【完結】がっこうぐらし!RTA/卒業生チャート+α 作:兼六園
普段は真面目で優しい大上 古木くん……。
しかし、ある時目が覚めると──グラフィックが中馬大蔵になっていた!!!
──誤チェストでごわ……じゃなくて、お侍様の戦い方じゃない……なRTAはーじまーるよー。
いえ別にグラフィック変更MODを使ったわけじゃないので、今partから突然古木くんが中馬大蔵になるわけではないです。
今日は朝から外が雨なんで、昼からのラッシュに備えて武器を磨いてたんや。
食堂でフラグを立て、戦闘可能キャラを確保し、くるみ姉貴もバイオゴリラとしてスーパーパワーを発揮してくれることでしょう。
まるで最後の晩餐がごとき食事をし、サプリをキメて部屋で待機します。
そんなわけで7日目、がっこうぐらしRTA名物の校内強制ラッシュが始まりますね。
他ハードやバージョンではやつらの数が多いため補正で経験値が少ないですが、私の遊んでいるバージョンの獲得経験値は普通なので、今日でがっつりポイントを稼ぎます。
【剣術Lv2】と【投擲Lv2】を最終イベントに備えてレベル3に上げたいのと、あるスキルを習得したいので、ステータス値を9上げる分すなわち9ポイント分の経験値を稼ぎましょう。
このゲームのスキルはレベル3に上げるのに3ポイント必要なんですよね。なので剣術と投擲分に6ポイント、そしてあるスキルの初期費用に3ポイントの合計9ポイント。
最初に3ポイントも必要ならさぞや強いのだろうとお思いでしょうが、実際スゴイツヨイ(こなみ)です。まあその、絵面が少々あれですが。
んだらば開戦するお昼まで加速。
こうして休みつつ各キャラの待機モーションを眺めるのも結構楽しいですね。それぞれの性格と今までの行動、現在どこに何があるかで事細かにモーションが変わるので飽きません。
古木くんの待機モーションは『座って刀を磨く』のようですが……くるみ姉貴が真横でガン見してますね。というか距離が近い。
夕日の河川敷で殴り合うがごとき決闘イベントを乗り越えたからか、好感度が上昇して完全に懐いているようですね。
くるみ姉貴は同級生の男子にも似たような接し方をして『あいつ絶対俺のこと好きだろ……』という悲しい勘違いをさせるタイプと見た。
他のキャラは、りーさんがめぐねえと一緒に帳簿を見ており、みーくんが本を読み、Kとゆきちゃんがるーちゃんの相手をしています。
最後にスミコが鼻唄を奏でながら私服のゴスロリのほつれを縫い直していますが、その鼻唄ガッツリ六甲おろしじゃねーか。
『スミコの鼻唄(六甲おろしver)』というレアBGMを聞きつつ時間の経過を待っていますと、午後になるにつれ、どんどん雨足が強くなってきました。どしゃ降りと言っても差し支えません。
──はい、画面が暗転しイベントが発生しました。ゆきちゃん達がやつらの群れが学校に入ってくるのを見ると「雨宿りしてるみたいだね~」と言うので、全員生存に必要なフラグが建設されていることはここで確認しましょう。
それでは『あめのひ』開幕です。古木くんとくるみ姉貴、そして若干ゃ空気が薄い太郎丸を2階に配置し、防犯ブザーと太郎丸の威嚇で廊下の真ん中に陣取る二人へとやつらを注目させます。
残りの面子のりーさんとK、ゆきちゃんとるーちゃんを放送室に押し込み、スミコとめぐねえ、みーくんを三階に配置します。
やつらは全員2階で捌く予定ですが、万が一にも数体に突破されたらひでのようにバリケードや扉が叩かれますので。
──では、ペグ20本を持っているのを確認し、防犯ブザーを鳴らして廊下の奥の階段から上がってきたやつらの群れを引き寄せ、もう片方の廊下奥に太郎丸の吠える声を届かせ引き寄せます。
えっ、古木くんとくるみ姉貴だけで大丈夫なのかって? 廊下はそこまで広くなく、古木くんの刀のリーチもまあまあ長い。加えてハーフゾンビ……
──充分に引き寄せた辺りで戦闘開始。真ん中の階段から上がってくるやつらは適宜ペグで頭を打ち抜いて転倒させ、先頭の倒れたやつらで後続をつっかえさせます。
廊下奥から歩いてくる方も足に投げて転倒させます。物理エンジンがしっかり作られている為、やつらとて『足がもつれて転びそうになる』という隙を晒してくれるのは良いですねぇ。
下手に生前の行動を繰り返そうとするから
これフルダイブVRだったらやつらの足とか掴んで振り回せて武器に出来そうですね。
──などと、古木くんの背後で
Foo↑気持ちいい~!(リッパーモード)
なんて調子に乗っていますが、経験値稼ぎのため、防衛のため、ヒロインたちを守るため、理由はあれど刀を振るう古木くんは当然その分のストレスが爆発的に膨れ上がります。
ストレスを与えるプレイを強要するとどうなる? 知らんのか、状態異常付与ガチャ(☆5確定)が始まる。つまりは死ゾ。
──人によっては「なんて酷いプレイングなんだ……」と憤ることでしょう。
私はそうは思いません。RTAというのは勝負で成り立っている世界です。
与えられたチャートで予定された時間内にまっとうすれば勝負は完了しています。
それで対価としての満足感が得られる。自分と他走者はそれ以上の関係でもないしそれ以下の関係でもない。……どこか間違っていますか?
私はRTAでのチャートの使い方は他走者を無慈悲する手段だと割りきっています。
少なくともこのやり方で私はこのRTAを完走している。──「ガバに染まったRTAが君自身を害している」……?
そんなことは
"WRありき"という考え方には与しません、まず"完走ありき"です。
──皆それぞれ個人のチャートがあって、そのエゴの押し付け合いがRTAというものではないんですか? だから自分の記録を中心に考えていきたい。────ギアを1つ上げて行くぞッ
──コラ画像のパロディとかいう三次創作なんかやってねぇで、RTAしろ!
はい……。
ゲーム画面では現在、シャベルを振ってはやつらをぶっ飛ばし、持ち上げてはフルスイングでぶん投げるくるみ姉貴と、3階に上がろうとするやつらにピンポイントでペグを投擲しつつ手近のやつらを斬る古木くんの姿が映っています。
……自分で操作と指示をしておいてなんですけど、こいつら人間でしたよね? いやまあ片方は半分だけゾンビィですけども。
クソみたいな茶番を始める程度には暇な戦闘シーンが続いててだれるので、イベントの解説でお茶を濁しましょうか。このイベントは時間経過且つフラグを回収したか、またはしてないかでルートが分岐する耐久イベントです。
食堂などでやつらが生前の行動を繰り返していることを確認すること、そしてやつらを一定時間倒し続けるかバリケード等で動きを止めていることで、全員生存ルートにイベントが分岐します。放送室から校内放送で下校を促すアレですね。
反して、上記のイベントフラグを回収できていないと、一定時間後に強制的にイベントが進行し、放送室に逃げ込んだキャラクターたちの中から誰か一人が、ランダムで自分を犠牲にやつらを外に誘導する死亡イベントになってしまいます。
殆どの場合はめぐねえが囮になるのですが、時折くるみ姉貴が犠牲になったりします。当然ながら死亡ルートだと最終イベントまでお通夜状態になるし、このルートでくるみ姉貴が死ぬと最後のラッシュ+火災の難易度が高くなります。
RTAなら絶対に、このイベントで下手を打たないようにしようね!(注意喚起土方)
──と、追い防犯ブザーで再度注意を引いた辺りで、イベント進行が挟まり特殊演出による校内放送が流れ始めましたね。
やつらがピタリと動きを止め、それから踵を返して階段を降りて行きました。
ここから2分ほど時間が経ってから画面が暗転して1日が終了するのです……が、ここでステータスチェック。経験値が9ポイント分貯まっているか、状態異常が付与されたかを確認します。
……おっと、あと1ポイント分足りてませんね。すぐに外へ向かって帰ろうとするやつらのケツを適当に掘りましょう。それと、問題の3値の増減具合と状態異常ですが…………。
大上 古木
・ストレス/10【直感↓】【快楽主義*1】
・恐怖/0
・性欲/1
──草。*2
これついての良い知らせは、よりにもよって一番最悪な状態異常が付与されたけど【直感↓】以外の状態異常が無かったことですね。
悪い知らせは【快楽主義】を治すイベントが高校編では発生しないことです。──厳密には発生させる条件を達成できません。
治療イベントは『知力40以上(上限数値は50)のNPCが3人以上存在するとフラグが発生し、その後該当キャラたちを連れて個室で会話を行う』ことが条件なので、高校編のこの段階ではどう頑張っても3人用意できないので発生しません。
一番厄介なのが『知力40以上』の部分で、このゲームでの各ステータスが50でカンストするということはつまり、40以上というのはかなり頭が良いことを意味しています。
具体的には高校教師のめぐねえが知力42なので、あと二人をどこで調達するのか? ということになるのですが……。
知力40以上のキャラは、大学編に登場するキャラクターである『
逆に言うと、大学編に3人居る=めぐねえが居なくても数が足りるということです。
──なので、とどのつまり、残りの3日間は古木くんがやつらをぶった斬るの大好きマシーンと化します。んだらばさっそく窓から外まで飛び降りて、落下攻撃でやつらを倒しましょう。
人を襲う行動より学校から出て帰る行動ルーチンが優先されているので、ラッシュ後のここではどう暴れても反撃されません。
あと少しだけ倒せばぴったり9ポイント分の経験値を稼げたことになりますので、7日目終了の合図である画面暗転までザクザク斬りましょう。【快楽主義】が悪化しそうな行動ですが、なぁに却って免疫がつく。
それでは今後が面倒になった辺りで7日目はここまで。とほほ~ガバはもう懲り懲りだよ~
──外の雨音。防犯ブザーの高音。水に濡れた腐臭。廊下奥の両側にある階段から3階に上がられないようにしつつ、2階中央で食い止めるというあまりにも無茶な作戦で戦い始めて暫く。
片方をくるみに任せた古木は、胸の奥で燃え盛る炎に顔をしかめていた。
──刀を振る。首が飛ぶ。
──刀を振る。胴を分かつ。
学んだ通りに刀を振り、想定通りの結果を生む。それだけだった、筈だった。
古木の剣は前よりも洗練され、鋭く、一太刀で死者の2度目の命を切り落としている。投げるペグは一直線に標的の頭部に吸い込まれる。
「くるみ、3階には行かせるな」
「わかってるっつーのッ!!」
一振りで首を絶ち、その後ろから近づいてきたもう1人にペグを投げ眼孔から脳へと突き刺さり、倒れるのを見送るより速く、たんっと一足で
そして、懐から防犯ブザーを取り出して鳴らすと、足元に落としてから【一心】を星眼に構える。何度も死者を斬っていながら、その刀身には、一滴の血液も付着していなかった。
「──速すぎんだろ」
シャベルで凪ぎ払うようにして死者の群れを弾き飛ばし、空いた僅かな時間で呼吸を整えるくるみは、遠目から古木の戦い様を見ていた。
真っ正面から迎え撃つにも関わらず、気が付けば相対した死人が事切れている。
2人目、3人目と続けて斬り捨てているのだが、くるみには斬る際の刃の動きが見えないでいた。首の皮一枚だけを残す理想的な斬首を、まるで流れ作業かのように淡々とこなしている。
──あれが頂きに立つ武人か、と。
そんな事を考えて、くるみはぶるりと身震いする。違和感があったのだ。あまりにも淡々とし過ぎている。自分はシャベルで人肉を斬る感触にいまだに慣れないのに、古木の動きは嫌悪感を覚えていないように一切揺るがない。
違和感があった。
古木の雰囲気に違和感があった。
しかし、違和感の正体が分からなかった。
気付けないまま、死者との戦いは、ついに放送室からの下校を促す校内放送のお陰で終わりを迎えた。防犯ブザーを拾って紐を付け直していると、古木が窓の外を見ていることに気付く。
「古木さん、終わったな。お疲れ」
「────」
「……古木さん?」
くるみの声が聞こえていないのか、古木は微動だにしない。窓の外を──のろのろと帰路を歩く死者を、じっと見ている。
「古木さん、もう終わったんだ、上に戻ろう。もしかしたら1人か2人見逃した、か……も……」
ふ、と。くるみは窓に視線を移す。ただなんとなしに、視線を向けた。そして気付いた。
──古木の目が据わっている。
──古木の口許が、歪んでいる。
嗤っていたのだ。
「────ッ!!」
くるみのシャベルは空振りに終わった。ダッキングのように屈んで避けると、古木はそのまま片手で窓の枠を掴んで飛び降りる。
片手の刀で真下の死者の頭を刺し貫きつつ足場にして着地し、飛び降りて足払いするように別の死者の両足を切り落とす。
倒れた頭に一突きして、流れる動作でただ帰ろうとしているだけの死者たちを次々に斬って行く。窓から見下ろすくるみが、舌打ちしてから太郎丸に一声掛けて、階段を駆け降りる。
「太郎丸、3階に戻れ。わかるな?」
返事をするように鳴いた太郎丸に一瞥して、くるみは走る。段を飛ばして半ば飛び降りるような動きをするくるみが一階から外に出ると、どしゃ降りのなかで濡れながらも斬ることをやめようとしない古木を見つけて大声を出す。
「古木さん! もうやめろ!!」
雨粒がバチバチバチと弾丸のように地面を叩く音が、くるみの声をくぐもらせる。それでも尚、刀の範囲に入らないように慎重に近付いてから、くるみは再度怒鳴るようにして声を上げる。
「古木さん!!」
瞬く間に十数人の死体を築き上げた古木が、ようやく振り返る。
能面のような、表情を削ぎ落とした顔が振り返り、シャベルを握る手に力が入る。古木はくるみをじっと見て、刀を納めた。
──古木は胸の内の炎が、雨でも消せないのだなと、そう考えながらくるみを見やる。
気付いてしまえば、受け入れてしまえば、自身の悩みというのはあまりにも呆気無かった。
簡単な話である。
──楽しいのだ。剣術を磨くのが楽しい。剣術を対人戦で披露できるのが楽しい。
自身の腕前が上がっているのが嬉しい。
楽しくて、嬉しくて、面白くて、愉快で──それがたまらなく、苦しい。
「……くるみ」
皆が無事で嬉しい。
くるみが無事で嬉しい。
死者を斬るのが楽しい。
楽しくてたまらなくて、だからこそ、楽しいから苦しい。古木の頬に流れたのは、涙なのか雨粒なのか、それはわからない。
「古木さん……っ」
くるみは口を開く。しかし、なんと言えばいい? どんな言葉を掛けてやればいい?
どんな言葉が正解なのかわからない。
最後まで、くるみは何も言えない。
──何も、言えなかった。
次→9月13日00時00分