幼なじみの彼女は   作:有機物

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彼女は歩み寄る

 

「本当にすみませんでした」

 

両膝と両手と頭を床につけて謝る。

 

「あ、あたし土下座って初めて見た……」

 

「私もよ……」

 

女子二人に引かれているが、俺は許しを得るなら手段を選ばない男だ。どうだ、格好いいだろ。いやよくねぇな。

 

「もういいから、頭を上げなさい」

 

頭を上げると、呆れかえっている雪乃と、冷たい視線の由比ヶ浜がいた。

 

「ふむ、申し訳ないと思う義輝であった」

 

隣には未だに土下座中の材木座がいる。てかなんでこいついるんだよ。

 

「なんであんたいるの?」

 

由比ヶ浜が蔑んだ目で見ている。雪乃はもはや視界にすら入れていない。

やめて!材木座くんのライフはもうゼロよ!

 

「材木座、帰ってくんない?」

 

そう言うと、材木座が捨てられた子犬のようにウルウルとした目で見てくる。そんな目で見られてもキュンキュンしねぇよ。気持ちわりぃ。

なんとか力ずくで材木座を押しやる。こいつ重いから大変なんだよな。

 

「……さっきのは忘れてくれ」

 

「あ、うん……」

 

由比ヶ浜が微妙と言うような顔をする。まあ仕方ないだろう。あれを見てしまったのだから。

 

「さっきのってなにかしら?」

 

ふぇぇ。雪乃さんマジすか。完全に存在してない扱い。流石だな。

 

「で、あたしなんで呼び出されたの?」

 

「あなたの誕生日祝いをしたくて……」

 

「え?ゆきのんあたしの誕生日覚えてくれてたの!?」

 

由比ヶ浜は感慨深そうな顔になって雪乃を見つめる。雪乃は覚えていた訳ではないのだが……。そこら辺はどうでもいいか。

 

「ケーキを焼いて来たのだけれど、時間がなくなってしまったわね。後は…プレゼントね」

 

そう言うと雪乃はカバンからプレゼントを用意する。俺も一応出しておく。

 

「え?ヒッキーも?」

 

そうか。俺今由比ヶ浜とあんまり良い関係ではなかったのか。遊戯部の件で忘れていた。

そもそも関係を持つことすら稀だからそういうのは鈍感なんだよな。

 

「あー、誕生日だからじゃなくてだな。お前が今まで気を遣ってくれてたののお礼だ。お前んちの犬助けたのだって偶然だし、そんなん必要なかったんだが……まぁ、お前が気を遣ってくれた分のお礼くらいは、な。別に俺は事故のこと大して気にしてないからもういいよ。これで全部チャラ。終わりな」

 

こういうときだけ言葉がどんどん出てくる自分に正直嫌気がさす。まともに由比ヶ浜の顔を見れない。

 

「これで終わりなんて、やだよ……」

 

「終わったのならまた始めればいいじゃない。あなたたちは悪くないのだし。等しく被害者なのでしょう?ならば全ての責任は加害者に求められるべきだわ」

 

「ゆき、のん?」

 

由比ヶ浜が驚いた表情で雪乃を見る。俺も驚いた。雪乃が、泣いていたから。

 

「えっ?」

 

「どうしたの、ゆきのん?何かあった?あたしに言えることなら言ってくれないかな?」

 

そう言いながら由比ヶ浜は雪乃に近づいていき、ギュッと抱きしめた。

それで雪乃は少し安心したのか、肩の力が抜けていく。

 

「……わた、しは…。比企谷君が轢かれた原因、なの。比企谷君が轢かれたとき、私も、乗っていて……」

 

「雪乃、怖い思いさせて悪かったな。人が轢かれたところなんて見たくなかったよな。悪い、俺が加害者だな」

 

「あたしも、ごめん……。サブレちゃんと繋いでなかったし。それに、ヒッキーが轢かれてなかったらサブレが轢かれたし。あたしも加害者だね」

 

「えっ……」

 

「なら全員加害者だな。ってことは加害者はいなくなるな。そもそも被害者がいないんだし。だから加害者は存在しない」

 

「うん!そうだね」

 

由比ヶ浜のこういうときすぐに乗ってくれる性格はかなり助かる。

 

「いい、の?」

 

「うん。だからゆきのんも終わりにして始めよ?」

 

「ありがとう、由比ヶ浜さん」

 

そう言って雪乃は眩しいくらいの笑顔を見せてくれた。

 

「あっ、じゃあプレゼント空けていい?」

 

「えぇ、もちろんよ」

 

由比ヶ浜が包装紙を丁寧に空けていく。少し中が見えるたびに嬉しそうな顔に変わっていく。

 

「わぁ〜、可愛い!ありがとね、ゆきのん!」

 

そう言って由比ヶ浜は雪乃の手をとる。すると雪乃は弱々しく由比ヶ浜の手を握り返していた。

……俺空気ですね。むしろ邪魔なんじゃない?

 

 

 

 

 

「雪乃ちゃん、遊びに来たよ」

 

「あら、いらっしゃい」

 

いつもなら「連絡くらいして」とか言って不機嫌そうになってしまうのに、今日はやけにすんなり入れてくれた。

 

「雪乃ちゃん、何かいいことあった?」

 

「えぇ、あったわ」

 

雪乃ちゃんの頬が自然と緩む。雪乃ちゃんをこんなにご機嫌にするなんてすごいな。比企谷君関係かな。

 

「お姉ちゃんに教えて〜」

 

「由比ヶ浜さんととても仲良くなったの」

 

雪乃ちゃんが少し胸を張って答える。

予想が外れた。比企谷君は関係ないのかな。

 

「由比ヶ浜さんって誰?」

 

「私の一番の親友よ」

 

雪乃ちゃんに順位をつけるほど友だちがいるのかは置いておくとして、こんなに嬉しそうに由比ヶ浜さんとやらを説明するなんて、由比ヶ浜さんはよっぽどすごいな。こんなに難しくて面倒くさい子に構うなんて。

 

「どうやって仲良くなったことが分かったの?」

 

「由比ヶ浜さんが抱きしめてくれたり、手を握ってくれたの」

 

そりゃあすごい。雪乃ちゃんそういうのすごい嫌がるのに。それにしても由比ヶ浜さんってどんな人なんだろう。

 

「由比ヶ浜さんって女の子?」

 

「えぇ」

 

まぁ、そうよね。男子が雪乃ちゃんをここまで嬉しそうに出来るとは考えにくいし。……例外もいるけど。

それにしても由比ヶ浜さんか。これからも由比ヶ浜さんには頑張ってもらわなくちゃね。

 

「由比ヶ浜さんについてもっと教えてよ」

 

「えぇ、もちろんいいわよ」

 

それから小一時間ずっと雪乃ちゃんは由比ヶ浜さんの話をし続けた。

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