赤蠍と人狼と空飛ぶ少女   作:雪見雪乃

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大学に入学しました!カレッジライフを謳歌したいのですが、骨折のせいで完全に出鼻をくじかれております。

と言いたいところですが、濃いメンバーが多いおかげでなんとかうまくいっています。



修理と超音速の世界

三人のジェットストライカーを履いたウィッチを連れてアンタレスとスレイマニが帰ってきた。

 

「俺の姫は!?」

「こ、こっちです」

 

アンタレスの剣幕に押された宮藤がアンタレスとブレイズを変わり果てたSu-47の元へと連れて行く。

 

「ひ、姫ーーーーっ!!」

 

左は無事なようだが、右は特徴的な主翼は全損している。それ以外の損傷は特に見られないが、もしかしたら内部もやられているかもしれない。

 

「アンタレスさん、そこにいられては何もできないじゃないですか。どいてください」

「う、うう、姫は、姫は治るのか?」

「ちゃんと直してみせます。ご安心ください」

 

ブレイズは儚げな見た目をしているが、この時ばかりはとても男前に見えた。ストライカーをバラバラになってしまった破片と一緒に床に並べ、両手をかざす。

 

「ご、ごめんよ、アンタレス。つい、乗ってみたくなったんだ。どんな罰でも受けるからさ」

 

シャーリーが謝りに来た。女性としては大柄な彼女は体を小さく丸めて頭を下げる。

 

「直るならいいさ。だから、超音速の世界は甘くはないってことを教えてやるよ」

 

アンタレスは珍しく真剣な表情で告げ、彼女にスレイマニから借りた耐Gスーツとヘルメットを投げ渡す。

 

「い、いいのか?」

「ああいいさ。俺の姫が治れば超音速の世界を俺の後ろで見せてやるよ。姫と俺に感謝しろよ?」

 

シャーリーの顔がパッと輝く。ここまでなら十分いい話だが、女が三人寄れば姦しいというように、ルッキーニやエイラが現れて話は大きくなった。

 

「シャーリーばっかりずるいー!」

「それは私たちだけで乗れるのカ?」

「超音速戦闘機に乗せてくれるって本当ですか!?」

「全員一人ずつ乗せてやるから! まずは姫だから!」

「アンタレスさんうるさいです」

「すんません」

 

大騒ぎになる都度ブレイズから叱られたが、こればかりは仕方が無いと思って我慢してもらうしかない。

 

今までの世界最高速度の記録を大きく塗り替え、攻撃手段が自身の魔法や機関銃、刀などの近接戦闘メインの戦闘方法がミサイルによって遠距離からの攻撃も可能になったのだから。それ以前に、目の前にあるのがありふれたレシプロストライカーやレシプロ戦闘機ではなく、今まで見たことのないジェットストライカーと巨大な、大型戦闘機とされるP-47の軽く二倍はあるジェット戦闘機なのだ。Me-262や、秋水のようなずんぐりむっくりした形ではなく、より速く、より高く、レシプロにも負けないさらなる機動性を追求したスマートな機体形状なのだから。しかもそれを整備できる人間が目の前にいるのだから気にならないはずがない。

 

「すごい。どんどん直って行く」

「ふう。まあ、こんなものだと思います。どうです?」

「完璧だ。あのバラバラになった主翼はどうやって治したんだ?」

「私は機械系統ならどんなものでも完璧に直す主義ですから」

「いや、主翼はどうやって?」

「企業秘密です」

「........................そうか」

「あ、そうだ。この機体にちょっとしたクセがあったので直しておきました。サービスでソフトも改良しておきましたよ」

「マジで!?」

「マジです。乗ってみればわかります」

「アンタレス、出撃する! イィィィヤッホオオオオ!!」

 

轟音を轟かせてアンタレスは離陸する。

 

「随分、パワフルな方なんですね。アンタレスさんって」

「あいつはベルクートを異常なまでに愛しているからな」

「傭兵としては珍しいタイプだな」

「そう言うなよ相棒。お前もイーグルに乗り続けてるじゃないか」

「ふん」

「随分な改造がされているじゃないか、あの機体。確かフォックスハウンドと同じエンジンだったはずだろう?」

 

スカーフェイスが手をかざして何か眩しいものを見るように歓声をあげながら縦横無尽に大空飛び回るアンタレスを見上げる。

 

「ええ。彼女はメビウスさんと同じレベルの機動ができるとくらいの耐G能力を持っているようですね。今はウィッチ状態なので、機体の性能を限界ギリギリまでしか引き出せなさそうですが」

「性能限界ギリギリ? どういうことだ。あの状態ならレシプロに近い機動性が得られるだろう。ましてやあのベルクートだ。メビウスくらいは余裕だと思うが?」

 

エイセスの中でも短文でしか話さないことで知られているサイファーが珍しく長文を話す。

 

「機体を金儲けの道具だと考える我々傭兵としては珍しいタイプのアンタレスだ。かつて片羽が言っただろう。エースは三つに分けられる、と」

「おいこら不死鳥。何勝手に俺の言葉使ってんだ」

「まあいいじゃないか。サイファーとスレイマニはマーセナリータイプだからわからないかもしれないが、アンタレスはナイトタイプだ。機体を愛して当然だろう」

「機体を愛しているからこそ、限界を超えてしまうほどの機動をしないんですよ。少しでも多くの時間を一緒に過ごしたいから」

「ま、要するに恋人なんだ。空戦バカで童貞の円卓の鬼神と金の亡者にはわからないかもしれないがな」

 

スカーフェイスの説明では理解できていなさそうなサイファーのためにブレイズとピクシーがさらにわかりやすく説明していく。だが、衝撃の一言がサイファーの口からこぼれた。

 

 

「悪いが嫁はいる」

 

 

さすがに全員が何も言えずに固まった。サイファーは一度もそんなことを言わない上に、エイセスの中で最も元の世界でうわついた噂のない堅物男だったのだ。死亡フラグを乱立しまくって鮮やかに回収した鴉の三番機と違って。(まあ割とモテていたのだが、サイファー自身が気がついていなかったようだ)こいつは死ぬまで伴侶を持たないと初対面のスレイマニでさえ思っていたのだから、その衝撃は大きい。

 

「おい相棒、なんで隠してた」

「聞かれなかったから」

「ですよねー。そういうと思ってましたよ」

「しかしよく隠し続けたものだ。写真すら見たことがない」

「出さないからな」

 

確かに、サイファーが妻子の写真を見てニヤニヤしているのは想像できない。

 

「おい相棒、その話---」

 

もっと詳しく聞かせろ。ピクシーがそう聞こうとしたのに少し遅れて宮藤がやって来たので、お流れになった。

 

「アンタレスさんが帰って来ましたよ。......みなさんげんなりしてますがどうかしましたか?」

「なんでもない」

 

格納庫ではアンタレスがゆっくりと愛機から足を抜いたところだった。

 

「随分楽しそうでしたね。どうでしたか?」

「完璧の完璧。いや、それ以上だぜ、ブレイズの姐御」

「む、できればそこは兄貴と呼んで欲しいところですね。私も元の世界では男ですから」

「あ、やっぱり?」

 

ひとしきり笑った後にシャーリーを呼ぶ。待ちに待った超音速戦闘機動飛行体験(懲罰)会だ。

 

「本当に乗せてくれるんだな?」

「ああ、後席に座ってくれ。キャノピー閉めたら飛ぶからな」

 

 

離陸してしばらくの間は巡航速度でゆっくりと飛ぶ。ルッキーニやハルトマンがついてきているようだが、この時点で追いつけていない。昔P-47とF-22がどこかの航空祭で一緒に飛んだことがあるらしいが、P-47は最高速度なのに対して、F-22は巡航速度どころか失速寸前の速度で飛んでいたという。

 

「よし、ここらでいいかな。先に行っとくけど、吐かないでくれよ。こいつは大切なものだからな」

「誰が吐くか!」

「よし、その意気だ! こちらアンタレス。超音速と戦闘機動を行う」

 

急激な加速Gが体を締め付ける。シャーリーにブラを外させてボディスーツを着せておいたのは正解だったかもしれない。これは自分の体験ではなく、女性であった二番機の話によるものだが、女性戦闘機パイロットというのは、ブラではなくレオタードのような身体に密着するようなスーツを飛行服の下に着なければならないのだそうだ。アンタレスはブラをつけるのがなんだか気恥ずかしく、いつもボディスーツを着て飛んでいたので気にすることはなかったが、高Gのかかる戦闘機動では紐のようなものを身につけていればズレてしまって皮膚を傷つけてしまい、その上Gで下着がズレてもファスナーを開けて直している暇なんてないのだとか。

 

速度はマッハ1.5。F-15の増槽を積んで飛べる最高速度だ。ソニックブームが後ろのハルトマンたちを襲う。

 

「こいつは本当はマッハ2.5までは出せるんだが、今はこのくらいが限界だ」

「うっ、くっ。これが、超音速......!」

 

Gに喘ぎながらもシャーリーは感動の言葉を漏らす。

 

「次は戦闘機動だ! それっ、インメルマンターン!」

「うぐうっ!?」

 

レシプロ戦闘機とはまた違ったGがシャーリーのまだ慣れていない身体を襲う。耐Gスーツと一緒に体が射出座席に押し付けられる。視界が赤く染まる。

 

「まだまだあ!」

 

アンタレスはあたかも周囲に敵機がいるかのように動き回る。コブラもどきや、ナイフエッジなどの鋭い機動でシャーリーを感動させると同時に苦しめた。

 

そんなことを数分も続けると、いつの間にかシャーリーは目を回して伸びていた。ちょっとやり過ぎたかな、と考えていると、スカーフェイスが飛んできた。

 

「長居して迷惑をかけても行けないので、私たちはもう戻る。君たちの意見がまとまった時、再びエイセスに来てくれ」

「了解。期限はあるのか?」

「では、四日後としよう」

 

サイファーとピクシーがスカーフェイスを連れてねぐらへ戻っていく。行き違いにF-15Eが飛んでくる。どうやらタリズマンが乗っているらしく、ブレイズを迎えに来たようだ。

 

「じゃ、俺も戻るか」

「あ、あのっ、501統合戦闘航空団の、基地は、ど、どこ、ですか?」

「あ、ついてきなよ。俺も戻るからさ」

 

相変わらず何かに怯えたようなタリズマンと、伸びてしまったシャーリー、鼻歌を歌うアンタレスを乗せた二機のF-15はアンタレスたちのねぐらへと向かう。

 

 

「それでは、アンタレスさん、スレイマニさん。また四日後に」

 

ブレイズはF-15Eの後席からタリズマンと一緒にストライクウィッチーズのメンバーに手を振って飛び去った。

 




P-47って戦闘攻撃機でしたっけ。

「直った」が正解ですが、アンタレスはベルクートへの愛情が大き過ぎて女性(今は男性かな? それなら王子か)に見えているらしく、「治った」を使っています。必要ない情報だったかな......
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