本日も異常なしであります!に転生した件 作:アネット大好き
オーディンすこ。作者さんもすこ。ほんとに応援してます(鋼の意思)
どこからか音が聞こえる。
だが、とても眠たい。
意識がはっきりしない。
何も考えられない。
…………眠ろう。
また、起きた。
さっきより、眠気はましだが依然眠い。
よく覚えていないが、眠って、覚醒してを繰り返している気がする。
あぁ、やはりだめだ。
……………眠い。
目を閉じよう。
「……ら、……………いわね。…………よ」
「…………う……。…………………だな」
うっ。
何なんだ。
俺は一人ではないのか。そこに誰かいるのか。
だったら教えてくれ。ここはどこなんだ。
なぜ俺は眠っているんだ。
こわい、こわいんだ。
生きているのか、死んでいるのか。
どちらの実感もわかない。
俺は死んでいるのかと不安になる。
だれか、ここから出してくれ。
助けてくれ。
だって、ほんとうに怖いんだ。
自分が誰か、わからなくなってくるのは。
「ていう生まれなんだわ。俺ってさ。
そこんとこどう思う?我らが級長、クロード君」
「……ぶふっ。す、すまん!
そ、そうかそうか。つまり纏めるとこういうことか。
お前は1回死んだ記憶がある。
前世の記憶があって、なぜか目を覚ましたらこのフォドラでもう一度生を受けたって訳だ。
…………ぶふっ。あは、あははははは!!」
「いやー、信じてもらえないとは思ってたけど、
そこまで笑われるとも思ってなかったわ。
てか、そんなに面白い?
もし俺が真剣に相談に来ているクラスメイトだったら今頃きっと傷ついちゃってるぞ~。
……でも、なんだか、クロードの笑い方って、ふふっ。
こっちまで、つられて笑っちゃうような………、あは、あははは!!」
「「あはははははは!!!」」
ガルグ=マク大修道院。
レスター諸侯同盟、ファーガス神聖王国、アドラステア帝国の三大国の中央に位置するセイロス教の総本山。三大国から集った未来を担う若者たちを育成する士官学校としての側面を持っている。また、セイロス騎士団という精強な騎士団を擁し、フォドラの秩序を乱すものを排除する役割も担っている。
そんなガルグ=マク大修道院が新しい士官学生を迎える日。レスター諸侯同盟の次期盟主であるクロードは入学日早々、見知らぬ生徒に声をかけられた。
「レスター諸侯同盟次期盟主であられるクロード様と見受けられる。初対面で失礼だが、よかったら俺と食堂で腹を割って話さないか?」
と言われたのだ。
なぜ俺のことを知っているのか。
お前はいったい誰なのか。
ヒルシュクラッセのクロードか、はたまたレスター諸侯同盟としてのクロードどちらに対して用があるのか。
なにより、いきなり腹を割って話そうだなんて不審にもほどがあった。
だが、今回はたまたま。
いきなりそんなことを言ってくる人物への興味が不審を上回った。
(腹を割って話すつったって、まずお互いをある程度知ってからじゃないと割る腹もないだろ……)
どこにでもいるような風貌の人物(制服から判断するに同じくヒルシュクラッセの新入生)に似合わず、突飛な発言をした者。
その者が俺に声をかけてきた真意が知りたくなった。
それが誘いを受けた、現在食堂で席を共にしている理由。
「で、だ。
お前のその特異な出自は置いておくとして、
まずは自己紹介でもしないか?
そっちは俺を知っているようだが、俺はお前を知らない。
それは少しばかりフェアじゃないと思うんだが」
「たしかに、その通りだね。
よしっ、じゃあ自己紹介させてもらうよ
俺の名前はロバート。父はセイロス騎士団に所属していて、母は教団の修道女さ」
ロバートと名乗った男は、どこにでもいるような人間に見えた。茶色の髪に、茶色の目はフォドラにおいてごく一般的だ。それこそ、街にいれば市民に。商いをしていれば商人に。
その父母の所属を伝えられた後には、騎士団の見習いと言われたら、確かに少しそう見えるような。
「お前の両親はセイロス教団の関係者か。
……珍しいな。
セイロス教団の生まれは、そのまま教団か騎士団に所属するものだと思っていた。
どうやらお前は違うらしいが」
そう聞けば、なぜかロバートは少し嬉しがっているように見えた。
「普通はそうだよ
俺のように士官学校に入学するのは稀だろうね~」
なにか含みがある言い方をされた。
二人の座っているテーブルにはずいぶん前から手付かずの食事が残っている。どうやら最初のロバートの特異な出自話をされてから随分時間がたっていたようだった。過ぎる時間に意識がいかなくなっているくらいには、クロードにとってこの会話は不愉快なものではなかったらしい。
「おいおい。
初対面にもかかわらず、いきなり腹を割って話そうって言いだしたのはそっちだろ。
なのに隠し事をするのか?」
「ありゃ、これは一本取られた。
ん~、話してもいいんだけどね……」
ロバートは勿体ぶるようにそう言う。
これまでの途切れのない会話のテンポをここにきて急に落とした。
「でも、クロード君って。
自分から暴かれに来る秘密より、秘密を暴きに行くほうが好きそうだったから」
「…………ハハっ」
クロードは思わず、笑ってしまった。
確かにクロードという人物の好みとして、秘蔵されている秘密を知る・真相を暴くというものがある。それも誰しもが知らないような大きな秘密に対しては余計に興味がわく。
だがクロードは、ロバートがもったいぶる秘密に対して笑ったのではなかった。
|この状況を用意したロバート自身を暴いてみたくなったのだ《・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・》
彼はどこからかは知らないが、前もってクロードの事を知っていた。それは今回、入学日早々に向こうから話しかけてきた経緯から言って間違いない。その前もって知りえた情報の中には、クロードという人物が謎を好むということも織り込み済みだったのかもしれない。
そしてロバートはこの状況を作った。
初対面で「腹を割って話そう」などとクロード好みかつ、気を引くように言ってきたのもそう。
そして、出自の話でこちらを笑わせつつも、この今までの会話はこの着地点につくように意図されていたのだろう。クロードがロバートという人物に興味を持たせるために。
「……オーケー。わかった。
俺はまんまと策にはまったわけだ。
俺の負けだ。降参降参っと」
「さ、策?
ちょっと何のことだかわからないけど。君が楽しそうだからいいか」
クロードは改めて、体面に座っているロバートという人物を正面から見つめた。
茶色の髪と目。それくらいしか捉えていなった印象が改められる。よくみるとその顔立ちは平凡だが、愛嬌があるように思えた。その目は笑っていると穏やかな印象を与える。椅子に座っている状態からだが、その身長は平均的なものだと分かった。ただ、少しがっしりしている気がしないでもない。父がセイロス騎士団だといっていたし、鍛えられていたのかもしれない。
今はとぼけているが、きっと俺はロバートの策に嵌っていた。
ロバートに対して警戒する心はある。どういった意図で接近してきたかによっては、対策をしなければいけない。なにせクロード自身も秘密を有する身だ。いつか叶えたいと思い描いている夢がある。レスター諸侯同盟次期盟主という立場もある。
特にクロードの夢に関しては現段階では誰にも知られてはいけない以上、必然警戒度は上げなければいけない。
だが幸いにも俺たちは同じクラスで過ごすことになるらしい。
ヒルシュクラッセで、何年かクラスメイトとして付き合っていく期間がある。
時間はたっぷりある。
秘密はこれから暴けばいい。
そう思った。
「なにはともあれ、俺の名はクロード。
お前とはこれから同じヒルシュクラッセという学び舎でクラスメイトの間柄になる。
まぁ、これからよろしく頼むさ」
「あぁ!
こちらこそよろしく頼む」
お互いにテーブルの上に身を乗り出して、握手をする。クロードの方から先に握手を求めたのにかかわらず、相手の方がテーブルに身を乗り出していた。その先をたどっていくと、それは嬉しそうに笑みを浮かべているロバートの顔が見えた。
(ったく。その笑顔はほんとか、嘘か。どっちなんだろうな。
……俺がお前を暴くように、お前も俺を暴きに来ているのか。
言っておくが、俺の秘密を暴くのはちょっとばかし骨が折れるぜ、ロバート?)
クロードはこれからの士官学校生活が、少し楽しみになった。