【完結】がっこうぐらし!RTA/卒業生チャート+α   作:兼六園

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壬の回

 RTAを終えてベッドへ向かう走者兄貴。

 しかし疲れからか、不幸にも黒塗りの新作情報に追突してしまう。

 他走者をかばいすべての責任を負った走者兄貴に対し、新作ゲーム、『フルダイブVR版がっこうぐらし!』が言い渡したRTAの条件とは……

 

 フルダイブVR版が発売決定して走らざるを得なくなったRTAはーじまーるよー。

 えっ、追加敵対NPC『バンディット』の50人斬りRTAを!? できらあっ! 痛覚100%再現だと尚良しですね(封鎖された島への執着)

 

 そんなわけで(?)今日で9日目。明日で終わるのかーと思いつつ、やることが一切無いため退屈な日となってしまいました。

 やることねーなー(ニャーン)やることねーなー、どうするよ暇だぁ。金もねえしなぁ。

 

 このまま一日が終わるまで20倍速で流すのもなんですし……折角ならスミコの好感度上げてみましょうか。高校編で遭遇するなんて想定できていなかった超絶レアキャラですしね。

 

 1ゲーマーとしての血も騒ぎます。それに9日目は暇だからね、しょうがないね(免罪符)。良いだろお前成人の日だぞ。

 

 という事で、早速貯めに貯めた経験値をドバーッとステータスに割り振ってスキルポイントを獲得します。筋力に5と持久力に4、合わせて計算通りに9ポイントです。

 はぇーすっごい、まるでRTAのチャートに沿ってるみたいだぁ。

 

 んだらば6ポイントで【剣術Lv2】を【剣術Lv3】にして、【投擲Lv2】を【投擲Lv3】に上げます。これで刀剣類の攻撃力上昇・耐久値の消耗軽減・スタミナ消費軽減が付与され、投擲武器の攻撃力上昇・耐久値の消耗軽減・確定で再利用可と、より私の武器が強力になりました。

 

 残りの3ポイントでなんのスキルを習得するのかについてですが、これは最終日に習得するのであとでのお楽しみとします。

 

 なろうみたいにスキルを羅列して尺稼ぎするのは嫌いなのでこの辺はサクッと流しまして、同行キャラをスミコに設定して行動を始めましょう。今回はきちんと各キャラの行動設定をして変な行動を取らないようにしておきます。

 

 ……ヨシ!(RTA猫)

 

 ほいじゃあ外に行きますよーイクイク。

 今日は古木くんの家に戻ります。このままストーリーが進行すると家に帰れるのはランダル編終了後なので、その前に家から家族の写真なんかを確保しておきたいんですね。

 

 まあ高校編でRTA終わりますけど。でもなにもしなかったらもにょるじゃないですか。その辺の感情移入は前科ありますよ私*1(開き直り)

 

 そんなこんなで久しぶりの学校の外です。

 そもそもの生存者が居ないのでやつらの数もまたそう多くありませんが、住宅街は死角が多いので気を付けましょう。私の資格は特にありません。無敵です。とりあえずゲーマー名乗っとけばセーフなのでまあ、多少はね? 

 

 スミコは酒ばっか呑んでるわりにスタミナがあるので、古木くんの長距離ダッシュに付いて来れていますね。屋根を跳べたら楽なのですが──最悪スミコを抱えて跳ばないといけないのでキャンセルだ。じゃけん道路を走りましょうね~

 

 走りながらペグを投擲し、倒れたやつらから手早く回収。それを数回繰り返して、走る。2分もしないうちに古木くんの家が見えてきました。いやしかしデケェなこの武家屋敷。

 

 古木くんとスミコが家に入り、室内を探索します。初日に現れたやつらの死体ですが、日を跨ぐと消えるようになっているので、畳に染みが出来ているだけですね。作中では共食いしたとかそんな感じに処理されるのでしょう。

 

 あとは古木くんの私物を持ち出すだけ。

 仏壇から祖父と両親の写真、自室から幼馴染の写真をそれぞれ持ち出します。キャラ設定と背景設定を細かく指定しているため、この辺もアイテムが変化していますね。

 

『思い出の写真/祖父』『思い出の写真/両親』『思い出の写真/幼馴染』の三枚を確保し、このあとを少しだけ自由時間とします。

 スミコにも好きに動くよう指示しておき、古木くんは少し家の回りを見ておきましょう。やつらが入り込んでいたら処理しておく必要がありますし、自宅にやつらが居るのは嫌ですので。

 

 ……しかし古木くん、ガチガチの武人の家系のわりには服装は現代的ですよね。ワイシャツにスラックス、おまけに靴はブーツだし。

 

 DLCやクリア特典、初回購入特典で主人公とヒロインには着せ替え可能の服が幾つか用意されているので、どうせならお着替えするのもやぶさかではないでしょう。

 

 よくも悪くもゲームなので、和服を着込んでいても動きづらくなるとかそういった制約はありませんからね。たぶんフルダイブ版でそれやったら動きづらくて死にますが。

 

 ちなみにDLCコスチュームには、きらファンコラボの☆5衣装があります。

 更には高難易度クリア特典にヒロイン用のバニーガール衣装があるのですが、服に対するコメントは無いため……なんというか集団催眠モノみたいになるんですよね。マトモなのは僕だけか!?(ボートを用意しろ)

 

 とか言いつつ、外に出て縁側から裏に回り蔵を見ます。古木くんは直感にデバフが掛けられていますが、私には分かります。

 出ておじゃれ、隠れていても獣は臭いでわかりまするぞ(リアル直感)

 

 ──開けっ放しなのを忘れていた蔵の奥からやつらが2体現れました。手前の方にペグを投げ、死体に変わったやつらを倒れる前に蹴ることでお手軽質量武器として扱い、ぶつかって倒れた奥のもう1体を切り捨てて終わり。

 

 古木くんの家が仮に猟師の家だったら蔵にマタギの銃が置かれているんですかね。

 私は銃も扱えます。兵隊さんのその銃は5発入るんだっけ?(変態勃起猟師)

 

 以前、とあるゲームの無人島で幼女に切り刻まれまくったり別の島に移り住んだりしましたが、移った島に居たある人物がイカれたレベルの発砲(ぐるい)でして、そいつに襲われたり教わったりで腕を磨かざるを得なかったと言いますか。

 

 秘伝の技も伝授させられ、今では私も立派な幕末維新志士ですよ*2。あちらの方でもつい最近イキのいい奴が入ってきたので今後に期待ですね。

 というかあの子って有名な剣術道場の娘さんですよね。本人も隠す気無いのかベラベラ喋ってはその間に天誅されてたし。

 

 

 ……はい。世間話もそこそこにします。良い時間になってきたのでそろそろ学校に戻りましょうか。今更になってスミコを大上宅に野放しにしている事実を後悔してきました。

 

 これはフレーバー程度のキャラ設定なので別に重要でもなんでもないのですけど、古木くんの名前って実は大上 ()()ではないんですよね。

 

 いやまあ、まさかピンポイントであのスミコに大上家の家系図を見られるわけないし、大丈夫だって安心しろよぉ! へーきへーき。

 

 

 ──クゥーン(子犬先輩)

 

 

 なんだってテメーはそうフラグ回収が爆速なんだ。阿部寛のホームページかなんかか。

 仏壇の近くに置かれていた家系図をスミコが熟読していますね。隠していたわけではありませんが、これで古木くんの本名が割れました。

 

 残りの時間は9日目終了まで倍速してかっ飛ばすつもりでしたが……スミコくんさぁ……桜の木の下には死体が埋まってるっていう逸話のこと知ってる? ちょっと実践してみない? 

 

 

 

 

 

 ──武家屋敷の広い室内を歩くスミコは、ストッキング越しに畳の感触を確かめる。

 台所、浴室、廊下。念のためにと傘を構えていたが、特に死者が我が物顔で大上家を練り歩いているということだけは免れていた。

 

「……荒れた様子はなし、か」

 

 居間に戻り、部屋の隅に置かれた仏壇の前に座ると、線香を一本抜き出して火を点す。

 動く死人に嗅覚があるか、嗅ぎ付けてくるのかはともかく、なにもしないでおくほどスミコは人非人ではなかった。

 

「──まあ、こんなものだろう」

 

 短く黙祷を捧げ、まぶたを開いて仏壇を見やる。古木が写真を抜いていたが、一瞬だけ老人と夫婦の三人を視認し、スミコは察していた。

 

「天才剣士だが、天涯孤独……ねぇ」

 

 万が一にも身内を斬らなくてはいけないということにはならない事だけが僥倖なのか、と思案して、ふと視線が薄い冊子に向く。立ち上がり、それを拾い上げた。

 

「む──和紙の……家系図?」

 

 大上家の家系図を見つけたスミコは、逡巡し、それから好奇心に従うことにした。

 駄目だったならこんなところに置かなければいいだけであり、何かあったら謝ればいい。そんな風に、人間とは都合良く言い訳をする。

 

 冊子を開いて中を覗けば、そこには名前と線が描かれ繋がっている。上から下へと読み進め、スミコはある名前を目にした。

 

「『大上 一心』、祖父。『大上 柳』、父…………『()() 菖蒲』、母……? 

 ──どういうことだ、『古木』とは彼の名前じゃなかったのか……?」

 

 柳と菖蒲、両親の下に、古木の欄がある。そこを見ればわかるだろう、古木の本当の名前が。しかし、目線が固まる。両親の部分から下にずらせない。まるでホラー映画の山場を見るかのような緊張がスミコの心拍数を早める。

 

「古木くん、君は、いったい……」

 

 ──誰なんだ。

 

 意を決して、目線を下げる。古木の本当の名前を見て、スミコは目を見開き、そして背中にごりっと固いものを押し当てられた。

 正体を刀の柄頭と理解したスミコが手に持つ家系図を閉じると、それが後ろから素早く、思いの外強い力で奪い取られる。

 

「──礼儀が成っていないな」

「……君こそ今まで小生たちを騙していたみたいじゃないか、古木くん。いや──こう言うべきかな? なあ、『大上 御形(ごぎょう)』くん」

「────」

 

 振り返ったスミコが見たのは、騙していた事実をわかっているが故の、罪悪感が表情に出ている古木──御形の渋い顔だった。

 

 

 

 ──縁側に二人並んで座り、外を見るスミコたちは互いの顔を見られないでいる。

 

「小生は君をどちらで呼べばいいのかな?」

「……古木、と呼べ。もう、小学生の時から()()()を使っている」

「どうしてだい」

「両親が死んだからだ。尤も、戸籍上は『御形』のままだがな。

 ある種の、単なる自称だ」

 

 なぜ、とスミコは聞く。

 傍らに置かれた刀の柄を撫でて、庭を見ながらあっけらかんとした声色で、写真を取り出すとスミコに渡して言う。

 

「忘れるんだ。父と母の声を、匂いを、思い出を。写真を見て顔を思い出せても、どんな事をしていたかを忘れて行く。だからせめて、両親の名字を繋いで……継いでいたかった」

 

 写真には若い男女が居る。どちらも質の良い和服を着込んでいて、スミコは首を傾げた。

 

「……まさかとは思うが、御──古木くんのお母様もまた、武人の家系なのかい?」

「ああ。それどころか、大上家とは好敵手の関係にあったそうだ」

 

 呆れたように頬をひくつかせるスミコから写真を返してもらい、古木は尚も続ける。

 

「家の関係なんて知った事ではないとばかりに惹かれ合い、恋愛の末に俺が産まれたらしい。当然、大上家に嫁いだ母を古木家は好く思わず、勘当されたと両親の死後に祖父から聞かされた」

 

「……嗚呼、それは、凄まじいな」

 

 感慨深そうに吐息を漏らし、ブーツの踵で地面を叩く。ほんの僅かに迷ってから、古木はスミコに更に続けた。

 

「──俺には姪が居るんだと」

「姪? ……古木家の方にも娘がいる、ということかい?」

「ああ。その事を知ったのは、祖父の葬式の時に、そんな話を耳にしたからだが」

「……無事だと思うかい」

「どうだろうな。無事だとしても、会うには少しばかり遠すぎる」

 

 諦めたようにため息をつき、顔を下に向ける。均された地面が見えて、平坦なそれが、まるで自分の心のようで、事実──()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「……少し、疲れた」

「古木くん……?」

「朧気な両親の記憶の中で、確かに言われた。『優しい人になれ』と。そして祖父から剣を教わった。『守れる人になれ』と」

 

 片手で置かれた刀を握る。

 鞘を掴む手に力が込められ、スミコの耳に届く声が、懺悔のように聞こえる。古木の顔を見ると、それはそれは酷く歪んでいた。

 

「なるべく優しくなろうとしたし、出来るだけ守ろうと思った。

 誰かの為にと剣を振ってきたが、敵であっても人は人。斬るほどに、怨嗟が募って行く」

 

「────」

 

「楽しくなってくるんだ。斬れば斬るほど、やつらを斬るのが楽しくなっている」

 

「そうかい」

 

 そうかい。そう呟く。

 スミコは胸がざわついていた。高校の頃から惚れ込んでいた古木の剣が極まりつつあるのに、それがどうにも楽しくない。

 

 ──()()()()()()()

 

「辛くて、苦しくて、それでも皆を守らなければならなくて──少しだけ、疲れた。大丈夫、少し休めば、また剣を振れる」

「…………っ」

 

 疲れた顔で力なく呟く古木を見る。そして、縁側から庭に降りると、前に回り込んで決心したように古木の頬を両手で包み顔を覆った。

 

「なにを」

 

「なあ、古木くん。君は矛盾しているのだろう。人を斬る技術を磨いているのに人を斬りたくなくて、幼い頃の……幻にも近い親の言葉に呪われている。()()()()()しか見ていなかった小生の言葉に説得力はないのだろうが────」

 

 目尻を親指でなぞり、じんわりと、両手のひらが古木の顔を暖める。その時きっと、出会ってから初めて、古木はスミコの『顔』を見た。

 変な言葉遣いをして、飄々とした態度を取る女性。しかしその顔と声は優しかった。

 

「──君はもっと、好きに生きるべきだ。両親に望まれたからではない、祖父に頼まれたからでもない、君が決めた生き方をするべきだ」

「俺の、好きに」

「古木くん。私も彼女等も、誰も君に戦い続けることを望まないだろう。

 どうして自分だけで全てをやろうとするのかが不思議だったが、成る程、無意識に家族との約束を守ろうとしていたのだね」

 

 再度、呆れたようにため息をつく。そんなスミコを前に、古木は、くるみに対等だと思っていたと切に言われた事を思い出した。

 一人で抱えていた悩みがすっと晴れたような気がして、古木は呟くように言う。

 

「──優しくありたいのも、守りたいのも、斬りたいのも苦しいのも楽しいのも、全部ひっくるめて俺なんだな。ああ、簡単な話だった」

「それでいい……のだろう」

「もう、大丈夫だ」

「そうかい?」

「そうだ」

 

 くっ、と小さく笑って、古木はスミコと並ぶように立ち上がる。スミコが添えていた手を握り直して、僅かに表情を緩めた。

 

「ありがとう、スミコ」

「────」

 

 それから刀を腰に差して、古木は帰ろうかと提案する。しかし背中を向けた古木には見えなかったのだろう。酒を呑んだ時よりも鮮やかに、彼女が頬を朱に染めていたことに。

 

「──ぇぅ」

*1
前作参照

*2
銃はどこ……




次→9月27日00時00分
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