エンド・オブ・ザ・ワールド
第三階層 中央付近
京子奪還に向け、重要大事を筆頭に一護、綱吉、なのはの三人は第三階層の奥深くへと歩を進めている。
険しい崖を超えた先に待ち構えていたのは、暗黒の世界へと通じる
複数の
四人は足場の悪い階段を下りながら、門の向こう側を目指して走り続ける。
「おっ!」
途中、誤って一護が足を踏み外す。
大事、綱吉、なのはの三人は立ち止まり―――大事がおもむろに手を差し伸べる。
「大丈夫かい?」
「すまねぇ・・・」
一護は大事の手を借りて立ち上がる。
「気を付けて。この先はもっと足場が悪いから」
言うと、大事はさらに足場が険しい階段を駆け足で下り始める。
一護達もその後を追って、足を踏み外さないように気を配りながら階段を潜っていった。
ほどなくして、門を超えた先―――一大事達の目の前に広がってきたのは
どういうわけか、親切にも一本道が敷かれているのが気がかりだが、一護達はこの道の先にギュスターブと京子がいるのだと確信。その道を信じて進もうとする。
ジャリ・・・。
そんな折、一護達は足元の砂を踏んだ際に奇妙な気配を感じる。
「なんだこの砂?」
「妙な気配を感じる・・・」
「これはただの砂じゃない」
三人に声をかけたのは大事だった。
大事は
「闇に心を捕われた存在が肉体を失った時、その骨が砕けてできたものさ」
「どういうことですか?」
言葉の意味をすぐに理解できなかったなのはが尋ねると、大事は話を掘り下げる。
「ハートレスは厳密に言えば“心を失った者達”ではない。“自らの心の闇に打ち敗れた心のみの存在”―――この砂漠はハートレスにすらなれなかった者の成れの果て・・・どこまで行っても闇の世界には希望ってものが無いのさ」
「希望がないだと?」
「そうさ。ここにあるのは深い闇と、絶望だけ。それはさながらギュスターブの心を表しているようだ」
闇の世界に住まう存在―――ハートレスは、人が身の内に必ず持つ心の闇から生まれ、その闇が肥大化し制御できなかったとき、その存在自体を蝕みより強い闇の
大事は心を失い肉体だけが残ってしまったハートレスのなりそこないから生まれた砂漠を見渡し、その無限の如く広がる景色をギュスターブの荒んだ心と重ね合わせる。
複雑な思いを抱え口籠る一護と綱吉。なのはは、二人と同じ気持ちを抱えながら大事に尋ねる。
「ギュスターブは、どうして世界を壊そうとするんでしょうか?」
「さぁね。ただ、精神状態が真面じゃないからこそ破壊に走るんだ。あいつにだって、人並みの情と世界の意志としての誇りを持っていてはずなんだ。それが、何らかの拍子で希望が絶望に変わって・・・そして心を闇に売り渡した」
すると、大事は一瞬の間を置いてから一護達の方へと顔を向ける。
「あのさ・・・三人にひとつだけ頼みがあるんだ」
「なんだ?」
「ギュスターブを・・・助けてやって欲しいんだ!」
「なんだと?」
大事の発言を聞いた瞬間、三人は耳を疑った。
性質の悪い冗談ではないかとも思ったが、大事の瞳は真剣そのものだ。
「勿論奴がしたことが重罪なのは承知だよ。だけど、それでも僕は! あいつの中に渦巻く絶望を希望に変えたいんだ!」
犯した罪が消えるわけではない。
だが
大事は僅かにも可能性があるなら、ギュスターブの壊れた心を修復し、破壊の原動力となっている絶望を希望へと変えてあげたいという情がここにきて湧き上がった。
一護達は顔を見合わせ、自分なりにいろいろと考える。
そして、一護となのはが導き出した答えは――――――
「・・・・・・わかった。俺たちにそんな力があるなら」
「全力で
大事は返事の遅い綱吉の方へと視線を向ける。
「ツナ君は・・・」
綱吉はこの三人、強いては三世界組の中では最も被害が大きい。
だが、大事の懇願を無下にしたくないという思いが綱吉の中に湧き上がる。もともと綱吉もできる事なら人を恨みたくないし、恨みからくる暴力を嫌悪していた。そんなマフィアのボス候補とは思えない優しさを内包した綱吉が出した答えは、一護となのはと同じだった。
「・・・・・・約束する」
ギュスターブを斃すのではなく、助けるという方向で意志が固まった。
三人の言葉を聞き、大事は表情を和らげ心から感謝する。
「ありがとう、三人とも。急ごう! あの丘の向こうだ!」
「ああ」
「はい!」
「京子・・・」
大事を先頭に、三人は丘の向こう側にあると思われるギュスターブのアジトへと向かって走り出す。
丘の向こう側を目指し、ひたすら一本道を走っていく四人。
そして、丘の頂上付近に到達した直後―――彼らの目に飛び込んできた光景は、草木一本生えていない表土と、ギュスターブのアジトと思われるストーンヘンジを
そして、その中央には―――
「「「!」」」
中央には幽閉用の
「京子・・・」
京子の姿を視認するや、綱吉は一目散に前に飛び出しグローブの炎を全開にして表土を駆け抜ける。
「京子―――ッ!!」
綱吉にとって、笹川京子は特別な存在だった。
リボーンと出会う前、「ダメツナ」と常に見下され、何をやっても周りからあしらわれる
そして現在―――戦いを通してできたたくさんの仲間の中に交じっても、京子は一際その存在感を失わず、むしろこれまでよりもずっと近くで綱吉の心を明るく照らしてきた。
ギュスターブに連れ去られ、最も危険な世界に幽閉された彼女を何としても助け出したい。その想いが、綱吉の中で爆発しそうになっていた。
アジトまであと一歩と言うところの距離まで近づく。
もう少しで、今日を助け出すことができる―――そう思った直後、綱吉の元目掛けて炎が飛んでくる。
「く!」
綱吉は飛んでくる炎を華麗に避ける。
彼の後ろに付いて滑空していた一護となのはも、前方から飛んでくる炎を斬撃と砲撃で打し消し、目的地へと到達。
「ツナ!」
「ツナ君!」
綱吉に追いついた三人は、ストーンヘンジを思わせる建造物の背後に浮かぶ巨大な骸骨の頭上から、やたら炎を飛ばしてくる敵の攻撃に襲われる。
炎を躱した三人が骸骨の方に目を向けると、彼らの到着を待ちわびた様子の男―――事件の
「よく来た。黒崎一護。沢田綱吉。高町なのは」
「ギュスターブ!」
「京子を返せ!」
敵意剥き出しにギュスターブを睨み付ける綱吉の拳には、煌々(こうこう)と輝く炎が灯る。
ギュスターブは檻の中に閉じ込められた京子を
「見ての通り、彼女はエンド・オブ・ザ・ワールドの空気に侵されかなり衰弱している。早く助けないと命の保障は無い。だが知っているか? この娘の命を助けて欲しければ、俺の言うことを聞くしかないって」
檻の真下、巨大な顔の中はドロドロに溶けた溶岩で満たされた池となっていた。下手にギュスターブを刺激したり攻撃を行えば、檻は瞬時に切り離され―――京子は檻に入ったまま
「く・・・・・・」
一護も綱吉も、そしてなのはも武器を構えたままその場から動くことができず―――額に汗を浮かべる。
三人の元に遅れて大事が近づき、ギュスターブを見据えながら刀を構える。
「ギュスターブ! おまえは、一人で僕たちの相手をするつもりか?」
「ふん。一人ではない(・・・・・・)」
「え?」
言葉の意味を理解できなかったなのはが声を漏らす。
ギュスターブは意味が分からないでいる一護、綱吉、なのはと大事の四人に分かるように説明をする。
「
「! まさか・・・」
大事がギュスターブの意味する言葉の意味を正しく理解した直後―――
「ラット、タウルス、ティグレ、コネホ、ドラケン、セルピエンテ、カバロ、シャーフ、モノ、ファイサン、サバーカ、ボアー!
ギュスターブの一声で、ドロドロに溶けた溶岩の中からこれまでに斃された
一護達は固唾を飲むと、溶岩の状態から徐々に元の姿へと近づき復活を果そうとしている使徒達の様子を見つめ、一筋の汗を零す。
「おい・・・こんなのありかよ!」
「
「そいつらは貴様らを仲間から引き離すために出向き、ワザと死んでここに戻って来たんだ」
「馬鹿な! だとしても何でこんなに早く・・・」
すべてはギュスターブの計算通りに事が運んだ。
エンド・オブ・ザ・ワールドで繰り広げられた三世界組と
大事はギュスターブの用意周到ぶりを見誤っていた。
そして、溶岩の状態から完全に復活を遂げた使徒達は一様に大事の元へと飛んで行く。
「自らの認識がすべてだと思わぬことだ!」
セルピエンテを筆頭に―――残忍非道、凶悪卑劣な十二人の使徒達が襲い掛かる。
「地獄に堕ちろ!!」
「うらああああああ!!!」
セルピエンテ、カバロ、サバーカによる三体同時攻撃が大事に襲い掛かった。
大事は辛うじてこの攻撃を受け流し、一護達から距離を取る。
「大事ッ!」
「三人は京子ちゃんを! 僕に構うな!」
と、言った大事に向かってファイサンがネイキッド・ラングを振りおろし―――大事の刀と鍔迫り合いとなる。
「あれれ~。世界の意志が人間と友情ごっこ(・・・・・)?」
「く・・・」
世界の意志一人に対し、敵の数は十二人。それも、ギュスターブと言う世界の意志の肉から生まれ、憎悪や絶望と言った負の感情を「魂」として与えられた凶悪な存在。
「!」
不意に辺りが暗くなったと思い頭上を仰ぎ見ると、四メートルを超える巨体に見合った巨大な腕を持つボアーが豪快に腕を振り下ろす。
ドーン!!
土煙に隠れた大事の安否を、一護達は気遣った。
「大事!」
「重要さん!」
と、その直後―――異能の鎖を自在に操る最大の宿敵ギュスターブが一護達の元へと飛びかかる。
「お前たちは俺が相手だ。決着を付けようじゃないか?」
三地点に別れた一護、綱吉、なのはは共通の敵であるギュスターブを
余裕綽々(よゆうしゃくしゃく)のギュスターブが異能の鎖を槍の形に変形させ、一護の元へと飛びかかる。
攻撃を躱した一護はギュスターブへと斬りかかり、その一護を援護しようと綱吉が前に出る。
「ナッツ!
右手のグローブに乗せたナッツを
「Ⅰ世のガントレット(ミテーナ・ディ・ボンゴレ・プリーモ)!!」
その昔、初代ボンゴレファミリーのボス「ボンゴレⅠ
「バーニングアクセル!!」
大威力の火球を拳に乗せ、ギュスターブへと放つ。
ギュスターブは異能の鎖を器用に盾の形に変形させ、火球を打し消し、そこから綱吉に向かって異能の炎でオウム返し。
「ふん!」
オウム返しされた炎の射線上に立っていた綱吉は、ガントレットの姿からナッツを戻し、瞬時に切り替えし左手のグローブに乗せて
「Ⅰ世のマント(マンテッロ・ディ・ボンゴレ・プリーモ)!!」
ナッツはボンゴレⅠ
「ぐうう・・・」
しかし、異能の力から生まれた炎は綱吉の想像を絶する力を秘めており、ナッツ本体にも多大な負荷が生じる。
「ほおおおおおおおおおお!!」
ギュスターブの勢いは止まらなかった。
槍の形に変形した鎖を複数本操り、一護の体を縛りつけると―――その状態からストーンヘンジを模した建造物に叩きつける。
「ぐあああああああ!」
一護を助けようとなのはは頭上から狙いを定め、大威力砲撃を放出する。
「エクセリオンッ! バスター!」
聖なる光でギュスターブの闇の力を浄化しようとするのだが、ギュスターブの心に芽生えた闇は深く、そして濃厚だった。
瞬時に異能の鎖で砲撃を掻き消し、なのは目掛けて異能の炎を纏った拳を叩きつける。
「きゃああああ!」
女性であろうと子どもだろうと、等しく自らの野望の前に立ちはだかる者には容赦のない態度を貫くギュスターブ。
「ははははは!!」
高笑いを浮かべながら異能の鎖と炎を巧みに操り、数で立ち向かう一護、綱吉、なのはの三人を嘲笑う。
「月牙―――!!」
「遅い!」
首筋目掛けて刀身に月牙を留めた一護が飛びかかって来るや、ギュスターブはすぐさま反応し、異能の鎖で一護の首を縛り付け、その状態から石の建造物へと投げ飛ばす。
「ぐおおお!!」
「セイクリッド・クラスター! ファイアッ!」
拡散魔力弾で死角無く攻撃を仕掛けるなのはだが、ギュスターブは不敵な笑みを浮かべながらすべての弾を弾き落とし、その上でなのはの体を鎖で縛りつけ地面に叩きつける。
「きゃあ・・・っ!!」
「
最大質力からの大火炎砲撃が綱吉の右手グローブから解放される。
「生ぬるい!!」
射線上に立っていたギュスターブは自らが備え持つ異能の炎を綱吉と同じように大火力で放出させ、綱吉のイクスバーナーを容易に押しのける。
「ぐああああ!」
異能の炎の直撃を受けた綱吉は地面に強く叩きつけられ、全身からは蒸気が昇る。
「一護君! ツナ君! なのは!」
三人の元へと駆け寄ろうと大事が走り出す。
だが、その大事は
当然使徒達は大事を逃がす訳も無く、容赦ない攻撃を次々と仕掛ける。
「
「ネイキッド・バスター!」
手持ちの刀で二つの力を打ち破った大事だが、すぐさまタウルスとティグレが力技で襲い掛かり、大事の行く手を阻む。
「でええい!
一筋縄ではいかない相手が一度に十二人。
たったひとりで使徒達全員の相手をしている大事の苦労はここにきてピークに達しようとしていた。
大事が使徒達を相手に応戦している中、ギュターブの力を前に押され気味の一護、綱吉、なのはの三人は傷だらけになりながらも戦意を失わず、徹底抗戦。
潔く負けを認めようとせず、勝つつもりでこの地に立っている三人を見ながら―――ギュスターブは些か苛立ちを抱く。
「そろそろ俺に従ったらどうだ?」
「うるせぇ!」
天鎖斬月の刀身をギュスターブへと突き立て至近距離からの月牙を叩きつける一護。
しかし、ギュスターブの防御力は高く、掠った程度の傷のみをつけることがやっとで、致命傷を与えることは叶わない。
「この程度じゃ傷をつけたうちには入らねぇ!」
強い力で腸付近を蹴られた一護は、地面に激しく叩きつけられる。
「ぐあああ」
なのはは不屈のエース・オブ・エースに恥じぬ屈強な精神力で立ち向かい、得意の砲撃と誘導弾を駆使しながらギュスターブに一矢を報いようとする。
「京子ちゃんは絶対に私たちが助ける!!」
なのはがギュスターブの注意を引き付けている間に、綱吉がその背後へと回り込み―――ガントレットに力を込め球状の炎の拳をぶつける。
「ビックバンアクセル!!」
ドカーン!!
ギュスターブを相手に、一護達の激闘が繰り広げられる。
重要大事は高速で移動しながら、蛇の頭部を持つ触手を複数伸ばして攻撃を行うセルピエンテの触手を刀で斬り落とす。
「
途中、地面から突き出た巨大な指にぶつかり落ちそうになったが、咄嗟に刀を地面に突き差し器用に体を捻らせ刀を掴み直し、僅かな隙を見て攻撃してくるシャーフの鎖鎌を回避。
「く・・・」
体制を立て直せば、今度はラットが体から出現した口から体に蓄えていたエネルギーを吐きだし、更にはそれに便乗してモノが大猿に変身し大声を張り上げる。
「このクソッタレ!!!」
大事は普段は滅多に使わない汚い言葉を口にしながら、
大事と同じくギュスターブを倒すことに全身全霊の力で立ち向かっていた一護、綱吉、なのはの三人は幾度となく爆音、爆発を繰り返すアジト内を徘徊しながら攻撃を繰り返す。
瞬歩で異能の鎖と炎の相乗攻撃を回避する一護と、彼を執拗に狙い撃つギュスターブ。
「はははは」
生き物のように意思を持った異能の鎖に炎が灯され、それは一護の体を刺し貫かんと幾重にも絡み合いながら向かってくる。
「この!!」
異能の鎖を愛刀で断ち斬る一護だが、鎖は斬られた直後に再び繋がり、どこまでも追いかけてくる。
「
「フォトンスマッシャー!」
一護を援護しようと、綱吉となのはが火炎と砲撃で鎖の軌道を強制的に押し曲げる。
ギュスターブは二人の背後へと回り込み、炎を纏ったパンチを叩きこむ。
「「だああああああ!!!」」
防御を容易に打ち砕く強烈なパンチが綱吉となのはに直撃―――地面へと叩きつける。
「月牙―――天衝!!」
霊圧を上昇させた一護は
飛んでくる黒い斬撃を悉く撃ち落としながら、ギュスターブは長槍にした異能の鎖を手に、一護へと接近。
両者は刀と長槍で激しく撃ち合い、力と力をぶつけ合う。
「おらあああ!」
「ぐああああ!」
渾身の力で長槍を叩きつけると、一護は地面から突き出た巨大な指先へと吹き飛び背中から激突―――土煙が立ち込める。
「乱れ撃ちっていうのは、こうやるんだよ!!」
月牙の乱れ撃ちに倣って、ギュスターブも異能の炎による乱れ撃ちを崩壊途中の指先に向けて容赦なくぶつけてくる。
黒煙の向こう側から飛び出した一護は、炎の攻撃を躱す傍らギュスターブへと接近。
「へへ」
不敵な笑みを浮かべたギュスターブは不意に、一護とは全く関係の無い方向へと炎を飛ばす。
「なに!?」」
一護が炎の飛んで行った軌道に目を向けると、射線上には檻に捕われた京子がいる。
「しまった!」
「ダメッ!!」
「京子!!」
一護、綱吉、なのはの脳裏に最悪の光景が容易に浮かび上がる。このままでは、炎は檻を貫き京子は確実に業火に飲み込まれる。
「畜生!!!」
卑劣極まりないギュスターブの行動に我慢の限界を迎え、大事は自分の前に立ちふさがる
「「「「ぐああ」」」」
体を斬り裂かれた四体の怪人は爆散し、再び
「やらせるかー!!」
四体の怪人を斃した大事は、直ぐに京子に向かって飛んでくるギュスターブの炎の一撃から彼女を庇った。
ドカーン!!! 辛うじて京子を守った大事だが、セルピエンテの蛇の触手が伸びて―――大事の体を縛り付ける。
「しまっ・・・! くそ!!」
触手を斬り落とそうと刀を振るう大事だが、セルピエンテの触手のひとつが無情にも大事の体を貫いた。
「がっは・・・・・・」
「「「
一つの触手が貫いたのを切っ掛けに、その後も触手と言う触手が大事の体を貫き、身動きを完全に奪う。
「もう勝ち目もないですねー」
生と死の瀬戸際に立たされた絶体絶命の大事を嘲笑うラットに、大事は
「うるさい! おめーもだ!」
大事は手に持っていた刀をラット目掛けて投げつける。
当然、ラットは体に現れた巨大な口で大事の刀を飲み込んだ。
「はははははは! 何をするかと思えば!」
大事は目に見えない異能の鎖を刀の先に付けていた。思惑通りラットが刀を飲み込んでくれると、彼は異能の鎖を手繰り寄せラットを引っ張った。
「え・・・ま、まさか・・・」
体が強く引き付けられる感触を覚えたラットが腹部に目をやると、微かに見えた異能の鎖が体を強く引っ張ってくる。
「全員道連れにしてやんよ!」
言うと、大事は生き残っている使徒達の体に仕掛けていた目に見えない異能の鎖を手繰り寄せ、彼らを一網打尽にしようとする。
「なんなのこれ!?」
「どうなってやがる!」
口元をつり上げ、大事は異能の鎖に繋がれた使徒達を編みで引き上げるように豪快に引っ張り、ドロドロに溶解した業火の中へと突き落とした。
「「「「「「うわあああああ!!」」」」」」
「いやああああああ!!」
セルピエンテを除く使徒七人が地引網に掛かった魚の如く、次々と業火へと引きずり込まれていった。
「何!?」
「終わりだ!」
最後に、大事は自分の身を直接業火の中へと放り込み、セルピエンテの触手と一緒に本体であるセルピエンテを炎の中へと誘った。
「ぐああああああああああああ!!!」
「「「
身を呈し、使徒達を葬り去った大事は炎の中へと消え、その身を消滅させた。
「くそ!」
衝撃的な最期を遂げた大事の行動を見ていた一護、綱吉、なのはの三人は胸が強く締め付けられる。
そんな三人に向かって異能の炎で攻撃をしてくるのは、ギュスターブ・エトワール。
「どこを見ている? お前達の相手は、この俺だ!」
爆炎の向こうにいる一護達に向けて言葉を発する。
徐々に黒煙が晴れ、三人の影が見えてくると、死覇装の上着を焦がし上半身が裸となった一護と、一護ほどではないが衣服が焼け焦げてところどころボロボロな綱吉となのはが現れる。
三人は霊圧、死ぬ気の炎、魔力を最大限にまで上昇させ―――臨戦態勢を取っていた。
「いつまでもてめぇに関わってる暇はないんだ!」
足元より溢れかえる一護の青白い霊圧に、煌々(こうこう)と輝く綱吉の橙色の死ぬ気の炎、桜色に染まったなのはの魔力光。
「月牙天衝!!」
「
「エクセリオン!! バスター!!」
三人の攻撃を躱したギュスターブは、雲を突き抜けエンド・オブ・ザ・ワールドの第二階層、第一階層へと向かって伸びて行った三人の攻撃を凝視。
「はははははは!!!」
その威力が確かなものであることを再確認し、途端に嬉々とした表情で笑い出し、ギュスターブは京子が幽閉された檻の近くへと降り立つ。
「素晴らしい。その力だ・・・その力で、“世界の心”を破壊しろ!」
「なんだと!?」
「世界に心なんてものがあるっていうの?」
なのはが素朴に思ったことを尋ねると、ギュスターブは「勿論だ」と言って世界の心について懇切丁寧に説明をはじめる。
「人が心を持つように、全ての生命には心がある。それは世界も例外ではない。世界の心は『扉』と『鍵穴』によって守られており、扉が開けば世界を守る壁が崩壊し、外界からの危機を招き入れる危険性をはらんだ状態となる」
説明の直後、ギュスターブは指をパチンと鳴らす。
すると、唐突に当たりの景色が変わり始め、辺りは闇に染まり始める。
「なんだ・・・!?」
世界に急速に広がる闇に三人が本能的な恐怖を覚える中、ギュスターブは闇の力によって構成されたエンド・オブ・ザ・ワールドにおいて、唯一存在する“世界の心”を一護達に見せつける。
「見ろ! 無限に広がる闇を。あの闇こそが“世界の心”―――そしてあれこそ、世界の心を守る世界の“扉”と“鍵穴”だ!!」
重圧感漂う闇の中で一際異彩を放つ白い扉。その白い扉の向こう側には、これまでギュスターブと
「どうだ。ひとかけらの光も見えまい。すべての心はあの暗闇から生まれた。そう、おまえ達の心も闇から生まれたんだよ! 扉と鍵穴が壊されたとき、闇の世界エンド・オブ・ザ・ワールドに収束されたすべての世界の心が破壊され、俺の悲願は叶う!! さぁ、貴様達の力で世界の心を破壊しろっ!!」
「うるせぇ!」
「誰が、お前の言葉に耳を貸すものかっ!!」
「京子ちゃんを返して!!」
きっぱりとギュスターブの狂った要求を撥ねつけ、三人は攻撃を再開しようとするが―――その視線の先には、幽閉され京子がいることに気づく。
「おっと。この射線上で攻撃をするつもりか?」
「く・・・」
三人は険しい顔を浮かべながら、攻撃を中断する。
「ははは、賢明な判断だ。そのまま攻撃したらどうなるか分からぬほど、冷静は失ってはいないようだな」
手が付けられない状況。
京子を助けようにも助けられないこの状況に
「俺に任せろ」
すると、一護が動けない二人に変わって京子を助けようと意思を固める。
「一護・・・」
「一護君・・・でも!」
困惑する二人に、一護は柔らかい笑みを一瞬だけ見せると、京子の元へとゆっくりと歩きだす。
ギュスターブは歩み寄ってくる一護に狙いを定め、異能の炎をぶつける。
「致命傷は与えないぞ」
致死しない程度の火力で一護を弱らせ、確実に彼の力を手に入れようと画策するギュスターブと、固い意志と覚悟で京子を助けようと一歩、また一歩と前に出る一護。
飛んでくる火球にも臆せず、一護はそれを受け流す。
そして、爆炎が晴れるや―――ギュスターブが欲して止まない世界の心を破壊する力の象徴、
「ふははははは! いいぞ! さぁ、扉と鍵穴を壊せ!」
掌から異能の炎を放出し一護を牽制していると、不意に一護はギュスターブの方へと走り出した。
一護の行動を見て一瞬の焦り抱いたギュスターブは、炎と鎖を用いて一護を捕えようとするが―――瞬歩で加速する一護は確実にギュスターブへと近づく。
「ふおおおおおおおおお!!!!」
ギュスターブの懐へと飛び込むや、一護が天鎖斬月を振り上げギュスターブへと斬りかかる。
「ふああああああああ」
「ぬお!?」
咄嗟に炎の壁を作って一護の斬撃を受け止めるが、ギュスターブの敵は一護だけではない。
同じく、
「
大火力の炎の渦に閉じ込められたギュスターブの頭上から、なのははレイジングハートの砲門を向け―――大威力の砲撃を至近距離で叩きこむ。
「ハイペリオンッ! スマッシャー!!」
細身のギュスターブの体を容易に呑み込む炎と魔力砲撃が
予想だにしなかったトリプルパンチを喰らい、一瞬の隙を見せたギュスターブに狙いを定め一護が刀を突き立てる。
「終りだっ!!」
ギュスターブは一護の攻撃を躱そうと、異能の鎖と炎で彼を撃ち落とそうとするが、一護も必死な様子で攻撃を躱し続け、絶妙のタイミングからギュスターブの懐へと飛び込み―――長きに渡る戦いに決着を付ける最後の一撃を仕掛ける。
「つらああああああああああああ」
全霊圧を月牙に集約し、それを刀身に留めた状態から豪快に斬月を振りかざす。
「ぐおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!!!」
凄まじい霊圧を帯びた斬撃を至近距離から受けたギュスターブは、バットでボールを飛ばす要領で彼方へと吹き飛ばされ――――――ついに一護達の力に屈したのだ。
「は、は、は、は、は、は、は」
ギュスターブを退けた一護は、
「一護!」
「大丈夫、一護君!?」
綱吉となのはが駆け寄ってくると、一護は苦笑いを浮かべながら答える。
「ああ。なんとかな・・・」
苛烈を帯びたエンド・オブ・ザ・ワールドでの戦いに、終止符が打たれた。
事件の黒幕であるギュスターブ・エトワールは一護、綱吉、なのは、そして世界の意志である重要大事の活躍により倒された。
彼が倒されたことで、一護達はもう敵に襲われる心配は無くなった。よって、あとは捕われの身の京子を救い出すだけ。
「そうだ。京子を!」
「今のうちに助けよう!」
「京子、今助けて・・・」
と、三人が彼女の救出に向かおうとした――――――直後。
バシュン!
一護の腹部に無造作に日本刀が突き刺さる。
突き刺さった刀は一護の体を貫き、そのことに驚愕している綱吉となのはの体にも鋭い痛みが走った。
背中を斬られたような鋭い痛みが二人の神経を通って脳に伝えられ、三人は思わぬ攻撃を受けて倒れ伏す。
ギュスターブを吹き飛ばした地点からは爆炎が上がり、その威力は天を
謎の襲撃を受けた一護、綱吉、なのはの三人は全身に走る痛みに意識が飛ぶか否かの状況となる中、不意に自分達へと近づく足音に気づく。
おもむろに顔を上げた綱吉がその目で見たのは、衝撃の光景。
大事はあまりの出来事に絶句している三人を見下ろし、飄々(ひょうひょう)とした態度で呟く。
「大丈夫かい? 一護君。ツナ君。なのは」
「だ・・・だいじ・・・・・・?」
「ど、どう・・・して・・・・・・」
目の前の光景を夢だと思っている綱吉となのはを余所に、大事はおもむろに一護の体に突き刺さった自分の刀を強引に抜き去った。
「うああああああ!!」
何とも言えない痛みに思わず悲鳴を上げる一護を見ながら、大事は軽くあしらうように呟く。
「うるさい。この程度の傷何でもないんだろ?」
―――バシュン!
大事は一護の血がべっとり付いた刀を地面に突き刺し、狂気を秘めた不気味な笑みで一護達を見る。
「なん・・・で」
「どれの事だ? あいつらがやったのと同じさ。言っただろ?
言うと、大事はそれまで一護達に見せていた顔とは異なる姿を暴露する。
おもむろに顔を引っ張ると、怪盗が変装したように大事の顔の下から先ほどまで戦っていたギュスターブと同じ顔が現れる。
一護、綱吉、なのはの三人は目を疑い言葉を失う。
「・・・そ、そんな・・・・・・」
「おまえが・・・ギュスターブ・・・!」
「それじゃあ、本物の重要大事は・・・―――」
「かわいそうな男だ。仲間にヤード単位で飛ばされちゃなぁ~」
ギュスターブ(・・・・・・)が飛ばされた方のギュスターブの方に視線を向けると、爆炎の中から姿を現し、ゆっくりと歩いてきたのは――――――表の顔が剥がれ、黒の短髪にメガネを掛けた重要大事そのもの。
「うそ・・・だろ・・・・・・・・・・・・・・・」
一護は吹き飛ばした相手がギュスターブではなく、ここまで自分達の味方として側についていた世界の意志であることにショックする。
「ギュスターブ・・・・・・おまえ・・・・・・」
ギュスターブに嵌められ、良いように利用されていた重要大事はボロボロになった身体で彼に突進する。
向かってくる大事を鷲掴みにしたギュスターブは大事を地面に叩きつけ、残酷かつ非情な態度を貫き、持っていた刀で斬りつける。
「ぐああああああ」
「邪魔なんだよ! しばらく大人しく気絶してろ!」
目も当てられないほど残虐な仕打ちに恐怖するなのは。
綱吉は体の痛みに堪えながら、本物のギュスターブに向かって問い質す。
「・・・いつ入れ替わったんだ?」
「おいおい。全てを見透かす超直感を持つ男の台詞とは思えないな。ミッドチルダを攻めたとき、重要大事の一太刀を浴びた直後―――俺は咄嗟に奴の意識と俺自身の意識を入れ替えた。その上で、重要大事の意識は俺の肉体が支配した。だから今までお前らが戦っていたのはずっと重要大事だったんだよ」
ギュスターブの口から語られた衝撃の言葉に、三人は目を見開き絶句する。
「俺はその間、おまえらの動きをずーっと観察していた。敵を欺くにはまず味方からって、
すべての
重要大事に化けていたギュスターブは長い時間をかけて一護達に仲間だと信じ込ませながら、秘かに計画を進めていた。
シャーフが
「さっ。一護。そしてツナ。
身動きのとれない二人にそう語りかける中、一護はギュスターブに問いかける。
「おめぇは・・・・・・どうして世界を壊そうとするんだ・・・・・・?」
すると、ギュスターブは眉間に皺を止せ―――自分が世界の破壊という暴挙に至ったのか、その理由を克明に語り出す。
「―――俺はワールドウィルシステムの管制人格であるドゥルガーの命令で、自分が管理する世界で大規模な人口抑制政策を行った」
「えっ?」
「ノア計画と名付けられたその政策は、大地震を起こし大津波によって増えすぎた人間を洗い流すというものだった。お陰で全人口の3割近くがこの津波に飲み込まれ死んでいった。が、俺自身は決してこんな政策を受け入れらたつもりなんてなかった。仕方ないなんて言葉で片付けられるような心境じゃなかったさ」
おもむろに瞳を閉じ、当時のことを脳裏に浮かべながら、ギュスターブはその後の経験と記憶を語り出す。
「下界に下りて、震災ボランティアの一員として現地を回ったが・・・・・そこには、どうしようもない現実の中で生きる人間の真実の姿があった。どれだけの絶望を味わおうと、決して笑顔を絶やすことはない力強い人間達の姿が・・・・・・そんな地獄の様な場所で、俺は二人の子どもと仲良くなった。親を亡くし、行き場の無くした幼子二人は俺を兄の様に慕った。俺は心が温かくなった。罪の意識に苛まれながらも、あの子達と過ごした時間は俺の疲労困憊した心を洗い流してくれた」
ここまでは彼にとっての幸せの記憶。問題はこの先の、絶望と悲しみの記憶。
「だが、そんな幸せな時間は突然奪われた。あの子達は・・・震災という弱みに付け込み略奪を行う連中の犠牲に遭って死んじまったのさ!! 許せなかった・・・だから俺は殺した連中をなぶり殺しにしてやった」
「ぐうう・・・・・・」
話を聞きながら大事がギュスターブの脚に手を伸ばそうとすると、それに気づいたギュスターブがすぐさま大事の体に剣を突き刺す。
「しつこいぞ!!」
「ぐああああああ!!!」
大事を八つ裂きと言わんばかりに傷つけながら、ギュスターブは話を掘り下げる。
「気分良かったぜ! あとは死んだあの子達を生き返らせればこんなことにはならなかった! 世界の意志に掛かれば、死者を蘇らせることなんて造作もないからな! だけど、それは叶わなかった! どんなに思っても・・・俺の想いはあの女には通じねェンだ!!」
ワールドウィルシステムの管制人格であり、ギュスターブの上司だった女性人格―――ドゥルガーは、理不尽な運命に巻き込まれ死亡した幼子二人に死者蘇生を施そうとしたギュスターブの行動を止め、彼らの蘇生を妨害した。
必死に想いを訴えかけたギュスターブだったが、ドゥルガーに思いは届かず結局幼子の命が戻って来ることは無かった。
「だから・・・!! 俺はあらゆる運命と理不尽に振り回されるすべての世界を破壊しなにもかも真っ白に消去することにしたッ!!!!」
震える声で、ギュスターブは顔の皮膚をビリビリと剥し―――顔半分がミイラ化した人面から逸脱した表情を一護達に見せつける。
「だからって・・・何だってあの子達が殺されなきゃなんねぇんだよ!!」
果しない絶望と悲壮を内包した表情。ギュスターブはこうした経緯のもと、心が崩壊し、世界の破壊という行動に至った。
「俺は何度も世界の心を破壊しようと模索した。だがどれもこれもうまくいかなかった。だがそんなときこの世界の下層にある光の世界に続く扉と鍵穴を見つけた。そして見たんだよ・・・闇の世界にはいろんなものが流れ着くからな。そう・・・黒崎一護。お前が怪物になったあの姿さ。だから俺は最初からお前に狙いを定めていた。そしてシャーフの働きが結果的に、もう一人の怪物を作り出してくれたのさ。俺はどんなことをしてもすべての世界を壊してみせる。そのために誰が誰の犠牲になろうが知ったこっちゃねぇ!!」
狂気に満ちた口調から語られる積年の恨み、辛み、
果て無き魂の苦痛からの解放を望んだ彼は最早世界のことも考えなおらず、他者のことなど考慮しないエゴの権化と言うべきエゴイストと化していた。
こうなった以上、ギュスターブを救済することは限りなく不可能に近い。
険しい表情で一護、綱吉、なのはが本性を曝け出し細い目のギュスターブを凝視していると―――
「一護!」
声に反応すると、やってきたのは各地で
「どうした!?」
「10代目!」
「なのは!」
ルキア、獄寺、フェイトを筆頭に親しい者達が呼びかけをしてきた直後―――ギュスターブは瞬く間に移動し、ルキアと獄寺、フェイトの三人を刀で斬り捨てる。
「ぐお」
「がっ・・・」
「がっは」
三人は血吹雪を上げその場に倒れる。
「おまえっ! 重要さんになにを・・・!」
と、石田が矢を構えると―――ギュスターブは彼もまた同様に斬り伏せる。
「ぐあ!」
「違うな」
「このっ!!」
「でやああああああ!!」
山本とヴィータがギュスターブに向かって攻撃してくると、目に見えない異能の鎖を手繰り寄せ、山本のヴィータの体に鋭い鎖の一撃を叩きこむ。
「「があああ」」
「この程度じゃ世界の扉と鍵穴は壊れねぇ」
「石田! ルキア!」
「獄寺! 山本!」
「フェイトちゃん! ヴィータちゃん!」
仲間が傷つく姿に恐怖する一護、綱吉、なのは三人を余所に―――ギュスターブはその後も茶渡、了平、大人ランボ、クローム、はやて、シグナム、スバル、ティアナ、エリオ、キャロ、フリード、リインを次々と斬り伏せる。
「君は僕が咬み殺す!」
孤高の浮雲、雲雀恭弥は改造長ランを纏ってトンファーで攻撃を行うが、ギュスターブはドラケンとの戦いで著しく疲弊した雲雀の攻撃を容易に受け止め、目を見開く雲雀の
「ぐっは・・・」
「あ!!」
目も当てられぬほど残酷な光景が眼前に広がると、なのはは悲しみのあまり目に涙を浮かべる。
すると、遅れて恋次が現場に駆けつけ目の前の惨状に驚いた。
「ルキア! みんな!」
恋次が現れるや、ギュスターブは懐に飛び込み恋次にも斬りかかる。
「ほらあああ!」
斬撃を躱した恋次は
「なに!?」
グサッ・・・・・・。
一瞬の気の緩みが勝敗を決する。
ギュスターブの刀で腹部を刺された恋次は力なく倒れてゆき、十分に傷を負った恋次をギュスターブは非情にも再度頭上から斬りつけ、完全に恋次を落とした。
「ぐおお!」
「やめてえええええ―――!!!」
「ほおおおおおおおおお!!!」
怒りに身を任せ、一護は全身から黒い霊圧を
「一護!」
「一護君!」
綱吉となのはが制止を求める中、それを無視した一護は怒りと憎しみをギュスターブに兎に角ぶつけ、彼が怒りやすい状況を演出したギュスターブは狂った様子で彼の斬撃を受け流す。
「その調子だ! 憎しみの力を解き放て! そして怒りに任せて扉と鍵穴を破壊しろ!」
「ほおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!」
異能の鎖を盾に憎悪に精神を捕われ気味な一護の月牙を受け流す。
「まだ足りないな。怪物にならねば世界の意志たる俺は倒せんぞ」
言うと、ギュスターブは理性を無くしかけている一護の頭を鷲掴みにし、地面に叩きつける。
「おまえの心の闇を解き放ってやる」
次の瞬間―――引き締まった一護の胸部の中央目掛けて、ギュスターブは手を突き出す。
グサッ!
「ぐああああ・・・・・・」
胸部を貫かれた一護は悲鳴を上げながら、魂の内側に眠る
「一護!!」
「一護君!!」
「さぁ・・・魔物よ目を覚ませ」
赤みを帯びた黒い霊圧が巨大化していくにつれ、一護の理性は徐々に人間から魔物に移り変わり―――黒い霊圧を帯びた一護は宙に浮かび上がると、その体を白い皮膚に覆われた魔物へと変貌させる。
「ウウウウウ・・・アアアアア」
「そうだいいぞ。本能に身を任せろ。理性をかなぐり捨てろ!」
「一護っ!!」
綱吉は一護を助けようと立ち上がり彼の元へと向かうが、ギュスターブは綱吉を見ながら狂気に漲る口調で呟く。
「お前も目覚めたらどうだ!」
「ふおおおおおおおおおおおおおおお!!!」
拳に炎を纏わせた渾身の一撃を仕掛ける綱吉。
しかし、異能の鎖が炎を掻き消しギュスターブの蹴りが炸裂する。
「ぐあああ」
呆気なく打ち負かされた綱吉は視界から消えたギュスターブを目で覆うとすると、不意に彼の声が聞こえてくる。
「これを見てみろ! 沢田綱吉!」
振り返った綱吉に呼びかけたギュスターブは、京子が幽閉された檻の方に立っている。
檻は破壊され、炎の中へと墜落―――ギュスターブの手にはぐったりとした様子の京子が抱えられている。
「!?」
綱吉の超直感がすぐさまこの上も無く強い不安を警告する。
「お前が助けたかったこの娘の体はエンド・オブ・ザ・ワールドの空気に耐えられなかったようだな。ほら、生気を失っている」
綱吉は目を見開き、生気を失い綺麗な白い肌をしている死人同然の京子の姿に言葉を失った。
ドクン・・・。
変わり果てた京子の姿に心の中の配線が切れた綱吉は、足元より禍々(まがまが)しい
「あ!!」
一護同様にギュスターブへの怒り、憎しみ、恨みの感情に支配され
「10代・・・目・・・」
「やめろ・・・ツナ・・・」
「アアアアアアアアアアア・・・・・・!!!!!!」
「そうだ怒れ。ここは闇の世界エンド・オブ・ザ・ワールド。心は要らない。そんなものは闇に葬れ!」
「さわ・・・だ・・・」
「ぼ・・・す・・・」
「アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
二つの魔物の力の覚醒を待ちわびたギュスターブは、世界を壊すカギである一護と綱吉をこの世界へ正式に歓迎する。
「ようこそ、エンド・オブ・ザ・ワールドへ」
「「アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」」
獣と化した二人の咆哮を心地よさそうに聞きながら、おもむろに手に持っていた京子の体を手放した。
その近くには、ギュスターブに胸を貫かれたことで内側の
外見は二本の角と仮面紋のついた仮面、綱吉と同じ白い肌、胸の孔と
「「AAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
完全なる
「それだ! その力で世界の心をぶち壊せ!!!」
「「AAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
仮面から生えた角に霊圧を集めると、一護は赤々と輝く
歪んだ笑みを浮かべながら、ギュスターブは二人の角から特大の威力を秘めた
そして、二つの
ドーン!! ドドドドドドッド!!!!
立ちはだかるものを一瞬にして風化させる破壊の一撃がふたつ一遍に放たれる。
「ぶち壊せえええええええええええ!!!」
完全なる
なのはは、意識を完全に
「「AAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
黒煙立ち込めるエンド・オブ・ザ・ワールド第三階層において、
ひたすら本能のままに破壊衝動に駆られ、そのための
同時に、下層に収束された光の世界の心を閉じ込めてある世界の扉に亀裂が生じ、鍵穴が壊れ始める。
「う・・・・・・は!」
辛うじて意識を取り戻した大事は、周りで起こっている状況を瞬時に理解し、世界の心が二つの魔物の力によって壊されようとしている現状に目を疑う。
「世界の・・・心が・・・・・・!」
「はははは!!! 怪物が二人もいると仕事がはかどっていいな! さぁもう少しだ! すべての世界を塞ぐ『扉』と『鍵』をぶち壊せ!!」
「「AAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
あまりにも強すぎる一護と綱吉の
魔物によって破壊されたエンド・オブ・ザ・ワールドの闇の空気が、光の世界と闇の世界へと結ぶ道から漏れ出ると―――光の世界「リュミエール」一帯にエンド・オブ・ザ・ワールドの猛毒な空気が世界中に充満する。
徐々に扉と鍵穴に生じた亀裂は大きくなり始め、間もなく扉と鍵穴は完全に崩壊する。そしてそのとき、収束されたすべての光の世界が闇の力と混ざり合い秩序が崩れた混沌が訪れる。
即ち、それこそがギュスターブの悲願「世界の崩壊」である。
「ふははははははは!!!!」
多量の煙が立ち込める第三階層において、誰も打つ手が出せないでいる中―――ギュスターブは終始一護と綱吉の
「さぁ! これで最後だ! その一発で世界の心は完全に崩壊する!!」
「「AAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
理性を失った一護と綱吉は、角の頭部に霊圧を溜めはじめる。
「ダメ!! 一護君!! ツナ君!!」
なのはは地に這いつくばった状態から、魔物の本能に支配されている一護と綱吉に制止を求め必死に声を張り上げる。
だが、その直後―――体中の痛みに耐えながら、今の今までギュスターブに利用されていた重要大事が立ち上がり、一護と綱吉の元へと走っていく。
「ギュスターブ!! くだらないことで、二人を傷つけてんじゃ・・・ねぇ―――!」
大事は異能の刀を召喚し、世界の心めがけて
角が斬り下されたことで、
「ちっ!」
大事が立ち上がると、ギュスターブは彼を捕えようと前に出る。
「一護君! ツナ君! なのは! 京子ちゃんを連れてはここから離れるんだ!!」
「なに!?」
「へへ・・・ざまーみなよ」
ドゥルガーの力が作用した強制転移術が発動した時点で、世界の意志であるギュスターブにはどうすることもできない。
大事は勝ち誇った笑みを浮かべると、そのまま気を失い他の仲間達とともにエンド・オブ・ザ・ワールドの地に倒れ伏す。
「くそおおおおおおおおおおおおおおおお――――――!!!」