財布を手に入れた寿一は、ほのかにそれを投げて渡す。
「う、うわぁあ」
変な声を上げながら財布を受け取るほのかは満面の笑みだったが、その次の瞬間には鬼のような形相に変貌する。
「そうです。先輩。
さっきの人は誰ですか? 私の他に後輩がいるんですか?」
「そりゃあまぁ。居るだろうよ。この大学に何人人間が在籍してると思ってるんだ? その一人と仲が良くても大して問題ではないはずだ」
「そうじゃないんです。あの先輩が、女の子と喋るなんて」
「いや。お前も女では?」
その返しにほのかは顎に手を当て考え始める。
「おい。そんなことはどうでも良いだろう。とにかくこの携帯に本当の能力が備わってることを確認できたことが今回の収穫だ。
だが、それがどこまでの範囲なのか。気になるのはそこだ」
泰臣は腕を組む。
こうして、寿一の周りには考える石像が二つ出来た。
一方で寿一にとってそんなことはどうでもよかった。この携帯にお金があっても無くても、その使う術がどんなものであれ、自分はあまり関係が無いし何もできない。そう考えているからだ。
例え、自分の頭の中の理想が現実に成ったとしてもそれで幸せになれるとは思わない。自分はただの一般市民であり、恩恵は上位の人間が受けると思っていたし、自分は上位の人間にはなれないと思っていた。
確かに、この携帯を使えば何かしら願いが叶うのかもしれない。
だが、だからと言って動くつもりはなかった。
夢は夢のまま。
誰かに喋って、うるさいと遮られ、誰からも理解されないまま自分の頭の中にだけに存在する理想郷。
それだけあれば十分だから。
何をするにもまず最初に計画を立てないといけないと、泰臣談。
正直に言って寿一は行き当たりばったりな人生である。それに比べると何とまったく違う人生計画か。
「世界を救うとは、人によって解釈が違う。そこについてはどう思う?」
「俺は人間が全て幸せになれば救ったことになるんじゃないのか。なんて思うがな。
結局みんな死ねば何も考えなくて済むから救済になるのでは?」
「そういうと思ったよ。お前は極論しかないから。ほのかたんはどう思う?」
「えー? 私? 別にどうも思ってないし、どうでもいいよ。この財布自慢したいから今日は帰っていいですか?」
先ほどからこちらの話なんて興味なさそうに机にシートを敷いて綺麗に整えて財布の写真を撮っている彼女は、それをインスタにでも載せるのだろうか?
寿一は腕を組みながら
「人類は全てを知りすぎたんだよ。感の良いガキは嫌いだよ」
「別に感が良くてもそうではなくても、スマートフォンやパソコンを使えばどんな情報でも入手できる世界だからな。
その点。何も知らなければ幸せになれるのではないか。その考えには同感するところはある」
泰臣は頷きながらノートパソコンに文字を打ち込んでいく。
「結局は、救済とは上から押さえつける。ということか」
「どうしてそうなるんです? 別にいつも通り日常を送られればそれは幸せになるのではないですか?」
「そうやっても生きられない人間は確かにたくさんいるんだよ。これ以上の生活を望んだり、それ以上の欲望が存在すれば現状では満足しない」
「それは、そうですけどね」
あまり納得していない様子でほのかは寿一を見る。
当の本人はその視線に気が付かないどころか、ノブレス携帯を眺めている。
この携帯はどんな仕組みなんだろうか。誰がどのようにして僕に届けたのだろうか。こんな力があるのであれば、自分で世界をどうにかすれば良いのではないのか。少なく見積もって1200億円をこんなゲームに費やすのだ。あまり頭のいい人間ではないのだろうか。しかし。
「このゲームがどんな意図で運営されていたとしても、結局は勝たないといけないんだよな」
「そうだ。だから俺はこんなに考えているのだろう? 今で八つほど案を考えたぞ? しかし、あまり現実的ではないがな」
「この携帯ならどれも叶うんじゃないか? 何でもできそうだからな」
「いや、そうではないんだ。結局、100億円では足りないんだ」
「100億円では足りない? まあ。さっきもそんなこと言ってたような気がするが。
具体的にはどんなことをするんだ? 参考までに」
「別に参考にするまでもない。最初から最初まで一貫して金を使うことだよ。
ベーシックインカムって知ってるか? 働かなくても国民に一定の給金をやるんだよ。するとどうなる? みんなお金を使いやすくなりみんなハッピー。だが、一、二カ月はどうにかなるかもしれないが、それ以降がない。それにこれを実行したところでみんなが幸せになれるのか。果たしてそれが救済になるのかどうか。この案は俺たちにもメリットがないから実行する意味がない。
次に、会社を起こして安価で食糧を提供する。
どこかで話に聞いたことがあるが、1カ月に1万円でも食費が浮いて貯蓄に回せるようになれば10年後には車が買えるとのことが。そんな長期のことは俺も望まない。それに、全国規模のスーパーというか、小売店を作るにしても100億円じゃ全く足りない。
他も同じような感じであまり現実的ではないが。
しかし、一つだけ結構いけるんじゃないのか? なんて思う案があるんだが、聞くか?」
「何だよ。ここまで焦らしておいて喋らないと?」
「興味はないですが、聞いてあげますよ」
「ほのかたんは帰るんじゃなかったのか?」
「意地悪ですね。死んでください」
「まぁ。単純な話だ。会社と株で稼ぐ」
「は? それで稼いだところであまり救済につながるとは思えないが」
「違う。これは確実に勝てる勝負だ」
「どうやって? あまり現実的な話じゃないな。他の案のほうがましと思うぞ」
「まぁ聞けって。まずな、戦争を起こす」
「せ、戦争? そんなの個人が起こせるわけがないだろう?」
「それにですよ? 戦争を起こしたところで私たちが何を得するんですか?」
「計画はこうだ。最初にussaに兵器部品を卸している精密機械業社を買い取る。それで取引相手を海外のみに絞る。一社では少ないから何社か買収する。戦争を起こして需要が上がったところで大企業に高く売り込む。それで結構お金が増えると考えている」
「何だそれ。学生ができる規模じゃないぞ」
「大丈夫だ。面白そうだから細かい処理は俺がしてやる。その代わりに少しジョシュアと話たい。お前の頭ではこの計画の真の儲けの部分までついてこれなさそうだからな」
「な。ヤス。お前僕を馬鹿にしているだろ、わかるぞ」
「あまり主席の頭を舐めないでくださいよ、センパイ」
「いやだ。ノブレス携帯は貸さない事に決めた。一人で頑張れよ」
「わかった。明日までにまとまった計画を出すからな。ちゃんとこいよ」
「じゃ、これで解散ですね。私は今日はハンバーグを食べにいくんですよ。先輩もどうですか?」
「すまんな。ハンバーグ嫌いなんだ」
「じゃあ、添え物のじゃがいもとハンバーグ交換ですね。はい、立ってください。今から行きますよ!!」
バタンと泰臣のノートパソコンも無理やりに閉じて立たせる。
ほのかは無性の仕切り屋になる時がある。空気を読むのはあまり得意ではなさそうな彼女ではあるが、ご飯を食べにいくときには誰も嫌にならないように気を回せるやつになる。
飯屋奉行か。ほのかに任せればご飯の件に険悪なムードになることはまずない。
『iii>集会場の空爆>50,000』
『iii>報道の規制>100,000』
ログが更新される。
寿一はそれにあまり興味なさそうに通知を消した。
いろいろ計画を話したらここで先がわかって読んでくれなくなると思ってあまり書けない。でも少しでも触れるとか伏線とか書いてないと、いけない気がするし。
読者的にはもっと分量が欲しいと思うし。
この章が終わるときには読んでくれている人が「おお」って思ってくれる何か仕掛けができればいいなって思うけどあまり文章力がないのでどうだろうか。
次から文章量を増やして投稿できればいいな。
ごめんなさい。週一投稿できなかったです。リアルが忙しすぎてパソコン開けなかった。