【完結】がっこうぐらし!RTA/卒業生チャート+α   作:兼六園

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己の回

 前回までのあらすじ

 

 ガバ「なんだこいつぅ~~~wwwww草wwww草wwww草wwww草wwww」

 記録「んぴゅ……。(絶望)」

 

 

 実は感染も想定内なRTAはーじまーるよー。

 

 確かにこのRTAはゆきちゃんが幼児退行しようがりーさんのメンがヘラろうがみーくんがマジレス厨になろうがくるみ姉貴が感染しようが問題なく高校を脱出することは出来ます。

 

 でもそれはガバる理由にはならないよね。罰として芸術になれ、ライナーお前なら出来る。

 

 ──ええ、はい。感染は想定内ですね。そもそも、何十とある『がっこうぐらしRTA』にも感染者チャートはあるじゃないですか。

 それを原作ヒロインに当て嵌めればどうとでもなるんですよね。ついでに言うと、あくまで高校編RTAなので大学編から徐々に戦力にならなくなるとしても全く問題ないんですよ。

 

 寧ろ高校編だけに絞れば、感染者ボーナスでステータスが上昇してるのはうまあじです。

 7日目と脱出イベントの強制ラッシュでの良き戦力となるでしょう。

 

 そいだら地下室の調査に行こう!な6日目です。とはいっても地下室はまあまあ広く、物資を一人で持ち帰るのは無謀なので、今回は既に地下室の構造を把握している三人に加えて……Kでも連れていきますか。

 

 残りにはくるみ姉貴と待機してもらいます。原作同様に薬を打って翌日に回復とかいう恐ろしい生命力をしているくるみ姉貴ですが、昼飯を食うまでは部屋から出られません。他ヒロインが見張っているからですね。

 

 今からいいもん持って帰ってきてあげるからちょっと待っときや、大人しくしてないとご褒美は無いんだぞ?(ガバ穴の御霊降ろし)

 薬を取りに行っただけで碌に調べられていない地下室には冷凍室があり、そこにはステーキの冷凍食品などが配置されています。

 

 好感度上昇、空腹解消、ストレス減少と、とりあえず出しとけば得な料理ですね。

 

 そんなわけで再度地下室を調べる裏で──このpartを編集するついでに、この段階での古木くんに対する各ヒロイン達の感情なんかを調べておきましたので解説します。

 

 先ずはスミコですが、こいつの感情は意外なことに、今のところ恋愛感情皆無です。スミコが向けている感情は『執着』で、古木くんの剣術に惚れ込んで限界オタクと化しているんですね。

 

 次いでゆきちゃん。この子は『友人』で、若狭姉妹は『恩人』です。そしてみーくんが『同情』で、Kは『恩人』

 めぐねえが『愛情』、最後にくるみ姉貴が『相棒』ですね。太郎丸? いやあの犬オスだしそもそもヒロインじゃないから(辛辣)

 

 一番警戒するべきなのは、当然ですがスミコの『執着』です。

 古木くんの剣術オタクなので上手いこと説得や誘導をしておかないと、7日目のラッシュ時に古木くんには2階で迎撃させるので、3階の防衛をやらせたとき動かない可能性があるんですよね。

 

 逆にめぐねえの『愛情』は今のところ恋愛感情ではなく友愛の類いなので放っておいても問題ありません。更にはくるみ姉貴の『相棒』も恋愛には発展しなさそうなので安心できます。

 

 

 ──えっ、古木くんのストレス値? 

 

 ……なんのこったよ(白目)

 

 

 古木くんのストレスに関しては、間違いなく一番最悪だろう状態異常を引かなければ良いだけなので……。ストレスが高いけど恐怖や性欲が高くならないことだけが救いとも言えますが、んにゃぴ……間違いなくこの先もガバりますよね。

 

 ──と、地下の冷蔵室に到着しましたね。明かりのスイッチをON(オォン!)にして扉をオープンしますと、中にはカチカチに冷凍された食品がいくつも並んでいました。

 

 棚のチョコレートや他の栄養サプリと一緒に持ち帰りましょう。余談ですが、プレイヤーが開けるまで無人の地下室には、原作に居た謎の首吊……てるてる坊主兄貴は存在していません。

 

 そりゃそうだって感じですね。前までのバージョンでは何故か存在したてるてる坊主から生存者が全員入るだけの車のキーが入手できたのですが、当然ながら居ないので手に入りません。

 

 ──その代わりに、最終イベントを終わらせたあと駐車場に代わりの死体くんが配置されるようになりました。それでええんか……。

 

 などと言っている間に生徒会室に到着。完全復活したくるみ姉貴の様子を見つつ、るーちゃんやゆきちゃんにチョコを振る舞いつつお昼まで加速します。

 昼食でステーキを振る舞えば感染イベントのガバは帳消しになるのでしょう──が。

 

 この後ほぼ確実に発生するだろうイベントがですね、やりたくないんですよね。

 以前発生した4日目の決闘イベント、くるみ姉貴が感染していると、難易度が高くなった2回戦目を行うフラグが立つんですよ。

 

 しかも2回戦目は体力が1割残る仕様が無いガチの殴り合いになるので、『時間経過でイベントフラグが進行する』ことを知らない初見の時は、殺されるか殺すかを何度か繰り返す嵌めになります。基本的に殺される割合の方が高いです。

 

 その理由は後述しまして、早速とくるみ姉貴に「まずうちの高校さぁ……屋上、あんだけど」と誘われるのでホイホイ付いていきましょう。

 持って行く武器は日本刀だとくるみ姉貴がうっかり死にかねないのでバールくんにします。長物なので微妙に【剣術Lv2】の恩恵を与ってしまいますが、感染ボーナスが付与されたくるみ姉貴は頑丈なのでまあ……大丈夫でしょ。

 

 屋上に上がると、イベント発生の画面暗転が挟まり、くるみ姉貴の独白が始まります。今回のイベントが発生する意味でもある、すなわち『くるみ姉貴は生者か死者か』という話です。

 

 死んでないなら生きてるやろ、といった簡単な話ではないのが、現在進行形で外をうろつくやつらを見れば分かることでしょう。

 確実に感染し、それでいて薬で助かった*1とはいえ、逆に言えば半端ですがやつらに近づいているということ。

 

 要するに『私は……最後まで生きるよ……』ということです。ドエレ──"COOL"じゃん……? 

 

 

 ──ということで戦闘開始。

 

 

 時間経過でイベントフラグ進行、つまり耐久戦です。死んではいけないし殺してもいけない。

 だから、くるみ姉貴のシャベルを防ぐという意味でも頑丈なバールを持ってきたんですね。

 

 ただし、特筆すべきはくるみ姉貴のステータスです。元々筋力と持久力、体力が高いくるみ姉貴は、感染ボーナスで直感や知力が減少する代わりに上記3つのステータスが上昇します。

 

 上昇値は計算が正しければプラス1.8~2.1倍です。このゲームは各ステータスの最大値は経験値を割り振る際に必ず50でカンストするのですが……その後でも感染ボーナスは適用されるため、感染後は余裕で数値が50を突破します。

 

 そして現在のくるみ姉貴の筋力は38だったのが72になっているので、1.9倍されていますね。これに塹壕戦も真っ青な示現流シャベルのチェストが加われば──仮に防御を挟もうが古木くんであろうと重傷or即死でしょう。

 

 

 ……なんでオワタ式決闘イベントなんて始まるんでしょうかね。どうしてこうなるんだ……私はただRTAを走っていただけなのに……。

 ──見るがいい! ガバが溢れ出している。チャートなど通用しない!(頭平成)

 

 仕方がないので、貯めた経験値で筋力を上げ、スキルポイントで【弾き】を習得します。

 レベル1では適当なタイミングで弾かないとスタミナを消費するし上手く体勢を崩せないのもあって、さっさと判定が緩くなるレベル2に上げた方がいいのですが、まあ無いよりマシですね。

 

 といっても、全攻撃をジャスト弾きすれば良いだけなので(熟達の忍の風格)

 

『くるみ(感染後)』の攻撃パターンはやや攻撃的になっており、それでいてシャベルによる攻撃は全てに僅かなディレイが掛かっています。

 更には刃先と棒の部分はそれぞれ当たり判定が異なる為、近距離で刃先を受け止めようとすると棒の部分にめくられダメージを受けます。

 

 くるみ姉貴は破戒僧だった……? 

 

 とか言いながら、大振りの上段をバールで弾きます。そして直後の上段振りの軌道を逆再生するような振り上げをステップ回避し、水平に薙ぐのでそちらも弾きます。

 

 半ゾンビみたいな状態のくるみ姉貴は、耐性で言うと斬撃より打撃に強いので、強化されたステータスも相まってバールで殴っても大してダメージを与えられません。

 

 逆に言うと古木くんのステータスでも容赦なく殴れるということになります。そんでもってこの時間経過イベント、くるみ姉貴の残り体力で耐久時間が変わるんですよね。

 

 体力がMAXだとリアルタイムで4分。半分だと3分。残り3割を切ると1分で進行します。曲がりなりにもRTAなので、当然ですが体力3割を目指して殴りましょう。

 ポケモンの捕獲みてぇだなとは口が裂けても言わないように。サーッ!(キノコの胞子)

 

 弾き、様子を見て適宜反撃し、更に弾く。ジャスト弾きなら耐久値の減少はほぼ無いのですが、くるみ姉貴のシャベルがユニーク武器だからか耐久値一切減らないのはズルいと思います。

 

 んだらばさっさと3割まで体力を減らしたいので一転攻勢しましょう。オラッ、これは枕投げイベントで顔面に直撃して骨折した分! これは全ヒロイン恐怖値MAX状態で仲間内で感染者が出てライアーゲームになった分! 

 

 そしてこれが……まちカドまぞくRTAの試走で胃に穴が空いた私の胃薬の分だーっ!! 

 

 グワラゴワガキーン!! とおおよそ人体から発せられるべきではない音と共に、くるみ姉貴の体力がようやく3割を切ります。

 そして、突き放すようなノックバック攻撃の後に──イベントが進行したため、最後のラッシュが始まりました。

 まるで桜竜が七支刀を振り回すような動き……がっこうぐらしの舞台は源の宮だった? 

 

 ──といった冗談を言える暇はありません。何故ならこのラッシュは7~10回のシャベルによる連続攻撃(当然ディレイ込み)で、これを捌いた直後に、互いの武器が手元から弾き飛ばされくるみ姉貴に掴みかかられるからです。

 

 そして筋力72とかいうバイオゴリラのスゴイヤバイ握力にマウントを取られています。

 これ連打ミスったら屋上の床の染みになりませんかね……? 

 

 ──はい恥も外聞も捨てて本気の連打をします! 前にこのイベントでコントローラーの○ボタンを陥没させて買い換えたのは余談!! 

 

 ボタンを必死に連打して十数秒、かろうじて抵抗に成功し、イベントが進行します。

 この戦闘で何か踏ん切りがついたのでしょう、くるみ姉貴は古木くんを引っ張って起こすとシャベルを肩に担ぎ──わりとレアなイベントスチルが挟まりました。

 

 これにて決闘イベント2回戦目は無事終了となります。ウーン太いシーチキン(イベントクリア報酬の経験値)が欲しい! 

 そいだら明日の雨の日に備えて早めに休むので6日目はここまで。次回、防衛戦。

 

 修羅の炎の匂い染み付いて、むせる。

 

 

 

 

 

 ──古木達が持ち帰った冷凍食品のステーキを解凍して数分、久しぶりの肉類を食べられるということもあって、全員が示し合わせたように無言で食べ進めていた。

 

 米を山盛りにお代わりする者とステーキのソースを米に掛ける者を咎める相手は居ない。

 だが、最後の一切れを食べ終えたくるみがため息をついて小首を傾げる。

 

「……くるみ、どうした」

「ん? ああ、いや……なぁんか()()()()()()さ。ステーキってまだある?」

「──また下に取りに行くしかない。足りないなら、握り飯でも作っておくが」

「うーん、いいよ別に。我慢できるから」

 

 物足りない。その言葉に、ほんの一瞬だけ古木はスミコと慈に視線を移した。

 万が一を考えるが、なんてことはない。昨日の一件で体力を使い果たして、体が栄養を欲しているだけだろう。まさか()()()()()()なんてことにはなるまい。

 

「──なあ古木さん、ちょっと食後の運動がてら屋上で手合わせしてくれない?」

「なに……?」

「丸一日寝てたから体が鈍ってるし、色々と確かめたいからさ。頼むよ」

「──良いだろう」

 

「ふ、古木くん……」

 

 シャベルを担いで生徒会室から出るくるみの後ろ姿を見て、刀ではなくバールを握る古木に、慈は心配そうに声を掛ける。

 

「大丈夫ですよ。無茶はしないし、させません。軽く運動して戻ってきます。

 瑠璃やゆきが勝手に刀を触らないように見ていてもらえますか」

 

「……何故(なにゆえ)小生まで見るんだい?」

 

 目を逸らし、古木はバール片手に部屋から出る。バチ、と慈とスミコの目線が交わった。

 

「……触っちゃ駄目ですよ?」

「触らんよ。()()興味は無いのでね」

 

 

 

 

 

 ──屋上に到着した古木は、プロテクターを肘と膝に巻き、シャベルを片手でヒュンと振るうくるみを見つけた。

 まるで2日前のようだ、と考えながらバールを握る手に力を入れる。

 

「──古木さん、昨日は助かったよ」

「気にするな。誰が相手でもああした」

「そうかもな……まさか、あたしが噛まれるなんて想像もしてなかったよ。どこか楽観視してたんだな、『まあ大丈夫だろう』って」

 

 天を仰ぎ見るくるみは、自分の行いを思い返して呆れからかため息をつく。

 

「──すまなかった、俺がもっと、注意深く辺りを警戒しておくべきだった」

「……あ?」

 

 その言葉は、あっけなく、くるみの琴線に触れる。自分(くるみ)のミスをまるで自身の実力不足であるかのように語る古木の言葉は、良くも悪くも力を持つ者の責任感が表れていた。

 

 誰のせいでもないと考えた不運な事故を、まるで、古木は自分の責任かのように語る。そんな態度に、ただただ、くるみはイラッと来た。

 

「──なんだそれ。自分がもっと強ければこうはならなかったって言いたいのかよ。

 違うだろ、誰のせいでもないし、あんたに責任は無い。ただ運が悪かっただけだ」

 

 くるみは不運と捉え、古木は自身の注意不足と捉える。それこそ誰が悪い、どちらが悪いという話ではないが、今のくるみにとって問題なのはそちらではない。

 

「……あのさ、古木さん。古木さんたちに薬を打たれるまでの間、あたし……確実に死ぬんだなって思ってた。頭の中が溶けるみたいな、何かが侵食してくるみたいな、そんな感じがしてて」

 

 ガツ、とシャベルの刃先で床を突く。

 一部がえぐれ、先端が突き刺さる。

 

「──今のあたしって、どっちなのかな。あいつら? 人間?」

 

「……それは」

 

 どう答えればいい。そんな自問自答が古木の脳内を過り、くっ、と小さく笑ったくるみがシャベルを両手で掴み構える。

 

「……答えらんねえなら、手っ取り早く確かめようぜ──っ!」

 

「くるみ──ッ!」

 

 だんっと踏み込み、シャベルを上段から振り下ろす。頭部を叩き潰さんとする軌道からバールで逸らすが、両手にビリビリと衝撃が残る。

 

「っ……ぐ、ぅ」

 

 逆袈裟斬りを避け、水平に薙ぐ動きに合わせてバールの側面を滑らせる。

 しかし、重い。あまりにも膂力がおかしい。成人男性の古木をも大きく上回る筋力は、くるみのシャベルを明確に凶器足らしめた。

 

 だが古木も伊達に剣術を学んではいない。大振りだが素早く、それでいて鋭い一撃を刀に見立てたバールで逸らすと、鞭をしならせるように腕を振るい得物の先端で脇腹と太ももを叩く。

 

「がっ──!?」

 

 鈍く鋭い感覚に意識が一瞬途切れ、即座に腹にめり込んだ古木の膝が呼吸を止める。

 

「ぐっ……ぅおおッ!!」

 

 ぶんぶんとシャベルを振り回し距離を取る。うぇ、とえずいて、くるみは昼飯出そう……と呟いた。浅く呼吸をして、()()()()()()内臓に響く鈍い感覚に顔をしかめる。

 

「お前は人間だ、恵飛須沢くるみ。しかしそう断言できないのは俺のせいだ」

「だから、違うって言ってんだろ! あんたのせいじゃない、なんでそれが分からない!」

 

 歳上として、武人として、責任感が古木にのし掛かる。逆に言えば──例え相手がくるみだとしても、古木は身勝手に、全員を守る対象として見ていることに他ならない。

 

 シャベルを振るい、バールで受け流し、くるみの脛への蹴りを片足立ちになって避け、返す刀で肩にバールを叩き付ける。

 意に介さないくるみはそれでも尚シャベルを古木に叩きつけようとし、脱力したようにぬるりとバールの上を滑らせた。

 

「……なぁにが『俺のせい』だよふざけやがって……勝手に責任感じてんじゃねえよ。勝手に全員まとめて守ろうとすんなよ」

 

 ゆらり、とシャベルを構えながら前頭姿勢に──さながらクラウチングスタートのように体を傾ける。ぞわりと背筋に怖気が走り、古木は警戒心からくるみを注視する。

 

「────古木ィィ!!」

 

 ぐん、と加速したような錯覚。突き出されたシャベルを受け止め、弾く。続けざまに縦、横、斜めと振るわれるシャベルの刃先をバールで弾くと、ギャリリと耳障りな音を奏で、決して少なくない火花が辺りに散らばる。

 

「頼まれてもいないのに、勝手に主役面してんじゃねえッ!」

 

「────っ」

 

 ガキィン! と甲高い音が鳴り、二人の手元からそれぞれシャベルとバールが弾き飛ぶ。カラララと床を滑り視界の端にすっ飛んでいった得物を見送るより早く、くるみは古木に飛び掛かり、胸ぐらを掴みながら押し倒し馬乗りになった。

 

「なんで全部一人でやろうとするんだよ! あたしと一緒に戦ってたのに、あたしまで守る対象に入れてたのかよ!!」

 

「……ああそうだ。お前と、皆を、全員を守ろうとした。俺にはそう出来るだけの力があって、そうしないとならない義務があった」

 

「──対等のつもりだったんだぞ……っ」

 

 ギリギリと胸ぐらを掴む手に力が入り、古木もまた息苦しく感じた刹那、ぽたりとくるみの目から垂れた雫が頬に当たる。

 

「────」

「あんたとは……対等のつもりだったんだ。仲間だって……相棒だって思ってたのに、あんたにもそう思っててほしかったのに……」

 

 ガツンと、頭を殴られたような衝撃。考え方の違いと、意識の違い。『守りたい』と『守らないといけない』は、同じようで違う。

 他者を守るためにと教わった力を、いつしか死者を斬るために振るっていた男は、驕り、間違えたがために眼前の少女を泣かせた。

 

「……そうか。そうだな。俺が、間違えていたんだな、くるみ」

 

「古木さん……?」

 

 胸ぐらを掴む手を払い、起き上がって座ると、ゴツゴツとした指で目尻の雫を拭う。

 右腕に出来た傷が塞って出来た古傷を見て、膝の上に乗るくるみに言った。

 

「俺はくるみの保護者じゃない。兄でもないし、親でもない。いや──きっとなれない」

「……ああ。あたしだって、あんたの妹でも娘でもないんだよ。頼れ。頼ってくれ。もっと皆を──あたしたちを信頼してくれ」

 

 ふ、と。憑き物が晴れたように、くるみは古木の肩に顔を埋めて深く息を吐いた。

 それから立ち上がり、シャベルを拾い上げ肩に担ぐと、振り返ってふにゃりと笑う。

 

「あたしは人間として、最後まで足掻くよ」

「それがいい」

「……はぁ、腹減ったー。やっぱお握り作って食べようぜぇー。晩飯の缶詰の中身入れてさ、皆でギャンブルすんの」

「……変なものは入れるなよ」

 

 へっへっへ、と怪しく笑うくるみに苦笑を返す。バールを拾う古木は、ごうごうと燃え上がる胸の内の炎を悟られないように、必死に表情を取り繕っている。

 

 脳裏で先のくるみを()()()()()()──。そんな想定をして、シミュレートしながら古木は屋上から廊下へと戻って行く。

 仮に持ってきたのが刀だったら。もし、くるみが人間でいることを諦めていたら。

 

 屋上から戻ってきたのは、二人ではなく一人だったのかもしれない。

 そうなっていたかどうかは、神のみぞ知る。

*1
厳密にはただの栄養剤と抗生物質




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