
「あれがネウロイの巣です。私たちはあれをなくすことを目標にしています」
「ふうん。あれが、ね」
「間違っても近づこうとなんかしないで下さいね」
「了解」
「では......」
「ネウロイ?」「ミーナ中佐、九時の方角に何かいるぞ」
スレイマニとサーニャがネウロイの接近を察知した。
「数と規模は?」
「大型が一、小型が四です」
アンタレスとスレイマニはアンタレスの初陣だったミッドウェイでの日米合同軍事演習でヴァラヒアの襲撃にあった時に交戦したB-52とF-4の編隊を思い出した。ちょうどあの時とシチュエーションが同じだ。
「行きましょう。アンタレスさん、スレイマニさんは危険ですので基地へ戻っていてください」
「「何故? 戦力が多い方がいいじゃないか」」
「ですが危険です! 戻ってください」
「嫌だ。俺たちは戦闘機乗りだ。危険くらいがなんだ」
「俺は強い奴を倒したい。なんと言われようと行く」
「それに俺たちはウィッチとしての初陣なんだ。後輩に初陣を飾らせてくれてもいいんじゃないか?」
「ですが」
「ハッハッハッハ。いいじゃないか、ミーナ。二人が行きたいと言ってるんだ。行かせてやろうじゃないか」
「美緒!」
二人の出撃をミーナは渋るが坂本が呵呵大笑して遮った。
「さすが坂本少佐!」
「危険だと分かっているんだ。それでも行きたいと言うなら行かせてやろうじゃないか。これも二人の実力を見るためだと考えたらいいじゃないか」
「............。分かったわ。二人とも出撃してください」
「「了解!」」
こちらに向かって来ているネウロイの群れは爆撃機を護衛するかのような編隊を組んでいる。
「あれだな」
特殊兵装のODMMのモデルがわからなかったので、急遽AMRAAMに変更しました。許してください。