【完結】がっこうぐらし!RTA/卒業生チャート+α 作:兼六園
大学編キャラ登場で走者の運気を吸い取られたゲームのRTAはーじまーるよー。
前回はるーちゃんを救出し、酒豪でしかも酔うと六甲おろしを歌い出す系ゴスロリ女ことスミコが仲間になった所で終わりましたね。
今回は2日目夜から再開です。といっても寝るだけなのですぐ3日目に移りますが。
保健室から持ってきたベッドのマットレス×4は、サイズでいえば一つにつき二人までなら寝られる程度には大きいのです。
しかし問題は寝るポジションで、異性と眠ると否応なしに性欲の値が上昇するので誰が古木くんの隣で寝るかがわりと重要なんですよ。
寝る場所が離れるほどに上昇値は低くなり、近いと高くなります。
しかも一度決まると違う位置で寝る確率はかなり低くなるため、好感度によっては……まあ……んにゃっぴ、抱き枕にされますよね。
別にヒロインと結ばれることは非推奨ではないんですが、恋人になった事で確実に発生するベッドシーンのゲッターチェンジが避けられないので、RTA的にはリセット案件の大問題ですね。
一番端で寝る古木くんの隣に来るのは誰だ? せめて性欲の上昇値が低いゆきちゃんかるーちゃんでオナシャス! エッセンシャル!
……めぐねえ。
──この淫ピィ!!(闇野)
よりにもよって高校編ヒロインでりーさんと同等かそれ以上に性欲の値が高まりやすい人を隣に置くんじゃねえ! やっぱ確実にスミコに運気吸われてんじゃねえか!
真逆の端にスミコが陣取り、るーちゃん、りーさん、ゆきちゃん、くるみ姉貴、めぐねえ、最後に古木くんで並んでいる状態です。
スミコと場所を交換したいのですが、睡眠時間に入ったNPCは起こすとストレス値が上昇するのでもう無理ですね。今回は諦めてめぐねえと横並びに眠りましょう。
好感度0の状態からでも押せ押せであっさり堕とせるチョロインのめぐねえですが、実は彼女を最初に攻略してから他ヒロインに浮気しても一切責められないんですよね。
逆にりーさんやくるみ姉貴を攻略してからめぐねえに手を出すと、私の口からはとても言葉に出来そうにない凄惨な事になります。
一度だけ『離婚調停×葬式÷浮気現場』みたいな空気になってリセットしたことがあります。三角関係には気を付けよう!(ゆうさく)
ではもう色々と面倒くさくなってきたのでさっさと寝ます。3日目はやることがイッパイイッパイ(内なるガバ穴)なので、疲労を溜めないようにしましょう。……枕投げしない?(手のひらドリル)
──いや、やめておきましょう。不意に試走の時くるみ姉貴の豪速球に体力を6割も削られた記憶が突如として想起されたので。
──3日目の朝です。
何故か窒息ダメージで体力が0.5割ほど削れていますがなんでですかねぇ(すっとぼけ)
めぐねえはさぁ……もしかしてRTA完走する気ゼロの人? 人を抱き枕にして寝ぼけながら乙に顔を埋めるのはやめようよ! ねぇ! ぞいぞい言ってないでさぁ!(別作品)
めぐねえの乙で窒息死とかいう誰もが羨む終わりを迎えるのも良いんですが、モールに行かねばならないので起きましょう。
こ、この教師……大学に友人を置き去りにしてしまい内心気が気でない純情な学生をたぶらかしやがって……! うわぁ髪によだれ付いてる。
それでは朝の運動も兼ねて、三階に上がってきているやつらの殲滅をしつつ職員室から車の鍵を探します。三人でリバーシティ・トロンに向かい物資プラス生存者二名を連れ帰るので、めぐねえのミニカーではスペースが足りないんですよ。
……と、ラグがあったのか、今になってるーちゃん救出サブクエ報酬の経験値が入りました。もっと早く来いよ、遅い遅い遅い(軍畑)
いやぁ【剣術Lv2】のお陰でやつらがTDN経験値にしか見えませんね。さっさと【跳躍】もレベル2に上げたいし、遠距離攻撃用に【投擲】が欲しいのでモールではちょいと多めにやつらを狩った方がいいかもしれません。
……お、6人乗りのキーが落ちてました。ラッキー、懐に納めておきます。
そろそろ皆が起き始める頃なので戻……る前に、ステータスから『ストレス・恐怖・性欲』の通称
(SAN値では)ないです。
それぞれを10段階で表示しますとストレスは4。恐怖は3。性欲が5ですね、めぐねえの抱き枕にされながら寝てたんだしこれはしゃーない。
出掛ける前に『処理』しておいた方が無難だと判断したので、あとでトイレに入っておきます。へぇっ!? ホ、ホナニーですかぁ!?
このゲーム、トイレで処理するときは画面が暗転してゲーム内時間が数分経過するだけで終わりなのに、恋人とベッドシーンでパイルダーオンするシーンは飛ばせないのおかしくない?
確かにPC版はR-18のエロゲー仕様だけど、
……などと言っている裏で古木くん以外の皆が起きました。
前日のスミコの提案通りに、モールに行く方面で話が進んでいますね。
言い出しっぺのスミコと、付いて行く事になる古木くん。そしてくるみ姉貴という現段階で最強のチームをアッセンブルします。
原作では一夜跨いでようやく到着したくらいの長い道のりを行きましたが、ゲームでは当然短い時間で到着します。
朝から行けば昼には到着するので、中でやることを終えれば帰りで夕方から夜となり、ちょうど1日使い切る計算となっていますね。
すげぇ、まるでRTAみたいだ(n回目)
んだらば食事を済ませて
めぐねえ、りーさん、るーちゃん、ゆきちゃんの四人を残していくのは少々不安ですが、今回のめぐねえたちは自由行動で食料やマットレスを持ち帰ってくる有能AIなので大丈夫でしょ。
るーちゃんが居ることでりーさんもクソ雑魚メンタルを卒業しましたし、めぐねえもバールがありますからね。
それにゆきちゃんとるーちゃんは幼い生存者として、周りのストレス・恐怖を微量ながら癒す効果もあります。マイナスイオンかな?
──四人の見送りを背に、手早く階段を降りて外へ。あらかじめ見付けておいた鍵は遠隔操作でロックを解除できるタイプなので、該当する車を探すのは容易です。
ロックが外れる音をイヤンホホで聞き逃さないようにして、鍵の開いているミニバンに乗り込んでいざ鎌倉。
なお車はやつらにぶつけると耐久力が減ります。やつらと黒塗りの高級車に気を付けながら安全運転でいきますよーイクイク……ヌッ!
古木くんのオカズはなんだったのか。
その謎を探るべく、我々は南米のジャングルへと向かった。
──不幸にもブロック塀に追突してしまった乗用車、倒れた電柱、やつらの死体をのらりくらり避けて数分。モールに向かう途中、くるみ姉貴の声で車を止めます。
くるみ姉貴をパーティに入れた状態で発生する自宅を訪れるイベントですね。
中には誰も居ませんが、ここで様子を見てくるよう提案すると好感度が上昇するので行かせましょう。たったの1分を好感度と交換できると考えればなんともうまあじです。
……はい、くるみ姉貴が戻って来たので車を発進します。なんか無音なのも寂しいのでSPITFIREでも流しておきます。これがブレンド・Sちゃんですか。違うだろぉ?(内なるガバ穴)
そんなことを言っていると、件の目的地、リバーシティ・トロンに到着しました。
下が地下1階、上が5階まである大型のショッピングモールですね。先ずは地下に向かって食料品を確保しましょう。では、散!
無洗米、缶詰、レトルトを優先的に集めます。しかし地下シェルターを調べられるようになれば物資は事足りるので、この辺の回収なんかは必要最低限で良いです。
地下1階は生鮮食品なんかもあって腐った臭いが酷いため、なるべく手短に収集を終わらせます。詰め込めるだけツメッ、詰め込もうぜ(KBTIT)
時折ふらふらと接近してくるやつらは片手間で膾切りにしておきます。るーちゃん救出サブクエの経験値が結構あるので、やつらをあと十数体倒せばステータスを3つ上げられそうですね。
スキルポイントは【跳躍】をレベル2に上げるのと【投擲】を習得するのでちょうど3ポイント使い切ります。RTAという都合上、あれもこれもとスキルを習得出来ないのでこの辺は走者によって千差万別でしょう。
感染による怪力を利用して道路標識を振り回す奴も居れば盲目なのを気にせず走る奴も居る。走者が違えば操作キャラも違う。
十人
などと言ってるうちに、散開して回収していたくるみ姉貴とスミコが戻ってきました。
数回戦闘を行ったらしく、シャベルと傘にそれぞれ血が付いています。
シャベルはともかく傘頑丈過ぎひん?
と思ったのですが、完走後の編集の合間に調べたところ、スミコの傘は護身用の頑丈なモノに、ゴスロリに合うようなフリルなどを付け足した物のようでした。
殴ってよし突いてよし、加えて乗っても平気な耐久性に、広げて入れば降ってくる破片なんかも防げるという。この酒豪、もしかしてNPCの中じゃかなり強い方なんですかね……?
古木くんが米、くるみ姉貴がレトルトのパック、スミコが缶詰を調達する手筈だったのですが……なんかスミコの荷物多い……多くない?
その荷物はなんだぁ? 証拠物件として押収するからなぁ?
……離せコラ、流行らせコラ! んーにゃーごお前! どうせ酒持ってきたんだろ! 料理酒で誤魔化せると思ってんじゃねえよお前!
大学生同士の醜い争いにくるみ姉貴も呆れていますね。あーもう(大人の威厳が)めちゃくちゃだよ。日本の未来を憂うわ。
……仕切り直して1階に戻り、使い捨てのサイリウム*2を三人で2つずつ確保します。これは今のような暗がりなどでやつらを誘導するのに使う投擲アイテムですね。
早速サイリウムくんをしゃかしゃかしてポイ。釣られるやつらを背後忍殺しながら三階に向かって、防犯ブザーを回収。これはこのあと脱出時に現れる小規模ながらそれなりに数が多いやつらを捌くのに使います。
更に女性キャラクターが二人以上居るときに訪れると発生するファッションショーイベントをさっさとスキップ…………しようと思いましたが大したロスにならないので見ていきましょう。
クソホモたちもきっとそれを望んでいる。俺もそれを望んでいる(アナザーゲイツ)
くるみ姉貴のボーイッシュな短パンはいつぞやのイケ魂の青年*3が反応しそうですが、シリーズが違うので帰りたまえ。
そしてスミコはガチガチのゴスロリから一転、清楚かつシンプルな白ワンピースへ。
『男の子ってこういうのが好きなんでしょ?』って感じですね、先輩! 好きっス! でも僕は青襲椎子さんが一番好きです(大告女権)
んだらば適当に褒めておき、元の服に着替えるのを待って5階に上がります。5階には寝具や電化製品などが売られており、自分で組み立てる場合もあって当然のように工具セットも一緒に売られているんですね。
残念ながら最強の接着剤ことダクトテープはありませんでしたが、工具の傍らにワイヤーがあったので妥協します。回収しましょう。
そして、現バージョンでは寝具と反対の位置に、なんとキャンプ用品及びテントが売られているのですが──ここに最強の投擲武器が置かれています。それがこれ、『ペグ』ですね。
本来はテントを固定する為に地面に刺す物なのですが、その用途の都合上先端が尖っており、程々に小さく細長いので、
ちなみに『物を投げる』という行動は、スキルの【投擲】が無くても出来ます。
投げて当たればダメージも入ります。しかしとんでもなく当てづらい。
FPSで言うとでかい円のレティクルの何処かに弾が飛んで行くような感じで、中央に的があっても掠めるか大きく逸れてしまうんですね。
それを真ん中に飛ぶよう修正するのが【投擲】スキルの補正なわけです。
──説明もそこそこに、工具箱とワイヤーの束をそれぞれ二人に持たせ、早速と既に『軽』から『中』になっている所持重量が『重』にならない程度にペグを回収します。
……所持重量ギリギリまで拾おうとしたけど20本目で無くなったので、あとは生存者である親の顔より見たヒロインたちを助けに行きます。
それと、サブクエの経験値とモールで倒したやつらの経験値を合わせてステータスで今のうちに持久力と筋力に1ずつ振り、獲得する2ポイントで【跳躍】を【跳躍Lv2】に上げましょう。
これで落下ダメージ減少の数値が25%から50%になりました。やはり跳躍……跳躍は全てを解決する……!*4
余った経験値からして、あと少しで更に1割り振れるのでその時は【投擲】を取ります。……おや、飾られていたベッドの上にバールが落ちていますね。誰かが武器として使っていたのでしょう、折角なので持って行きます。
それでは宿直室に向かい、ノックして声を掛けます。すると中から慌てた様子でドタバタと足音が鳴り、少しして扉が開かれました。
──3日目ではまだ『みーくん』こと
死にたくなければついて来い(シュワちゃん)
──三階、女性用の衣服売り場で、古木は突如として開催されたファッションショーの相手をさせられていた。女性特有の長い買い物に付き合わされ、露骨にげんなりとした顔を見せる。
当然ながらショッピングモールを徘徊する『やつら』が近くにいないことを確認しての行動であり、やはり年頃の
「女とは……」
ふう、と小さくため息をつく。
古木にとって唯一の知り合い──幼少期からの付き合いになる人物は予めメモした内容以外には目もくれず買い物を終わらせる為、こうして待たされることは一度として無かったのだ。
「……いかんな」
こうも思考を纏められるだけの時間が出来ると、胸の奥に押し留めていた不安が溢れそうになる。叶うことならこんなところで時間を潰していないでさっさと大学に戻りたい、というのが古木の心からの本音であった。
それには、動く死体があまりにも邪魔であり──やつらを斬る為にと、無意識に思考がイメージトレーニングにずれて行く。
もっと深く、もっと鋭く、慈悲など与えず、より速く一撃で首を──「古木くん」
しゃん、と。
鈴が鳴ったような声色が、古木の思考を中断させる。面を上げた古木が見たのは、数分前までゴスロリの衣服に身を包んでいたスミコの、一切の汚れが奇跡的に見当たらない、純白のワンピースを着込んだ姿だった。
「──どうかな?」
「………………」
一言で言えば、『清楚』に尽きる。
元々ゴスロリというファッションを選んでいたスミコなのだから、大抵の服は着こなせる。ぐらりと精神的な支柱を揺らされた気分になり、動揺を悟られないように、古木は平坦に返した。
「良いんじゃないか」
「……ふぅん」
どこか不服そうに呟くと、ひらりと裾を翻して試着室に戻る。すれ違うように隣から出てきたくるみのボーイッシュな服装にも同じように返して、数回繰り返したのち、それからはただ刀の調子を確認するだけだった。
女子物の下着の予備を確保すると言われても、そもそも古木に女子高生や女教師の下着のサイズなど分かるわけがないのだから仕方がない。
──ベンチに腰掛け辺りから近付いてくるかもしれない気配を警戒する古木を余所に、くるみとスミコは下着とついでに各サイズのブラトップを買い物カゴに入れていた。
「遠征の前に、佐倉女史や悠里くんのスリーサイズを聞いておくべきだったかな」
「なんで……あー、なるほど」
豊満なそれを思い浮かべ、くるみは苦笑をこぼす。客観的に見てもやや平均的な自身のそれと比べて、苦笑はため息へ。
「にしても古木さん、どの服装にもバグったみたいに『良いんじゃないか』としか返さなかったなあ。興味ないのか?」
「──ふ、きっと、比較対象が居るのだろう。小生やくるみくんを歯牙にも掛けないくらいの相手が……ね」
くつくつと小さく笑い、ハンガーを外した服を畳んでカゴに入れる。
「しかして彼の顔を見ればよく分かる。淡い恋心というものだ。なんともいじらしく、それでいて、青春を感じさせる。
だからこそこう言わざるを得ないのだよ、「全く男の子ってやつは……」とね」
演劇でもしているかのように、片手を胸元に置いてもう片方を天井へと向ける。ほう、と熱が含まれた吐息が漏れ、いわゆる女の勘がスミコの感情を見抜き図星を突く。
「──もしかして、古木さんのことが」
ふに、と指先が唇を押さえた。常に飄々としていた顔が、悲しげに、仕方ないと諦めたかのように、寂しそうに歪む。
「馬に蹴られたくないだろう?
余計な勘繰りは程々にしたまえ、小生と彼は単なる同学年というだけさ」
踵を返して着替えを探しにいったスミコの背中を見ながら、くるみはポツリと呟いた。
「……いや、それもう答えじゃん」
全く大人ってやつは……。まるで示し合わせていたかのように、ついポロっと、くるみの口からそんな言葉が飛び出していた。
──5階、寝具や電化製品、キャンプ用品が置かれているコーナーに訪れた三人は、別売りの工具箱と傍らのワイヤーを拾い上げる。
無洗米をリュックに詰めている古木の代わりにそれぞれを抱える二人の横で、ふとキャンプ用品の一つを拾い上げた。
「……ペグか」
「えっと、テントを固定するやつだっけ」
「ああ。しかし、この重さと長さなら……」
「どうした?」
釘のような形の、先端とは逆の端が円形になっているそれを指先で器用に回す。そして不意に、ひゅんと空気を裂くように勢いよく投げた。
「うぉっ!?」
「──
「……すげー」
壁に真っ直ぐ水平に突き刺さったペグを見て、くるみがそう声を漏らす。
足元に転がるペグを纏めて円形の部分に紐を通し、魚を吊るすようにリュックにぶら下げている古木に気になったことを聞いた。
「古木さん、なんでも出来るんだな」
「……そういうわけでもない。
生前俺に剣を教えていた師──叔父上が剣以外も得意だっただけだ」
「生前……?」
「病で去年亡くなった」
「──ごめん」
「いや、いい」
あっけらかんとした口調で言われ、反射的に謝る。
「剣以外も、とは?」
「……叔父上は弓術や投擲術にも優れていてな。だが、先ず剣術を、と言われていた。あれもこれもでは中途半端になるからと」
「ほう……つまり弓も物を投げるのも、やろうと思えば出来る訳だね」
「基礎の基礎だけは聞き齧っているから、出来んことはない。所詮は二足のわらじに過ぎないし、練習あるのみだけどな」
あまり良い思い出のない記憶が脳裏を過るが、なるべく顔に出さないようにしている古木は苦虫を噛み潰したように口角を歪める。
剣では敵わず、離れれば鏃の付いていない矢が舞い、気を緩めると顔面に石が飛んで来る。おおよそ余命宣告をされた病人とは思えない動きをする老人にこれでもかと扱かれたのも今は昔。
唯一の血の繋がりが途絶え、家に一人きりになった今なら、あれこそが不器用な武人なりの孫とのコミュニケーションだったのだと理解できる。そして剣の教えで人を救えているのなら、あの日々は間違いではなかったのだ。
「剣、投擲、弓。近中遠の全てに通じるとは──ははぁ、狼流とでも呼ぶべきかな?」
「……『狼』ではイントネーションが違う。『大上』は父方と祖父の名字で、母方の名字が──いや、なんでもない」
「気になるじゃん。なんて名字なんだ?」
暇そうにテントを覗いていたくるみがスミコに代わって問う。視線を斜め上に動かしてから、古木は間を空けて答える。
「俺の友人なら知ってるが、教えない」
「ケチ」
「ケチで結構」
ぶーぶーとブーイングを飛ばすくるみを窘め、荷物の重さを確かめてリュックのずれを背負い直すと二人に言う。
「そろそろ帰ろう。長居すればやつらに勘づかれるし、学校に残してきた皆も心配だ」
「一人くらいは生存者が居てもおかしくなかったけれど、どこもかしこも死臭にまみれている。あながち『地獄が満員になった』という説も馬鹿に出来なくなってきているようだ」
「なんですかそれ」
「確か、何だかの映画のフレーズ」*5
疑問符を浮かべたくるみに淡々と返し、階段の方角に足を向けた古木だが──ふと、5階の隅にある個室から音が聞こえてきた。
咄嗟に振り返りながら親指で鯉口を切り、柄に手を沿えて耳に意識を集中させる。
「古木くん、どうかしたかい」
「音がした。誰か、あるいはやつらが居る。確かめるか……どうする?」
「……あたしは確かめてみても良いと思う」
「一応リーダーは古木くんのつもりなのだがね、小生としても生存者は居るに越したことはない。尤も、中に居るのが『誰』なのか『何』なのかはまだ分からないわけだが」
まるで、シュレディンガーの猫だ。あまり冗談になっていないそれに頬をひくつかせるくるみと顔を見合せ、ベッドの上に落ちていたバールを拾い上げ刀の代わりに握る。
ハンドサインで簡潔に柱の裏に隠れるようくるみとスミコに伝え、バールを片手に扉をノックする。生存者が居るかもしれないとは言うものの、それが善人であるとも限らない。
場合によっては死者だけでなく生者をも──そこまで考えて、開かれた扉の奥からこちらを覗いてきた顔を見て古木の毒気が抜ける。
「──だ、誰、ですか……?」
「……あー、えーっと」
ワインレッドの瞳を不安そうに揺らし、茶髪をハーフアップにした少女が、古木を見上げて声を震わせる。出入口にばら蒔かれていたチラシを見せると、古木は苦笑を浮かべて言った。
「……参加者だ」
「あ、はい。…………はい?」
次→8月9日00時00分