夜廻 振り返ってはならない夜の道   作:はるばーど

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前回の問題の答えは「ゴキブリ」です。カマキリはともかく、セミが近い仲間って知った時はちょっとショックでした………。もし、食事中の方がいたなら申し訳ない。


今回は『夜廻』の本編完結の場面です。それでは、本編どうぞ。


終章 夜明け そして始まり

 

あの後、私達は一旦自宅へと引き返した。話を聞く限りどうやら彼女は私の推測通りに『よまわりさん』によって、工場へ連れ去られてしまったようなのです。それは、一瞬の出来事で工場で目覚めるまでさらわれたことにすら気付かなかったそう。ですが、工場の中では幾度か襲撃にあったようですが私よりは被害に会わずに済んだようです。

 

 

むしろ、大変だったのは此方のようです。怨霊ではないもの二体の喧嘩を目撃し、謎の亡霊に導かれたなど端からみれば、不運の連続だったと思われるでしょう。ですがこともさん標的が良かったと思うことにします。私がよまわりさんの気をそらすことができた。そう思っておきます。

それに彼女以外にも男の人がいて出口まで付き添ってくれたと話していました。どうにも怪しい雰囲気を漂わせていますが、こともさんを保護してくれたのも事実。余計な散策は辞めておきましょう。

 

 

あの化け物は一体なんだったのか。今となると正体が気になるところですが正直、調べている場合ではない。しかし、もうこれ以上町に存在するであろう古い廃墟や事故現場など怪しい場所は全て行ってしまいました。後、残すとなるとこの町の山でしょうか・・・?ですが、あそこには古いトンネルがあるだけで特に何かある訳ではありません。まさか、ここにきて捜索する場所がないという問題に直面してしまうとは・・・。

 

 

考えてみても仕方ないので手当たり次第、もう一度こともさんと共に町を探索してみることにしました。早速、玄関から外へ向かおうとすると、前方の階段からズルズルと何かが這い上がってくる音が聞こえました。なんと、家に上がり込んできたのはあの『よまわりさん』だった。

 

 

今まで家にだけは侵入してこなかった化け物ですが、とうとうここまで来てしまうとは。私は青ざめて、こともさんを反射的に抱き抱えた。そして、よまわりさんを横切って玄関へと走った。しかし、アレは全く追いかけてくるような様子はなく、此方を一点に見詰めている。そして、気が付くとよまわりさんは姿を消していました。そこには何か紙の切れ端のようなものが置いてあった。

 

 

私は一瞬、思考が鈍った。あまりにも予想外の出来事だったので、困惑してしまったようです。その証拠に後ろにいたはずのこともさんが紙切れ を持って私の前に立っていた。色々な事を考えていたものですから、全く気が付くことが出来ませんでした。

 

 

「・・・?ルキアお姉ちゃん、大丈夫?」

 

「え、えぇ、もちろん大丈夫ですよ。心配掛けましたね。」

 

 

と彼女に言い聞かせましたが、実のところ、あまり万全の状態でもないのです。理由としては、あの声が未だに頭の中から響いてくるのです。しかも、前回に比べて囁く声の数が明らかに増えている。五つほどだと思っていた声が今では八つほどまで増えている。正常に思考することすら、正直ままならない状態です。

 

 

ですが原因が分からない以上、解決法がないのも事実。大丈夫、気にしなければ問題ないはずです。私は一旦、頭に響く声のことは忘れ、差し出された紙切れに記されている内容を読み上げました。

 

 

その紙切れにはこう書かれていた。

 

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

さらわれたひとは

 

トンネルのむこうへ

つれていかれる

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

 

この書かれていた内容を見た瞬間、私は確信しました。間違いありません。こともさんのお姉さんは、この町の山へと続くトンネルへと連れ去られたみたいです。このトンネルには一度、入り口までは行ったことがあります。トンネルの奥は暗く冷たい道が何処までも続いていて、肉眼では確認できないほどの闇と霧が立ち込めていたのをよく覚えています。

 

 

実は行った時期はつい数時間前。家出をし、途方に暮れていた私は町を亡霊のように彷徨いていたときに、あのトンネルにも訪れていたのです。その時は、ただの不気味な場所とばかり思っていたのですが盲点でした。

 

 

そうとなれば、グズグズしていられません。私達は急ぎ足で玄関から飛び出して、例のトンネルへと向かった。

 

 

 

△▼△▼△▼△▼△▼△

 

 

 

今、私達は例のトンネルの直前まで来ている。昼間見た時もかなり不気味に感じていましたのに、丑三つ時の今ではより鬱蒼と闇が広がっていて、今にも闇の中へと吸い込まれてしまいそうな雰囲気です。そして、途中の道で多量の血が飛び散っていた場所を見掛けました。そこを通るとこともさんがすぐにでも泣き出してしまいそうな表情を浮かべたので私は何も聞かなかった。何があったのかは大体想像できます。彼女に取って辛い場所なのです。

 

 

しかし、臆することなく私達は闇へと続くトンネルへと足を踏み入れた。懐中電灯の光を持ってしても、トンネルの出口処か足元すら霞んで見える。闇へと一歩一歩、近付く度に霧が立ち込めていることに気が付いた。延々と続くそれは、まるで私達を出口へと行かせまいと思えるほど、濃くなっていく。

 

 

これ以上進んでいけば、もう2度と帰ってこれないのではと不安と衝動に駆られる。しかし、後戻りもできないのも事実。怯えることすら私には許されていない。そんな気がするのです。

友と呼べる彼女の為にならどんな事をしたって、どんな罪を犯したって構わない。失うものなんてもうとっくのとうに失っているのだから。兎に角、命に掛けても彼女とその家族の安全だけは絶対に守り抜く。

 

 

トンネルの中央部分に差し掛かった頃でしょうか。とうとう懐中電灯の明かりすらも、届かなくなり、進むのを断念しかけていたその時、左の壁際に祠のような物が私達を待っていたかのように霧の中から出現したのです。

 

見たところ、いかにも神聖な建造物であることが分かりますけど、祠というものは普通神社かお寺のてっきり近くにあるものだと思っていたので、このようなトンネルという只の穴にポツンと配置されているそれを見ているだけと何故だがモヤモヤするような気分になりました。

 

 

すると、左で私の手を握りしめている筈のこともさんの方面から光が漏れている光景が視界に飛び込んできたのです。私は驚き、改めて彼女の方を向くと、なんともうひとつの手のひらに握られいた布の御札が光輝いていたのだ。何故この場で......?祠が関係しているのは火を見るより明らかですが、何かが起こっていない限り不思議な力は発揮されない。それは、あの百足の神様が教えてくれたのです。

 

 

思考に耽っていると、こともさんが何のためらいもなく、御札を祠へ翳しました。そして、御札の影響なのか、暖かい光が辺りを包み込みました。

 

 

「...え、今どうやって......。」

 

 

こともさんに質問を投げ掛けようとしていましたが、何かの音に遮られた。それは、後ろから怪物が接近してきている時によるもの。ズリズリと何かを引きずる音。現実世界ではこのような生々しい這いずり音は聞こえない。しかも、私はその這いずり音に聞き覚えがあった。

 

嫌な予感がし、振り返ると『よまわりさん』が全速力で此方に向かってきていたのです。それにアレは今、肉だるまのようなブヨブヨの見た目になっているのが黙認できます。ですが、あの姿になったのを見たのは化け物と紛争しているときだけであって、普段は温厚な軟体動物状の姿をしています。

 

 

こともさんの顔が徐々に青ざめていきます。どうやら、彼女も私とはぐれている間にヤツに一度出会ってしまったようです。でなければ、このように全速力で走って逃げはしないでしょう。

……ん?気づいた時には、こともさんは全力疾走で私の前方を駆け抜けており、手のひらにいた筈のこともさんは既にいなかった。

 

 

「全く、こともさん……!」

 

 

多少悪態をつきながらも、私も続いて走り去る少女を追いかける。少し先を走っていたこともさんは二つ目の祠を発見し、札を翳していました。明るい光が辺りも包み込むも、アレが怯む様子は微塵も感じられない。それどころか、今度は前方から大きな物体が近付いてきていた。

 

 

それは「手」だった。

道路や商店街で見掛けた黒く小さめの個体ではなく、そのまま手首を切り落として、意思を無理矢理宿らせたかのようにおどろおどろしい見た目をしていました。大きさはあの手の2倍以上はある。そして、あの黒い手と共通していたのはやはり、手首に目玉がくっついていたことです。

 

 

此方の存在を確認したのか、ソレは目玉をギョロリと此方に向けると今にも襲い掛かろうと体(?)を震わせていた。私は、こともさんを抱えて逃げようと試みようとした瞬間、目の前の腕が何者かに吹っ飛ばされ、視界から消えた。

すると、今度はよまわりさんが立ち塞がっていて、此方に向かって襲い掛かろうとしていた。

 

 

「ちょっと!貴方は一体何がしたいのですか!?」

 

 

私はとうとう我慢できなくなり、ずっと思っていた疑問を彼に投げつける。当然、返事なんて返ってくる訳ないのに。

訳が分からない。よまわりさんはあの化け物達と敵対している事は確かなのに、かと言って私達の味方でもない。全く持って、彼の行動の予測が付かない。法則があるようにも思えませんし、感情のままに行動している訳でもなさそうなのです。

でも、私はその予測不可の目的がよく分からない行動を見ていて、なんとなく自分に共感できる部分があるように思えてしまいました。最終的な目標が決まっていなくて、ただ目の前にやりたいことがあれば、すぐにでもそれを実行する。

……つまり、答えをまだ見出だせていない。

 

 

 

 

 

 

そういえば……私の求めている「答え」とは一体何なのでしょうか。

 

 

 

 

 

 

確かに私は今まで、大切だと思う人の為に戦ってきた。それが私に与えられた使命だと自分に言い聞かせて胸に刻み込んできた。でも、違った。その偉大な使命を果たすにはあまりにも私は貧弱すぎるのです。脆くて自分に腹が立つほど。

仮にこの後、こともさんのお姉さんを救出出来たとしても、その後は?

あの地獄のような生活に戻るしかないのでしょうか。毎日学校で罵られ、馬鹿にされ、家では仕事の疲れで頭がおかしくなってしまった叔父に打たれるあの日常に戻る?考えたくもありません。しかし、そうでもしないと私一人では生きていくことすらままらない。何処にも私の居場所はない。

 

 

ならせめて、友達ぐらい救って死にたいものです。もう、父や母が私の元を去った時点で自分の生きている価値は失くなってしまったのかもしれませんね。現に周りからも「生きている価値なんてない」と言われてしまうので。

 

 

微かに声が聞こえます。誰かが私を呼んでいる。徐々に頭がはっきりとしてくるとこともさんが必死に私を呼ぶ声が頭の中に響き渡る。朦朧とした意識をはっきりさせるとあの「手」の化け物と「よまわりさん」が争っていた。此方には目も暮れず、戦い続けています。

 

 

「ルキアお姉ちゃん・・・!は、早く逃げよう!」

 

「え、えぇ!今のうちに行きましょう!」

 

 

私は少女の手を引き、ぼうぼうと生い茂る草むらへと突貫していった。塞がっていない片方の腕で草を掻き分けながら、進んでゆく。

自分達が今現在、何処にいるのかすらもう分からない。こんな場所、地図にすら載っていなかったのです。やっと草むらから脱すると今度は石段で出来たとてつもなく長い階段へとたどり着きました。所々に鳥井が確認できることから推察するに、ここはかつて神様を祀っていたところなのかもしれません。

 

 

「お姉ちゃん!後ろから来てるよ!」

 

「ッ!?」

 

 

足止めをしていてくれたよまわりさんはどうしたのか。あの「手」の化け物が後ろの草むらか迫ってきていた。迷っている暇はありません。私はこともさんを連れ、長い階段を駆け上がる。だが、ヤツも負けじと階段をよじ登りながら追いかけてくる。

 

 

少し進むと階段から脇道へと逸れる道があった。そこにはあの祠が静かに佇んでいた。すると、再びこともさんが握りしめている御札が光を放ち始めたのです。すると、先に進ませないと言わんばかりに、「手」がもう一体進行方向から迫ってきていた。

 

 

「こともさん!札を、御札をまた祠に翳して下さい!」

 

「う、うん!」

 

 

彼女は私の指示どおり、祠へと向かい御札を翳す。暖かい光が溢れだし、「手」の化け物は姿を消した。このまま、撃退を繰り返しながら進むしかなさそうです。それまで、彼女の援護に当たりましょう。

 

 

私達二人は全速力で長い長い、石段の階段を駆け上がっていった。

 

 

 

 

 

 

△▼△▼△▼△▼△▼△

 

 

 

 

 

 

最後の祠に光を灯し、長い長い石段にも漸く終着が訪れようとしている。やはり、最後に待ち受けていたのは巨大な鳥井とお参りをする神社でした。ですが所々崩壊しており、かつて放っていたであろう神々しさは既に失われています。そして、私達は遂に見付けたのです。お参りをする参拝箱と本坪鈴の前に彼女の姉が倒れているのを確認した。

 

 

「……ッ!!見つけた……!」

 

「お姉ちゃん!」

 

 

しかし、そうはさせまいと言わんばかりに、地鳴りが響き出し、私達の行く手を阻み始めました。そして、ついに正体を現した。この事件の元凶が。眩い光と共にソレは姿を見せてきた。

なんともグロテスクな見た目でしょうか。ソレは「顔」だった。ですが、只の顔ではありません。ソレを形成している一部が全て人間で組み立てられているのです。無理矢理、組体操のように繋ぎ合わされている人間達は魂を引き剥がされているのか、かつて顔だった部位にはぽっかりと空洞が相手いた。

 

 

死してなお、永遠の苦しみに蝕まれているなど想像も出来ないし、哀れに思いますが、私達の行く手を阻むならば此方も抵抗するまでです。

そして、ソレは悲鳴にも似た奇声で咆哮して脅しを掛けてきました。すると、祠の時のようにこともさんの御札が光を放ち始めました。そして、辺りには祠が五つある。もしかしたら、これでかの者を静めることができるかもしれません。

 

 

「こともさん、私が時間を稼ぎます。その間に貴女は祠に光を灯して下さい。」

 

「で、でも……そんなことわたしだけじゃ……。」

 

「いいから早くしてください!!そんな怯えた様子では助けられるものも助けられませんよ!?」

 

 

この状況でもまだおどおどとしていることもさんに私は苛立ちを覚え、活を入れるため少々きつめの一言を浴びせた。彼女には以前の自分のように家族という素晴らしいものを失ってほしくなかったから。

すると、彼女は腹をくくったようにポシェットを引き締め、険しい表情へと変わった。

 

 

「うん!分かった!必ずお姉ちゃんを助けるんだ!」

 

 

はっきりとそう言い残し、彼女は祠へと走り出した。

 

 

「………頼みましたよ。………さて、どうしたものでしょうか。」

 

 

そう現在、私はこの化け物に対する対抗手段を持ち合わせていないのです。さらには、知らぬ間に異次元空間のような場所に飛ばされていて、石一つ落ちていない、紅蓮の世界に閉じ込められている。時間稼ぎといったって一体どうすれば……?

 

 

なんとか足止めを出来ないかと模索していると、あの巨大な「手」の化け物が両腕(?)揃って、此方に襲い掛かってきた。

 

 

「グッ………!ッアアア!!」

 

 

襲い掛かってきた腕とは反対方向へ横転し、回避を試みましたが、両腕からの同時攻撃は流石に避けきることが出来ず、片手に捕まり空中へと持ち上げられてしまった。凄まじい力で握り締められ、あまりの激痛に思わず声をあげてしまう。想像以上に力が強く、身体のあらゆる部位がメキメキと音を立てているのです。

 

 

痛い痛い痛い痛い痛い。どうにか抜け出さねば、全身の骨を砕かれてしまいそうです……!

 

 

私は一本だけ拘束を免れた自分の腕で巨大な拳を押し退けようとしてみましたが、全く身体が動く様子は感じられなかった。

すると、脱出を阻止しようと化け物の親指が真上から迫っており、私は必死に抜け出せないかと抵抗するものの、ジリジリと指が近付いてきていた。

 

 

「ちょ、っと待って、下さい。それじゃ、私は……!」

 

 

自分でも命の危機に反応し、目の前の敵に向かって、涙を浮かべて命乞いをしているのがとても恥ずかしい。でも、命を失うという恐怖には勝てなかった。

あれだけ散々、命を捨てる覚悟があるなんてほざいていたのに、いざとなればこの様。これでは、助けられるものも助けられないのは私の方です。所詮、私などこんなものか……!

 

 

そして、親指が頭上にまで近付き、はみ出ている私の左腕を拳の中に収めようと無理矢理押し込み始めました。すると、バキッと嫌な音が左腕から聞こえ、今までにない痛みに襲われた。

 

 

「アアアアアアアアアアアアッ!!!?」

 

 

私は左腕の尺骨を折られてしまった。辺りに自分の悲鳴が響き渡る。遂に押さえていた涙が目元から溢れだし、我慢の限界を向かえた。

 

 

(もうこれ以上は………!)

 

 

もうダメだと思ったその時、あらゆる方向から眩い光が溢れだし、辺りを暖かい光が包み込んでいく。すると化け物はその光に怯み、私を掴んでいた手を離した。無造作に転げ落ちた私だったけど、確信に満ちていました。何故なら、こともさんが全ての祠に光を灯してくれたという合図でもあったからです。

 

 

 

「━━━━━━━━━━!!」

 

 

 

沢山の人の憎悪や悲しみの感情が入り雑じったような悲鳴をあげ、顔の怪物が全身を震わせ始めた。そして、顔の一部一部を構成していた人間の体が剥がれ落ちていく。最終的には全てが崩れ落ち、完全に存在そのものが消滅した。

 

 

気づいたときには、紅蓮のように赤い世界から抜け出しており、元いた神社へと戻ってきていました。やはり、あの空間は化け物が生み出した異次元空間だったのか結局、謎に包まれたままですが今はよしとしましょう。

何故ならば、この長い長い数時間の夜の町を探し回って、探していた者が漸く見つかったのですから。

 

 

「お姉ちゃん!………ルキアお姉ちゃんが助けてくれたんだよ。今度は私達の家に来てもらって三人で遊ぼう。だから、起きてよぉ。」

 

「う、うぅ……………。」

 

「お姉ちゃん!」

 

 

どうやら、意識はあるようです。私はほっとし、その場にへたりこみました。たった数時間ですが、この探索で蓄積された疲労がどっと出たのでしょう。先程まで気にもしていなかった足の傷や、腕の骨折による痛みも思い出したかのように襲いかかってきました。

 

 

「アッ、…………ッツゥ………。」

 

 

あまりの激痛により、私は思わず折られた左腕を反対側の手で押さえ付けた。これではこともさんのお姉さんを担ぐ処か、担がれる側になってしまいそうですね…………。

 

 

「すいません、こともさん。お姉さんを連れて先に帰ってて貰ってよろしいでしょうか?私は腕を折られてしまって、暫くここから動けそうにありませんので。」

 

「………うん、分かった。後で迎えにくるから、待っててね。」

 

「………はい、分かりました。」

 

 

彼女は迎えに来てくれると約束してくれた。でも、私はその思いに答えられそうにはありません。もう、こともさんは私と関わるべきではないのです。これ以上、私という人間を知ってしまえば、どんな対応をするか予測が付きません。さらに言えば、貴方と友であり続ける限り、私は苦しみから解放されることもない。叔父の元へ帰れば、私は朽ちていくのみ。もちろん、私にそのつもりは毛頭ない。

 

 

 

なので…………ここでお別れです。さようなら、私の最初で最後の友達。いつか会えることを望んでいます。

 

 

 

 

瞼を閉じて、生涯の幕を閉じようとしたその時。神社の階段から誰かが登ってくるような足音が近付いてくるのを察知した。そして、徐々に高まる気温。これはすぐに察しが付いた。

 

 

ヤツだ。

 

 

地獄の業火に身を包んだあの燃える怪物が此方に迫っているのです。だが、今さら恐怖する必要もない。そう思っていましたが、段々肺が苦しくなり、呼吸困難に陥った。喉に灰でも入ったかのように激しく咳き込む。

すると、何者かが階段から上がって来た。目視で確認する限り、その姿は男だった。そいつは私を見付けると両手を広げ、歓迎のジェスチャーを表現しながら接近してきていた。しかし、その大胆に気持ちを表現する癖は私には見覚えがありました。

 

 

「よぉ、ルキア。会いたかったぜ。おっとっと、抵抗したって無駄だぜ。何せ、お前は人間。弱っちいただの『出来損ない』だもんな。ウハハ。」

 

 

男が脅しを掛けてくるかのように、目を真っ赤に光らせる。その瞳には憎悪しか写っておらず、すぐにでも世界を焼き付くしたい。そんな感情で一杯だった。

男の特徴は、ボサボサの金髪の髪に垂れ目。それに古臭いジャンパーにジーンズ。年は40代前後。これで確信しました。今、目の前にいる彼は……………。私は反射的に声をあげ、尋ねた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………………父さん?」

 




はい、本編完結です。ここからはオリジナルストーリーが開始されます。相変わらず文章力0の投稿主ですが、是非お付き合い下さい。


因みにルキアと出会った炎の怪物は「マグマサウルス」と見た目は一緒です。分からない方はインターネットで調べてからだと想像しやすいかもしれません。
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