赤蠍と人狼と空飛ぶ少女   作:雪見雪乃

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客人と巨大ネウロイとプレゼントと救援

「アンタレス、スレイマニ。客人だ。司令室に来てくれ」

 

二人が坂本に呼ばれたのは朝食を食べ終わり、ハンガーへ向かおうとしていた頃。

 

「「客人?」」

 

司令室にいたのはミーナと一人の女性。

 

「来たわね。紹介するわ。こちらは---」

「私はカールスラント空軍ウィッチ隊総監のアドルフィーネ・ガランドだ。君たちが別の世界からやって来たというウィッチだな?」

「そうだ。随分と俺たちの情報を知っているようだな。誰から聞いた? ミーナ中佐か?」

 

ガランドと名乗る女性がミーナに視線を移し、スレイマニがそれに合わせてギロリとミーナを睨みつける。ミーナがビクリと蛇に睨まれた蛙のように怯む。

 

「彼女を責めないでやってくれ。私個人の情報網を使わせて貰った。あとは、私が自分で見ていた」

「「............」」

 

殺気の向けられる対象がガランドに移る。ミーナはフッと力が抜けたように崩れ落ちる。危ないところでアンタレスが支えていなければそのまま腰を抜かしてしまっていただろう。それほどに濃密な殺気だ。航空自衛隊から傭兵になったアンタレスが戦場に身を置いていたのは実質五年も無い。訓練生時代を込めても十年かそこらだろう。だが、スレイマニは親に売られてからずっと少年兵、戦闘機パイロットとして戦って来た。アンタレスとは違い、二十年は戦場にいる。そこから生み出される殺気に当てられて失神してしまうのは何らおかしくない話だ。アンタレスも冷や汗をダラダラとかいていた。

 

だが、ガランドはその濃密な殺気に当てられても平気そうな顔をしている。それどころか、対抗さえして見せた。何者なのだろうか、この女性は。

 

殺気を押さえ込んでスレイマニは問う。

 

「で? カールスラント空軍のお偉方が一兵卒の俺たちに何の用だ? 俺たちの技術をよこせとでも言うのか?」

「話が早くて助かるよ、ミロシュ・スレイマニ大尉。君たちが持っているジェットストライカーの技術を調べさせて欲しい。いや、これは頼み事ではないな。命令だ。君たちが持っている技術を我々に渡せ」

「ほう? 俺としては構わないが、報酬は?」

「だーーっ!! 待て待て待てっ! なんでそうなるんだよ! そこは断らねえとダメだ!」

 

やけに真剣な顔で交渉しようとするスレイマニをアンタレスは両手を大きく振って二人の注意をこちらに向ける。

 

「なぜなのかな? アンタレス、いや、赤尾弘中尉」

「なんで俺の名前を! まあそんばことはいいや。断る理由はあれが超オーバーテクノロジーだからだ。それに、あなたのところがMe-262を開発していて、そいつのエンジンがよく故障するから、いち早く戦線に投入したいんだろう?」

「そうだ。それがわかっているのなら何故提供しない?」

「今言ったように超オーバーテクノロジーというのもある。けど、例えばこの技術を渡したとしてネウロイをこの世界から殲滅できたとしよう。そしたら、何が残る?」

「平和な世界、と言いたいわけではなさそうだな」

「その通り。次に起こるのはこの世界のイニシアチブを握る為の人間対人間の戦争だ。リベリオン、扶桑、カールスラント、ブリタニア、オラーシャ、ガリア、ロマーニャあたりの大国や準大国の戦争が始まる。絶対に」

「何を根拠にそう言う?」

「俺の爺ちゃんは元零戦搭乗員で、扶桑とリベリオンとの戦争で死んだ。その時の戦争を太平洋戦争と言うんだが、それは丁度今と同じような時代にあったんだ。この戦争は世界のイニシアチブを握る為にアメリカ、ここで言うリベリオンが扶桑を挑発して起こさせた戦争だった。扶桑人殲滅の為に。あの時の戦争は人種戦争でもあったんだ」

「......それがどこの世界でも起こるとは限らない」

「いーや、断言してやる。この戦争は絶対に起こる。君が祖国を救うために言っているのは確かだと思う。けど、主導権を握りたいって言う権力欲を持っている奴はどこの国にも確実にいるんだよ」

「......そうか。どうやら君たちとは相容れないようだ。では、我々全員が敵に回したとしても、君たちは技術を渡さないのだな?」

「ああ。絶対にない」

 

アンタレスの真剣な目を見て、ガランドは決めたようだ。

 

「わかった。今の所はひこう。次に会うことを楽しみにしているよ」

「敵ではなく、味方であることを、ね」

 

 

ガランドが輸送機に乗って立ち去った後、「体調不良」で留守番になったミーナとアンタレス、スレイマニを除いたストライクウィッチーズはネウロイ出現の警報と共に飛び立った。

 

 

海上を飛び続け、数分もしないうちにネウロイが見つかった。まだ水平線上にいるはずなのにその姿をしっかり視認できる。巨大な複葉機の様な、そんな形をしている。サイズは戦艦大和や空母赤城くらい、いや、それ以上か。魔眼で見ていた坂本が叫んだ。

 

「なんなんだ、この大きさは! 何体か大型ネウロイを護衛に連れて来ている様だが、小型に見えるほどだ。いくらなんでも大きすぎる」

「ど、どういうことですか?」

「大きさが規格外すぎるんだ。大型が小型に見えるほどにな」

「倒してしまえば全て同じだ! 行くぞ!」

 

 

一方、アンタレスたちの元に、輸送船によって数個のコンテナが運ばれていた。コンテナにはマーティネズ・セキュリティー社とゴールデンアクス計画のエンブレム。中には生活必需品一式とF-15S/MTDとヴィルコラクがフル武装の状態で入っていた。コックピットに乗り込み、機器のチェックを行う。

 

「本当にやるなんてな」

『ああ、夢だと思っていたが、本当だったとは』

 

無線感度は良好。カナード・フラップ・エルロン・推力偏向ノズル他可動部の調子も万全。最高だ。

 

「完璧じゃないか」

『ああ。一つ教えてやる。無線周波数を彼女らに合わせてみろ』

「? .............っ!おい、一大事じゃねえか!」

 

聞こえて来たのは恐慌状態に陥り、パニックしている少女たちの声。

 

『ペリ.........ん! 逃げ............!』

『宮......! 早............!』

『トゥ..................!』

 

彼女らに襲いかかるネウロイがなんなのかは分からない。だが、大ピンチなのは分かる。

 

「行くぞスレイマニ!」

『先に出るぞ、アンタレス』

「管制塔、こちらアンタレス。緊急出撃だ。コールサインはアンタレス1とヴィルコラク1。無理だとか言われても出る!」

『りょ、了解。離陸を許可します』

 

アフターバーナーを使ってA/B全開で編隊離陸を行う。超音速で行けば数分で着くはず。

 

 

ストライクウィッチーズの少女たちは大型を越える、超大型のネウロイと戦闘を繰り広げていた。異常なまでのサイズと執拗な攻撃が彼女らを襲う。

 

「なんて攻撃だ。対空砲の攻撃みたいだ」

「複葉機みたいだね」

「こんな大きさのネウロイが隠れていたなんて」

 

赤い閃光が収束して今までより大きな攻撃が彼女らを襲った。その隙を突いてシャーリーとバルクホルン、ハルトマンが攻撃を仕掛けるが、装甲を削ることがなかなかできない。

 

「硬すぎる!」

「なんて硬いんだ!」

「攻撃が全然通らないよ!」

 

三人が諦めかけた時、声が聞こえた。

 

『こちらアンタレス。救援に来たぞ。少し離れていてくれ』

 

 

ドンパチしているところが戦闘空域なので、位置の特定はしやすかった。アンタレスからみれば、東京・ロンドン・ルーマニア・タホ湖で戦ったスピリダスやバラウールのビームは青いが、ネウロイのものは赤いので、とてもわかりやすい。そこで見えたウィッチたちと戦っているネウロイは、二人にとってとても見覚えのあるものだった。

 

「なあ、スレイマニ、俺の見間違いじゃないよな? あれって」

『いや、見間違いじゃない。あれは、スピリダスだ』

 

スレイマニは途切れ途切れに聞こえてくる無線でなんとなくスピリダスなのではないかと推測していた。だが、スピリダスは誘雷兵器やバラウールの四ヶ所がビーム兵器だったが、こいつは各所からビームが出せるらしい。

 

「サイズも速度も機動性もスピリダスと同じだが、武装がやたらと強化されてやがる」

『恐らくコアとかいうものはバラウールが搭載されていたところにある。そこを叩く』

「了解」

 

散開して上下の翼の間を高速でくぐり抜ける。

 

インメルマン・ターンを使い、アンタレスはネウロイを俯瞰する。やはり誘雷兵器のあったあたりは武装も重厚だ。その中で一番大きな部分はやはりバラウールが搭載されていた場所。そこが急に輝き出した。バラウールの射程に入ったのだろう。

 

「スレイマニ! 俺が引き付ける間にバラウールのあったところを狙うんだ! 発射しやがる!」

『了解。早くしろ』

「いや、今超魔改造ベルクートじゃねーし! S/MTDだしお前みたいになんか法則とか色々無視した変態機動できねーから!」

『なんでもいいから早くしろ』

「できるにはできるかもしんねえけど、これ俺のじゃなくてアイツのだからあんま壊したくないんだよなあ」

『早くしろ』

「わかった! わかったからロックオンすんな!」

 

ちょくちょくロックオンの警報が鳴っているのだ。全然集中できない。ようやくロックオンの警報の嵐が過ぎ去ったのでヤツの注意をスレイマニからこちらに向ける。

 

主翼の間をくぐり抜け、胴体と尾翼の戦闘機がギリギリ入れるくらいの隙間をくぐり、高度三十フィートで持ち直して垂直上昇しながらウィッチたちに連絡する。

 

「今からスレイマニがコイツのコアに攻撃を仕掛ける! 全員コイツの注意を引いてくれ! スレイマニがミスれば基地と周辺の街が一瞬で消えるぞ!」

『『『了解!』』』

『お前らその機体なんなんだ!? 乗せてくれ!』

『シャーリーさん! 後にしてください!』

『ペリーヌの言うとおりだリベリオン! これだからスピード狂は』

『うじゅじゅ〜。けど速いよねー』

「わかった! 乗せてやるから今はヤツに攻撃を仕掛けてくれ!」

 

輝きはどんどん大きくなる。スレイマニは何度も攻撃を仕掛けるが、ミサイル発射の直前でビームが飛んで来るせいでなかなかうまく発射ができない。

 

「当てにくいな」

 

その時、スレイマニの両脇からミサイルが飛来し、爆発。その後、若い女性の声が聞こえてきた。

 

『こちらISAF空軍第118戦術航空隊のメビウス1。救援に来ました』

『こちらエルジア空軍156戦術戦闘航空団アクィラ隊の黄色の13だ。同じく救援に来た』

 

ミサイルとともに飛んできたのは薄青のF-22と翼端を黄色く塗装したSu-37。

 

「こちらヴィルコラク遊撃隊のスレイマニだ。救援感謝する」

『ようやく見つかったか。こちらAWACSのスカイアイだ。君たちに用があって来たんだ。そのネウロイはスピリダス級航空要塞で合っているな?』

「ああ。あんたたちが《他の世界のエース》って奴らなのか?」

『恐らくその通りだ。我々も他の世界から来たんでね。実際、ISAFやエルジアなんて聞いたことないだろう?』

「ああ。初めて聞いたな。もしかして他にもいるのか?」

『その通り。"凍空の猟犬"ガルム隊、"不死鳥"スカーフェイス、"リボン付きの死神"メビウス1、"黄色中隊"の13、"北海の悪魔"ラーズグリーズ、"神鳥"ガルーダ、"南十字星"グリフィス、君たちと同じ世界から来た"アメリカの英雄"ウォーウルフ、未来から来た"電脳戦士"と"UPEOのアイドル"、といったところだ。私たちについてくると各々の紹介もできるが、まあ今はこいつを片付けるとしよう。二人とも、交戦を許可する』

『メビウス1、エンゲージ』

『黄色13、交戦』

 

F-22とSu-37はヴィルコラクにも引けを取らない鋭い機動でネウロイに詰め寄る。ネウロイもアンタレスやウィッチたちに攻撃を仕掛けながらもこちらの三機が強敵と判断したようで、他よりも強力に見えるビームを放ち、相手を止めようとするが、三機の機動に追いつくことができない。

 

『『『FOX2!』』』

 

同時に発射された六発のミサイルは装甲を砕く。それと同時に逆方向からバルクホルンとシャーリー・ルッキーニがアンタレスと共に前部装甲を砕いた。

 

『アンタレス! 俺の弾薬はもうない。お前がやれ』

「了解! FOX2!」

 

残っているミサイルを全弾発射する。通常のものより何回りも巨大なコアを砕いた。

 

スピリダスの形をした超巨大ネウロイは砕け散る。

 

「ふー。今回は守り切ったし、逃げられなかったぞ」

『お疲れさまです。アンタレスさん』

 

コックピットの中でゆったりと伸びをしているアンタレスの隣に並んだのはメビウスの乗るF-22と黄色13のSu-37。

 

「ラプターにテルミナートル? 米露の機体がなんでこんなところに。まさかあんたたちも?」

『その通りだアンタレス。彼女らはこの前の夢に出た《別の世界のエースたち》、だ』

『スレイマニさんの言うことは本当です。わたしたちはあなたたちに話を持ちかけに来ました』

 

そして彼女はついて来るように翼を振った。

 

アンタレスとスレイマニはウィッチたちを先に帰らせ、彼女らについていく。




ということで、エースコンバットシリーズ歴代エースたちの登場です。誰かを忘れている気がしますが、まあいいや。サア、行くか。
ということで、誰か忘れていたら教えていただきたいです。

AHのウォーウルフと3のnemoとレナを忘れていたので追加しましたが、大した違いはありません。また、スレイマニや黄色の13だけでなく、ロトやアレクト、シュトリゴン、ディジョンなども出したいと思っています。
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