夜廻 振り返ってはならない夜の道   作:はるばーど

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夜廻の世界観からドンドン離れていってるような気がしましたが、気にしないで下さい(汗)

関係ないですけど、秋が近くなってきたからかセミが鳴き止んで、アキアカネ(トンボ)がちらほら見るようになりましたね。

本編どうぞ


弐章 夢

「う、うーん。ここは…………。」

 

 

暖かい毛布をかけられているのか、とても気持ち良い感触がする。それに立ち込める薬品の匂い。

 

まさかここは…………。

 

起き上がろうとしたが、なんだか頭が重い。風邪を惹いたときよりもずっと重い。

しかし、だからといって状況を何も知らずに行動を止めるのは不味いです。私は重くなった瞳を無理矢理開き、ボヤけている視界を取り戻そうと右腕で目を擦る。

 

 

見えるのは…………カーテン?辺り一面が真っ白な風景に覆われています。それに心拍数を計る機械が確認できます。名称は分からないが、よく病院にて見掛けるものですね。これでここは何処かはっきりしました。

 

 

私は病院の寝室にいた。私は神社にいたはずなのにどうやってここまで運ばれてきたのかは思い出すことができない。

でも、あの後何があったのかはぼんやりとだが、覚えています。あれから【ルーシー】と名乗った男は、思い切り私の頬を殴り飛ばし、気絶させてきた。そこまではかろうじて覚えています。

しかし、それ以降が思い出せないのです。私はあれからどうなったのでしょうか。そして、ここは何処の施設なのか。それを確かめるべく、私は左腕を敷き布団につき、立ち上がろうとする。何処にいても油断は禁物なのです。あの男を敵を回してしまっている以上は。

 

 

「ウッ…………、アァッ………。」

 

 

ついた左腕から激痛が走り、思わず片手で押さえつける。そうでした、あの腕の怪物に手を折られてしまったのを忘れていました。よく確認すると、腕全体には包帯が巻かれている上に、点滴らしき管も繋がれている。

物凄く邪魔に感じたので、なんとか点滴を外せないかと試行錯誤してみる。

すると、近くの扉から看護婦らしき女性が入室してきた。

私が点滴を外そうとしている様子に気が付いた女性は慌てた様子で此方に近づいてくる。

 

 

「駄目ですよ!点滴を外しては!まだ安静にしていて下さい!」

 

 

点滴を腕につけ直されてしまい、再びベッドに寝かせられてしまいました。ですが、ここが何処なのか聞くのに丁度良いタイミングで来てくれました。私は看護婦さんに手を伸ばし、ここが何処か尋ねようとする。

 

 

「すみません、あのー、ここは何処でしょうか………私、記憶が曖昧で。」

 

 

すると、看護婦さんがニコニコした表情で此方を向きこう言う。

 

 

「ここは病院です。貴方と私と二人(・・)っきりの。」

 

「………?」

 

二人っきりの…………?すると、看護婦さんが瞬きをした瞬間、白い目玉が血で染まったみたいな赤い瞳へと変貌を遂げる。それはつい先程まで見ていたものだ。私は恐怖と焦りが生じ、血の気が引いていくのを感じる。やっぱり、逃げられたわけじゃ………。

看護婦の姿が薄れていき、いつの間にかあの男の姿へと変わっていたのです。冷や汗が額を蔦り、身体の震えが止まらない。

コイツに関われば、殺されるなんて生やさしいものじゃ済まされない。私の直感がそう言っているのです。そして、嫌な予感というのは当たってしまうもの。

 

 

「やぁ、ルキア。会えて嬉しいよ。…………ん?私がここにいるのがそんなに意外か?言わなかったか?お前は私のオモチャなんだ。オモチャが自分の意思で逃げたりするか?それと同等の立場なんだよ、お前は。」

 

 

舐めるようにルーシーは私の顎に手を添え、顔をゆっくりと近づけてくる。そして、首の部分をソッと撫でなれ、思わず鳥肌がたち、体が身震いを起こす。物凄く気持ち悪い感触が全身を伝わり、反射的に彼から目線を反らす。すると、彼は立ち上がり、疑問を持ったようなジェスチャーをとる。

 

 

「おいおい、そんな嫌うなよ。私は祝福しに来たんだ。お前が私のものとなった記念にな。こんな光栄なこと一生にそう何度も味わえるもんじゃないぞ。」

 

 

「誰が好き好んでこんなこと…………!」

 

 

悪態をつき、キッと睨み返しても彼は無視して部屋の中をぐるぐると興味深そうな表情をしながら回り始めた。

しかし、私はある事に気が付いた。先程、ヤツは「二人っきりの病院」と言っていた。それに、私をオモチャとして、いたぶるつもりならば、既にやっているはずなのです。ヤツの性格からすると、じわじわと攻めるタイプではないはず。

私は一か八か、折れた左腕を思い切り握り締めた。

 

 

「クッ…!アッ!?…………ハァ、ハァ、やりました………。」

 

 

傷を握り締め、ヤツから気を反らすと目の前からヤツは消えていた。

読み通り、これは幻覚でしたか。もしやと思い、試してみましたが、上手くいきました。昔読んだ戦争の本で、幻覚をみていたとされる兵士が傷を押さえ、出てきた過去の恐怖の出来事をかき消すという一面があったのを思いだしたのです。

予想以上に効果はてきめんだったようで、私は胸を撫で下ろした。

 

 

すると、再び病室のドアが開き、今度は白衣をきた男の人が入ってきた。どうやら、今度は本物のお医者さんのようで安心しました。明るい表情で、診察をしに来たよ、と言っているので幻覚ではないのは間違いないでしょう。

 

 

数分後、一通りの診察が終わり、問題なしという結果が出た。後は、安静にしていれば折れた腕も自然に治るとのこと。派手に折られていたようにも見えましたが、やはり人間とは凄い生き物だとつくづく思わされます。

体の一部分を失えば、自然の動物だった場合、即見捨てられるか、仲間に見守られながら絶命していくかの二択でしょう。

それをお金を税金で日頃払って、当日に診査料金などを手続きするだけで、折れた腕まで回復させてもらえるのです。

私は初めて人間が今まで培ってきた文化や技術に関心を持ったような気がした。

 

 

私は再び、ベッドに倒れ込み一息付く。

さて、これからどうしたものでしょうか。というのも、今私はお金を一円も所持していないのです。

故に、もしかしたら警察にでも突きだされて、保護者の元へと送り帰されることにでもなれば、それこそ悪夢です。

 

 

永久に外を見ることは許されず、ただ廃人に向かって堕ちていくのみでしょう。そして、いつか叔父になぶり殺しにされる。家出をした上に、損傷した腕の治療費の負担まで背負わせてしまうのです。頬を平手打ちされるだけでは済まされないのは明らかです。

 

 

「こんな時に母さんがいてくれれば…………。」

 

 

助けを求める声が口から零れ落ちる。

いやいや、駄目です。何を言っているのですかルキア。もう、母は私の元にはいないのですよ?もし仮にいたとしても今この場で、手を借りる訳にもいかない。今の状況は私が望んで造り出したものです。

助けなど借りてはならない。

 

 

しかし、幾ら思考を重ねても案が全くと言っていい程、思い付かない。これまで、敷かれたレールの上を無理矢理渡らせられていた代償なのか。よくよく考えてみれば、今日まで自ら行動したことなんて一度もなかった。

いつも誰かに連れられて行動していた。自分の意思を主張したことなんて一度もありませんでした。

 

 

それ故に、知識不足でもあった。だから今この場で悩み、苦しい思いをしている訳です。こんなことになると分かっていればもっともっと進んで勉強していたのですがね…………。

 

 

 

「なら、私が手を貸してやろうか?」

 

 

 

不意に何度も聞いたあの声が耳元で囁かれた。驚いて振り向くとそこにはまたあの男がいた。

どうして……………?確かに先程、抹消したはずの幻覚が再び目の前にいる。単に私の頭の中で起こっている現象ではないのでしょうか?

私は思わずに口元を手で押さえ、驚愕を隠そうとする。そして、その様子を察したのかヤツが声をかけてくる。

 

 

「あれくらいの痛みで私を消せたとでも思ったのか?私はお前の「頭」の中にいるんだぞ。幾らか弱い女性とはいえ、それくらい熟知して貰わないと困るなぁ。」

 

 

と本人は言っているが、全然困った表情をしていない。寧ろ、喜んでいるぐらいに感じられる。何故ならば、ヤツは今ニタニタと気持ち悪いと感じるほど満面の笑みを浮かべている。まるで絶望している表情を眺めているのを楽しんでいるかのように。

気味が悪い。あまりいい趣味と言えないでしょう。

 

 

「おい、趣味が悪いって思ってそうな顔をするな。傷つくだろ。」

 

 

眉間にシワを寄せ、苦虫を潰したような表情をされながら、指摘されてしまった。何処の口がほざくのだか。

すると彼はブンブンと首を降った後、気を取り直したのか再びご機嫌な表情を取り戻し、改めて病室の壁全体を興味深そうに見渡し始めた。

出来れば、一生そのままでいて欲しいのですが。

呆れた雰囲気になってしまい、私は恐怖を感じることをすっかり忘れていました。

 

 

そして、辺りを見終えたのか、近くの椅子を引っ張りだし此方を見据えてどっかりと座った。退屈そうに頭を掻き出す。一体何がしたいのか、検討もつきません。

正直、こんな得体のしれない奴の行動なんて分かりたくもありませんが。

 

 

「なぁ、最近の人間は皆、こんな真っ白なとこに住んでるのか?こんな場所に毎日いたらゲシュタルト崩壊を起こしそうになるぜ。」

 

 

と不思議そうな顔して関係ない話題を振り始めました。…………まぁ、このくらいの話題には乗っかってあげてもいいでしょう。幾ら両親の敵とはいえ、幻覚ではお互い手出しは出来ないですし、それにここは病室。暇潰しになりそうなめぼしいものもありませんし、諦めて質問に答えることにしました。

はぁ……………居るかどうかも分からない幻覚に話し掛けるとか正気の沙汰じゃないのに、私は何をやってるのでしょうか…………。

 

というかゲシュタルト崩壊ってその使い方で合っていたでしょうか?

 

 

「…………そんなわけないですよ。ここは病院といって、怪我をした人や病人を運びこんで安静にさせておくための場所です。壁が白いのは多分………精神的に安定するからでしょうか。よくは知りませんが。」

 

 

「ふーん…………こんな真っ白な壁でねぇ。人間って変な生き物だな。改めて思ったが。」

 

 

それに関しては同感ですね。私もこの真っ白な空間はどうにも目がチカチカしてしまうのです。こんな所で精神安定を図ろうとするとは、気がしれません。

そのまま、3分ほど無言の時間が続く。すると、彼はその場から立ち上がり、大声で提案を図ってきた。

 

 

「なぁ!この病院から出よう!そして、この夜の町を一緒に散歩しようぜ!?」

 

「……………それが自らできないことは貴方も重々、承知しているでしょう?あの「顔」の怪物に腕を折られていて動ける処の話じゃ━━━」

 

 

私が話をしている途中で、彼はじれったそうな仕草を取り、右手の指を鳴らした。

すると、いつの間にか町の真っ只中に私達二人のみ佇んでいた。

 

 

「ッ!?」

 

 

見渡す限り、ここは住宅街の十字路のようです。それも私とこともさんが暮らしている慣れ親しんだ町。辺りには自動販売機と今にも電気が消えてしまいそうな街灯。

いつの間にこんな所へ………? 私は頭を整理しようとしたが、無理だった。何故ならば今さっきまで、私達は病室にいたのです。ここまで約1秒も掛からずに移動するのは物理的に不可能。説明がつかない。

 

 

「何が起きたのか、説明しろって顔してんな。でも、今はそんなこと考えている場合じゃないんじゃないか?ほら、後ろ見てみろ。」

 

「…………え?」

 

 

彼の言うとおり、後ろを振り返るとそこには無数の影達が私を殺そうと追いかけてきていた。それも数体ではありません。数十といった規模の影達が殺そうと躍起になっているのです。

黙ったまま、私は折れた腕を押さえながら全速力で逃亡を謀った。

 

 

「ウホホォ!楽しくなりそうだな!鬼ごっこ開始だぜ!」

 

 

私達は再び暗闇の町へと足を踏み入れた。この男の狙いが一体何なのかは分からない。だけど、いつか隙を見て殺してくれる。

この夜の町で生きて出ることは難しい。ならば私と共に道連れにするまで。それまではひたすら耐えることにしましょう。

 

 

 

 

いつか訪れる復讐のときまで。

 

 

待っていて下さい、父さん、母さん。もうすぐそちらへ参ります。





【ルーシー】は実は日本の出身ではないので、いたぶり方が不気味さよりも派手さを重視するため、こんな展開になっております。

果たして、ルキアはこんなんで敵を取ることが出来るのか?是非、次回も楽しみにしていてください。精一杯、書き上げます(笑)
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