【完結】がっこうぐらし!RTA/卒業生チャート+α   作:兼六園

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辛の回

 あ~あ、人生が5回くらいあったらいいのになあ! そしたら私、5回とも違うゲームを遊んで、5回とも違うRTAを走って、5回とも違うチャートでプレイして……それで5回とも……同じようなガバをする。なRTAはーじまーるよー。

 

 前回は『卒業生チャートレ■プ! 修羅剣士チャートと化したガバガバRTA』なところで終わりましたね。今回で8日目、全員生存の対象者5人の好感度が一定のラインを超えていれば、手紙を出そうと提案される筈です。

 

 いわゆるお手紙イベントですね。私たちは元気でーす!(やけくそ)とはよく言ったものよ。おいなにわろとんねん。

 

 朝の日課ことやつら掃除は流れ作業なので倍速します。そのついでに、7日目に使ったペグがやつらの死体の消失と共に床に落ちているので拾っておきましょう。最終日に使う投擲武器の数が足りなくなる事がありますので。

 

 前回で不幸にも【状態異常/快楽主義】に追突してしまった古木くんですが、最終日の火災ラッシュ時はくるみ姉貴以外は近くに居ない──他全員を地下室に避難させるので、戦ってる様子を見られてドン引きされるとかはないです。

 

 ではペグの回収もしましたので、刀を手入れしてから昼まで倍速(いつもの)

 

 今日の待機モーションは壁を背もたれにして片膝を立て顔を項垂れていますね。井戸の底でふてくされてた時の狼みたいだぁ。

 そんでもって、るーちゃんが古木くんの顔を下から見上げてきたり眉間のシワを指でぐりぐりしてきました。にゃーめーろお前! コットンで殴られてぇかあ!?(ソフトタッチ)

 

 画面端ィ! ではりーさんと古木くんの剣術限界オタクことスミコがじ──っとこちらを見ています。ハシビロコウかおめぇはよぉ! 

 

 ……とか言っていると、時間が昼になったので等速に戻します。いつしか雨は止み、そこには虹が架かるんだよなぁ……という事で、ゆきちゃんが手紙を書こう! と提案してきます。

 

 どうせなら座標も書いて救助を期待してみようというめぐねえやりーさんの考えもあり、風船にヘリウムをドバーッ! とつうずるっこもうとボンベを取りに行くことになりました。

 

 力仕事は何時だって男の役目よな……と思いきや、くるみ姉貴がヘリウムガス入りのボンベを担いでくれました。木こりのテーマの流しどころさん!? もー、パパったら古いんだ。

 

 ──風船、ヨシ! 

 

 ──手紙、ヨシ! 

 

 ──ガス、ヨシ! 

 

 ガバガバだけど予定通りに事が進んでいるので、取り敢えずまあヨシ!(RTA猫)

 ちなみにタァイムの都合でハトを捕獲する方のイベントには発展♂しません。

 

 それと余談ですが、このゲームはオンライン接続していると、他プレイヤーが書いた手紙が道端に落ちていて拾えたりするんですよね。

 大体は怪文書だったり謎ポエムだったり攻略wikiには載ってないアイテムの隠し場所だったりと、かなりギャンブル性が強いです。

 まず信用しない方が良いですね、ソウル系でいうパッチくらい信用なりません。

 

 時にはAVの内容を文章で書き起こした官能小説風の手紙が紛れており、生配信中にうっかり拾い上げた日には文字列の段階でアウト判定を食らい配信停止させられるトラップもありました。

 

 私はこれをセクハラ地雷と呼んでいます。

 

 ……なんというか、魔法の詠唱にAVの説明文やタイトルを設定しやがった某ゲームの変態野郎を思い出しますね。最終決戦でデスメタル熱唱で対抗してた彼は元気にしているのでしょうか。

 

 

 ──それはさておき、問題はここからですね。RTA的には休憩タイム。通常プレイ的には退屈タイム。つまりもうやること無いんですよ。

 

 手紙イベントを終わらせた日から2日後、今日が8日目なので、10日目に最終イベントが始まるのですが……それまでが準備期間となってしまうので、(ぶっちゃけもうやること)ないです。

 

 本来なら大学編に向けて物資を集めたりするのですが、RTAだとその必要がないのでね……。そんなわけで短いですが今回はここまで。

 尺が短いからって手抜きだ等というナイーブな考え方は捨てろ(ラーメンハゲ)

 

 

 

 

 

 ──若狭瑠璃は好奇心旺盛な小学生である。

 そんな瑠璃の興味は、生徒会室の一角に座り、立てた片膝に顔を押し付けて眠っている古木に向いていた。そろりそろりと近付いて、眉間の深いシワを指で伸ばす。

 

「……むっ」

 

 シワが戻る。

 指で伸ばす。

 

「……むむ」

 

 シワが戻る。

 再度伸ばす。

 

「むむむっ」

 

 シワが戻る。再度伸ば────そうとした所で、瑠璃の行動を姉の悠里が窘める。

 

「もう、るーちゃん。古木さんは疲れてるのよ、そっとしてあげて?」

「姫君は何をしているのかね」

「……古木さんの眉間のシワを伸ばそうとしているみたいです」

「…………なるほど」

 

 ……なるほど? と、悠里の隣に座ったスミコは小首を傾げる。

 件の瑠璃は、膝の間にすっぽりと収まりながら古木の顔を覗くように見上げていた。子供ながらに心配なのだろう。子供とは、大人が思っているよりも感情の機微に敏感である。

 

「……ふぅん?」

「……スミコさん?」

「──ああ、いや」

 

 床に座り、片手に刀の鞘を握り、柄を肩に立て掛けて眠っている古木をじっと見やる。──纏う雰囲気が変わった、と直感していた。

 

「昨日、何かがあったようだね」

「──何か言いました?」

「いいや。気にしないでくれたまえ」

 

 口許を片手で被いながらの呟きは、悠里には聞こえなかったらしい。

 そんな折、不意に生徒会室の扉を開け放つ音に驚いて、スミコは脊髄反射で机に立て掛けていた護身用の傘を握る。

 

「っ──ああ、なんだ、ゆき君か。

 せめてノックをしてくれると我々は不必要に驚かなくて済むのだよ」

「あっ……ごめんなさーい」

「許すとも」

「それで、ゆきちゃん。そんなに楽しそうに……どうしたの?」

「──雨も止んで外も晴れてるし、お手紙出してみない?」

 

 手紙……とおうむ返しする悠里とスミコは、ゆきの背後から部屋に入ってくる慈に視線をずらした。やや困ったような顔で微笑を浮かべる慈は、二人に近付いてこっそりと耳打ちする。

 

「理科の授業に使うヘリウムガスがあるので、風船に入れて飛ばしてみるのはどうかと提案してみたんです。それに、例えばここの座標を書いた手紙を混ぜたら、誰かが拾ってくれるかと」

「なるほど、佐倉女史も考えるじゃないか……やって損はないだろう」

「そうですね、何枚か書いてみましょう。やるだけならタダですし」

 

 二人の肯定にホッとする慈は、それとなく眠っている古木を見る。

 朝からペグを回収して刀の汚れを拭ってから、今に至るまでずっと眠っている様子を見て、なんとなく──何かを怖がっている子供の駄々にも見えて心配だった。

 

「ところでくるみ君たちは何処に?」

「美紀さんが本を探していたので、圭さんと三人で図書室に行っています」

「くるみが一緒なら大丈夫ですね」

 

 感染を乗り越えて以前より力が増しているくるみが片手でゆきや瑠璃を持ち上げてダンベル代わりにしていた朝の一幕を思い返して、三人はほぼ同時に苦笑を浮かべる。

 

「それなら風船取りに行こうよ! 確か、購買に置いてあったよね?」

「そうですね……であれば、念のためスミコさんか古木くんに付いていってもらい──」

 

 ちらり、と古木を見る。ふと据わった瞳と目が合い、慈はびくりと肩を跳ねさせた。

 

「……風船なら、ある」

「おや、おはよう古木くん」

「そこに埋まってる筈だ」

 

 古木の所持品であるリュックが部屋の角に置かれており、ゆきがそこを探ると未開封の風船入りの袋が置いてあった。古木自身は、寝ぼけまなこで瑠璃の頬を撫でている。

 

「どうして持っているんですか?」

「……子供の遊び道具になると思って、持ち帰っただけだ。渡す機会を逃していて放置していたわけだが……」

 

 固まった体をほぐすように関節を鳴らして立ち上がると、無言でねだる瑠璃の頭を軽く撫で、腰に刀を差していた。

 

 

 

 

 ──紙とペン、風船とヘリウム入りのボンベ、紐と手紙を入れる袋と、幾つかの道具を持ち込んで、全員で屋上に上がっていた。

 

 早速とお絵描きという名の落書きをしている瑠璃に付き合う圭と悠里に、手紙を書くゆきとその傍らで学校の座標を調べて書き記す慈。

 風船に慎重にガスを注入する美紀をスミコが手伝い、くるみはボンベを支える。そして警戒をしつつ、太郎丸の相手を古木がしていた。

 

 ある程度風船にガスを入れ終えて休憩している美紀の横で手すりに背中を預けて天を仰ぐスミコが、露骨に深くため息をついている。

 

「……どうしたんですかスミコさん」

「おや、聞いてくれるかい共犯者君」

「性癖暴露したからってさも当然のように人を共犯者扱いするのやめません?」

 

 ゲンナリした顔でスミコを見上げる美紀だったが、普段の飄々とした態度のスミコがどこか弱って見えて、態度を改めた。

 

「なにか?」

「……古木くんの剣が、少し変わった気がするのだよ。気付いたかな、屋上に上がる前、3階の廊下に上がってきた死者に()()()()()、適当に投げるようにペグを頭に打ち込んでいたのだが」

「ああ……見ましたよ、すごかったですね。武人って気配を探れるらしいですし、古木さんがそれだけ強いというだけでは?」

 

 その言葉に、スミコはまるでフレーメン反応を起こした猫のように口を開け、呆れた顔で頭を振ると言い返した。

 

「はぁ……美紀君、キミはいつも古木くんのどこを見ているんだい。むしろ、あの動きは古木くんらしくなかったのだよ」

「オタクってすぐマウント取りますよね」

 

 膝立ちで屈み、腹を見せる太郎丸を撫で回す古木は、心ここに有らずといった様子でぼんやりとしている。

 

「古木くんは剣士だろう。相手と面と向かって対峙するように訓練している者だ。

 そんな者が、なぜ、やつらを見ずに片手間で済まそうとする?」

「それは……まあ、言われてみれば」

 

 スミコはかつて古木に問うた。『楽しかったかい?』と。まさか、本当に、()()()()()()()()のだろうか? 古木がそれで強くなるのなら、スミコの願ったり叶ったりと言う他ないが──

 

「……つまらんな。見ていてまったく楽しくない。()()()くんのあんな姿が見たかったわけではないのだけどもね」

「──うん?」

「なにかな?」

「いえ、今……んん?」

 

 ポツリと呟いたスミコの言葉の何かが引っ掛かり、美紀は疑問符を浮かべた。

 黒いロングスカートを風に(なび)かせ、見上げた先で、片手で耳元の髪を一房押さえる手つきは、間違いなく人を魅了する美しさがある。

 

「……スミコさん、顔だけは美人ですよね。言動が少しばかりアレですけど」

「それが褒め言葉では決してないと言うことだけは小生でも理解しているよ」

「ふふ。ええ、まあ」

「……まったく」

 

 スミコは苦笑し、美紀はあっけらかんとした顔で笑みを作る。珍しく、今日は比較的平和だったな、などと頭の片隅で考えていた。

 

 とはいえ、本当の平和とは程遠く──今が平和な分、それだけのちに荒事が起きることは当然理解している。

 しかしそれでも、少女と女性、子犬と青年が眼前の小さな幸せを享受する事を許してくれないほど、この世界は厳しくないのだろう。

 

 

 ──尤も、甘くもないのだがね。

 

 

 スミコはそう付け加えてまぶたを閉じる。風の音が耳に届き、風が乗せた腐臭が鼻を過る。それから少しして、古木の顔が脳裏に浮かぶ。

 

「……()は──」

 

 古木に対して、どんな感情を抱いているのか。憧憬? 執着? それとも、と考える。

 高校生の時からの感情に、スミコはいまだ答えを出せていなかった。




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