幼なじみの彼女は   作:有機物

16 / 46
彼女のお願い

 

「あ、比企谷君、おはよう」

 

教室に入ると、天使が声をかけてきてくれた。

 

「お、おう」

 

「あのさ、比企谷君は職場見学の場所決めてる?」

 

職場見学?

そんなもんあったっけか?

 

「あー、まだ考えてるとこだ」

 

「そっか。あ、今日みんなで勉強するって」

 

そういえば前言ってたな。

 

「了解だ。サイゼだったよな」

 

「うん。楽しみだなぁ。雪ノ下さんに教えてもらえるなんて、すごいよね!」

 

うん、すごいと思う。

戸塚の可愛さが。

……本当に男なんだよな。

 

「僕、国語教えてもらいたいなぁ比企谷君も国語得意なんだよね?」

 

「ああ、国語だけな。数学は捨ててる。私立文系舐めんなよ」

 

「え、えっと……」

 

「いや、気にしないでくれ。数学に対するアンチテーゼだからな」

 

「そっか。諦めるのも大切だよね」

 

 

 

 

「……」

 

「……」

 

「え、えっと…」

 

「あ、あのさ」

 

「………なにかしら?」

 

俺たちは今、勉強会をしている。

と言っても、ただ黙々と勉強をしているだけだが。

 

「どうした?」

 

「なんか、思ってたのと違う……」

 

思ってたのと違うと言われても、由比ヶ浜が何を想像していたのかは分からない。

 

「由比ヶ浜さんはどういうのを想像していたのかしら?」

 

「出題範囲確認したり、分からないとこ質問したり、まぁ休憩も挟んで、後は相談したり、情報交換したり。偶には雑談もするかなぁ?」

 

勉強会なのに、何一つ勉強していない。むしろ、そんな奴ら邪魔じゃないのか。

 

「そもそも勉強というのは一人でやるものよ」

 

「あっ、あの、雪ノ下さん。質問があるんだけど……」

 

「どこ?」

 

「ここの問題で……」

 

そういえば、戸塚は雪乃に勉強を教えてもらうのを楽しみにしていたな。

 

「ほら、そういうのだよ!」

 

「いや、ただ教えてもらってるだけだろ」

 

「それが良いんじゃん」

 

「そもそも全部分かれば教えてもらう必要ないだろ」

 

「ヒッキーはゆきのんに教えてもらいたくないの?」

 

「雪乃、終わったら俺も聞きたい問題あるんだが」

 

「うっわ……」

 

由比ヶ浜が蔑んだ目で見てくる。

 

「比企谷君は文系科目得意でしょう?私が教える必要はないんじゃないかしら?」

 

「いやぁー、数学が全然分かんなくってなぁー」

 

「あれ、比企谷君数学捨てたんじゃなかったっけ?」

 

なに!?

思わぬところから切り返しがっ。

とつかぁ、可愛いから許す!

純粋で可愛いなぁ、俺が言ったことちゃんと覚えてくれて……。あ、なんか泣けてきた。

 

「い、いや、頑張って損はないだろ。それに、俺予備校のスカラシップ狙ってるから」

 

「あら、意外ね。あなたは親の負担を軽く、なんて考える人だったの?」

 

「いや、違う。スカラシップ取って、さらに親から予備校の学費貰えばまるまる俺の金になるだろ?」

 

「詐欺じゃん」

 

「誰も損してないんだからいいだろ」

 

「でも、比企谷君がスカラシップ取ってくれたら、親御さんは喜ぶんじゃないかな?」

 

なん、だと……。

 

「と、戸塚ー!今度親がいるときに挨拶に来ないか?」

 

「え、どういう、こと?」

 

しまった!

戸塚が引いている。

一人で先走ってしまった。俺は雪乃一筋だ。

って戸塚男だから浮気になんなくね!?

 

「ヒッキー、何言ってんの?」

 

「はぁ、本当に変な人……」

 

「あ、僕ドリンクバー行ってくるね」

 

「お、じゃあ行くか」

 

「あたし紅茶にしよっ!」

 

由比ヶ浜がご機嫌にドリンクを取ってきていると、雪乃がしげしげとドリンクサーバーを眺めている。コップを右手に、左手に何故か小銭を持っていた。

 

「……ねぇ、比企谷君。お金はどこに入れるのかしら?」

 

「は?」

 

マジすか。雪乃さん、ドリンクバー知らんとですか。どんな上流階級で育ったんすか。

 

「や、お金かかんないから。見とけ」

 

俺がドリンクを注ぐ様子を真剣に眺めている。そ、そんなに見られると、ちょっと照れる。

なんて、気持ち悪いことは考えない。考えないのっ!

俺がボタンを押し、ゴーッと音を立ててコーラがコップに満ちる様子を、キラキラした目で見ていた。

危なっかしい手付きだったが、どうやらお目当ての飲み物を手に入れたようだ。

 

 

 

 

「ゆきのん、また来ようね」

 

「次来るときは勉強は無しでお願い」

 

そりゃあそうだよな。

みんな雪乃に質問したがって、雪乃は全然自分の勉強ははかどらなかったようだ。

 

「今度はお出かけとかしてみたいな」

 

「いいねっ!……そういえば、ゆきのん勝ったときのお願いまだ聞いてなくない?」

 

「……私の、お願いは……。もう、叶えてもらったわ」

 

「そうなの?」

 

なんで俺を見んだよ。なんもしてねぇーよ。

ま、友だちの多い由比ヶ浜には分からないことだろう。

あー、俺のお願い、叶えてほしいな。

 




投稿が遅れてすみません。
最近忙しくなってきたので、遅くなります。
読んでくださりありがとうございます。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。