夜廻 振り返ってはならない夜の道   作:はるばーど

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気付いたらめっちゃ登録者増えてるんですが・・・一話しか投稿しているないのに本当にありがとうございます。これからもこんな調子で投稿するので気長にお待ち頂けるとありがたいです。後、あとがきの方には自分が考えたクイズ(ただやりたいだけ)を載せようと思います。暇なお人はぜひチャレンジしてみて下さい。


では夜の町に行きましょう。


ニ章 逢魔時

この闇夜の中、私は人に出会うとは思いませんでした。それも、私よりも幼い少女。茶色に近い髪に制服を着ている。年は中学生くらいと言ったところでしょうか。少女は、ぶつかって尻餅を着いたときについてしまった砂をはらった後、私に話し掛けてきた。

 

 

「あ、すみません。一方的にぶつかってしまった私が言うのも何なのですが、お願いを聞いて貰えないでしょうか?」

 

 

「構いませんよ。こちらも化け物ばかり気にしていて、まさか人にぶつかるなど思わなかったモノですから。」

 

 

「・・・やはり、貴女も見たんですね。影達を。」

 

 

「ええ、対処は容易くはないですが扱いやすいと思っています。・・・で、お願いというのはいかほどですか?」

 

 

「実は、今妹を家に一人で残してきてしまっているのです。まだあの子は影達を見たことがないのです。なので心配で・・・。どうか妹の保護をお願いできないでしょうか?」

 

 

「分かりました。ですが、一つ条件があります。」

 

 

「・・・何でしょうか。」

 

 

どうやら向こうも何を聞かれるのか予想がついているようで、顔つきが少し険しくなり、暗くなった。

 

 

「『よまわりさん』のことを教えてください。教えてくれればお受けいたします。」

 

 

「見たのですかアレも・・・正直言うと分かりません。ですがこれだけは分かります。見つかってしまえば唯ではすまない。」

 

 

「・・・そうですか、分かりました。充分です。妹さんを帰ってくるまで預かりますよ。こんな女で良かったら。」

 

 

私は少し微笑みながら返事を返した。彼女は驚いた顔をした。無理もないでしょう、何せこんな痩せ細って、影達に近い見た目をしている私が少し微笑んだら不気味でしょうから。

 

 

「では、よろしくお願いいたします。」

 

 

そう言い残すと彼女は逃げるように去っていく。・・・私、そんなに不気味でしょうか。なんとなく、この真夜中に出会った人でもいつもと反応が変わらないことにどこか安心してしまった自分がいた。しかし所詮人間なんて、このようなものでしょう。知らないものに恐れ、怯え、そしてそれを知ろうともしない。

 

 

そういえば、彼女に妹さんの居場所を聞くのをすっかり忘れてしまいました。どこにいるのでしょうか。そしてしばらく明かりもなくフラフラと夜道を彷徨っていると、先ほど出会った少女に似た風格をした幼女を見つけた。

 

 

薄茶色の髪に赤いリボン、それにウサギのポシェットを背中に下げていた。ビクビクしながら夜道を進んでいる。やっと見つけました。私は警戒されないようにそっと近付き、幼女に話し掛けた。

 

 

「・・・あの、すみません。」

 

 

幼女はビクッと体を震わせた。そして私から走って逃げていってしまいました。この話し掛け方は不味かったでしょうか。私は小走りで幼女を追いかける。そして、行き止まりの通りで幼女に追い付くことができた。相変わらず、ビクビクして震えている。幼いから仕方ないでしょう。

 

 

「大丈夫ですよ、お嬢さん。私は貴女のお姉さんに頼まれてやってきたのです。怖がることはありません。」

 

 

「・・・本当?お化けじゃないの?」

 

 

「ええ、お化けではありません。さぁ、お家に帰りましょう。送ってあげます。」

 

 

「でも、知らない人についていっちゃいけないってお姉ちゃんが・・・。」

 

 

確かにそうですね、当然の対応だ。嘘をついているかもと思われても仕方ありません。・・・何か納得させる方法は・・・。

 

 

「あ、お姉さんは犬を探していると言っていました。貴女もそうなのですか?」

 

 

と質問をすると幼女は黙り込んでしまった。・・・私、何か不味いこと言ったでしょうか。すると、幼女が何か喋り出した。

 

 

「ううん、ポロはいなくなっちゃった。お姉ちゃんまでいなくなったらやだ。だから迎えに来たの。」

 

 

なるほど、そういうことでしたか。姉がが待っていろと言ったら大人しく待っているのが普通でしょう。ですが、この様子だとその探している犬とやらに何かあったのでしょう。そして、死んでしまった。このようなところでしょうか。そうとなれば尚更、ここに彼女を放っておくのは危険ですね。一つここは提案を出しましょう。

 

 

「では一緒にお姉さんを探しに行きましょう。このお化けだらけの夜でお一人では不安ではありませんか?」

 

 

「・・・一緒に探してくれるの?お姉さん。」

 

 

「ええ、もちろん。貴女もお姉さんを見つければ納得するでしょうから。」

 

 

「うん、じゃあ行こ。」

 

 

と幼女が先陣きって歩き出す。ふぅ、ようやく納得してくれましたか。正直、子供を相手にするのは苦手です。一般人を相手するのもやっとなのに子供となれば尚更です。私は少し頭痛がしたので、おでこを手で押さえる。今の流れでかなり疲れました。自分がいかに馴れていないかが分かります。少々、不安になりながらも私は幼女についていく。

 

 

「・・・お姉さん、そういえばお名前は?」

 

 

しばらく歩いていると幼女が恐る恐る、こちらの名を伺ってきた。そういえば自己紹介がまだでした。なにぶん、影達が動き回っているこの町では、喋る時間すら貴重なもので。そして、私はあの『よまわりさん』を見たいという好奇心でいっぱいになっていました。

 

 

「・・・『ルキア』です。ただの『ルキア』。」

 

 

私は最小限の会話に押さえるように素早く、手短に自己紹介をすませる。するとあっさり終わらせるつもりでしたのに、幼女は嬉しそうな顔を見せた。そして、口を開き

 

 

「私、『コトモ』。宜しくね、ルキアお姉ちゃん。」

 

 

クッ・・・?そのように正直に返されると逆に困惑してしまいます。そして、その笑顔もやめて欲しいものです。素直に・・・可愛いのでやめて下さい、頼みます。すると、幼女・・・いえ、コトモさんは私の手を左手で握り始めた。

 

 

「こうすれば怖くないね。」

 

 

そうポツリとコトモさんは呟いた。子供いうのはよく分かりません。なぜ、こうも純粋でいられるのか。なぜ、こうも人を簡単に信用してしまうのか。私にはわからない。物心がつき始めたころには既に父親はいなかったし、母も仕事で構ってくれることもなかった。だから、私は一人だった。何時からか、人を信じるということも忘れていました。それをこうも覆されると困惑します。

 

 

先程出会った『よまわりさん』。アレからも独特の雰囲気が感じ取れた。物凄く奇妙な形をしていて人とは掛け離れた存在。しかし、私の好奇心をくすぐった唯一の存在でもある。私は・・・この町に生きろと言われた気がした。いえ、『死に抗え』のほうが正しいでしょうか。化け物ばかりのこの町なのに。影達が無数に襲ってくる中で矛盾したこの言葉。この私があの奇妙な存在と幼女に教えられるとは・・・。

 

 

 

人生とは実に興味深い。今まで、信じていたものがたった数時間で全てがひっくり返ったようです。井の中の蛙だったことを痛感しました。少しだけ・・・人生がこのまま終わってしまうのには惜しく思えてきました。そして、この幼女を死なせるわけにはいかない。この子は私に可能性をくれた。だから必ず・・・。無事に戻れたら何をしましょうか。まず、この影達について知りたいですね。そして、いつか旅にも出たい。

 

 

T時路を曲がり、しばらく進んだ後ちょっとした広場が見えてきた。そこには小刻みに明かりのようなものがちらほら見える。もしかしたら、あのお姉さんがいるかもしれない。

 

 

広場に入ると案の定、そこにはコトモさんのお姉さんが草をかぎ分けて何かを探していた。広場というより原っぱに近い形でそこは草が生い茂っていた。なので一歩、草むらに足を踏み入れた瞬間、ガサガサッと音を立ててしまった。

 

 

「きゃっ!?」

 

 

少女が驚いた表情をして、此方に振り返った。しかし、立っていたのが私達なのを確認し、安心したようにため息をついた。そのいなくなった飼い犬とやらはこの場所が好きだったのでしょうか。犬が掘ったような後がありますし。スコップがあれば掘れそうですが。

 

 

「ああ、なんだ。着いてきちゃったの?」

 

 

「・・・すみません、ですが貴女がこの夜道を出歩くのは少々危険かと思いまして。」

 

 

すると幼女は一旦私の手を離れ、姉である少女の手を強く握りしめました。

 

 

「ごめんね。お姉ちゃんもうちょっと探してみるから、このお姉ちゃん(ルキア)と一緒に帰っててくれる?」

 

 

「・・・やだ、一緒に帰ろう。」

 

 

幼女は手を離そうとはしません。余程姉のことを愛しているのでしょうか。今にも泣きそうな顔をしている。確かにこの夜道は普通とは、何かが違う。私も説得して少女も一緒に帰らせましょう、いくらこの少女がこの町に馴れているように見えるからといって100%安全とは言い切れません。

 

しかし次の瞬間、目の前の少女の表情が突然青ざめた。彼女は何かを見詰めている。それは私達に向けたものではありません。私は後ろに意識を集中させる。私達の後ろに何者かの気配を感じた。しかし振り返ってしまえば死ぬ、そう悟った私達は身動きが取れなかった。

 

 

「・・・ちょっと二人共、こっちに来て。」

 

 

少女は私達の腕を掴み、草むらの前まで引っ張った。そして、耳元で呟き始める。

 

 

「二人ともこの草むらに隠れてて。目をつぶって。今から何があっても出ちゃダメよ、わかった?」

 

 

「うん。」

 

 

私も黙って指示に従う。コトモさんを押して私は奥から彼女の身を包み込むように覆い隠す。これで大丈夫なのでしょうか・・・?少々不安になりながらも私は黙って指示にしたがった。

 

 

「私は・・なってもいいだから・・・・だけは・・・。」

 

 

少女が何かしゃべっています。しかし、草むらのせいで何を話しているのかいまいち聞き取れません。すると、袋を被せたような布の音が聞こえた。そしてズルズルと引きずっていく音も聞こえる。嫌な予感がします、彼女はこれを知っててわざと私達を・・・?

 

 

「お姉ちゃん?」

 

 

コトモさんも姉に対して、疑問を抱いて発言する。しかし、しゃべってしまえば見つかってしまうかもしれません。私は幼女の口をそっとふさぎ、気配が消失するのを待つ。すると、気配は消えました。だが、消えたのは謎の気配だけではありません。少女の気配も消えていた。出てもいいでしょう。もうどうせ 、 誰 も い な い で し ょ う か ら 。

 

 

私達は草むらから顔を出して、辺りを見回す。予想通り、そこには誰もいませんでした。そして、 不穏な空気が漂う。

 

 

「お姉ちゃん?・・・先にお家に帰ったのかなぁ?」

 

 

コトモさんが能天気なことを呟く。そんな訳はないと思うのですが・・・、とにかく彼女は帰りたがっていますので私も一緒に帰ることにしました。野原から出るとすぐそこの道路に、懐中電灯か落ちていた。なぜこのようなところに?すると、コトモさんは真っ先に懐中電灯を拾った。

 

 

「お姉ちゃんの・・・かな?」

 

 

「・・・おそらく。」

 

 

確かではないですが私も同感です。でないとこのようなところに落ちている説明がつきませんし、さらわれていった証拠にもなるでしょう。・・・コトモさんは全く考えていない様子ですが。

 

 

「・・・ライトをつけてみよう。」

 

 

━━━━━━━ッ!

 

 

「ッ!!!」

 

 

懐中電灯をつけた瞬間、目の前に大きなウニのような化け物『道ふさぎ』が姿を表しました。私は言葉にならない悲鳴をあげてしまい、一瞬で全身が恐怖に包まれる。だがこのまま動かなければ捕まってしまう。そうしたら、どうなるか分からない。一瞬にして肉をバラバラにされるかもしれないです。

 

 

私はコトモさんを片手で抱え、化け物とは反対方向に向かって走った。『よまわりさん』の様に異例の存在なら怖くないのですが、影達は違う。アレらは・・・生きている人間達と対して変わらない。私達、生きているもの達に向けられた怒り、悲しみ、憎しみ、それらしか伝わってきません。

 

 

私が普段感じているものと・・・何も変わらない。しばらく進んだ後、前には最早、常連と言っていいほど数が多い、黒焦げの影が前に立ち塞がっていた。コトモさんが握りしめている懐中電灯のおかげで位置が把握できたのは大きいです。

 

 

何かないでしょうか?辺りを見回してみると、丁度良い大きさの小石を見つけました。拾って影に向かって投げつける。すると、影に傷を与えることはできませんでしたが、石に気をとられているようです。私は間を抜けて危機的状況を脱しました。

 

 

ひたすら走って、逃げる。振り返りはしない。私は、いや私達は死ぬ訳にいきません。人生初めての知り合いや夢を失いたくない。私は死に物狂いで走って逃げた。・・・ここまで走れば流石に、影達も追ってきてはいないようです。私はコトモさんを腕からそっと下ろし、再び道案内するようをお願いしました。

 

 

道中トラブルはありましたが、なんとか自宅とやらに到着しました。和風の住宅に中に何もいない、かわいらしい犬小屋がぽつんと置いてあります。おそらく、これが彼女達が探している犬のものなのでしょう。しかし、そこには少女の姿はありません。

 

 

「お姉ちゃん・・・いない。」

 

 

「・・・お化けにさらわれてしまったのでしょうか・・・。これからどうしますか?コトモさん。」

 

 

「・・・とにかく一緒に入ろう。ルキアお姉ちゃん。」

 

 

お、お姉ちゃんですか・・・。その呼ばれ方はどうしても慣れません。ですが、悪くは・・・ありませんね。探しに行きましょう。お互い、大切な物をあの暗闇の町に置いてきてしまいましたから。

 

 

そして、私はコトモさんの家に一旦入れてもらって彼女の決断を待つことにしました。

 




ども、はるばーどです。遅くなって申し訳ない。でも、絶対にペースは落ちていく(学校の事情で)と思います。ごめんなさい。

問題① 水族館などにも飼育されている「シロイルカ」。ではこれの別名は?


1,スナメリ
2,ベルーガ
3,イッカク

答えは次回投稿したときに記します。

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