異世界から時の魔王も来たようですよ? 作:じおー
「ーーーこの本によれば、ごく普通の青年・暮合零明。彼にはごく普通に暮らし、ごく普通の家庭を持ち、ごく普通に生涯を終える未来を辿る筈
「ーーーよ、よりにもよってギフト鑑定か。専門外どころか無関係もいいところなのだがの」
黒ウサギからギフト鑑定が目的で〝サウザンドアイズ〟に来たと聞いた瞬間、白夜叉が顔を歪めた。
……あの後、このゲーム盤に住んでいた『グリフォン』を呼び出した白夜叉は逆廻達3人にギフトゲーム〝鷲獅子の手綱〟を提示した。
ゲームの内容はグリフォンの背中に乗って湖畔を1周するとともに、〝力〟〝知恵〟〝勇気〟を示すというもので、春日部が自分の〝命〟を賭けて挑み、見事ゲームクリアを果たした。
その時分かった事だが、どうやら春日部のギフトは動物等の『異種族との会話』や『友達になった生き物から特有のギフトを貰える』といったものらしい。どっちも普通に羨ましいギフトだ。
「こう……魔王パワー的なのでギフトの鑑定とか出来ないのか?」
「な、なんじゃそれは。そも〝魔王〟とは〝主催者権限〟を悪用する者を指しておって、呼ばれる様になったからと言って何かしらのギフトに目覚めるわけではないぞ。〝
「……ん?
「おっと」
「はい。白夜叉様が〝魔王〟だったのはもう何千年も前の話になります。ですので今は〝元・魔王〟という事になりますね」
「なん…だとッ?!」
「なに、美少女の『お茶目な嘘』だ。そう目くじらを立てるでない。
……さて。〝
〝試練〟のクリア報酬としてはちょいと贅沢な代物だが、〝決闘〟の分を合わせれば丁度良かろう」
そう言い終わった白夜叉が2回手を鳴らすと、俺達4人の前に光り輝く4枚のカードが現れる。
逆廻は青、春日部はエメラルドっぽい緑、久遠は紅色、そして俺はシルバーだ。カードを手に取って見てみると、そこには俺の名前と〝
「まさかそれはギフトカード!」
「何それ。お中元?」
「お歳暮?」
「お年玉?」
「お盆玉?」
「ち、違います!というかなんで皆さんそんなに息が合ってるのです!?
これは顕現しているギフトを収納出来るうえに、各々のギフトネームが分かるといった超高価な恩恵です!」
もしかしてとは思っていたが、やっぱりこの〝
……ギフトネーム〝
「顕現しているギフトを収納出来るんだっけ?じゃあ、白雪から貰った〝水樹の苗〟も収納出来るのか」
「うむ。〝水樹の苗〟に向けてみるがいい」
白夜叉に言われた通りにすると、黒ウサギが抱えていた〝水樹の苗〟が光の粒子になってカードに吸い込まれた。
カードを確認すると、溢れるほどの水を生み出す樹の絵と〝水樹の苗〟の文字が追加されていた。
「おぉー、なんか少しオシャレになったな」
「ちなみに、それと一々顕現させずともその状態で水だけを出す事も出来るぞ」
「おぉ、そりゃあ便利だな。……ふむ。白雪に何度も挑んで人数分揃えるのもアリだな」
「や、やめてあげて下さい!」
「冗談だよ冗談。……ん?逆廻、どうかしたのか?」
逆廻が何やら真剣な表情で自分のギフトカードを見ていたので声をかけてみる。何か問題でもあったのだろうか?
「ん?あぁ、ちょっとな。……なぁ白夜叉。俺のギフトカードには〝
「なに?……いや、そんな馬鹿な。ありえん、〝全知〟である〝ラプラスの紙片〟がエラーを起こすなど!」
驚いている白夜叉の横から逆廻のギフトカードを覗き混んでみると、確かに逆廻の言う通りギフトカードには〝
……というか今〝ラプラス〟とか聞こえたけど、もしかしてあの〝ラプラスの悪魔〟の事だろうか?
「なんにせよ鑑定が出来なかったって事だろ。 俺的にはこの方がありがたいさ」
「ふーん、変わってるな。まぁ、〝全知〟がエラー起こすって事はそれなりのギフトなんだろうな」
「納得は出来ぬがこの件は後回しで良かろう。小僧の件で忘れていたが零明、お主のギフトについても気になっていたのだ。永き時を生きる私でさえ検討もつかぬからの。
まさかお主までエラーということはあるまーーーっ!?」
「……成る程な。通りで
「ははは、まーな」
「……零明よ。お主は一体何者なのだ?」
「んー、そうだなぁ………。ひょんな事から『最低最悪』・『最高最善』・『最大最強』の魔王の力を持ったごく普通の一般人。ってとこかな?」
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〜side 〝フォレス・ガロ〟〜
「ーーーギャ、ガッッッ!??」
夕日の差し込む〝フォレス・ガロ〟のとある一室。部屋の主である『ガルド・ガスパー』の首筋に、金髪の女性が牙を立てていた。
最初は苦悶に身体を震わせていたガルドだったが、やがて意識を失ったのかピクリとも動かなくなる。
「……確かに鬼種のギフトを与えたぞ。……それと」
『
女性は懐から赤い鳥の様な顔が描かれた時計の様な物を取り出すと、意識のないガルドの胸にそれを押し込む。
時計の様なソレは、ガルドの身体を傷つける事なくすんなりと胸の内側へと入りこんだ。
「さてさて。私にお前達の可能性を見せてくれ、新生〝ノーネーム〟」
「本来、この世界に存在する筈のない、【仮面ライダー