幼なじみの彼女は   作:有機物

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こうして彼は知らぬ間に彼に救われる

「ふぁぁ」

 

今日は雪乃は休みみたいだ。

一人でいると、いや、いつも一人だったけど。雪乃がいないとつまらない。

 

キーンコーンカーンコーン

 

授業が終わった。

よし、家に帰って小町と一緒にプリキュアでも観るか。

 

「比企谷っていないか?」

 

廊下から声がした。

この学校で俺のことを比企谷だと認知しているのは3人しかいない。

小町と雪乃、そしてあいつだ。

 

「あっ、比企谷。こっち来てくれないか?」

 

「いや、俺もうかえるんだけど……」

 

「なら一緒に帰ろう」

 

なんでだよ。こいつ、頭イカれてんのか?

なんでお前と一緒に帰らなきゃいけないんだよ。

つーかめっちゃ視線集めてんじゃん。

これだから爽やかイケメンリア充は。

なんかヒソヒソ聞こえるんだけど。

俺視線とか慣れてないからキツイんだけど。

やめて、八幡のライフはもうゼロよ!

 

「え、あ、ほら。今日はアレがアレで……」

 

「どれがどれなんだい?」

 

なにっ。き、効かないだと⁉

くっ、こうなったら必殺技「逃げる」を使おう。

 

「っていうコトなんで、じゃあな!」

 

「ちょっとまてよ。どれがどれなんだい?」

 

うっ、ギリギリのところで袖を掴まれてしまった。

これも効かないのかよ。

 

「じゃあ、帰るか」

 

葉山が歩き出したのを確認して、俺は反対へ歩き出そうとする。

我ながら完璧な作戦。

残念だったな。俺は諦めだけは悪いんだよ。

え、意地とか性格も悪いだろって?

いや、むしろそこがいいまである。分かってないなぁ。

しかし俺が歩き出すことはなかった。

 

「なあ比企谷。雪乃ちゃんのこと、なんだが」

 

「っ、なんだよ」

 

流石の俺も、雪乃を出されると逃げれない。

あれ、結構単純じゃね?

 

「雪乃ちゃん、イジメられてるだろ?だから…何か助けれたらって思ったんだけど」

 

なるほど。確かに雪乃はイジメられてる。

しかし、俺たちになんとか出来るとは思えない。

もちろんどうにか出来るのならしたいとは思っているのだが……。

 

「具体的にはどうすんだよ」

 

「それは…まだ決まってない。だからきみに相談したんだよ」

 

こいつ、人任せ過ぎるだろ。

なんとかしたいと思ってるんだったら、まず自分で考えろよ。

そもそもお前が出来ない同ことを同い年の俺が出来ると思ってんのか?

と、思っても口に出さないあたり、八幡的にポイント高い!

 

「何も決まってなくて、考えてないんだったら俺は手伝えない。まず自分で考える努力をしろよ。俺も確かにどうにかしたいって思ってるから、お互い自分で考えてからまた話そうぜ。話はそれだけか?俺は教科書忘れたから教室戻る。……じゃあな」

 

「分かった。でももう大丈夫だ。きみには頼らない。俺一人でなんとかしてみせる。

時間を取って悪かったな。じゃあな」

 

 

 

 

 

翌日、雪乃は学校に来ていた。

しかし、まだ一言も話せていない。ずっと葉山が近くにいるんだよ。

何かするとは思っていたが、一体何をするんだ?

しばらく観察してみる。

普通の会話だ。

あっ、葉山目当てで女子が入って来た。

 

「葉山くーん、久しぶりぃ」

 

「やあ佐川さん。今年はクラスが違って残念だよ」

 

今年はって、今年もうすぐ終わるんだが。もう12月だぞ?むしろ卒業の方が近いまである。

すると、もう一人入って来た。

 

「ねぇねぇ葉山君、一緒に遊ばない?」

 

「いいよ、下田さん。そのかわり、雪乃ちゃんも入れてあげてくれないかな?」

 

「え?いえ、私は…その、隼人くんだけ行ってくれて構わないのだけれど……」

 

雪乃は予想外だったのだろう。しどろもどろになりながら断わっている。

一応ここまでは予想していた。ここからから先は、葉山がどうするかによって変わってくる。

 

「みんなで遊んだ方が楽しいじゃん。いいよね、佐川さん、下田さん」

 

「えっ?まぁ、そうかもね」

 

「あー、私も別に……」

 

「ありがとう。じゃあ行こうか」

 

葉山は一つ見逃している。佐川も下田もどっちも、「いいよ」とは言っていないのだ。

まぁ、そこら辺は葉山の人気でカバー出来るだろう。

雪乃は納得していない感じだったが、渋々ついて行ってる。

 

「ねぇ葉山君ってさぁ、勉強出来るよね」

 

「それそれ!どうやって勉強してんの?」

 

「俺は…あっ、雪乃ちゃんの方が勉強出来るよ!」

 

「ふーん。でさぁ、この前のテスト70点でぇ、親に怒られちゃったんだよねぇ」

 

「ほんとそれ。てか70点っていい方じゃん。私なんか10点だよ〜。てか親って、すごい学校のこと聞いてくるよね」

 

「ぶっちゃけ、親がいなかったら0点取り放題なんだけど」

 

「それウケるー!」

 

本当に10点だったのかよ。そういう奴に限って結構良い点取ってんだよなぁ。ソースは俺。分数の計算のテストマジで10点かと思ったら、30点だったんだよな。いや、全然良い点じゃないじゃん。

というか、そんなに親が怖いなら、ちゃんと勉強しろよ。

もう会話は聞こえなくなっていた。

やり方は少し強引だが、このまま葉山が間に入っていれば、なんとかなるかもしれない。

俺の出番、無くなるのかな?

そんなことを考えていたら、4人が帰ってきた。

 

 

 

 

 

あれから葉山は雪乃たちの間に入って、雪乃の敵を減らそうとしている。

そのせいで、俺は雪乃と話せていない。

恐らく葉山からみたら、雪乃の敵は減っているように見えるだろう。しかしそんなことはない。

むしろひどくなっている。葉山がいないときは、前よりももっと沢山の女子が敵になっている。

俺が雪乃のところへ行こうとしても、返り討ちにされ、近づくことが出来ない。

……これはまずいな。何か手をうたないと。

 

 

 

 

 

俺は雪乃ちゃんと、他の子の間に入って、雪乃ちゃんの友達を増やしている。

雪乃ちゃんの友達が増えれば、雪乃ちゃんは比企谷と一緒にいる必要はなくなる。

恐らく、そろそろみんな仲良くなっているだろう。

明日からは、雪乃ちゃんたちと間に入るのはやめよう。

そうすれば俺がいなくても仲良く出来るはずだ。

 

 

 

 

 

翌日から隼人くんは来なくなった。

そのせいで、私の周りはさらに過酷になっていた。

比企谷君は近づくことも出来ない。

心の中で、なにかがストンと落ちたような気がした。

――あぁ、もういいや。

その日から私は、ほとんどの事を他人事と思うようになった。

 

 

 

 

 

俺は佐川と下田を校舎裏に呼びつけた。

え、どうやったかって?

そんなの簡単だよ。

くつ箱に、『明日の放課後校舎裏に来てください。葉山より』

って書いた手紙を入れといたんだよ。

恐らくまんまと引っかかるだろう…って来たわ。

やっぱ単純だな。

 

「よう。佐川に下田か」

 

「は、あんた誰?」

 

「てか葉山君は?」

 

「まぁ、ちょっと話を聞けよ。俺は葉山から伝言を預かってんだよ」

 

「なっなに?」

 

「早く教えなさいよ!」

 

こいつら、葉山の名前出した途端食いついてくるんだな。まぁ、そっちの方が扱いやすくていいんだが。

 

「お前らさぁ、雪ノ下雪乃のことイジメてるよなぁ。それでさぁ、葉山はなんとかしたくてお前らと一緒にあそんでたんだよ」

 

ここまでは本当に葉山がしようと思ってしたことだ。

……ここまでは、な。

 

「でもさぁ、逆にもっとひどくなってんのよ。そのことさぁ、葉山、気づいてるぜ?お前らはバレてないと思ってんのかもしれないけど」

 

嘘だ。葉山は気づいていない。あいつは本気でみんなが仲良くしていると思っている。

そう思っている葉山にも問題があるのだが、俺はその幻想を壊す権利もないし、理由もない。

俺が今しなくてはいけないことは、雪乃を助けることだけだ。

 

「だからそんなクズみたいなことをするお前らに構わなくなったんだよ」

 

「そんな訳、ないでしょっ」

 

「それに、私たちが雪ノ下雪乃をイジメてたなんて言いがかりは……」

 

「証拠ならあるぜ?別にお前らが葉山がどう考えてるのかを勝手に想像すんのはいいけどよぉ。結局、なんも変わらないぜ?こっちには証拠があんだからなぁ。なんなら、お前らが怖がってる、お前らの親に電話して、全部話してやろうか?」

 

「あ、あんたがその気なら…こっちだって…」

 

全部嘘だ。証拠なんて一つもない。

でも、これくらい脅してやればいいだろう。

もしまだ続くなら、証拠を集めるだけだ。

しかし最後あいつはなんて言ったんだ?

走って逃げて行く佐川と下田を見て俺は一人つぶやく。

 

「葉山の株落としちまったな。明日土下座でもするか」

 




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