ニューマコーニオシス 〜塵肺戦線〜 解体新書 作:イエローケーキ兵器設計局
「うわ出た…殺される前に逃げよ」
Ⅲ号代理人との追いかけっこから数日。パトロールをしていたらⅢ号代理人を見つけた。明らかに言論が怪しい。
職質をしよう。
彼が私に見つかった瞬間、左腰に装着しているフラッシュグレネードを急いで取り外し、ピンを抜いた。そして投げつけてきた。うん、発砲する理由はできた。
閃光が辺りを一瞬だけ昼にする。フレアを炊いたほうが効果的だろうに。
こちらの目を潰したと思ったのかアンカーショットを近くの建物の屋上に狙いを定め、撃ち、モーターを使って上に上がっていく。
『目が!目がー!ってなるとでも思ってたの?』
……残念ながらそんな小細工は私には効かない。
「こんにちは〇〇〇〇〇くん。いきなりだけれど殺していいかしら?」
……こういう時に限って記憶が混ざる。昔こうして誰かを追い詰めたような……
簡単には来れないと思っていたが、いつの間にかARMSを装備したニューマがすぐそこに浮いていた。とか言いたげな顔をしているⅢ号代理人。
「生身に対してそんなもので攻撃していいのかよ!」
残念ながら。A-20G、つまるところの姉に化けて上昇。双発な分、被弾に強いんだ。
Ⅲ号代理人が左手を私のARMSに向けて、アンカーショットを打ち込んできた。それは貫通し、固定される。これは……電流!
「あいたたた…やってくれるじゃない!」
……私そんなこと言うキャラだっけ?
反撃にKPV重機関銃を合成して向ける。14.5mmだから必ず避けるだろう。
「ぬおっ!」
偏差射撃を彼なりにして反撃してくるも全て外れ。その程度で効くはずがない。
「当たってないわよ?もっと狙わなきゃ。ギャハハハ!」
小さく宙返りして回避。こんな機動、私は知らない。
「弾速がおせぇ!」
対空砲火よりはぬるいね。
「持ってくれ…俺の脳……未来予測!」
Ⅲ号代理人は左目が義眼になっている。
逃げる為に未来を予測する、なら逃げる事のできない現実を差し出すのみ。
だからか油断していた。手榴弾の投擲を見逃していたのだ。
「そんな未来…信用できるかしらぁ?」
そんなことも露知らず私は急接近する。いや、私ではない。これは私ではない。別の誰かだ。
身体が彼に銃口を向けつつ急接近。銃口を胸に突きつける。彼が仮にCQCができるのならば…逃げ切れるかもしれない。でもこの足場ではそれは不可能に近い。
「できるね!」
二人の間に挟まるピンが抜かれた破片手りゅう弾が現れる。
「やっば…!」
自爆する気か!
爆発。彼にとってはどうやら信頼に足る未来だったようだ。
「やったか!…って、フラグだなこりゃ」
彼がワイヤーをかけた建物の壁に手をかけ、下を見ながら言った。
「ええ、そうね。残念よ」
「チェックメイトね」
しかし僕にとってはそうでもない。
「Verdammt!……生き延びる未来位見せてくれ…」
おもむろにワイヤーを外し、自由落下する。下にあるのは川。
「あら?悪あがきのつもりかしら?」
「痛覚全遮断………入射角よし………………入水………」
これはきれいな入水自殺。もしくは……ネイキッドスネークの飛び込みかし
「おっと…!」
身体が猛禽類を思わせる機動をとってキャッチを試みるが失敗する。それは入水直前だった。
「その先は危ないよー!」
「と言う訳で…Ⅲ号代理人君。つーかまえた。」
それは私の声。発したのは私ではない。そしてそれは僕の声。発したのは僕だ。
「…………優しくしてくれよ………体中、骨が折れてるんだ…………………痛覚遮断がなかったら今頃ショック死してる程度にはなってるはずだからさ………頭痛い………」
すまんな。かなり重いんだ。雑な引き上げ方なのを心の奥で思いつつ引き上げる。
「そういうと思って父から借りてきたんですよ…」
スカートをたくしあげ、水鉄砲のような物体を取り出す。
「EDF印のナ〜ノ〜マ〜シ〜ン〜」
「絶対に義眼とかと………干渉しあうからやめてくれ………………君の場合…脳までいじりそうだから………」
「それに………………………捕まえた」
油断した。そんな声が聞こえた。
直後腹部に疼痛。ワイヤーが刺さってやがる。
「やっぱり………生き延びるだけじゃァ………楽しくないんだ」
「なんで…さ…」
大抵の人間が出すことができないであろう様々な音、それこそMGSPWのピースウォーカーの咆哮にた音とかを出しながら回復不可能な錐揉みを起こして川の浅瀬に墜落。人を護る為にはヒトであることを辞めるしかない。
「おっと……かけないでくれよぉ……血なんて汚いものをさぁ!せっかくⅢ号ちゃんが選んでくれたものなのに……汚しやっがって………死んでくれぇ………死んでくれよぉ~~~」
血って結構神聖なものだと思うんだけどね!ピューパ3的には。
彼が腰に帯刀した短剣を僕の腹に突き刺す。自分で汚していくスタイル……正直言ってヒトは嫌いだ。
「頭が………………痛いんだよ………………ハハハ………服が………………また……汚れて………………」
「ははは……ハハハハハ!!」
「死ヌ!刺サレテ死ヌ!冷タイ水底ヘ!ミンナ沈厶!」
みんな沈んだ。上陸すら出来ずに沈んでいった!上がることができたのは極少数!
「違う、昇のさぁ…天にぃ………………お前だけ!………お前が消えれば………この頭痛だってぇ………俺はこんな………冷たいものに抱かれては死なないんだぁ………………暖かい………人に………暖かい………人にぃ…………」
僕は銃剣が好き。刺すのも斬るのも突くこともできるから好き。
「そんなものぉ………人に………突き立てるなぁ!危ないだろうが…………俺の……ワイヤーの………硬さを知らねぇなぁ………………」
ワイヤーが銃剣を弾く。もう少し力を入れれば……折れるかも?
「……Ⅲ号!Ⅲ号!Ⅲ号ヲ呼べ!」
「……少しだまりヤガレ!」
手が震える。リバーサーの照準がつかない。
「Ⅲ号?………ちゃんをつけろよ………このデコスケ………野郎……そんな………危ないなぁ………………やめろと言ったじゃァないかぁ~~~!」
拳銃での発砲。後で弁償費用を請求しよう。
「ソッチノⅢ号じゃナイ……コッチのⅢ号。」
チッ……被弾した衝撃で取り落としてしまった。あーあ……高かったのに……Ⅲ号代理人が正気に帰ったら請求しないと。
「知らないね………ほうら………さっさと落ちろよぉ………………気持ちいいのぉ………………好きだろぉぉ………………のぼるのは………………気持ちいいんだよぉ………………おれは………………だから…落ちたいんだよぉ………こんな寒さじゃなくてぇ………彼女にぃ!」
「Ⅲ号……フフッ……カワイイジャナイ。悪イネ、コノ勝負、貰った!」
「え?代理人エージェントさん…」
神とやらは存在しないが奇跡というものは起きる。
「…!」
「………………可愛い…声……愛しい…声………Ⅲ号ちゃん………俺の…?………誰の?………頭が痛い………頭が…割れる………痛覚遮断………痛覚遮断………温かみに………沈みたい………冷たいのは………冷たいのは………いやだ………いやだ………」
「ダッタら…生キテ帰レ!コノ…リア充ガ!」
僕はヒトが嫌い!嫌いだ!なんで……さ……みんな……こっちを見るの……?
身体が限界まデ来ているのカかなりフラフラ。さっきから言語能力もどこかおかしい。
「エージェントさん!エージェントさん!」
「Ⅲ号戦車チャン…桟橋へ!」
桟橋まで行くようまともに動く脳で命令。指示。
桟橋まで……取り落とした。
「沈めてくれ………………温かみに………冷たさに………上らせないでくれ………Ⅲ号ちゃん………俺を………君に………沈めてくれ………あの時の冷たさは嫌だ………生まれた時の冷たさも………二度目の時の………冷たさも………暖かさを………ください………………」
「ゴメンナサイ。Ⅲ号代理人。Ⅲ号戦車。」
誰かが昔……注射器嫌いって言ってたな……。ジョニーだっけ?元気かな?
「うわぁぁぁぁぁぁぁ!や、やめてくれ!ちゅ、注射は苦手なんだ!許してくれ!」
うわ……こいつ……注射器だめなの?まあ確かになれるまでかなりキツイけど……
「……困ったな……我慢シロ!」
羽交い締めにするか。
彼は全力で抵抗するが……抵抗なんて無意味だった。
「ハーイ、チクッとしますね」
「い、痛い………うわぁぁ………痛いぃ………よぉ……」
すまんね。これは単なる生食だ。
「精神安定剤ですからー安心してくださいねー」
大嘘をつく。プラシーボ効果を狙う訳で。
「あ………大きな星が点いたり消えたりしている………ハハハ………大きい・・・彗星かな?いや、違う、違うな………彗星はもっと…バアーッて動くもんな………寒いな………ここ………おーい、ちょっと………温めてくださいよ………ねぇ…」
現実を見ろ。現実を。三途の川?知らんな。行けるのなら僕も連れていけ。
「Ⅲ号戦車チャン!コイツ頼メル!?」
「は、はい!」
「頼ムヨー」
桟橋まで滑るようにフラフラと飛んでいき桟橋に打ち上げる。コイツ何キロなんだ……軽いな。
「ごめんね………Ⅲ号ちゃん………不甲斐ないなぁ………………重いかな………君にもらったルガーだけは………絶対に………なくしたくなかったし、汚したくなかったんだ………ごめん………………」
心底心配そうに代理人を抱くⅢ号戦車。
「さて、Ⅲ号戦車チャン、1つお願いがあるんだけれど…」
「なんでしょうか?ハボック…さん」
僕の声はコルセア……?だからか、混乱しているようだ。
「こいつを手に取ってくれ。早く」
煙草の箱を差し出して開くと紙片。
「この紙片をですか?………わかりました」
Ⅲ号戦車が一度確認をとってから紙を取る。
「では、手順を説明します」
儀式かと思わせる程に冷たく感情の抜け落ちた声。座っているⅢ号ちゃんに横たわるように座っているⅢ号代理人は自分の体を起こそうとするが…力が入らないようだ。
「まず、口に含みます。飲み込んではいけません」
「必要なことなんですよね?」
「怪しいことじゃ…ないよな…ニューマ……冷たいな………目が……」
「大丈夫ですよ…きっと……」
Ⅲ号戦車が紙片を口に含む。単なる食べられる紙なんだけどね。
「含まれましたね?」
「では、Ⅲ号"代理人"を気絶させるので口に入れてあげてください。大丈夫です。ヒトを気絶させる事は慣れていますので。では、口移しでお願いします」
「気絶!口移し!ちょっと待ってどういう…」
「うるさい」
ごめんなさいねーと心にもない事を考えながらチョークスリーパー。
「口移し……えいっ!」
Ⅲ号戦車がⅢ号代理人と唇を重ねて、口移しする。
「されましたね。お疲れ様でした。さて、1つご報告が。」
「今、貴女がこの方に含ませた物は……」
口調を戻す。身体のコントロールはまだ返せない。
「実はこんなものです。よいしょっと。」
内ポケットから小さな褐色瓶を出す。
「な、なんですか………?」
「Lysergsäurediethylamid…わかりますか?」
首を傾げてキョトンとする。主観的には見て可愛いとは思えない。申し訳ないけれど。
「そ、それって!………危ない薬じゃないですか!!」
「そう。正しく使わないと危ない。だから君に取らせた。」
「覚えてる?紙1枚取らせたの。覚えてるよね。」
「あの紙1枚がDOLLS及びヒト用の摂取量。」
「そして口移しで摂取させた。さて、化学の授業です。」
「LSDは何に使われますか?Ⅲ号戦車サン?」
流石に答えられるよね?一部は僕が教えたんだから。
「あんまり得意じゃないですけど………リゼルギン酸ジエチルアミドですよね?………リゼルギン酸ですか?」
「Nice try ! ただね…リゼルグ酸ジエチルアミドは何に使われている?君にとっては単なる麻薬かい?」
「確かに使い方によってはこれは単なるデザイナーズドラッグだ。」
「ただ、DOLLSに使うと…話は変わる。」
「実は抗不安薬としての活用法があってね。」
(ちなみに現実では依存性こそ無いが、麻薬としての性質が強すぎて使えない)
「………不安ですか…代理人さんに………」
「で、化学の復習もしたところで種明かし。これ、単なる紙だよ?ほら。」
瓶のラベルを剥がすと…「食べれる紙。ヒト用テストタイプ」と書かれたラベル。
ハッタリである。
「現に、今、君はトリップしていない。」
「ただ1つ忠告。彼が起きてもしばらくは抱きしめてあげて。ヒトには一番それが効く。」
「え!たただの紙!」
「わかりました………抱きしめてあげればいいんですね」
「ああそうだ。」
「彼が起きるまで1つ昔話をしよう。聞き流してくれて構わない。」
ここで少し昔話を。今黙ってもらっているニューマコーニオシス君にも。
「それはおよそ1世紀前。」
「ある秘密の特殊部隊が存在したんだ。災獣の強襲で忙しい時期にもヒト達は戦争をしていた。」
「特殊部隊の名前は…ピルグリム。では問題。ピルグリムの意味は?」
「『巡礼者』です………」
「そう。巡礼者。」
「彼ら…いや、彼女たちか?は残された土地を自国の人達のために広げようとした。」
「これは伝聞に過ぎないのだが…一説によると、被弾しても進み続け、火点を確実に抑え込み、現れた戦場を我がものとしていたらしい。まあここまでは伝説の範疇、窺わしい記録だ。」
「しかし一部の軍事研究者にとって困ったことに…どうやら交戦時の映像が残されていたらしい。そして、その映像が保管されているのは…黒十字ダムラーベルツ学院の書庫らしい。」
「そう、君の生まれ故郷だ。」
「あそこは良いところだった。ボロボロの私を介護してくれたし、新たな装備までくれた。」
「君にはその記録映像を見てほしい。君が送られる戦場についてのヒントがそこにある。」
「では私はここで失礼しないといけない。ニューマコーニオシスがそろそろ起きるからな。では。」
身体を返す事にする。私の役目はひとまず終わり。休眠状態へ移行。
『痛たた…ここ何処?なんか胸が痛いし……!?出血!?Ⅲ号戦車ちゃん!?代理人!』
「お久しぶりですね、ニューマさん」
『あ、あぁ…うん…おひさしぶり。何があったの?』
『……取りあえずⅢ号代理人を起こすか。おーい、起きろ〜起きやg……最終手段取るか……』
『Ⅲ号戦車ちゃん、少しの間だけ後ろ向いててくれる?』
Ⅲ号代理人は頭を触られることを極度に嫌う。
「は、はい…」
『では〜起きなさい!Ⅲ号代理人!』
ヒトには刺激されると深い睡眠状態でも一瞬にして目を覚ますツボがある(かもしれないが作者は知らない)。
尻尾をかなり細く生成。そして…
『これでも喰らいなさい!』
ツボにブスリと。(刺さってないよ?)
「アッー!」
「なんて起こし方するんだ!」
首筋にトスン、と。ついでで尻にも一撃。リア充め、爆発……はしなくて良いけれどもう一回気絶しやがれ!
「なんて起こし方するんだ!」
『おはようございます。Ⅲ号代理人。実は一度そうやってマーサ姉さんを起こそうとしたらアh(ryで顔真っ赤にしてたので起きるという点で効くかな、と。』
(サラリと問題発言)
「あ、あの………そろそろそっちを向いてもいいですか?」
『あ、あぁ…失礼。Ⅲ号戦車さん、お戻りください。』
「それで…大丈夫か………かなり出血しているようだけれど………
『え?あ……』
一瞬だけ空を仰いで視界は暗転した。
「おーい!ニューマ!あ、Ⅲ号代理人にⅢ号戦車ちゃんだ!…ってあれ?なんで代理人組二人とも倒れてるんだろう?」
「近づいてみたら…ニューマのところのマウスもいるのか…初めまして……Ⅲ号代理人とⅢ号戦車は回収していくよ。それと…ニューマ君の止血をしてもいいかい?」
「あ、どうも。あそこで倒れている愚弟がお世話になっております。マウスです。止血、お願いできますか?」
74式が装備していたARMSの主砲を構える。
「うん。かなり荒っぽいやり方だけど…何かの時のためにARMSを装備してきて本当に良かった。白刃戦…レーザートーチ出力最小……止血開始……」
「うぉっ…!アッチ!」
『あ、起きた。おい、ニューマ、起こす時はあれ(通称:座薬)以外で頼むて言っただろ?今朝まともに歩けなかったんだからな?』
括約筋がバイバイするかと思った。今朝のあれは。
「Ⅲ号戦車ちゃん、Ⅲ号代理人は僕が担いでいくよ。幸い、出血は無いみたいだからね今すぐ何かしなくてもいいだろうし……骨はバキバキになってるけど……まだ抱き着いていたい?……そうなの……それじゃあばいばいニューマ君、マーサちゃん…だったけ?」
「世話になった」
ニューマからの感謝の言葉。お礼言えるじゃない。
『あ、そうそう…一つだけ。一応じゃが…妾と妾の愚弟はお主等より"旧式"な事をお忘れの無きように。じゃあまたな。達者で。』
手荒には扱ってくれるなよと釘を指したところでⅢ号代理人たちと別れた。
『ところでピルグリムについての調査は?』
「どうやらこの惑星とは違う惑星出身みたい。父さんいわく。」
『ふむ…』
「ところで朝、弟にi」
『それ以上言うな。』
「アッハイ。」