幼なじみの彼女は   作:有機物

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高校生編
こうして彼と彼女は再会する


青春とは嘘であり、悪である。

青春を謳歌せし者たちは、常に自己と周囲を欺く。

自らを取り巻く環境の全てを肯定的に捉える。

ならば、小学生の頃、好きだった女の子と感動的?な別れ方をした俺は、リア充に分類されるのだろうか。

大半のリア充はこう言うだろう。「お前はリア充じゃない。ただのボッチだ」と。

確かに俺はボッチである。しかし、なぜボッチだとリア充に分類されることがなくなってしまうのだろうか。

それは、リア充たちが自分たちが正しいと思っているからである。

リア充に分類するときは、必ず自分たちと似た環境でなければいけないことにしているのだ。

だが、俺はそう思わない。たとえボッチだったとしても、心がリア充なら、リア充なのだ。

実際、俺のリアルは充実している。

可愛い妹がいるからだ。これにあの子までいたら、どれだけ良かったか。

結論を言おう〘想いこそが大切なのだ〙。

 

 

 

 

「なぁ比企谷。私が授業で出した課題は覚えているか?」

 

「はぁ、『高校生活を振り返って』というテーマの作文ですよね」

 

俺は何か間違ったことをしてしまったのだろうか。

少し小学生の頃のことを入れてしまったが、そこは見逃して欲しい。あの子との思い出は、俺の今までの人生を語るときには、絶対に外せないことになっているからな。

 

「そうだな。それで君はなぜこんなふざけた作文を書いてきたのだ?」

 

「いや、別にふざけたつもりはないんですけど。というか、どこら辺がふざけているように見えるんですか?」

 

本気で書いた作文に文句を言われれば、こんな反論もしたくなってくる。

 

「まず、独りだとリア充になれないということがおかしいというのは、大いに共感する」

 

共感しちゃうのかよ。あ、先生独りですもんね。

 

「それは……ありがとうございます」

 

「だが、絶対に許せない部分がある」

 

「はぁ、どこですか?」

 

「なんだ、この『小学生の頃好きだった女の子と感動的?な別れ方をした』とは。君はずっと独りだったんじゃないのか!この裏切り者」

 

えぇ……。大人げな。

いや、そもそも俺先生の仲間だった訳でもないし、裏切り者もなにも……。

 

「いや、独身の先生には悪いこ――」

 

「あ?なんか言ったか、比企谷」

 

こわっ。マジで眼の色変わったぞ。

なるほど、この件は平塚先生にとって、地雷だったようだ。踏まないように、注意して……

 

「とりあえず、すみませんでした。書き直しますから、返してください」

 

「ふむ、許そう。だが、君の心ない言葉や態度が私の心を傷付けたことは確かだ。なので、君には奉仕活動を命じる」

 

「奉仕活動って……具体的にはなにをすればいいんですか?」

 

なんか嫌な予感がする。

 

「そこのダンボールを持って、ついてきたまえ」

 

えぇ……。なにあのいかにも重たそうなダンボール。

 

「何が入っているんですか?」

 

「自動販売機で売っている、飲み物だ」

 

うわぁ、絶対重いやつじゃん。持ちたくないなぁ。でも、持たないとなにがあるか分かんないしなぁ。

 

「言うことを聞かなかったら、3年で卒業できると思うなよ」

 

「ひゃ、ひゃい!」

 

なに、俺の考えてること分かるの?これってもしかして以心伝心?でもごめんなさい、平塚先生。俺は他に好きな子がいるので、頑張って他の相手を探してください。

 

「ひ·き·が·や?」

 

「今行きます。すぐ行きます」

 

くそっ、このダンボール想像以上に重い。

腕が痛い。こんなの力持ちの体育の教師に頼めよ。

 

「こっちだ。ついてきたまえ」

 

「自動販売機、そっちにはありませんよ。もしかして、いや、もしかしなくても、わざと遠回りして、俺の負担になるようにしてるんですか?やめてください、腕がちぎれます」

 

「本当に君は人を疑うことしかしないな。私の目的地は、自動販売機などではない。言っただろ、君に、奉仕活動を命じると」

 

「もうすでに奉仕活動を通り越して、拷問になっているんですが。先生はそこら辺はどうお考えですか」

 

どうやら平塚先生が向かっているのは、特別棟のようだ。特別棟になんかあったっけ?

たしか、音楽室や、生物室、図書館とかしかなかったような気がする。

まさか、また肉体労働させられるのか⁉

やだなぁ、帰りたいなぁ。

 

「着いたぞ」

 

先生が立ち止まったのは、なんの変哲もない普通の教室。

プレートには、何も書かれていない。

俺が不思議に思って眺めていると、先生はからりと戸を開けた。

 

その教室の端っこには、椅子と机が無造作に積み上げられている。倉庫として使われているのだろうか。

他の教室と違うのはそこだけで、何も特殊な内装はない。いたって普通の教室。

けれど、そこがあまりにも異質に感じられたのは、一人の少女がそこにいたからだろう。

少女は斜陽の中で、本を読んでいた。

よほど熱中しているのか、平塚先生と俺が入って来たことに気づいていない。

世界がおわったあとも、きっと彼女はここでこうしているんじゃないかと錯覚するくらい、この光景は絵画じみていた。

それを見たとき、俺は身体も精神も止まってしまい、ダンボールを落としてしまった。

 

「いったぁ!比企谷、なにをしてるんだ。私の足に思いっ切りダンボールを落として!……比企谷?」

 

「………雪乃」

 

やっと出てきた言葉がこれだけだった。声も掠れていたし、きっと届いていないだろう。

平塚先生の悲鳴を聞いて、雪乃は顔を上げる。

 

「平塚先生、入るときはノックを――」

 

目が、合った。

雪乃は一瞬驚いた顔をしたが、すぐに苦しそうな顔になった。そして最後に、不安げな表情になって、

 

「ひきがや、くん?」

 

と言った。

 

平塚先生の命令で来た場所は、俺にとって、とても大事な人がいる場所だった。

 




高校生編突入です。
一応2年から始まっています。

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