「葉山君どこ行きたい?」
「俺はマスコミ関係か外資系企業見てみたいかな〜」
「わ〜、すごいね」
部室で今日も本を読んでいると、葉山と戸塚が入ってきた。
「ヒッキーはどこ行くの?」
「ん?あ、え?」
「比企谷、聞いてなかったのか?」
「聞いてなかったんじゃない。本を読んでいたんだ」
「どっちも同じことだろ。戸塚はどこ行きたい?」
「僕は将来とかまだ考えてないんだよね。あ、でもテニスに関係することがいいなぁ」
「テニスか、難しいな」
「ご、こめん。比企谷君と葉山君が行きたいところでいいよ」
「比企谷はどうなんだ?将来の夢は?」
「えっと……す、好きな人と結婚する、とか//」
「「「は?」」」
・ ・ ・
「ふ、はははぁ!ナニそれヒッキー恋する乙女かっての!」
「や、やっぱり比企谷君可愛いよ!ふふっ、あはは」
「比企谷、何言ってんだ。ははっ、今の話は職場見学で行きたいところの話だぞ?」
「え、あ、いや、えっと……。あ、ほら、自宅、的な?家とか。うん、俺自宅希望するわ!」
「いやヒッキー何言ってんの?大丈夫?」
「比企谷君照れなくていいよ。すごい可愛いから」
戸塚の気遣いが逆に傷をえぐってくるよぉ。
由比ヶ浜はマジトーンでやめて!
違うの、職場見学とか聞いてなかったの。将来の夢の部分しか聞いてなかったの!
「いや、違っ、あ、えっと」
「もぉ、ヒッキーほんっと面白い。ね、ゆきのん。……ゆきのん?」
雪乃は相変わらず本を読んでいた。背筋をピンと伸ばし、視線は本に向いている、はずなのに、ページをめくる音は全く聞こえなかった。
「あ、おにーちゃん!」
「こんなとこでなにやってんだ、小町?」
下校時刻を過ぎて校門に着くと、小町がいた。
「あ、大志君の依頼解決したみたいで」
「そうか、良かったな。わざわざ来なくても良かったのに」
「いやぁ、ここでお兄ちゃんと一緒に帰ったら、小町的にポイント高いかなって」
うわぁ、あざとい。
でも可愛いから一緒に帰っちゃお!
「そういえばさ、結衣さんに会えたんだね。言ってくれれば良かったのにぃ」
「は?なんで由比ヶ浜?」
「だって去年助けた犬の飼い主さんじゃん」
由比ヶ浜が、助けた犬の、飼い主?
「ん?どしたの、お兄ちゃん?」
「あ、いや、なんでもない」
職場見学って以外と楽しんだな。
これはボッチにも優しいイベントだ。
適当にウロウロしてたらちゃんと見学してるようにみられる。最高だな。
「あ、ヒッキー遅い!みんな行っちゃったよ?」
「……由比ヶ浜は行かなくていいのか?」
「え?あ、うん。置いてけぼりは可哀想かなって」
「……俺のことなら気にしなくていいぞ。犬助けたのだって、ただの偶然だし、気にして優しくなんか、すんな」
「そ、そういうんじゃ、ないんだけど……」
どこまでも優しい由比ヶ浜は、きっと最後まで優しい。
「………バカ」
『ねぇねぇ雪乃ちゃん、久しぶりにデートしない?』
「なんで姉さんと……」
『え〜、ちょっと前は誘ったら嬉しそうに着いてきたのにぃ。あ、そっか、比企谷君とじゃなきゃ嫌か!』
「別に、そういうわけじゃ、なくて……」
『もぉ〜、照れなくていいよぉ』
「照れてなんかないわ!私をからかうのが目的なんだったらもう切るわよ」
『そんな怒んないでよ。明後日雪乃ちゃん暇でしょ?わんにゃんショー行こっか』
「なんで私の予定を――」
『行かないの?』
「……何時から?」
『じゃあ10時からね!あ、私が迎えにいくから、雪乃ちゃんは待っててね。楽しみにしてるね!バイバイ』
プツッ
「……はぁ、姉さんはしょうがないわね」
彼女は妥協している風を装っているが、実は内心かなり喜んでいた。
「明後日どの服で行こうかしら」