【完結】がっこうぐらし!RTA/卒業生チャート+α 作:兼六園
前回の続きはーじまーるよー。今回はワンワンワン放送局を探しに行くところから再開です。
ラジオを付けながら車を走らせていると、時間経過でDJ姉貴が住所を言ってマップにマークが点灯するので、あとはそこを目指して走らせるだけです……と行きたいところさんですが、そうは問屋が卸さないのががっこうぐらし。
パンデミック直後から今に至るまでで乗り捨てられた車浮浪者のおっさん折れた電柱疲れからか不幸にも黒塗りの高級車に追突してしまったワゴン車などが道を塞いでいるため、どうしても迂回しないといけません。*1
だから、助手席のスミコに地図を見てもらう必要があったんですね……ややこしくなるからぐるぐる回すのはやめろぉナイスゥ!
……はい。なんとか大通りに出たので、酔っぱらいの運転のようにジグザグに動いて廃車を避けて通り、休憩がてら別のコンビニに停車。
本来ならめぐねえの車略してめぐカーなのですが、古木くんたちの乗っているのはハイエースなので余計につっかかるんですよね。*2
コンビニの物色とやつらの確認はくるみ姉貴たちに任せて古木くんには休憩しておいてもらいましょう。……と、るーちゃんが遊んでほしそうにしていますね。
ほーら高い高~い、空中3回転半捻り~というのは無理ですが、るーちゃんやゆきちゃん、太郎丸は癒しキャラというのもあって、こうして古木くんのストレスが癒され……ないなこれ。
そういえば古木くん、『あめのひ』に【快楽主義】を引いて以降ずっと【恐怖】が上がらないけど【ストレス】も常時MAXでした。
治すためにも早く大学いかないとなあとかなんとか考えながらるーちゃんの相手をし、ついでにりーさんとも会話をしておきましょう。
本実況では穏やかなりーさんですが、原作ではもうこの時点でだいぶ危ういです。
というのも、りーさんは原作だと既にるーちゃんを失っていることもあってか、幼児退行しているゆきちゃんの世話をすることで平静を保っている側面があったんですね。
そのせいで、高校卒業辺りからしっかりし始めたゆきちゃんの世話が出来ない事が原因で今度はこっちが憔悴し始めるという最悪の連鎖が発生してしまうんですよ。
それが極まった結果、大学編でGNるーちゃんの世話を始める……というのが本来の筋書きです。今回? 何も失ってないからめちゃくちゃメンタル安定してる。SAN80くらいありそう。
──と、探索組が戻ってきたので休憩終わり。さっさとワンワンワン放送局に行きましょう。
ここでちょっとDJ姉貴について言及。
彼女は『がっこうぐらし!』という作品における地味なキーパーソンです。DJ姉貴はシェルターに閉じ籠ってからずっとラジオ放送をしているキャラなのですが、なぜか感染していてやつらになってしまうという謎を残しています。
この謎はのちに大学編で解明され、世界を救わなくてはならない理由となるんですね。
ちなみにRTAで言うと助ける意味は……んにゃぴ、ぶっちゃけ無いですね。大学編まで進めるなら道中で必ずここに来ますし、高校編だけで終わらせるにしても来るだけタイムロスですし。
いやあ、流石に、RTA中にDJ姉貴に会いに来る兄貴姉貴なんかおらんやろ。*3
──運転から数十分後、あれ~おかしいねラジオが流れなくなったね~と訝しみながらもそれらしい場所へ到着。まるで初心者の作った豆腐小屋みたいなデザインのシェルターがありました。
中にはもちろん古木くんが行く(アナザー卑劣)。あとは適当に近くに居るやつ……みーくんとくるみ姉貴のいつメンで行きますか。といったところで今回はここまで。
次回、卒業旅行もラスト。お楽しみに。
──梯子を上り、屋上に向かう古木たち三人は、積もった埃に足跡を残しながら歩く。
「……お、あれか」
「ハッチとは、厳重ですね」
くるみと美紀がハンドルに手を掛けて回そうとし──錆びているかのように硬い。
古木が加わり、ようやくギギギと音を立てて回り出して、重い蓋がなんとか開けられた。
中に繋がる梯子を先に降りた古木が周りを警戒し、二人を招く。三人が中に入ると、古木がポツリと呟くように感想を言う。
「──まるで潜水艦めいているな」
「シェルター……だとして、やっぱり用意が良すぎますね。まるで世界がこうなることを想定していたような不気味さ、というか」
「おい二人とも、この先っぽいぞ」
狭い廊下のような通路にある扉に目を向け、くるみが二人に伝える。バールとシャベルを構えた美紀たちを手で牽制し、古木は扉の近くで刀の鞘を握りながら口を開く。
「扉を開けてくれ、中から誰かが襲ってくるつもりなら俺が対応する」
「……気を付けろよ古木さん」
こくりと頷いて、くるみが代表で扉のノブに手を伸ばし──さっと開け放つ。
……しかし、中には誰も居なかった。部屋に顔を覗かせて四隅の死角に目線を辿らせて、それから古木は中に入り、二人も追従する。
室内の棚には様々な楽曲のCD、壁には映画か何かのポスター。机にはコンポーネント、その下にマイクスタンドと音量の調整をするつまみが幾つも備わった機材。
──そして、一枚の書きなぐったような乱雑で荒々しい書き置きと、入ってきた方とは別の扉から聞こえてくる内側からの引っ掻く音。
「っ! ……ふ、古木さん、くるみ先輩」
「……ああ、わかってる」
「──これは……、そうか」
書き置き──否、
【扉を開けるな!
扉の先には私がいる。なるべく自分で始末をつけるつもりだけど、うまく行くかわからない。
音がしたらそういうことだと思ってくれ、この手紙を見つけた人にこの家とキーを預ける。
できれば、あなたと一緒にお茶を飲みたかった。できれば、あなたと一緒にここを出たかった。
できれば】
「────」
ぐらりと目眩のように視界が揺れる。ほんの数時間前まで生きていたのだろう女性は、きっと自分達のような誰かが来ることを期待していたのだろう。きっと、誰かと面と向かってお喋りする日を楽しみにしていたのだろう。
きっと、きっと──この遺書を書きながら、もっと生きていたいと思っていたのだろう。
そう考えるだけで、ツンと鼻の奥が、目頭が熱くなる。古木は顔を背け、カリカリと引っ掻く音が鳴り続けている扉に向かいながら言った。
「送ってくる」
「……そっか。頼んだ」
古木が置いた遺書を読んで顔をしかめながらくるみは返す。美紀もまた彼女の横から紙を覗き込み、女性の結末を察して口許を押さえた。
──暫くして、外に戻ってきた三人は神妙な面持ちで皆の下に向かう。
「古木くん、くるみさん、美紀さん。中は……どうでしたか?」
「────」
古木が首を振り、問いかけた慈は察した様子で、そうですかと一言呟く。
車のドアを開けて外に体を向けるように座り込んだ古木に代わって、くるみと美紀が中の様子と託されたキャンピングカーの鍵のことを話していると──おもむろにスミコがドアに寄りかかるように背中を預けながら口を開いた。
「──背負う必要はあるのかい?」
「あるさ。関わってしまった」
「それは小生たちの一方的な意味であって、彼女は我々のことなど知りもしない」
「……背負うことは、悪いことか?」
「さぁねえ」
肩をすくめるスミコは、だが──と続けて古木の顔を覗き込むように顔を傾ける。
「君は少しばかり責任を背負い過ぎる。そのくせ、誰かに分担させようともしない。それで潰れてしまったら、今度は誰が古木くんの行動の責任を背負えばいい?」
「──それは、そうだが」
「もっとも──その時が来たら、このスミコが君の全てを背負うのもやぶさかではないがね」
そう言って締めくくり、スミコはパチリとウィンクを一つ。面食らったようにしながらも、古木は気分が軽くなったように表情を和らげた。
しかし、それでも、脳裏の片隅には些細だが恐らく無視してはならない問題が過る。
「──あの女性は、
長らく人の出入りが無かったのだろう、積もった屋上の埃。厳重に外界と隔離されていながら、あの女性は感染し、発症していた。彼女を
「……まさかな」
「めぐねえに足りないのってああいうところだよな。ヘタレっつーかパワー不足っつーか」
「で、でも……昨日ちょっと……肩に頭を……預けてみたり? しましたけどぉ!?」
「そこはキスまで行きましょうよ……肩に頭とかそんなの誰でも出来ますよ」
「うっ」
「……えっ? もしかしてめぐねえ、まだ古木さんになにもしてないんですか?」
「うっ」
「めぐねえ! ファイトだよっ!」
「……ゆきちゃんの優しさが……辛い……!」
次→10月28日00時00分(予定)