こうして彼は彼女と関わりを持つ
俺は今、絶賛ボッチ中だ。
ボッチ中って何だよ。ボッチ中毒とかあんの?
6年生になって、クラス替えが行われた。
俺はどのクラスでもボッチだから正直興味はない。
それに、得意の人間観察をして大体クラスの人間関係は把握した。
それで気づいたのだが――
なんとボッチが二人いるではありませんか!
まぁ、一人は俺なんだけどさ。
もう一人は女子の、誰だっけ、名前までは覚えていない。
恐らくその可愛さ、賢さ、その他もろもろのせいで嫉妬されているのだろう。
しかし、彼女は何もやり返そうとしない。
常に一人で何事も一人で。
そんな彼女に、俺はいつしか親近感をいだいていた。
「くそっ、今日は靴かよっ!」
いつものように、教科書に落書きされているだろうと思い、早めにランドセルに片付けたり、移動教室のときも関係ない教科書まで持って行ったのに
今日に限って狙いは靴だったようだ。
「あー、もうどこ隠したんだよ。見つからねー」
上履きで校庭まで出てきたのに見つからない。
もういっそのことそのまま帰ってしまおうかと考えていると、
「ホントウザいんだけど」
どこからか、いや、恐らく校舎裏から女子の声がした。
「ハルくんに告られたからって、いい気になってんの?」
「なに、イヤミ?」
「ウッザー、ないわー」
そっと覗いて見ると、いつも一人の女子が、三人の女子に蹴られたり、石を投げられたりしていた。
え、これ結構やばくない?
どうしよ。よし、こういう時は、必殺技「逃げる」を使おう。
そう思った瞬間
「あっ」
「えっ」
という、びっくりしたような声がした。
もう一度覗いて見ると、女子が倒れていた。
「え、やばくない?」
「うちら関係なくない?」
「あいつが勝手に倒れただけだよね」
「行こ行こ」
そう言って、三人組の女子は逃げていった。
あ、本格的にやばくなってきた。
とりあえず話しかけてみようかな。
「あー、えっと、大丈夫か?」
「この状態を見て、本気でそう言っているの?それとも、私をバカにするために来たの?」
しょっぱなからずいぶんと攻撃的だな。
だが、そんなことでうろたえる俺じゃない。
この子、普通に可愛いのだ。
可愛い子を見るとついつい助けたくなっちゃうんだよなぁ。これも男子の運命だ。
「えっと、立てるか?」
「ええ…」
そう言っていたが、無理に立とうとして倒れそうになっていた。
「全然大丈夫じゃねぇじゃん」
「大丈夫なんて一言も言っていないもの」
こいつ、怪我しててまともに立てないくせに態度だけはでかい。
なのに、不思議と嫌な気持ちにはならなかった。
「はぁ。おぶってやるから、背中乗れ」
「平気よ」
「平気じゃないだろ」
「別に、あなたには関係ない」
うっわ、頑固だ。めんどくっせ。
いいからはよ乗れよと思いながらも口にはしない。
八幡優しいなぁ。
え、易しいの間違いじゃないかって?
うーん、ノーコメント。
「じゃあ、ほらあれだ。乗ってほしんだよ、お前に。俺からのお願いだ。乗ってください」
「え?ええ…お、お願いと言うなら」
彼女はそう言って、俺の背中に乗ってきた。
予想以上に軽い。
「そういえばあなた、靴はどうしたの?」
「隠されたんだよ」
「大丈夫なの?」
「もうこのまま帰るから」
「そう…私達似たものどうしね」
「かもな。保健室着いたぞ。じゃあな」
「ええ、あのっ、ありがとう」
「お、おう」
そう言って、彼女はにっこりと笑った。
くそっ、めっちゃ可愛いじゃねぇか。
名前、聞いとけばよかったな。
翌日、俺はただひたすらにあの子を見ていた。
あれ、これストーカー?
違う、断じて違う。違う?本当に?
しかし一日見ていて分かったのだが、あの子も結構苦労している。
周りにさとられない程度だが、少しキョロキョロして、怯えているようにも見えた。
下校時刻になり、大半の人が教室を出ていった。
おかげで俺は今あの子と二人っきりだ。
「あっ、あのさ」
「何かしら」
こちらを見ないで端的に応える。
何か探しているようだ。
「昨日の怪我、大丈夫だった?」
「え?あ、ええ。大丈夫だったけれど…」
話しかけてきた相手が俺だとは思っていなかったようで、少しびっくりしたようだ。
それよりも、会話が続かない。
こうなったら名前を聞くか。
よし、落ち着いてゆっくりと、噛まないように、気をつけて…
「あっ、名前、教えてくれないか?」
少しキョドったけど噛まなかったのは上出来だ。
よくやった、俺!
「私は雪ノ下雪乃」
「雪ノ下、雪乃。えっと、雪乃って呼んでいいか?」
え、俺何やってんの?
いきなり女子を名前呼びとかハードル高くない?
つーか断られたらどうすんだよ。
どっちにしろ詰みじゃん。
くそっ、名前聞けたからって調子に乗ったら、
八幡、一生の不覚。
「別に構わないけれど」
「えっ、いいの?」
「あなたが言い出したんじゃない……。それで、あなたのお名前は?」
「俺は比企谷八幡」
「そう、じゃあ比企谷君と呼ばせてもらうわね」
そこは名前呼びだろ。
いや女子に名前覚えられるだけでも嬉しいんだけどね、
なんか俺一人で勝手に盛り上がってた感がすごいじゃん。
とりあえずこうして俺はやっと雪乃の名前を知ることができた。
読んでくださりありがとうございます。
まだハーメルンの使い方が完璧ではなくて、章わけができません。
読みにくいと思いますが、これからも読んでいただけると嬉しいです。