幼なじみの彼女は   作:有機物

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彼と彼女はお互いの変化に気がつかない

 

休み時間になると、佐川と下田たちがクラスの人たちにさっきのことを話していた。

もちろん、俺が悪いという設定で。

これはまずいな。もしこれで俺が雪乃と仲良くしていたら、雪乃まで風評被害にあうことになる。

ここは上手く距離をとったほうがいいかもしれないな。

それで噂が無くなってたらまた近づこう。

 

「比企谷君。どうしたの?」

 

「うん?あっ、えーと…」

 

雪乃に話しかけられてしまった。これじゃあ距離をとろうにもとれない。でも直接言うと傷付けるかもしれないし、どうしたものか。

 

「今、俺なんか変な噂流されててさ。だからあんま俺に近づかないほうがいいぜ?ほら、雪乃まで巻き込まれるかもしんないし」

 

まぁ、こんな感じで言えば「そっかぁ」て言って遠ざかってくれるだろう。

 

「別に私は平気よ。だって私には関係のないことだもの」

 

関係のないこと?ああ、そういえばこいつ、あんま他人からどう思われたって気にしないタイプだっけ。

 

「そ、そうか。ありがとな」

 

「私は比企谷君と話せればそれで構わないから」

 

なかなか嬉しいことを言ってくれる。

前までは知らなかったが、周りがみんな敵でも、一人でも味方がいてくれたらなかなか心強いな。

 

そのまま俺たちは毎日のように一緒に話し、帰りも一緒に帰った。

 

 

 

 

「明日から、冬休みでーす。でも、みんな浮かれすぎて、事故とかにぃ、巻き込まれたらダメだよー」

 

明日からは冬休みだ。

先生がみんなに注意喚起する。

去年までの冬休みといえば、小町と一緒に遊ぶくらいしか楽しみがなかったのだが、今年は雪乃がいるからな。暇な日とか聞いといたほうがいいのかな。

帰りの会が終わり、教室の中がざわつき始める。

俺は雪乃の席まで行った。

 

「な、なあ。冬休み、暇な日とかあるか?」

 

「いえ、私事はないのだけれど…用事はたくさんあって…ごめんなさい」

 

私事はないのに、用事はたくさんある?家の用事かな。家が厳しいとか?親の実家にでも行くのかな。とりあえず、雪乃は多忙なのか。残念だ。

 

「そっか。まぁ、用事なら仕方ないだろ。えーっと、一緒に帰れる?」

 

「ごめんなさい。今日は迎えが来るの」

 

「ああ、分かった。じゃあな」

 

「ええ、また今度。良いお年を」

 

ああ、そっか。次会うのは来年か。

 

「良いお年を」

 

雪乃は小さくお辞儀をして教室を出ていってしまった。結構律儀なんだよな。

さて、俺も帰るか。

 

 

 

 

 

結論を言おう。

今年の冬休み、ものすごくつまらなかった。

小町は友達と遊んでいるし、かまくらは懐いてこない。親は忙しくて家にいないし。

唯一家族全員揃ったのは正月だけだった。

本気で「冬休み終わんないかなー。学校行きたいなー」と言って、小町に引かれたくらいだ。

正直言って、誰もいない家で一人静かに生息するよりも、学校で変な噂流されながらも雪乃と一緒にいたほうが楽しい。

雪乃も本気で俺の噂を気にしてないみたいだし、むしろ『他人事』という風な感じで、気にも留めていない。

そっちのほうが俺としては嬉しいのだが。

 

 

 

 

学校に着くと、雪乃はすでに席に座って、本を読んでいた。

というか、大半の人がいた。大体楽しかったこととかを自慢し合っているんだろう。

俺は雪乃の席へ行く。

 

「あ、明けましておめでとう。こ、今年もよろしく」

 

これ言うのめっちゃ緊張すんじゃん!

なんでリア充たちは普通に「あけおめ〜、ことよろ〜」とか気軽に言えんの?

 

「明けましておめでとう。今年もよろしくね、比企谷君」

 

「お、おう」

 

最後に「比企谷君」と付いたことで俺だけによろしくしてる感じがすごいな。

べ、別に嬉しくなんて、いや、すごく嬉しいです。

 

「そういえば、冬休み忙しかったんだよな」

 

「別に、忙しくはなかったわ。ただ、予定がたくさんあっただけで。……毎年、そう。私は居るだけ。存在するだけ。雪ノ下家の、姉さんの、妹。そういう立ち位置で。誰も『雪ノ下雪乃』とは言ってくれない。見てくれない」

 

えっと…これ、どうすればいいんですかね。なんか地雷っぽいの踏んだみたいだし。でも俺、今まで地雷を踏む相手すらいなかったから、対処法しらないんだけど。

でも絶対聞いてる距離にいるからスルーはできないし。いや、こういうときはスルーのほうがいいのか?

ヘルプミー!コミュ力高いひとー。

 

「あっ、ごめんなさい。あなたに言っても仕方のないことよね」

 

「あっ、お、おう。いや、まぁお前も大変なんだな」

 

「大変……。どうかしら、本当は大変じゃないのに、自分で大変にしているという感じだから」

 

よし、話題を変えよう。この話だと俺の息が持たない。

 

「話変わるけど、今年で卒業だな」

 

「そうね。4月から中学生ね」

 

よし、上手く変えれた。一安心だな。

 

「なんか実感わかないよなぁ。中学生って。まぁ、身近にいないからかもしれないけど」

 

「私は、姉さんがいるけれど…あの人は普通ではないから。そうね、あまり現実的ではない感じね」

 

普通じゃない、か。

まああの人は普通って感じはしないな。

 

 

卒業が近づいてくるうちにだんだん実感がわいてくるかと思ったが、そんな事はなかった。

毎日あの噂が流され、俺と雪乃は無視する。

卒業文集は書く依頼がされないし、絶対書かないといけない作文の欄には、〘将来の夢は、専業主夫です。〙と書いておいたし。

卒業式の練習は、リア充たちが勝手に騒いで俺の出番奪ってくし。まあ、楽でいいんだけど。

 

最近変わったことといえば、やっぱりあの噂だろう。

最初はあいつらの気が済んだら収まってくるかと思ったが、俺たちが気にしないことが気にさわったのか、もっとひどくなっていった。

 

「なぁ、雪乃。噂、もっとひどくなってんだけど…本当に大丈夫か?俺に気を遣ってんだったら無理しなくてもいいぞ?」

 

「別にそんな事ないわよ。私が気を遣うように見える?ただ私には関係のないことだもの。私は気にするだけ無駄だと思っているわ。他人事、だもの」

 

雪乃が気にしないでくれているのが、たまらなく嬉しい。本人にそんなつもりはないだろうが、その言葉に俺は救われていた。

中学校に行っても、こんな風に俺の味方でいてくれるだろうか。

 

「そう、だよな。他人事、だもんな」

 

「ええ、そうよ」

 

 

 

 

毎日こんな感じで過ぎて行って、ついに卒業式を迎えた。




読んでくださりありがとうございます。
投稿が遅くなってすみませんでした。
これから少し投稿頻度が遅くなると思います。
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