【完結】がっこうぐらし!RTA/卒業生チャート+α   作:兼六園

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最終回

 戦の鐘が鳴るぅ~(コロシアエー!)なRTAの最終回、はーじまーるよー。

 

 前回ラストで余分に1人殺したため、現在の殺害数は36/50となり、今回で14人殺せばタイマー計測が終了します。このあとの目標は至ってシンプル、皆殺しにしろ!(メイドインワリオ)

 

 5日目からスタートしたのはバンディットが湧き始めるからというのもあるのですが、この時間帯に向かうと、確定でショッピングモールinバンディットvsやつらの群れが始まるんですよ。

 

 地下一階から五階までのモール内には約20人のバンディットが散らばっており、地下一階に5人配備されているのですが、地下一階に下ってバンディット5人を片付けてから一階に戻り五階を目指すのは単純にタイムロスなので、一階から五階までの15人を狙うチャートだったんですね。

 

 万が一やつらとの戦いでバンディットが5人以上死んでいたらここにきてまさかのリセットとなりますが、町がこうなってからショッピングモールを狙える程度には強いバンディットたちなので、まずやつらには殺されないでしょう。

 

 お前たちは私が殺すんだ、やつらなんかに殺されるんじゃないぞ!(ライバル並感)

 

 

 ということでいざ鎌倉。

 一階の自動ドアは私が粉砕する前に既に壊されているのでちょっと残念。

 やつらを囲んで棒で叩いてるバンディットに気づかせるために、血狂の刃先を床に当てて火花を散らしながらカリカリと音を立てます。

 

 バンディット……やつら……返り血まみれで狐面を付けた日本刀を握る女子高生……何も起きない筈がなく……。バーバ・ヤーガだ!(蟻男)

 

 ──それでは最終決戦。1人目の犠牲者は……やつらの1匹を殴ったことでバールを振り抜いた体勢となったバンディットくんでした。

 振り返る前に素早く近付き、後ろからぐさり。真っ直ぐ背中から腹へ突き刺し、マグロを捌くように脳天まで刃を通して開きます。

 

 壊れた噴水のように噴き出した血を浴びながら、違う標的に目標を定めます。

 普段は真面目で優しい走者兄貴……しかし、いったん返り血を浴びると「もっと返り血頂戴……我慢できぬ!」と殺戮をねだる孤島(さばがん)帰りのスラッシャーホラーに大変身! 

 

 ()^~()()()()()()ズォオ!(血狂くんが刀身の血液を啜る音)

 

 

 2人目を狙おうと鎌首をもたげてシャフ度すると──眼前に詰められた布の先端が燃えている瓶が宙を舞っていました。

 そこいらの野良バンディットとは違い敵と見るや即攻撃、いいぞ^~(エボルト)

 

 だがしかし、まるで全然、この私を倒すには程遠いんだよねえ! こちとら投げた花火玉の導火線を切断して鎮火させる頭おかしい奴と日夜乳繰りあっとんじゃい! たかだか火炎瓶の燃えてる布部分だけを斬るなんて誰でも出来るわ! 

 

 炎を纏う布を切断して切っ先に巻き付け、落ちてきた瓶をサッカーボールをリフティングするように踵に乗せて受け止めます。しかし足を上げて瓶を受け止めようとすると、ミニスカートのセーラー服なのでこう……チラリズムがね。

 

 やだぁ恥ずかしい(大蛇丸)

 っつっても私は男なので羞恥心はない。でもアバターは女だし……私は……いったい。俺は、僕は、私は…………男、女になっちゃう! 

 

 ──さて、反撃といきますか(賢者タイム)

 

 踵に乗せている瓶を蹴り返しつつ、空中に舞ったそれへと体を捻らせて刀身を振り上げ、刃を滑らせて真っ二つにし、中身をぶちまけながら切っ先の炎で引火させます。

 

 ただ爆発するのとは違い『液体が燃えている』という特性上、火炎瓶は体に付着したら中々鎮火させられません。

 しかも私の攻撃によって、今まさに『空中から燃えた液体が降り注いでる』ので、結論として一階に3人配備されているバンディットくんのうち残り2人は落ちてきた炎に包まれました。

 

 おぉ、めけーも!めけーもぉ!! している2人と、少しだけ液体が付着して引火したことで意図せずして壱の秘剣・焔霊と化した血狂くんを一瞥し、それから二階に向かいます。*1

 

 エスカレーターが離れた位置にあるので、落ちているバールを壁に投擲して突き刺し、それを足場に二段ジャンプ。片手でも縁に置けたら腕力にものを言わせて登れるので楽でいいっすね。

 

 着地したらびゅんと振って刀身の炎を払い、二階の店内から悲鳴を聞き付けて顔を覗かせる3人にアンブッシュ。

 横合いから飛び込んでスパーンと首を撥ね、気付いてボウガンを向け即座に矢を発射したもう1人には、デュラハンくんを盾にして接近。

 

 死体を両断してその間から飛び出しボウガン持ちの胸ぐらを掴んで、相手の膝を足場にしてこめかみにシャイニングウィザードを叩き込みます。血狂の筋力バフで頭蓋を砕き、倒れたので後頭部を踏み砕きとどめを刺しておきましょう。

 

 ……さぁて、二階にも3人居る筈なのですが……隠れてるのかな? こんな美少女を前に隠れるなんてシャイな奴だぜ。──うーん、そこ。

 

 店内に続く扉の裏に隠れているのは僅かな足音と呼吸を押さえようとする声で分かりましたので、薬局でやったように血狂くんをズドンと突き刺しておきます。いちいち扉を開けて確認するのは面倒なので殺害数でチェック。

 

 数にして42/50となっていますね。残り8人なので、とりあえずヨシ!(殺戮猫)

 

 では三階へ。この辺はもう流れ作業なので実質ボス戦となる五階まで倍速で良いでしょう。シェイシェイハ! シェイハ! シェシェイ! ハァーッシェイ! と三階の連中を叩っ斬り、四階に向かって更に2人切り捨てます。

 

 モール内の人数は乱数によっては合計19人で1人足りないパターンがあるのですが、もしかしたら前回駐車場に居たのは本来モールの中に居るはずだったバンディットくんなのかもしれません。ともあれこれにて五階、時間軸的にはおそらくまだみーくんとKが籠城している筈ですが……

 

 三階と四階で5人ぶち殺したので殺害数は現在47/50。五階の3人を片付けて、さっさと計測を終了させましょう。

 ……と言いたいところなのですが、実はモールに現れた20人のバンディットグループ、五階にリーダーとその側近が居るんですよね。

 

 リーダーは確定で陸軍の89式を所持しており、側近も両方がマチェット使いで、全員が映画『ザ・レイド』から飛び出してきたのかと疑うレベルで強いです。私ですら少しだけ苦戦します。

 

 ──更には、最悪のパターンで89式の流れ弾が隠れてたみーくんたちに当たる場合もあるので……その辺も気を付けつつ1対3で戦わなければなりません。別に死のうがレギュレーションには引っ掛かりませんが、いやあ死なれたら寝覚めが悪いのでね、ここまで来たら全員守った上で完走してやりますよそりゃ。

 

 では戦闘開始。みーくんたちが籠城している部屋に行かれると困るので、壁を血狂くんの峰で叩いてわざと発見されましょう。

 3人がこちらを見たので、全力ダッシュで接近します。バンディットリーダーが89式を構えるのを見て、即座に手近のベッドを片手でひっくり返すような勢いでぶん投げます。

 

 3人がそれを避けるのでその隙に五階の支柱に体を隠しつつ、スライディングで別のベッドの陰に潜り込みます。そしてベッドを足場に89式を構えるリーダー向けて跳躍、一直線に首を刈──ろうとして側近組のマチェットに阻まれました。

 

 ぬう……小癪な。着地と同時に足元に撃ち込まれた5.56mm弾を避けつつ距離を取り、腰を低く、刀の峰に左手を添えて両手で構えます。

 貴様らは知らんだろうが、紫陽花リバイブ疾風はスピードに加えて古木リバイブ剛烈のパワーを併せ持つ……ギアを1つ上げて行くぞッ! 

 

 マチェットブラザーズを相手取りつつ2人を89式の射線に被せ、迂闊に撃てないようにしながら切り刻みます。マチェットブラザーズのMの方の脇腹を抉るように殴り、Lの方のマチェットを足の裏で受け止めます。ずぐっ、と靴を貫通して足の裏にめり込みますが、対して痛くないので問題ありません(半ギレ)

 

 逆手に持った血狂でMのマチェットを受け流し、足の裏から引き抜かれたLのマチェットの首刈りを避け、敢えて血狂を上空に放り投げることで視線を誘導(ミスディレクション)し──Lの親指を掴み手首をへし折るつもりで捻り、手元から離れたマチェットを握り逆に首へと叩きつけます。

 

 念入りに二度三度と首にマチェットを叩き付け、マチェットブラザーズのLの方を殺害。

 落ちてきた血狂を受け止めて、振り下ろされたマチェットの側面に頭突きをして軌道を逸らしつつ同じ軌道で振り下ろした血狂でMの方を斜めに両断。射線が通るようになったリーダーの89式の射撃から逃れるべく再度ベッドの陰へ。

 

 89式の箱型弾倉の弾数は20発あるいは30発ですが、一瞬視認した限りでは20発入りの方なので、18……19……20……使いきったな? 

 であればここがチャンス。マガジン交換をさせる暇なんぞ与えません、先程と同じように跳躍して接近。ゆっくり饅頭に加工してやります。

 

 避けるには遅く、89式で防御しようがその上から斬るのみ。

 これでタイマー停止じゃい──────、えっなにそれは…………? 

 

 リーダーが手に握っているのは弾薬が尽きている89式と、マグナムリボルバー……!? 

 おいちょっと待て今まで散々試走してた時はそんなもん持ってなかっただろここに来てクソ乱数引くのやめろ不味いこの距離だと身をよじっても当たる────あばっ!!?(かおす先生)

 

 

 ──ドンッッッ!! という轟音と共に、顔に凄まじい衝撃が走り、壁にぶつかったように急ブレーキした体は背中から落ちる。

 

 

 床に黒髪が扇状に広がり、紫陽花というアバターの体力は────全損してないんだなぁこれが。亀裂が縦に入って真っ二つになり、顔左半分のお面部分が粉々に砕けたその奥で、私の瞳は殺意に満ちたギラギラとした輝きを持っています。

 

 このゲームはなあ! 頭装備を着けている時に頭から顔にかけて攻撃が入るとダメージを肩代わりしてくれるんだよ! 装備品壊れるけど! 

 なので、例えば銃弾が顎を砕くとして、帽子型のヘルメットを被っていると何故かそっちが砕けるんですよね。システム上の仕様とはいえ絵面はものすごく間抜けです。

 

 それにしても、ああもう全く()()()()。システムに保護されて無事とはいえ、マグナム食らって衝撃が走っただけで一切痛みが無いのはどうなんですかねぇ!? 近年のゲームの痛覚表現は規制がキツすぎるんだよなぁ! 

 

 ……まあそれは兎も角、むくりと起き上がりつつ、()()()()()()()()に脚を縫い止められたバンディットリーダーに目線を向けます。

 

 筋力バフ全開のフルパワー投擲で膝とふくらはぎを貫通して床に切っ先が突き刺さった刀はさぞや痛いだろうな。バンディットとして奪う側だったが故に、その痛みは未体験でしょう。

 

 私としても痛みを我慢してマガジン交換とかされたら死ぬので、さっさとトドメを刺します。はい取り出したるは~、前回ラストで回収したナイフと89式の5.56mm弾~。

 

 左手の中指以外を閉じてファ■キュー! ……ではなく、中指で包むように薬莢を握り、人差し指と薬指を台座として使い弾を固定します。

 

 左手を弾倉兼バレルに、右手のナイフをハンマーに。本来なら拳銃の弾を指に挟んだ左手を相手の胸に押し付ける技が故にセクハラテロとまで呼ばれた、孤島秘伝の伝承奥義……ッ!! 

 

 

 ──シー・ヴィス・ベラム(汝平和を欲するならば)パラベラム(戦への備えをせよ)!! 

 

 

 カンッと左手の薬莢の雷管(ケツ)をナイフの切っ先で叩き、直接弾丸を発射する。これが私の戦への備え、すなわち最終手段ならぬ最終手()

 血狂が手元になくて筋力バフが発揮せず、左手に発生した爆発の勢いで跳ね上がった腕がゴキリと音を立てて脱臼しますが──寸分違わずバンディットリーダーの胸に撃ち込まれた弾丸が致命傷となり、リーダーは片足が血狂に固定されたまま不格好に倒れて絶命しました。

 

 

 ナイフを適当に捨ててメニュー画面を操作し、殺害数の確認を行い……50/50となっているのを確認した辺りでタイマーストップ! 

 記録は2時間28分45秒。密かに目標としていた2時間半切りを達成しつつ、誰もこのレギュで完走していないのでつまり私が世界一位です。

 

 

 完走した感想ですが……最後の最後でマグナムを取り出されるとは思いませんでした。完全に油断していたので顔面セーフになるように体を捻らなければ死んでいましたね。反省。

 

 あとは……痛覚表現辺りの規制のせいであまりにも痛みに鈍いのが不満でしたね。

 避けられるのにわざと足の裏でマチェットを受け止めたときも、言葉にするなら痺れた足をつつかれたような違和感しかありませんでしたし。

 どうせZ指定なんだからオンオフ機能を搭載して、どうぞ。痛覚関連は非公式のMODを入れると最悪違法判定なので公式あくしろ。

 

 

 ──さて、このあとどうすっぺ……もうここらで終わりにしても良いんですが……RTAを完走した疲れからか、ちょっと腰が重いんですよね。あと左腕がぷらんぷらんしておられる。

 

 右手で肩を叩いて関節を嵌め直して怪我の調子を確かめ──()()()()()()()()()()()()()()()()()()を拾い上げます。いや要らねーわきったねぇ。適当に弾き飛ばしておきます。

 

 いやあ、そら吹き飛ぶよね。弾薬を直接握るんだから。本来なら手がブロッコリーみたいになる技なんだし中指一本で済むなら死な安よ。まあこのゲーム欠損した部位は治りませんがね。

 

 顔に弾丸が叩き込まれた衝撃で鼻血も出てきたし、出血がスリップダメージになるとこのまま死にかねないのでちょっと誰かティッシュくれねーかな…………と思っていると。

 

 ──来たわね、学園生活部のヒロインズ。それと部屋の奥からこっちをちらちら見ていたみーくんとK……これで紫陽花ちゃんのこれからの人生に必要な人たちが揃いましたね。

 

 

 この先の紫陽花ちゃんの行く道に私はもう必要ありません。残るは憎まれ役の幕引きだ。

 私が生きた証を……走者として生きた証を、最後に残させてくれ……。そうだ、私はRTA走者だ。それ以上でも、以下でもない。

 

 そんなわけで『がっこうぐらし! バンディット50人斬りRTA』はここまで。

 更新する度にえげつねえ数のお気に入りが減少したりしたけど、完結したのでヨシ! 

 

 ほな、また……(粒子になって消える)

 

 

 

 

 

 

 ──カラン、ぴちゃ。

 そんな音がして、紫陽花の顔から真っ二つに割れたお面が落ちて血溜まりへ落ちる。

 

「──づ、ぁ」

 

 外れた肩の関節を嵌め直し、左腕の調子を確かめると、おもむろに傍らに落ちていた──自身の中指を拾い上げる。煙をくゆらせる薬莢とそれに巻き付くように貼り付いた中指をじっと見て、興味が無いかのように捨てた。

 

「………………誰ぞ」

「ひっ、あ、あの……」

「えっと……大丈夫?」

 

 紫陽花が鎌首をもたげた先に立っていたのは、真珠のような白みがかった髪と茶髪の、二人の少女だった。気配だけは感じていたが隠れていたのだろう二人は、心配そうに紫陽花を見る。

 

「…………大丈夫に見えるか」

「そ、うだね、どうしよう……ねえ()()、あの部屋に救急箱あったっけ」

「どうかな。()、ちょっと見てきて──」

 

 最後まで言う前に、紫陽花は圭と言うらしい少女に美紀と呼ばれた方の少女へと手を伸ばす。血まみれの手のひらで足首を掴まれびくりと体を跳ねさせた美紀が悲鳴混じりに足元を見る。

 

「ひぃいっ!? な、なにっ!?」

「ちょっ……美紀っ!」

「……美紀殿、圭殿。放っておいてくれ。儂は、別に、助かりたいわけではない」

「──な……なんで……!?」

 

 ボタボタと鼻血を垂らしながら見上げてくる濃い鉄錆の臭いが漂う少女を前に、美紀の思考は徐々に恐怖に支配されつつある。その時、何人もの足音が五階に上がってくるのを耳にした。

 美紀と圭、紫陽花は、シャベルを担ぐ勝ち気な雰囲気のツインテールに髪を纏めた少女が先頭の、女性一人を交えた四人と鉢合わせた。

 

「っ──紫陽花! ……と、あんたら……もしかしてうちの後輩か?」

「……あー…………」

 

 駆け寄ってきた少女──くるみは、美紀の足に掴みかかる紫陽花の様子を見る。

 

「……馬鹿者。儂は、帰れと言ったぞ……」

「馬鹿はお前だろ! なんでこんな無茶をしたんだ! 死んじまったらどうすんだよ!」

「…………」

「さっさとここを出るぞ、まだあいつらが居るかもしれない」

「────ああ、悪人なら、此処に居る」

「は?」

 

 ぐっとくるみを押し退け、紫陽花は血溜まりに尻をつくように座り込む。

 真横に倒れている死体の足から刀を引き抜き、そして──刃を己の首に添えた。

 

「っ、おい!!」

「紫陽花ちゃん!?」

 

 くるみと後ろで見守っていた悠里が息を呑み、美紀たちは突然の行動に呆然とする。

 

「儂で最後だ」

「──馬鹿言うなよ」

「……儂は人を殺した。散々殺してきた。気の迷いから楽しいとすら思った。故にこそ──なんの罰も無しでは釣り合わんと思わぬか」

 

 こうなるまでに戦い続けたのだろう、疲労困憊とはいえ、血と油を被っていながらも衰えない切れ味なら──少し力を入れるだけで頸動脈から呆気なく鮮血を噴き出させるだろう。

 

 下手に刺激は出来ない。だが、ここで説得できなければ恩人の自決を拝むこととなる。

 

「死んで終われば、責任を果たせるってか……ふざけんなよ紫陽花……っ!」

「ああ、責任だ。でもなくるみ殿、それ以上に……儂は少し、疲れてしまったんだ」

 

 心底疲れきったような、口角をひくつかせるいびつな笑み。その歪んだ顔を、ずっと、お面の奥でさせていたのかとくるみは思考する。

 ──その横を走り抜けて、不意に紫陽花の眼前に座り込んだ女性がいた。女性──慈は、刀を握る紫陽花の手を包むように触れた。

 

「紫陽花さん」

「…………慈女史」

「死んではいけません、命は尊いのです。そんなありきたりな言葉では、きっと貴女は留まらない。だからズルい言い方をしますね」

 

 鼻血と血溜まりと返り血でぐちゃぐちゃの顔に片手を伸ばし、頬に手のひらを添えると、慈は紫陽花をじっと見て──それから言った。

 

「紫陽花さんが死んでしまったら、私たちは悲しいです。だから生きてください。

 私たちにはその苦しみが分かりませんけれど、一緒に背負うことなら出来ますから」

 

「──────、ぁ、あ」

 

「紫陽花さん、良く……頑張りましたね」

 

 慈の顔が、親のそれと重なる。大好きだった母親を最初に手に掛け、まず最初に逃げる選択肢が潰れ、悪人の成敗という現実逃避をして──止まれなくなり、もっと早く、速くと生き急いだ紫陽花の肩から、重荷が取れた気がして。

 

「ぁあ、ぁあぁあっ──ああぁあ……!!」

 

 床の血溜まりに、刀が落ちる。とっくに枯れたと思っていた涙腺から、ボロボロと熱い雫が流れて落ちる。死体と、少女と、女性の居る五階に、慟哭が響き渡っている。

 

 ──まさか人を殺した少女を誉める日が来るなんて。そんな事を、紫陽花を抱き締めてあやす慈は考える。けれども慈は、たった一人で戦い抜いた子供を責める事が出来なかった。

 

 世界がこうなってから、慈は──否、慈たちは人の死に慣れてしまっていた。

 泣き疲れたのか、血を流しすぎたのか、どちらにせよ気絶するように眠った紫陽花を抱き上げて、その場の六人はその場から離れる。

 

 先にショッピングモールに来ていた連中が本来乗っていたのだろう、大型の七人乗りSUVを拝借した紫陽花を除く六人が、集めた物資を後ろに詰めて乗り込む。

 

 すぐに逃げられるようにと考えてか、鍵が刺さったままだった為、慈から運転方法を教わったくるみが運転席に乗っている。

 後部座席に紫陽花を抱えた慈と救急箱を持った悠里が座り、助手席にはゆきが。

 一番後ろに荷物と共に美紀と圭が押し込まれていた。狭そうにしているが、緊急事態故に二人は文句を言わずに我慢している。

 

「──酷い怪我……中指が……千切れてる、どんな戦い方をしたらこうなるの……?」

「悠里さん、とにかく包帯と消毒液とガーゼを出せるだけ用意してください」

 

 てきぱきと怪我の治療を進める二人をバックミラーで見つつ、その奥の美紀たちに目線を向け、地図とにらめっこしているゆきを余所に重苦しく口を開いてくるみは問う。

 

「あんたら、ずっと隠れてたのか?」

「えっ? あ、はい。見ていることしか出来なくて……すみません」

「……あーすまん、言い方が悪かったな。ずっとあそこに籠城してたんだよな?」

「……は、はい」

 

 そっちか……と呟いて、恥から美紀は色白の肌を朱に染める。それから少しずつ、町がこうなった最初の日から今までの事を話した。

 最初は何人も居たこと、噛まれたことを隠した人が暴れだして逃げざるを得なかったこと。そして先程の紫陽花の()()()()()を。

 

「──こんなところです」

「はっは、やっぱすげぇなこいつ。あんま思い出したくないけど、紫陽花の奴、この日だけで何十人も斬ってるんだよなぁ」

「……もしかして、ここに来るまでにこの子に会ってるんですか?」

「何度かね」

 

 へぇ、と呟いて、圭は3列目のシートから真ん中のシートに身を乗り出し、慈と悠里に看病されている紫陽花を見やる。

 紫陽花は、見れば見るほど普通の子供である。こんな子供が、ショッピングモールで、更には外で殺戮を行っていたのだ。

 

 どんな心境で行ったのかなど、察することなど出来まい。一拍置いて、ああそうだと声を出し、懐から物を取り出す。それは、縦に割れて左半分が砕け散った狐のお面だった。

 血で赤黒く染まったそれを布で拭ったのだろう、所々に染みが付いたそれを、真ん中のシートで寝転がり眠っている紫陽花の腹に乗せる。

 

「……お面で顔に、感情に蓋をして……まるで戦士のように振る舞った……のかな」

「どちらにしろ、起きたらお礼を言わなきゃね。理由はどうあれ助けてくれたんだし」

 

 圭の言葉に美紀が続き、慈が飲料水で濡らしたハンカチで顔の血を拭って行く。

 ふと悠里が紫陽花の足に目を向け、靴が切れていることに気が付く。

 靴を脱がせると、続けて脱がせた靴下にべったりとダマになった血液が付着していた。

 

「──もう、こっちにも怪我が……」

 

 足も同じようにタオルで拭い、刃物で出来た線の傷を消毒してガーゼをあてがい包帯を巻く。慈しむような、それでいて若干の狂気が混じった眼差しを紫陽花に向け、薄く笑みを作る。

 

「……仕方のない子ね」

「…………?」

 

 ()()()()()()()()ような声色の悠里に疑問符を浮かべた慈だったが、質問する前に、眠っていた紫陽花が呻きながら身をよじる。

 

「あっ、紫陽花さん。大丈夫ですか?」

「…………が、んー…………?」

 

 ピントの合わないぼやけた目で、自分に膝枕をしてくれている慈を見上げた紫陽花は──見下ろす慈の顔を見て疑問の声を向けた。

 

「────おかあさん……?」

 

「おか──!!?」

 

「ゴブッフォア!!」

 

 寝ぼけ眼の紫陽花はそれだけ言うと再度眠りに就く。不意打ちを食らったように笑うくるみのハンドル操作が狂い左右にフラフラとSUVが揺れ、助手席から抗議の声が飛ぶ。

 

「ちょっ、あーっ! くるみちゃん!」

「すまん、でもそれは……ズルいって……めぐねえがお母さんって、くっ……くくく」

 

 車内にくるみの笑い声が響き渡り、呆れたような顔を美紀と圭が向け、それとなく慈が眠る紫陽花の耳を塞ぐ。窓の外をぼんやりと悠里が眺め、ゆきが地図片手にナビゲートをする。

 

 ──たったの一日で、たくさんの人が死んだ。それでも無情に時間は過ぎて、死人には襲われ、そして人の悪意は尽きないだろう。

 しかして、紫陽花の長いようで短い一日はようやく終わりを迎えた。

 

 ここからが彼女のスタートラインであり、これからが紫陽花の大変な時間の始まりとも言える。だが、車に揺らされながらも眠る、そんな穏やかな時間をほんの少しだけ過ごすくらいならば……きっと許されるのかもしれない。

 

 割れたお面をお守りのように抱き締めながら寝息を立てる紫陽花を見て、佐倉慈は、心の内で少女の細やかな幸を願うのだった。

 

 

 

 

 

『完』

*1
血狂くん「アツゥイ!」

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