アンタレスのエイセス入隊と新しい異邦人
ボンっ! と機体左後方で爆発音。
「落ちる落ちる落ちる! ぎゃあ!?」
「左エンジンが爆発!?」
「海へ行け!」
「了解! 海に不時着する!」
煙を吹き上げながら海に向かう。大きくバウンドするようにしてなんとか不時着に成功する。
「あっぶねー。成功して良かったぜ。姫も無事みたいだな、良かった良かった」
キャノピーを押し上げて右インテークに立ち上がり、後席の代わりに取り付けていたブレイズ製の簡易ストライカーユニットからストライカーを外して履き替える。
「よし。気を取り直して、と」
二人に抱えられて無理やり大空に飛び上がったアンタレスはウェポンベイを開く。
「ありがとう、イーグル。サンフランシスコでようやく休むことができたのに、ごめんな。無理やり連れ出して」
今までの感謝と罪悪感を込めて、ミサイルを全弾放出する。通常より小さなミサイルはさっきまで乗っていたF-15S/MTDを完全に破壊する。飛び散った大小様々な電子部品の塊はビショップとタリズマンが全て粉々に破壊した。この世界のバランスブレイカーがどこにも渡らないように。
「......さあ、行こう」
「「了解」」
完全に海の中に消えた戦闘機だったものを見送る。その場で数回旋回してから西へと再び飛び去った。
「おかえりなさい。タリズマン、ビショップ。そしてエイセスへようこそ、アンタレス」
三人を出迎えたのはエプロン姿のメビウス。どうやら料理をしていたようだ。手にはお玉を持っている。可愛いが、なぜ持って来たのだろう。
「ああ。今帰還した」
「た、ただいま帰りました」
「これからよろしくな」
「いま、13とご飯作ってるんです。食べますか? それともお風呂にします? この島には天然温泉が湧いているんです」
ここまでくれば期待するのは一つ。『それとも私?』だ。だが、彼女が言うはずもない。アンタレスのゲスい方向に膨らんだ期待は儚く消えた。
ストライカーユニットにストライカーを戻し、メビウスに食堂へ案内される。 厨房からいい匂いがする。肉じゃがだろうか。ノースポイントと言うのはもしかして自分たちのいた世界でいう日本、ここでいう扶桑なのだろうか。
「ようやく来たのか赤蠍。待ちくたびれたぜ」
「あんたはピクシーだったか?」
「そうさ。ラリー・フォルクだ。適当にピクシーとでも呼んでくれ。こいつは相棒のサイファー」
サイファーは少し眠そうに無言で頷く。
「悪いな。こいつは背中についてるヒモを引っ張らなきゃ基本喋らないんだ。もしくは人がいなくなると喋る」
「............」
「ははっ、なんだそれ。おもしれー」
「鴉の三番機にも似たようなこと言われてたよな、相棒」
「鴉の三番機?」
「ああ、知らないのも無理はないか。俺たちは元々ウスティオ第六航空師団ってとこに所属しててな。そこにクロウ隊ってのがあって三番機のPJが相棒に似たようなことを言ったのさ」
「PJ? パトリック・ジェームズ・ピケットのことか? ウチの三番機もPJって言うんだ」
ガルム隊の知っているPJはアヴァロンダム上空で死亡フラグを乱立した直後に当時テロリスト集団国境なき世界の一員であったピクシーの乗るモルガンによって、撃墜され、戦死した。アンタレスの知るPJも同様にサンフランシスコで死亡フラグを乱立し、アンタレス4がイジェクトついでに撃破し、ゴールデンゲートブリッジに引っかかって座礁したはずのイージス艦の攻撃を受け、戦死した。ちなみにアンタレス4はドッグベアが回収したようだ。それからは敵の戦車を襲撃して鹵獲、攻撃を加えるという、別に航空兵にならなくてもよかったのではないかという闘いぶりを発揮していた。かつて腕はやたらといいくせにイジェクトのし過ぎで被弾王や脱出王というありがたみも何もない称号を手に入れ、そこまで資金が潤沢でもなかったロシア空軍から不名誉除隊を言い渡された男だった。
「「「…………同じだな」」」
無言で三人は肩を叩きあう。言いようのない無常感があたりを覆った。
「あれ、どうしたんですか? ご飯できましたよ」
「ん、いや、気にしないでくれ。俺たちくらいにしかわからないことだ」
「そうですか。傭兵同士仲がいいんですね」
「ああ、まあな。あれ? サイファーはどこ行った?」
メビウスが寸動を抱え得てやってきたのだが、その途端にサイファーが消えた。さっきまで一緒にいたはずなのにいなくなっている。いつの間にいなくなったのだろうか。
「ああ、どうも私、サイファーさんに避けられてるみたいなんです。どうしてなんでしょうか。スカイアイならその答えを知ってるらしいんですけど、はぐらかされてしまって答えてくれないんですよね……。ピクシーさん何か知ってますか?」
「いや、俺は知らないな。けど、一回初めて見るやたら機動性の高い青い戦闘機とB7Rで戦ったって言ってたな」
「初めて見るやたら機動性の高い青い戦闘機? 青い戦闘機ってサイファーさん以外にいる……、まさか、私ですか?」
メビウスの反応はもしかしたら間違っていないのかもしれない。サイファーが現役で円卓の鬼神と呼ばれていたのは1995年のこと。オーシアやアメリカでラプターが試験型が初飛行したのは1996年。まだ一年は先の話なのだ。そんな時にイーグルよりも機動性の高い戦闘機といえばフランカーくらいしかないが、見たことのない、となればラプターくらいだろう。
「けど、私はサイファーさんと戦ったことなんて、……ありますね。一度模擬空戦でコテンパンにされて記憶はありますが、あれはノースポイントでだったように思うのですが……。しかもまだあの時は私はファントムに乗ってましたし……」
サイファーは行方不明ということになっていたらしいが、ノースポイントでメビウスたちの教官をしていたようだ。どうやらこのころにはすでに避けられていたらしい。さすがにちょっとかわいそうだが、ここまで徹底的だといっそ尊敬できる。
『飯』
急にサイファーの声が響いた。どうやら放送をかけに行ったらしい。それが合図となって腹が減ってしょうがないといった顔のエースたちが入ってきた。
「今日のごはんは肉じゃがです!」
『おおー』
この中では元から女性であるメビウスの作る料理はおいしいと評判らしい。実際本当においしかった。
その数時間後、海上。
虚空から急に戦闘機が飛び出した。日の丸をつけた双発の単座艦上戦闘機。エンジンが縦になっている。第二次世界大戦中に日本海軍が製造したという震電の製造者の子孫が作ったのだという震電Ⅱだ。
「ここは、いったい……」
中に乗っているのは女性のようだ。
「はやく降りるところを見つけないと」
ここは夜の海上。燃料も余分にあるわけではないので早くしなければならない。その時、何か光るものを発見した。船舶だ。
「あれは、空母?」
一度真上をローパスして艦影を確認。アングルドデッキを持っているところから見て、やはり空母だ。
「こちら日本国航空自衛隊のエッジ。聞こえますか?」
『コチラ―――――――。着艦シマスカ?』
「機械なのかしら?」
機械的な音声は着艦準備をするように促す。そのように従えば、自動的に着艦位置まで誘導管制してくれた。
着艦してみれば明かりはついているのに誰もいない。完全に無人だ。
『ヨウコソ、エッジサン。本艦ハ現在第001統合戦闘航空団エイセスに向ケテ航行中デス。ソレマデハゴユックリトオクツロギクダサイ』
「り、了解」
艦内には巨大なコンテナが一つと、F-16Cが一機止まっていた。そこには飛行服を着た少年のような青年が立っていた。
「あ、あなたがさっき来たって人っすか? 俺はウスティオ空軍第六航空師団クロウ隊三番機のパトリック・ジェームズ・ピケット。PJって呼んでほしいっす」
「私は日本国航空自衛隊の長瀬ケイ。エッジと呼んで」
「了解。で、日本国航空自衛隊?」
「ウスティオ空軍?」
「「…………」」
PJからすれば日本などという国は知らない。もしかしたら自分が知らないだけで世界地図には載っているのかもしれない。長瀬もウスティオという国は知らなかった。一通りの説明をして、話は次に進んだ。
「このコンテナ、なんなんすかね?」
「これ、マーティネズ・セキュリティー社のエンブレムよ。どうしてこんなところに」
「エイセスってなんなんすかね」
「おそらくACES。どういうことかはわからないけど、そうなんじゃないかしら」
二人の疑問をよそに名前のない謎の空母は二人を乗せて夜の大海原をエイセスに向けて進む。
エッジとPJ登場です! オメガ11などもどうにかして出したいですねえ。メビウス8につづいてアンタレス4とかどうでしょうか? ほかにも出せるキャラがいれば教えてほしいです。
サイファーやメビウスのこの世界に来た経緯って書いたほうがいいんですかね?