夜廻 振り返ってはならない夜の道   作:はるばーど

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前回の答えは黄金虫(コガネムシ)です。

最近、トンボとかヒグラシが減ってきたような・・・。


本編いきます。


七章 丑三つ時

 

 

夜は深い。人間は皆、闇という恐怖を恐れている。それ故に、妖怪という幻想の存在を創造し、闇夜への恐怖を紛らわしているのでしょう。恐怖とは弱みでもあり、危険を察知する信号でもあります。

 

 

今、私はその恐怖という感情に押し潰されそうになっています。え、理由ですか?それは目の前にこれまで予想だにしていなかった恐ろしい怪物が佇んでいるのですから・・・。

 

 

 

━━━━━━時は遡ること数十分

 

 

 

私達は一旦自宅に引き返し、友の死により高ぶった感情を沈めていました。それは私の友達である『こともさん』の愛犬、『ポロ』の死によるものだった。

 

 

なんとか彼女の心境を壊さずに慰めることは出来たものの、今度は私の心が沈み始めていたのです。家族というものをほぼ全て失なった私にとって、他人であろうと友の死は少々キツいものであった。見ていると、あの時一変に両親を失なった時のあの感覚が甦るのです。

 

 

死に目にも立ち会うことが出来ずに、私の母はこの世を去りました。そして、父は原因不明の消息を絶っている。このなんとも理不尽な現状に私の心は耐えられず、一度崩壊した。あの時、私は小学生でした。耐えられるほど、私の心は強くなかった。

 

 

今もそうです。あれから何も成長していない。情けないようですが、ポロの死は飼い主であることもさんよりも私への負担の方が大きかった。なので私は今、彼女と姉の寝室で横になって休息を取っている。

 

 

これが俗にいう『心の傷』というものなのでしょうか。思い出すだけでも、胸が張り裂けそうになり、瞳から大量の涙が溢れだしてくる。こともさんを助けなければ。今までは、その事だけを考えて他の事は気にしないことにしてきました。これではまたいつもの心情に逆戻りだ。

 

 

こともさんは心配そうに此方を見詰めていますが、何処かソワソワしている様子が伺えます。それもそのはず、彼女は今、唯一の家族である姉を何者かに連れ去られているのです。落ち着いていられる訳がありません。

 

 

いつまでも、私の為だけに足を止めてほしくない。そう思った私は、こともさんに先に捜索を開始してもらうことに決めました。

 

 

「こ、こともさん。す、すみませんが先に行っててもらってよろしいでしょうか。私もすぐ、追い付きますので・・・。」

 

 

さっき、一度大泣きをしてしまったせいなのか、声が震えており上手く喋れなかった。しかし、彼女は更に心配そうな目線を此方に向けてきました。

 

 

「で、でも・・・。」

 

 

「私なら大丈夫です。さぁ、行って下さい。」

 

 

そう言うと彼女は、渋々玄関の方面へと向かっていった。戸を開き、靴が地面と擦れる音が2階まで聞こえてきました。

 

 

正直、私には疑問があった。何故、こともさんは家族を失っていても怯まず、前へと進めるのだろうか。残された家族に愛されてきたからだとでもいうのでしょうか?しかし、それなら私だって同じです。父が行方を眩ました時だって、少しの間でしたが、母は私の事を気に掛けてくれた。

 

 

後に叔父に虐待されることになったという苦い事実もありますが、それだけではないでしょう。生まれつき、身体のできが違うとか?・・・それでは納得がいきません。悲しみは誰にでもある。それは人間皆、平等に兼ね備えている。なのに、この差は何なのでしょうか。

 

 

わからない。何故、そのように振る舞えるのかがわからない。何故、そのようにすぐに立ち直ることができるのか。家族を失なったのに、2度と戻ってこないのにそれでも、前へと進んでいく。

 

 

憎い。私は周りにいる人間全てが憎かった。羨ましかった。何故、私だけ白い髪なのか。私だけこんなにも弱く産まれてしまったのか。それでも私は頑張ってきた、耐えてきた。なのに結果がついて来ない。どうして・・・。

 

 

悲しみの感情と憎悪が入り乱れて、心がぐちゃぐちゃにかき混ぜられる感覚に陥る。そんなとき、不意に母の言葉が頭に浮かんだ。そうあれは母が死ぬ、1週間程前の事ではなかっただろうか。

 

 

(ねぇ、ルキア聞いて。貴女、その髪の事で落ち込んでいるんじゃない?)

 

 

そうですお母様。私は確かにアルビノで髪色が薄いですが、お母様のように真っ白という訳でもありません。薄汚い灰色です。何故、私はこのように醜いのでしょう?

 

 

(・・・ルキア。今から魔法の言葉を教えてあげる。もし辛くなったら、この言葉を思い出して。)

 

 

そうだ、あの時お母様は。

 

 

(貴女は特別。誰も持っていない物を沢山持ってる。だから、落ち込まなくていい。貴女は、それを誇りに思っていい。人に追い付こうとして走らなくてもいいの。自分に合わせた生き方をしなさい。後、友達を大切にね。沢山作っておくだけ損はないわ。それに━━━━)

 

 

こう私に言ってくれました。

 

 

何年も前のことなので最後の方、何とおっしゃっていたかは忘れてしまいました。しかし、母は自分を過小評価するなと言ってくれていた。それだけは間違いありません。それと、友達を大切にしろともおっしゃっていた。

 

 

泣いている場合ではない。せっかく出来た友達の足をこんなことで引っ張る訳にはいきません。それに落ち込んでばかりでは、死んでしまった母にも申し訳が立たない。

 

 

私は腕で目元の涙を拭い、起き上がった。そして、急いで玄関へと向かう。靴をちゃんと履けずに外へと飛び出してしまいましたが、今はそんなことを気にしている余裕はない。

 

 

「こ、こともさんは・・・?」

 

 

慌てて辺りを見渡してみますが、それらしき影は見えない。おそらく、私の言いつけ通り一人で探索しているのでしょう。私はなんということをしてしまったのか。あんな小さな子に夜中の町を一人で徘徊させてしまうとは、人として最低です。早く見つけてあげないと事態はドンドン悪化していくあまりです。

 

 

道に出てみてもやはり姿は見えません。私は手当たり次第、町を探索した。近くにある仏壇の所にも、町全体が見渡せるほど高い丘、この町唯一のコンビニエンスストア、大通り、商店街などあらゆる場所を捜索しても見つかりません。

 

 

「はぁ、はぁ・・・一体何処へ・・・。」

 

 

お願いです神様、どうかあの子と合わせて下さい。でなければ私は取り返しのつかないことをしてしまうでしょう。どうか、どうか・・・。今まで神様に祈ったことなどありませんが、今回ばかりは流石にお手上げです。町中を捜索したのに、全く見つからないとなると・・・。

 

 

すると、まるで祈りが届いたかのように何処からか声が聞こえてきました。しかし、声ははっきりとは聞こえず、小声で話しているかのようなひそひそとした音しか聞こえません。立ち止まりながら注意深く、耳を傾けるとそれはなんと頭の中に響いていることに気が付いた。そして、それはこう語っているように聞こえました。

 

 

『あの子は鉄の建物にいる』

 

『袋の怪物がさらっていった』

 

『ヤツから少女を奪い返せ』

 

 

声は何重にも重なって響いていて、私にはこの三つの言葉しか聞き取ることが出来ませんでした。しかし、このタイミングでいきなり御告げが聞こえてくるとは流石に怪しすぎます。ですが、このままでは拉致が開かないのも事実。不本意ですが、私はその言葉に従って足を進めました。

 

 

声に導かれるまま進んでいくと、どうやら工場がある方に私は向かっているようです。『鉄の建物』とは工場のことだったのですか。確かに彼処はほぼ全ての素材が鉄で出来ているので間違いありません。そして『袋の怪物』とは恐らく『よまわりさん』のことなのではないでしょうか。

 

 

噂話では夜遅くまで子供が歩き回っていると、よまわりさんがやって来て何処へ連れ去られてしまうらしい。今までは私が隣に居たため、連れ去る隙がなかったのでしょう。しかし、私が少しを目を離した隙にやられてしまった。

 

 

私の推測ではこんなところでしょうか。『よまわりさん』は危害を加えてくるような怪物ではないはずですが、何もしてこないというのは有り得ません。一刻も早く工場に着かなければなりません。

 

 

現在、私は商店街に向かう方面の一本道を進んでいます。少し小走りで歩いていると、急に気温が上昇した。今度はいつものように少し上がった訳ではなく、石油ストーブをつけた時のように火照るような暑さだった。

 

 

そして、頭に響いていた声が急に途絶えました。嫌な予感しかしません。周りを見渡して見ますが特に変わった様子はありません。再び私は前方へと目を向けるとそこにはナニカがいた。明らかに今までに見てきた者達とは別物の何か。

 

 

それは両生類のような見た目をしていて例えるならサンショウウオかウーパールーパーに近い形をしていた。しかし、色は火山岩のような黒色で所々から朱色の模様のような色が確認できます。それだけではありません。全身には両生類にはないゴツゴツした煙突のような突起物がズラリと並んでおり、そこから黒い煙を噴射していた。

 

 

そいつが一歩一歩、此方に足を進めると徐々に気温が上昇していく。額から汗が滴る感触がします。それと同時に背中にゾワリと寒気が襲い掛かってきました。

 

 

初めてでした。これ程までの殺気を感じたのは。怨霊とは比べようにないほどの凄まじい圧力が私を威圧してくる。後ろを振り返ると、影達の姿が消えていました。いつもならば、頭がサイレンのように回転している影が2体ほど徘徊しているはずなのに。恐らく、この化け物が出現したことが原因でしょうか。影からも恐れられているなんて・・・。『よまわりさん』と同様に異質な存在のようです。

 

 

はっ!?こんなことを考えている暇はありません。一刻も早く逃げなければならないのに、何をやっているのでしょうか。ですが、このままでは向かう先の工場から真逆の方向にしか逃げることが出来ないため、目的の場所から遠ざかってしまいます。どうにかヤツの気を反らさなければこともさんの命が・・・。

 

 

両生類のような化け物は徐々に此方に向かう速度を上げており、今すぐ走りだしでもしたらあっという間に追い付かれてしまうかもしれません。そして、なにより気温が上昇しているせいで体力が奪われています。私は一か八か足元に落ちていた小石を拾い、森の中へ投げつけてみました。

 

 

当然ながら化け物は見向きもしません。それどころか、ヤツを刺激してしまったのか凄まじい速度で此方に向かってきました。そして、こちらを掴もうと右腕を伸ばしてきました。

 

 

「グッ・・・!?フッ・・・!」

 

 

間一髪、前に横転することで攻撃を避けることに成功し、それどころかヤツの裏側に回ることにも成功したのでこれで逃げながら、工場へと向かうことができます。

 

 

「急がないと・・・!」

 

 

私は全速力で駆け出し、ヤツから遠ざかろうとしました。しかしヤツもただ、黙ってみている訳ではなく、此方に向かって突進してきています。は、速いッ!このままでは、追い付かれるのも時間の問題です。何か別の手を考えなければ、しかしこの状況を切り抜けるには一体どうしたら?

 

 

すると、後方でズドンという巨大な物体同士がぶつかり合ったような音が聞こえてきました。振り返るとそこには別の存在があの怪物とにらみ合っていました。それは桃色をした肉の塊のようなナニカ。肉の中心には縦に割れたようにぱっくりと穴が空いていて、そこにはおびただしい数の歯が並んでいます。さらに口の中心には仮面のような物体がくっついており、まるで目玉を表しているようです。

 

 

また別の怪物・・・!?しかし、これは好都合です。幸いヤツらはお互いに敵対しているようで此方に見向きもしません。すると、あの両生類の姿をした化け物が肉塊の化け物に噛みつきました。負けじとその肉塊も噛みつきを振りほどき、体当たりを仕掛けています。その戦いにより、気温が先程の2倍くらい上昇した気がします。

 

 

「暑ッ・・・!」

 

 

このままでは焼け死んでしまいそうです。私は戦闘をしている隙に、町の外れにある工場に向かって全速力で走りだした。

 

 

ですが、先程まで声に導かれるままに進んでいたものですから、全く工場があるのか検討がつきません。さて、どうしたものでしょうか・・・。すると、私から50メートルほど離れた場所に人影のような物が出現しました。それはあの電車に乗っていた軍服姿の男だった。しかし、頭が人間ではない。黄金色のトカゲのような頭をしていおり、とても人間とは思えない外見をしていました。

 

 

その男は何も言わず、私から見て左斜めの方向に指を指しました。まるでそちらに行けと指示しているかのように。すると、その男は姿を消し、一瞬にして指差した方向の道へと移動していました。また彼は何かを指して立ち止まっている。

 

 

「彼処に行けということでしょうか・・・?」

 

 

私は何故かその男の言うとおりに進んでしまった。確証はないのですが、あの男は信用できる。そんな気がしたのです。それにあの男は会ったことは一度もないはずなのにどことなく見覚えがある。いつ、何処で会ったことも分からないのに何故・・・?

 

 

今度はその男の指差す方向に導かれていく。私が指差す方向に向かうごとに男は向かう先を示してくれた。そして、気が付くと私は廃工場のような場所へとたどり着いていました。恐らくここが工場・・・!

 

 

「あ、あの、ありがとうございまし・・・!?」

 

 

道案内をしてくれたお礼をようと振り返ってみると男は消えていました。何故あの人は私達に協力してくれる気になったのでしょうか。色々と謎は残りますが、私はこともさんを救うことに集中することにしました。

 

 

ですが、私の力ではこの大きな鉄の門を開けることは非常に困難です。何しろ、ただでさえ重い鉄で出来ている大きなゲートなのに、下に取り付けられている滑車は錆び付いているので、びくともしません。よく見ると、ゲートの取手の部分に大きな南京錠が取り付けられています。

 

 

どうしたものかと悩んでいると、門の向こう側の暗闇から誰かが走ってきています。どうやら少女のようです。赤いリボンにウサギのポシェット・・・それは私が探し求めていた人物でした。

 

 

「こともさん!」

 

 

私は反射的に大声で彼女を呼んでいた。少女は気づいたのか、速度を上げて此方に向かってきています。こともさんは必死な表情をしていて、まるで今まで何かに追われていたかのようでした。こともさんはポシェットから鍵のようなものを取り出し、それを南京錠にかけた。すると、ぴったりと型が合い、錠前が外れた。

 

 

「待っててください。今開けますので・・・!」

 

 

私は全身に力を入れ、ゲートを掴み開閉を試みました。そして、何が外れたかのようにガタンと音がした後、ゲートの重量が軽くなり簡単に開けることが出来ました。 こともさんが飛び出してきて、私の太ももに抱き付いてきました。

 

 

「ちょ、ちょっと・・・。」

 

 

「お姉ちゃん・・・怖かったよぅ・・・。」

 

 

彼女の声は若干震えており、今にも泣き出してしまいそうな声でした。手にはくしゃくしゃになったお守りのようなものが握られている。何があったのか聞こうか悩みましたが、私の方も大変だったことも踏まえて今は何も聞かないことにしました。ひとまず、彼女を家に連れ帰ることにしましょう。話はそこで聞くことにします。

 

 

私はこともさんの手を繋ぎ、彼女の自宅へと足を進めた。私はこの後大事な親友に悲劇が訪れることをまだ知らない。そして、また少しだけ気温が上がったような気がしました。





はい、工場編は分岐して迎えにいく側です。因みにこともさんは原作どおり、よまわりさんにさらわれますがサンショウウオのような化け物が出現したことによってあまり、工場内では襲われておりません。

そして、問題。海の中で秒速泳ぐ魚の中で最速の個体はなんでしょう?答えは次回まで。
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