幼なじみの彼女は   作:有機物

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彼女は少し彼が気になる

雪乃と由比ヶ浜の話で分かったのは、「俺は卒業式の日に雪乃宛てに、雪乃のことが嫌いだという内容の手紙をくつ箱に入れた」ということだ。

そして、このことが違うと証明しない限り、雪乃はずっと俺に対して疑念をいだき続けるだろう。

 

さて、どうやって証明するか。

正直誰がやったのかなんて、見当がつかない。俺を恨んでいて、雪乃を嫌ってた奴は沢山いるからな。

どうせ、俺と雪乃を離せば、二人が一人になって、もっとイジメやすいとか、そんなんで書いたんだろうが。

 

そもそも同じ小学校で名前が分かるのが葉山しかいないし。でも、もしも葉山だったとすると、葉山がやる理由が分からん。

いや、理由はなんとなく分かるな。俺と雪乃を引き離したかったのか。

でも、わざわざそんな手紙を書かなくても、雪乃が留学することは分かっていたのだから、雪乃にバレたときのリスクを背負ってまでやらないはずだ。

――やっぱ葉山はやらないだろう。

 

となると、俺の手に負えないな。誰かに協力してもらわなければ。まぁ、葉山以外に頼れる奴などいないが。

葉山には頼りたくないなぁ。

せめて、なにか弱みを握ってやれば色々とこじつけられるんだが。

 

そんなことを考えていたら、自動販売機に着いた。

とりあえずお金を入れて、マッ缶と野菜生活を押す。

さて、由比ヶ浜は何にするか。本人はいらないと言っていたが、3人中2人飲んでいるのに、1人だけなにも無いというのは可哀想だ。流石俺。一人の気持ちがよく分かる。

悩んだが結局男のカフェオレを買うことにした。

 

 

 

「遅かったわね」

 

家庭科室に戻ると、少し不機嫌そうに雪乃が言った。

恐らく由比ヶ浜を構うのが大変だったのだろう。

 

「わりぃわりぃ。なににするか迷ってな」

 

適当に誤魔化しながら、雪乃と由比ヶ浜に、買ってきた飲み物を渡す。

 

「え、あたしいらないって言ったんだけど……」

 

「ん?あぁ、流石に可哀想だろ」

 

「でも……」

 

「いいんだよ。女子の前ではカッコつけたくなっちゃう症候群なんだよ」

 

「そっか。ありがとね、ヒッキー!」

 

「お、おう//」

 

あっぶねー。うっかり惚れそうになるところだった。俺は雪乃一筋だからな。

そう思って雪乃を見ると、まだ不機嫌そうだった。

 

「どうしたんだ、雪乃」

 

「どうもしていないわ。ただ…由比ヶ浜さんには随分と優しいのね」

 

おっ、こいつ嫉妬してんのか?可愛いな。ちょっとからかってやるか。

 

「まあな。うちの妹もよく言ってんだよ。ポイント高いってな」

 

「そう……」

 

そう言って雪乃はそっぽ向いてしまう。

しまった。少しやり過ぎたか。

完全にいじけてしまっている。

なにかフォローしといた方が良さそうだな。

 

「雪乃にだって買ってきただろ?どうだ、ポイント上がったか?」

 

「下がったわ」

 

なんでだよ⁉

あ、俺がからかったからか。

 

「すまん、すまん。雪乃が可愛かったから、ちょっとからかっただけだって」

 

こういうときは、正直に謝った方がいいんだよな。

 

「かわ、いい?」

 

「あぁ、そうだよ」

 

「そ、そう//」

 

またそっぽ向いてしまう。

でも、機嫌が悪い訳ではなさそうだ。

雪乃の顔が赤くなっている。

 

「あの…あたしもいるんだけど……」

 

「んんっ、それでは、これを処理しましょうか」

 

雪乃がなんとか平静を装って話題を変える。

 

「処理ってひどくない⁉」

 

まぁ、確かに酷いが、的確だから反論できない。

 

「じゃあ、たっ、食べましょうか」

 

雪乃がクッキーを食べたくなさそうにしている。

ここで雪乃に食べさせるのは、男としてだめだ!

あえて俺が犠牲になって、雪乃には指一本触れなくてよくするのだ、比企谷八幡!

 

「俺が食べるよっ!」

 

すると、雪乃がジト目で俺を見てくる。

 

「そんなに由比ヶ浜さんのクッキーが食べたいのかしら?」

 

は?いやいや違いますけど。なに由比ヶ浜も嬉しそうな顔してんの?誤解だ〜。

 

「ホント?ヒッキー、これ、食べたいの?」

 

上目遣いでそんなこと聞かれたら否定したくてもできねぇー。さあどうする。

 

「いや、別に、そんなんじゃ……」

 

視線をそらしてしまった。しかも変なところで終わらせたし。

 

「そう、なら全部食べてくれるのね?楽しみなんでしょう?それくらい、平気よね?」

 

違うんですぅ。雪乃さん、誤解なんですぅ。

ていうか、なんでニッコリ笑ってそんなこと言うの?つい全部食べそうになっちゃうじゃん。

 

「いや、だからそんなんじゃ、ないって……」

 

弱々しい反論しかできない。負けたな、この戦い。

 

「そう?まんざらでもなさそうだけれど」

 

それはお前の笑顔見たからだよっ。とは、恥ずかしすぎて言えない。いやこれは本当なんですけどね。

でもこのままだと、なんちゃってクッキーを全部食べさせられるし……。

 

「ヒッキー、嫌だったら、食べなくていいよ?」

 

そんな涙目で言われると、ざ、罪悪感が。

てか俺が食べなかったら全部雪乃が食べることになんじゃん。

それだけは、なんとしても阻止しなければ……

 

「あっ。これは一旦おいといてさ、まずは雪乃のお手本見てみたらどうだ?」

 

素晴らしい作戦だ。これでなんちゃってクッキー食べなくて済むし、なにより雪乃の手作りクッキーが食べられる。

 

「そうだよっ!あたしも、雪ノ下さんの手作りクッキー食べたい!」

 

ナイスだ由比ヶ浜。雪乃は純粋な押しに弱いからな。

 

「え、えっと。ま、まあ。いい、けど……」

 

「「やったぁー!」」

 

つい叫んでしまった。

 

「なぜ比企谷君まで喜ぶの……」

 

え、俺にも味見させてくれるよね?

なに、俺だけ仲間外れなの?

 

「いや、俺にも……」

 

「あなたにも?」

 

「えっと…」

 

「最後まで言ってくれないと分からないわよ?」

 

くそっ、俺が、雪乃の手作りクッキーが食べたいすら言えないヘタレやろうだと思ってるな?言ってやるよ、言ってやるさ!

 

「あ、えっと…その、ゆっ、雪乃が作った…クッキー、食べたい、です」

 

ナニコレ、めっちゃ恥ずかしいじゃん!

ヤバい、恥ずかしすぎてまともに雪ノ下の顔を見れん。

 

「わっ、私をからかうから、こっ、こういう、こ、ことに、なるのよ。反省、する、ことね」

 

「あ、ああ」

 

いや自分も照れんならやるなよ。

可愛いけど。

 

「えっと、二人、本当に仲良いんだね……」

 

なんか気まずい。

どうすんだよ。クッキーどころじゃないぞ。

 

「あー、ていうか、なんで由比ヶ浜上手いクッキー作りたいの?」

 

「え?なんでって……」

 

「どういうこと?」

 

「十分後ここへ来てください。俺が本当の手作りクッキーを教えてやる」

 

「なにそれ……」

 

 

 

雪乃と由比ヶ浜を教室の外に出す。

俺は特にやることがないから、適当に時間をつぶす。

 

『雪ノ下さんとヒッキーめっちゃ仲良いじゃん!』

 

廊下から声がする。

バリバリ聞こえてんだけど。

 

『そ、そうかしら。でも、比企谷君が本心で話しているかは、分からないし……』

 

『いやいや、ヒッキー絶対雪ノ下さんのこと好きでしょ』

 

ばっか、何言ってんだよ!

俺まだそんなこと言えてないのに、先に言いやがって…

 

『……』

 

『いいなぁ、幼なじみって』

 

『幼なじみ?』

 

『あ、雪ノ下さんとヒッキーのことだよ?なんか、めっちゃ仲良いじゃん、羨ましいなって』

 

幼なじみ、か。なんかいいな。確かにそうかもしれない。まあ、葉山には負けるけど。

 

『羨ましい、の?』

 

『雪ノ下さんは嬉しくないの?』

 

『私は………。私は、嬉しい、わ』

 

『そっか。ヒッキーもう終わったかな。おーい、もう入っていい?』

 

「あ、ああ。いいぞ」

 

『雪ノ下さん、行こっ?』

 

『えぇ』

 

 

そう言いながら入って来た雪乃は、少し顔が赤かった。

 

 

 

 

「ナニコレ、あんま美味しくない」

 

そう言ったのは、由比ヶ浜だ。

お前のよりはましだよ。ていうか、由比ヶ浜が作ったのに、砂糖をまぶして見た目を少しましにしただけだけどな。

ちなみに雪乃には食べさせていない。

だって、自分で作ったものは自分で処理してもらわないとねっ!

 

「そっか、じゃあ、捨てるわ」

 

「いや、別に捨てなくても…言うほどまずくないし!」

 

どっちなんだよ。てか、マジか!あのクッキー言うほどまずくないのか?

 

「そうか、まぁ、お前が作ったクッキーなんだけどな」

 

「どういうこと?」

 

「そうだな…例えば、雪乃が俺にクッキーを作ってくれたとする。ものすごく頑張ってくれたのがめっちゃ伝わるんだ」

 

「なにその例え。ヒッキー言ってて悲しくなんないの?」

 

そのマジで引いてるって感じの目やめて!

遠回しに「雪乃の手作りクッキー食べたい!」って言おうとしたんだが。

だって、さっき雪乃が作ってくれる雰囲気だったじゃん!

 

「ひ、比企谷君は…その……わっ、私の手作りクッキーを、食び、食べたいの?」

 

かみっかみで、顔を真っ赤にしながら聞いてくる。

 

「あ、いや、その、なんというか、ほら、あれだ……」

 

ヤバい、素直に言えない。

 

「食べたく、ないの?」

 

な、なんだと?上目遣い、だと?

破壊力がヤバすぎる。

 

「食べたいです。ぜひ作ってください」

 

ふー、即答してしまったぜ。

 

「あの、話の続きは?」

 

由比ヶ浜がウザそうな目で見てくる。

 

「あっ、そうだったな。えーと、まぁ頑張ったのが伝わるってどこからだな」

 

「もし、仮に、美味しくないとする。だけど、貰った側からすりゃあ、貰えたってだけで嬉しいの。男心は単純だからな」

 

もし雪乃からクッキーを貰えたら惚れる自信がある。あ、もうすでに惚れてた。

 

「……ヒッキーも、単純?」

 

「めっちゃ単純だぜ」

 

なにせ雪乃と話して一瞬で惚れたからな。

 

「そっか。雪ノ下さん、もういいや。あたし、自分の力でやってみる。じゃあね」

 

由比ヶ浜は帰っていった。エプロン姿のまま。

すると、雪乃が由比ヶ浜を追いかけ、エプロンを持ってきた。

 

「あいつバカだな」

 

雪乃からの返事がない。

雪乃の方を見ると、由比ヶ浜から取ってきた、エプロンをつけていた。

 

「えーと、雪乃さん?」

 

「なにかしら」

 

「俺のためにクッキー作ってくれんの?」

 

「〜〜っ!べ、別に、そういうのじゃ、なくて……」

 

語尾になるに連れて、弱々しくなっていく。

 

「そうか」

 

「そういう訳でもなくて……」

 

「じゃあ、どういう訳なんだ?」

 

「えっと、その…謝罪の証というか、遅くなったこともあれだし、なにもしなかった私にも責任があって……」

 

「別に大丈夫だぞ。本人納得してたじゃねぇか」

 

「え?納得してたの?」

 

「聞いてなかったのか?」

 

「あ、私、海外に――」

 

「ま、なんかあったらまた来るだろ。そん時はもっと仲良くしてやれよ」

 

「な、仲良くはできないと思うけど……」

 

「そんなこと言ってやるなよ。あいつ多分お前のこと好きだぞ?」

 

「?そんな訳ないじゃない」

 

「気づいてないのかよ」

 

せっかく新たな友だち候補に由比ヶ浜が入ったというのに、鈍感なやつだな。

 




由比ヶ浜と話して、少しだけ雪乃は比企谷との距離を縮めていく感じを書きたかったのと、最後のやり取を入れたくて、長くなってしまいました。

お気に入りとUAがどんどん増えています。
ありがとうございます。
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