あやかしトライアングル~雷の刃~   作:鳴柱

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※注意※

・善逸の性格が変わっているかもしれません。作者の妄想入った小説だから。
・善逸は女の子大好き←ここ重要。
・善逸は超強いです。シリアス風味にもギャグ風味にもなれる。



少年と少女と妖と。あと剣士

 

 

 

第1話「祭里とすずと妖、あと剣士」

 

 

 

(あやかし)とは、見える者には視え、視えない者は見えなくなっている。そういう風にこの世は出来ている」

 

 じゃらじゃら、と。数珠を鳴らすは巨漢な寺の坊主。

 妖より人を守ることを生業とする職に就きながら、仏門としての仕事も持っていた。

 

「それ故に、視える者には不気味がられてしまう。しかしだからといってお前にはしっかりと《心の眼》でその人たちを見てほしい。《音》には敏感なお前だ。大丈夫だな、善逸(ぜんいつ)

 

 我妻(あがつま)善逸(ぜんいつ)と呼ばれたその少年は、素直にコクリと頷いた。

 善逸に喋っていた坊主の巨漢、()()(じま)行冥(ぎょうめい)もそれに嬉しそうに微笑んだ。

 

「どうか、みんなを護る、善き守り人となれ。善逸」

 

 それが、育ての親から送られた勇気の言葉だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ぬわーっ! 我輩はシロガネであるぞっ!!!』

「知るか! 悪さをする(あやかし)を祓うのがウチの家業でな」

 

 桜並木が舞い散る晴天の下で、忍者の装束に身に纏った少年と、マスコットキャラよろしく太った可愛らしい猫を鷲掴みながら、そう叫ぶのは『祓忍(はらいにん)』の風巻祭里(まつり)、黒髪ツンツン頭でやや直情的なところあり。

 そんな様子を眺めているのは、祭里とは違い、至って普通の服を着込んだ金髪少年であった。

 

「ゼーン!! 捕まえたぞー!」

「斬ったら不味いだろー。俺は今回見学だー」

 

 金髪の少年は我妻善逸だった。幼馴染みにして共に妖にまつわる問題を解決してきた仲でもある。そんな祭里と共にここまで追って来ていた。

 

『餓鬼どもめ! どうやら死にたいらしいな!!』

「ぎゃぁ!? いつの間にか俺も殺され認定されてる!?」

 

 そう叫ぶ白餅みたいに太った猫は、そこらにいる猫とは思えぬ妖気を放ち、祭里と襲うとすると、

 

「何してるの祭里! それに善逸(ぜんいつ)も! こんな可愛いコをいじめるなんてっ!」

「……すず」

「すずちゃん俺は無関係だからね! 俺はそんな酷いことしないよぅ~!」

 

 くねくねと名前を呼ばれて嬉しそうにしている善逸を他所に、幼馴染みの少女・すずに祭里は警告する。

 

「あのな、猫っぽいけどそれ、妖だぜ。()()()()()()()()()やつだ」

「そのくらい雰囲気でわかるよ!」

「物カゲからすずを変な目で見てた! 妖気は弱ェが怪しいぞ、そいつ」

「妖って大体怪しいじゃん。こんなに怯えてるしもう大丈夫だよ」

 

 すずはブルブルとわざとらしく震えているシロガネと呼ぶ妖猫をぷにぷにと擦りながら愛でていた。

 これにはこの少女を大切に思っている祭里はご立腹。それを第三者として眺めている善逸は殺意を祭里と猫に向ける。

 

(はぁ? なにを見せられてるの俺は。何回見せつけたいのマジ)

 

 女の子大好き善逸は、それは可愛い可愛い単髪が似合うすずちゃんにも好意を寄せているが、祭里もそうであった。

 これはドロドロ泥沼な昼ドラ展開を予想していた善逸であったが、己の色恋沙汰はまだ早いのであった。

 

「すずちゃん」

「お、そうだ! 善逸も言ってやれ!」

「僕も猫だ~しゅきなのよ~♡ 僕も猫ハミハミしたいぃぃ♡ そして一緒にすずちゃんも抱きつk……」

「おらぁ!!」

「つくばっっ!!!」

(はや)い!』

 

 猫の妖も驚く、疾風の如く蹴り技を食らった善逸は『はいはい、脇役は脇役らしく退場ってか』と吹き飛ばされ、話は戻る。

 

「いつも言ってんだろ! 妖とは関わるな! 〝視える〟からって本来人が干渉すべき存在(モノ)じゃねーんだ! お前は無害な奴しか知らねーから───…………すず、お前……」

「な、何?」

「こんなに足太かったか!? まさかもう妖から呪いを……!!?」

 

 祭里がすずの太ももを思いっきり掴んだままそんなことをのたまうと、ゴキッ! と見事な膝蹴りを食らわした。善逸からしたらとんでもないご褒美だったので凄く羨ましい。

 

「もーれつバカ! 最近マジ気にしてんのにっ!」

(バカか、こやつ。むっ……しかし、これは!)

「変わり身の術!!」

 

 驚くべき速さで避けた祭里であったが、しっかりと膝蹴りを食らってアザになっている跡があった。

 

「スゲーだろ……祓忍てのは怪異専門とはいえ、忍者の系譜だからな!」

「てかさ、ケリ当たってるよね……変わり身の意味は」

「え? 変わり身の木とか蹴ったらすずが痛ェじゃん」

「祭里、配慮するとこズレてるから……とにかく! このコは私が安全なとこに逃がすから」

「あ……おい! すず!」

「……昔はこうじゃなかったのにな。その格好これかれ祓いの仕事なんでしょ。がんばってね……祭里」

 

 猫を自転車のカゴに入れながら、すずが少し寂しそうにそう言うと、満開の桜が舞っている道路を走っていった。

 

仕事(おつとめ)がんばれよ、祭里。俺はすずちゃんを励ましてくる!」

「な、なにっ! お前こねぇのかよ!?」

「俺、刀持ってきてねーもーん!」

 

 あ、こら! と叫ぶ祭里を後に、善逸は既に駆けていた。()()()()()()()()()()

 後方から声が聞こえたが、無視して善逸は疾走する。

 可愛い幼馴染みの為に。

 そう。我妻善逸の幼馴染みである二人。風巻祭里と花奏(かなで)すず。二人共近所で、善逸もその御近所である。少し()()()お寺に住んでいる善逸は、まるで化物と戦う為かのように、地獄のような特訓をされては夜な夜な逃げ回り、すぐに捕まり、特訓させられている日々であった。

 祭里とすずはそんは善逸を励ましてり、時には一緒に遊んだりしていた。しかし、何故毎日毎日、死ぬ気で特訓なんてしないといけないのか疑問に思わなかった日なんてなかった。それをお寺にいる大人たちに聞けば『その内分かる』とだけしか言わなかった。

 我慢の限界なんてすぐにきて、本気でこの町から出ていこうと思っていたら、初めて襲われたのがその日だった。妖という怪異が存在していると、そして善逸には『遠い昔から伝わる呼吸剣術』の才能があったことも知った。

 そして、いつも厳しく指導していた大人たち、『鬼殺剣士隊』がすぐに助けてくれた日でもあった。

 あの日、善逸は雷に打たれたかのような衝撃は忘れていない。

 そして色々と()()()()()切っ掛けとなり、善逸は真面目に訓練をするようになった。

 そして現在では、この我妻善逸の特殊な呼吸法による疾走は誰にも追従させない速度だった。

 

「さながら『黄色い閃光』よー! そう呼んでくれー!」

 

 誰も聞いてないことを叫びながら、善逸はすずの後を居っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 すずに追い付いた善逸立ったが、既に猫とは何かを話していた。

 

「そりゃさ。退治するしかない悪い妖もいるだろうとは思うよ。でも私の周りはいいコばっかりだったし。祓忍になったからってぜんぶ毛嫌いすることもないじゃんね。あいつ、私の近くに妖が来るとみんなを追っ払うようになっちゃって……。それも善逸もそう。子供の時は泣いてばっかりの泣き虫だったのに今じゃ変態になっちゃって……」

『にゃるほど』

「俺だけ悪口!」

「……来たか、速逃足(はやにげあし)のゼン」

「心配したからね。後その不名誉なあだ名やめて」

 

 善逸は猫かぶりの猫をじっと睨む。それに気付いたすずは猫の前に立つ。

 

「盗み聞きのゼン。明日から高校生になると言うのにどうして祭里と一緒に妖を蹴散らしてるのか訳を言いなさい」

「愛と平和を守る為!」

「あ、そういうのイイから」

「……花奏すずちゃんは、可愛そうな大人の階段を登っていくんだな。それもいいさ、僕ぁ童心を忘れない。僕のピュアっピュアな純真無垢な心で世の女の子を夢中にさせるんだ」

 

 そう言いながら善逸は『なにもしないよ』と手振り(ジェスチャー)する。すずもそこまで善逸を信用してない訳ではないので、膨れっ面のまま新しいドーナッツを取り出して食べ始める。

 

「はー最近、祭里と会うとケンカばっかし……高校生の男女ならさ…………そろそろさ、何かあってもいいよねぇ……いろいろ」

 

 食べかすを手で唇を払うと同時にそんなことを言うすずに善逸は地団駄を踏みまくりたくなったが、実は既に祭里に好意を寄せているすずには気付いていた。

 昼ドラよろしくドロドロナな三角関係でもおっ始めようかなと思う時もあったが、善逸はこれを応援しようと決めていた。

 町から出ようとした時、何も告げずに逃げようとしたのに、再び暖かく迎え入れてくれた二人は既に男女間を越えた好意を善逸は二人に向けていた。

 実は風巻祭里と花奏すずには、既に好意の限界値突破している善逸。それは常人(ノーマル)からすれば違和感を感じさせるほどの変人(アブノーマル)的な思考にさえ変動するもの。

 地獄特訓を耐え抜いたのも、二人を守る為に死ぬ気でやってきた結果であった。

 

「すずちゃん。祭里のこと好きだもんねぇ」

「……それをさ、小学校の時に言われたときどれだけテンパったことか」

「しかし、良き相談相手になったじゃない」

「……ま、まぁね」

 

 そんなことを話していると、件の争いの原因となった猫を観察していて善逸だったが、これは《黒》だと判断。

 

(この金髪の餓鬼……意識を最小限にしながらもしっかりとこちらを警戒しておる! 先ほどの餓鬼とは違う異質さじゃな)

 

 共に成長しあってきた祭里と善逸であったが、決定的に違っていたものがあった。

 それは、単純なる経験だった。

 幾度もの死線を命からがら戦ってきた影ながらの功労者たち。それが《鬼殺隊》。鬼を滅殺することを至上最大の目的とし、《鬼を殺す剣鬼》とも妖から恐れられている。

 妖としてメジャーな《鬼》を殺し、人々を守ってきた影の英雄たち。それが現代まで血脈を越えて、人から人へと今日まで続いてきた。その剣術を、その呼吸を、その決意と意志を。

 善逸は大人の鬼殺隊士たちと共に妖を滅殺してきた組織の一員。祭里は地方や地域に根付く祓忍。この地区では、既に鬼殺隊と風巻家とは手を取り合う仲になっていた。

 

『おい、黄色い小僧……』

「なに?」

『おまえ……』

「聞くの?」

「なに?」

『もう、聞くのかっていったんだよ』

 

 すずには見えない角度で、善逸は先ほどとは驚くべく全く違う相貌(カオ)となっていた。

 それは人を絶対に護る為、日々剣を握り、締め振り抜いてきた者の顔。鬼を絶対に滅殺(ころ)すという執念を越えた絶対的意志を持つ剣鬼の(かお)

 シロガネと名乗った妖は人間の数百倍生きてきた大妖怪。人は餌か蟻にしか見えなかったが、()()は人間とは言えなかった。

 殺しあった過去は無い。しかし、人とは想いを繋ぎ止めて死んでいく厄介な生き物。

 シロガネはこの地の妖の王である。神として崇められたこともある。

 だが鬼殺隊(こいつら)はそんなもの絶対に恐れない。食らいついたら、死ぬまで追い掛け、噛みつき喰らっては肉を剥ぎ取り、骨を絶ち、息が無くなり、(くび)を引き千切るまで絶対に止めないそういう生き物に仕上がっている。

 《鬼》とは人と見たり、シロガネは目の前の小僧は殺せても、その後に続く剣鬼たちにも勝てるか否か、いや勝てたとしても首を切り取られるまで諦めない徹底交戦となることが予想できた。

 そんな二人が睨み合ってると、すずはその妖の王ことシロガネ猫を持ち上げて愛で始めたのだ。

 

『ぬ、ぬぅっ!?』

 

 張り詰めていた空気だった為に、不意を突かれたシロガネ。

 

『や、やめい! 我輩は妖の王シロガネであるぞ!』

 

 不意を突かれ過ぎたシロガネは自白していたが、

 

「へぇぇー。妖の王さまなんだぁ。すごーい」

『そ……そう!! だが……ニャンだその手はァァ!』

「う~ん触り心地マジ、マシュマロだわぁコレたまんない……♡」

(この手練手管(テクニック)……!! やはりこいつ相当なハレンチ娘……! けしからん! しかし分かるぞ、指先から伝わる甘~いハチミツのごとき濃厚な〝魄〟の波動が……!!)

 

 善逸はすずから猫を掴もうとするが、遅い。

 

『スゴイ♡ これが妖巫女……』

「あやかしみこ……? なにそれ私のこと?」

『そう……』

「シロガネ……このデブ猫おまえ……」

「善逸も知ってたの?」

「………妖に狙われるっていうのは聞いた。詳しくは知らない……」

『知っておろうよ。人間の中に稀に現れる〝生命の過剰分泌〟。お前こそ、《妖巫女》よ。我が妖力(ちから)を更なる高みへと導く極上の馳走!!』

 

 やはり余計なことを話したシロガネに、善逸は隠していた《刀》の柄を握る。

 しかし、すずの目の前で殺すのを躊躇(ためら)う。すずには悲惨な光景を見せたくない善逸。だが、シロガネはそんなこと知らぬ存ぜぬまま話している。

 しかし、すずはそこで全ての違和感のピースがはまっていくことに脳が働く。

 

「……シロガネ、私がそんな体質だってこと……祭里は知ってるのかな……?」

『……であろうな、だからこそ妖に警戒していた。だが所詮は(ガキ)よ。我輩の妖力を読み間違えた……! そこの悪童(バラガキ)とは違ってな』

「俺は、妖怪以外には良い子なんだよ。知らなかったようだな。俺は()()()()()ぞ? お前の《音》が。嘘の音が」

 

 善逸は立ち上がり、猫を捕まえようとするが、愛らしい猫の姿を捨て去り、妖怪らしい、虎よりも大きい妖猫(ようびょう)の姿にへと変化する。

 いや()()()()()シロガネは、鋭い牙と爪を持つ、獣の姿になり、目の前のすずに喰らう為、逃げないようにすっと見定める。

 善逸は己がずっと鍛え抜いてきた《呼吸》を使おうとするが、すずに近すぎるシロガネを警戒してしまう。

 

『ああ最早待ち切れぬ……。我輩の供物となる事、誇りに思うが良い妖巫女よ、くくく』

 

 しかし、善逸は《音》で気付き、すずは目で分かった。忍装束を纏った祭里が木々を跳び駆けてくるのを。

 

「ホント……配慮がズレてんだから……。そうだったなら、はじめからそう言いなさいよ、バカ祭里ーーーッ!!」

『は?』

 

 正に大口を開けて、すずを食べようとしてたところを、祭里は上空から一気にシロガネを忍刀で刺し突くところだった。

 

「『お前イケニエ体質だかんな』とか言えるわけねーだろアホすず!!」

『小僧!!』

 

 やっとそれに気付いた妖猫シロガネはすぐに翻して祭里の襲撃を対応する。

 風巻家が代々使用していた忍刀でも、シロガネを傷つけること叶わず折れてしまう。

 

『風巻……祭里、なぜここがわかった?』

「すずが行きそうなとこくらい想像つくっつの! 幼馴染みだかんな」

っていうことにしたいですがぁ違いますぅ! 僕がLINEで教えたんですぅ! オラァ! 俺の目があるところではイチャイチャ赦さねぇ!

(あ……アイツとは気が合いそうじゃ!)

 

 善逸はまるで主人公が登場してきたみたいで面白くなかった。『俺のお陰なのに! なんで!』と嫉妬で怒り狂っていた。直前まで二人の恋路を応援すると思っていたのにこれである。

 

『だが、そこのガキが増えたからといってお前らに勝機なぞ……』

「……雷の呼吸・壱ノ型………」

 

 シィィィィ……と耳に届く呼吸の音が、その場の全員に届く。

 『全集中の呼吸』と呼ばれる操身術。人の身で人外と渡り抜く為に編み出した骨身を削り、導きだした答え。

 

「……霹靂(へきれき)一閃(いっせん)!!」

『ガッボォ!?』

 

 ボガァ!! と鈍い重撃音がその場を覆ったと同時に、とどこか人として善逸を見ていたシロガネであったが、己の前牙を折られた事でやっと()()した。理解した。

 

「シィィィィィィィィィィィ」

 

 人の脚力では無い。音速か光速か。どのみち、人が走り去る速度では無かった。あり得ないと考えるシロガネ。人間として既に見れる訳がない速度。あの風巻祭里とでは雲泥の差だった。

 

『がはっ! はぁはぁ……』

「相手の実力を見抜けていなかったのは、祭里だけじゃなかったな。この地区代表妖の王さま」

『キサマぁ!』

 

 完全に意識は善逸に向かった。

 善逸も隠し持っていた刀で斬ったと思っていたが、すずの手前、木刀に変えて攻撃した。だが木刀は善逸の剣技に耐えきれず一撃加えただけで折れてしまっていた。

 だが、一撃だけでよかった。

 準備が整った祭里が構えているから、

 

「善逸だけじゃねぇぞシロガネ! 祓忍法、豪風陣!」

 

 風の術でシロガネを上空にへと飛ばす。

 

『ガキでも風巻家の血筋か……! しかし我輩を遠ざけてどうする!? ビビってるのが丸わかりだ!』

 

 突風に飛ばされたシロガネは、風が止み次第、再び攻勢に転じようとしたが、いつのまにか周囲に巻物が舞っていた。

 

『しまった封印術か! 身体が巻物にスワレテいく! おのれ! このまま封じられたらこやつらきっと……イチャイチャするに決まっている!』

(あれ、俺アイツとなんかシンパシー)

 

 吸われていくシロガネを眺めながら善逸は眺めていると、

 

『我輩を踏み台にそんなハレンチ許せるものか! ぬぉぉ何かないのか何か……あ……あれだ!』

 

 何か思い付いたシロガネは、『封神結界』を維持する為に動けないであろう祭里に向け、放つ。

 

『秘術! 性醒流転!!』

 

 ニャァァァア! と妖力だけを封印されたシロガネは元の可愛いらしいデブ猫に戻り、その場に転がり回る。

 

「おい、ウソだろ! じいちゃんが30年かけた巻物でも吸いきれねーのかよ」

「ァァァ…………!!!!」

 

 それを見た瞬間、善逸は雷に打たれた感覚に襲われた。

 

「……え?」

 

 そして背後に居たすずも驚愕。

 

『う……ぬぬぬ……』

 

 シュバッとその場から逃避するシロガネ。

 

「あっ逃げんなネコだるま! ……って、うん? な……なんだこの胸の重量感……」

「ま……ま……ま……祭里……!?」

「……へ?」

「天使がおる……」

 

 その日、善逸の親友・祭里くんは、()()()()()に変わってしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「この度、うちの善逸がおりながら、お孫様にご被害を(こうむ)った事、何卒申し訳なく……」

「いやいやいや、お止めくだされ、悲鳴嶋殿。御勤めには勿論覚悟を持って臨めと言って聞かせてきました。こうなったことも覚悟の上でしょう」

 

 場所は風巻家、そこには祭里の祖父に謝る坊主の巨漢。この町のお寺の住職、悲鳴嶋行冥が来ていた。

 風巻家と密接に協力して、妖怪退治をしている地方《鬼殺隊》支部の長が行冥であり、祭里の祖父とは長い付き合いになっていた。

 

「シロガネが(いず)れ来ることは周知していたというのに、面目ありません」

「鬼殺隊の方々は我ら風巻家《祓忍》と同じく少数で成り立っておること承知しておりますわい。そして、毎夜毎夜死闘の末に只人を護ってくださっていることも……同業者として理解しておりますじゃ」

 

 だから気にせんで下さいと言う祭里の祖父に頭を下げる行冥。

 

「しかし、孫が掛かった《性醒流転》……わしですら分からぬ秘術とは」

「……我ら鬼殺隊もそういった情報はありません。全国にいる隠里の鬼殺隊にも聞いて回りましょう」

「お願いします」

 

 二人はお茶をすすり、桜舞う外を眺める。

 

「それにしても、朝からあのコが祭里を迎えに来るなんて何年ぶりか、それが今は嬉しい」

「花奏すずさんですね」

「ほっほ。善逸くんくらいしか事情を知らない友達が居らんかった祭里には嬉しいことじゃろう」

「……学校には行くのですね、祭里くんは」

 

 そこで縁側でお茶を飲んでいた二人に朝の挨拶をするべく、二人の女子高生がやって来た。

 

「くそ~何かヒラヒラして落ちつかねーな。準備できたぜじーちゃん」

「おお……こりゃまた……」

「……あぁ……南無……」

 

 祭里の祖父は驚きで目を見開きながらも孫の高校生の晴れ姿を喜び、行冥はこれから起こるであろう様々な艱難(かんなん)辛苦(しんく)を尊び念仏を唱える。

 

「じゃ、高校行ってくる」

 

 綺麗な女子(おなご)に転じられた祭里は、風巻家の印とも言える風車を(かんざし)にして、とても可愛いらしい風巻祭里と着替えを手伝ってもらった花奏すずと一緒に登校する。

 二人は知らない。

 二人が好きすぎる雷の剣士が、鼻息荒くして待っていることに。

 事によっては、祭里は〝男を捨てる〟覚悟がある未来に。

 

「うーむ思ったより可愛く仕上がってびっくり」

「男だっつの!」

 

 




感想やコメントお待ちしております!

雷が好きな作者はずっと善逸が好きで、キャラも大好きで鬼滅終わらないでと本当に願っていましたが、円満に終わってしまい、それはそれで満足していまが、矢吹健太郎先生の最新作を読み『あぁん!? この主人公女の子になるん!? しかも超可愛いちくしょう!』となり、男で強くて女の子好きな善逸を主人公に二次創作しました。
私の妄想する小説を楽しんでくれたらと思います。


2020/06/30改善
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