幼なじみの彼女は   作:有機物

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彼女はなんだかんだで押しに弱い

 

「こんにちは」

 

俺が部室に入ると、雪乃は笑顔で挨拶してくれる。

 

「ん、おはよ」

 

そう返事をすると、雪乃は満足そうに頷いて、また読書に戻る。

 

「そいえばすっげー今更なんだが、ここって何する部活なんだ?『奉仕部』とか言ってたけど、まさか人助けするなんてことはないよな?」

 

「あら、今あなたが言った通りなのだけれど」

 

「は?マジかよ」

 

なんで知らん奴のために俺が動かないといけないんだよ。雪乃がいなかったら即退部してたぞ?むしろ入部すらしてなかったまである。

 

「やっはろー」

 

戸がいきなり開いて、うるさ、賑やかな奴が入って来た。

 

「…何か?」

 

雪乃があからさまに不機嫌に言う。

 

「えっ、私歓迎されてない?もしかして雪ノ下さん、私のこと…嫌い?」

 

「別に嫌いではないわ。…ちょっと苦手かしら」

 

「それ女子言葉じゃ同じだからねっ!」

 

由比ヶ浜があたふたとしていた。

こいつ見た目はリア充だけど反応はいちいち普通の女の子なんだよな。

 

「で、何かようかしら?」

 

「や、あたし最近料理にはまってるじゃん?」

 

「じゃんって…初耳よ」

 

「で、こないだのお礼ってーの?クッキー作ってきたからどうかなーって」

 

さぁーっと雪乃の血の気が引いた。由比ヶ浜の料理といえば、あの黒々とした鉄のようなクッキーがまっさきに想起される。

俺も思い出しただけで喉と心が渇いてくる。

 

「あまり食欲がわかないから結構よ。お気持ちだけ頂いておくわ」

 

たぶん、食欲を失ったのは今この瞬間、由比ヶ浜のクッキーと聞いたからだろうが、それを言わないのは雪乃の優しさだろう。

だが、固辞する雪乃をよそに、由比ヶ浜は鼻歌まじりで鞄からセロハンの包みを取り出す。

可愛らしくラッピングされたそれは、やはり黒々としていた。

 

「いやーやってみると楽しいよねー。今度はお弁当とか作ってみようかなーとか。あ、でさゆきのんお昼一緒に食べようよ」

 

「いえ、私一人で食べるのが好きだからそういうのはちょっと。それから、ゆきのんって気持ち悪いからやめて」

 

「うっそ、寂しくない?ゆきのん、どこで食べてるの?」

 

「部室だけれど…、ねぇ、私の話、聞いてたかしら?」

 

「あ、それでさ、あたしも放課後暇だし、部活手伝うね。これもお礼だから気にしないでねっ!」

 

良かったな、雪乃。友達が増えて。

それはそうと、俺も一緒にお昼食べていいですか?

 

「あ、ヒッキー」

 

声を掛けられて振り向くと、顔の前に黒い物体が飛んできた。

反射的にそれを掴む。

 

「いちおーお礼の気持ち?ヒッキーも手伝ってくれたし」

 

見れば黒々としたハート形の何か。禍々しいな。そこはかとなく不吉だが、お礼と言うなら貰っておこう。

あと、ヒッキーって言うな。

 





読んでいただきありがとうございます。
今回は結構短めでした。
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