厨二王になったらハーレムができました   作:片翼

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Case1. 天災的女神の恋煩い
王の降臨


「ううーん、どうするかなあ」

 

午前2時過ぎ。

草木も眠る丑三つ時である。

 

今日いや日付を跨いでいるので、正確には昨日のことだ。

待ちに待ったネットゲームが配信されたのだ。

他のゲームを凌ぐ『自由さ』を売りにしたこのゲームは、ありとあらゆるものが豊富である。

たとえば、今俺が数時間を費やしているこのキャラメイクは、オリジナルのキャラはもちろん、漫画やゲームのキャラすら簡単に作れるほどパーツが豊富なのだ。

 

そして何よりもこのゲームの醍醐味は、作った主人公の性格を決められることだろう。

なんと性格は主人公の言動に影響され、ゲーム内のキャラクターとの会話が一層楽しめる仕組みである。

 

「やっぱここは王道にいくか」

 

俺はどちらかというと、主人公一行よりも敵対する悪役に心を惹かれてしまうタイプである。だからキャラメイクをすると、どうしても悪役が似合うキャラクターが出来てしまう。

今回もゲーム用にと購入したデカいディスプレイに映るのは、絵に描いたような王道な“悪役”であった。

 

「性別には迷ったけど、偶にゃ男でやるのも悪くねえだろ」

 

どのゲームも女キャラの方が装備が充実しているきらいがある。

前よりは改善しているものの、まだまだお洒落さは女キャラの方が上であった。

しかしこのゲームはそこが違う。

男キャラでもカッコいい装備や武器が揃っており、男向けのアクセサリーも存在する。

 

よって気合の入った俺は今までの経験をフル活用し、微調整に微々調整を繰り返し、結果としてそれはまあとんでもないイケメンを作り出してしまったというわけである。

 

白状すると、俺は今まで所謂ネカマをしてきた。

ハマったゲームのヒロインに近いキャラを作るために、キャラメイクの神髄を学んだのである。

だがそれは理想のキャラを作るためであって、決して人様に迷惑を掛けることはしていない……と思う。

トラブルがあったとすれば、何度か求婚を申し込まれた程度だ。

もうサービスを終了してしまったが、それは結婚システムがあるゲームで何人かに言い寄られた。

今思えばあれは人生最後のモテ期というヤツであったのではないだろうか。

現実ではどうかって? 俺は魔法使いになるのだよ。

 

「よっし、完成だ!」

 

ぐぐっと腕を伸ばすと、ばきばきと悲しい音が鳴る。

結局キャラメイクだけで終わってしまったが、起きたらメインストーリーを始めることにしよう。

防具や武器、アクセサリーを揃えて、顔に合った完璧な装備を手に入れなければ。ああ、そのためにはレベル上げも必要だ。やることがたくさんあって心躍る。このワクワクを抱えて眠るのがまたたまらないのだと、いくつもの理想を思い浮かべながら俺は眠りに就いたのであった―――。

 

 

 

 

 

それからひと月後のことである。

理想の主人公を作るために空き時間を全て費やし、レベルをカンストさせ、最高レア度の防具や武器を揃えた。メインストーリーを全てクリアした特典として与えられた“国造り”の権利を使用して、俺は国を手にしていたのだ。

 

ストーリー自体は王道そのものであるが、自由を謳うこのゲームはあらゆる選択肢がプレイヤーに与えられていた。まず、世界を滅ぼさんとする“悪”がいる。その悪に対してどのような行動を取るかは、プレイヤーの自由だ。王道の儘に悪を倒さんとするも良し、はたまた悪に従うも良し、悪を倒して自らが悪となるのも良し。その方法もまた自由なのである。

 

恐ろしく膨大で自由なゲームであるけれど、目標さえ決まればあとは行動のみだ。

俺がこの世界で目指したのは『最強』になることである。

単純明快で良いだろう?

そのためには王も神も必要はない。

最強の前に善も悪も、関係ない。

 

とはいえ、全て力で奪い取ろうなど脳筋思考全開というわけではない。

このゲームは武器で戦うだけではなく、交渉という名の舌戦も行われれる。

しかし、フィールドではオートバトル機能はあるけれど、舌戦は殆どプレイヤーのリアルスキルが求められるものであるため、舌戦に持ち込むプレイヤーはごく一部である。

 

攻略を見れば良いって?このゲームを舐めてはいけない。

主人公の性格やゲームの進め方により、相手が異なりさらに内容も異なるため、他人の情報など役に立たないのである。自由の弊害というやつだろう。鬼畜なゲームだが、そこがまたいい。

 

こうして、気が付けばどっぷりとゲームにハマっていたのだ。そうどっぷりと。

 

「……だが、な」

 

まさか、心だけではなく体までどっぷりハマることになるだなんて、誰が想像したであろうか。

ぽつりと呟いた声は、俺のとは違う艶やかな低音だ。しかしその声が紡ぐ言葉は紛れもなく俺のそれである。

 

「これは、まさか」

 

昨今流行りに流行っている“転生”とか“異世界トリップ”というヤツだろうか。

夜な夜なお世話になっている小説サイトにもよく投稿されており、愛読しているものも多いため、直ぐにピンときた。

眼前に広がる“国”は、俺が何十時間も掛けて創り上げた地形そのものである。

某無人島暮らしゲームの如く、このゲームもまた国自体のレイアウトを自由自在に変えられるので、ついつい創り込んでしまった。

寝不足で死にそうになったが、上手くできたことに感激にしてついついSNSにあげた所、盛大にバズったくらいの出来栄えなのである。その国が目の前にあるのだ。気付かないわけがない。

 

いや待てもしかしてこれは……。

ただいつものように寝落ちて、ただいつもよりリアルな夢を見ているだけなのかもしれない。だとすれば、この状況を夢と思うよりもまず転生云々が浮かんでしまった俺はもう末期なのだろう。

 

 

 

「やあっと見つけた―――!!」

 

 

 

そんなことを考えていると、ふと影が差し込んだ。

何だと思う間もなく、聞き慣れない甲高い声に、突然目の前に現れた“金色”に、俺は思わず目を見開いたのである。

 

「もうっ! アタシの許可なく出歩くなんて、何様のつもり!?」

 

「……何故出歩くのにお前の許可がいるんだ」

 

「当然でしょ。アンタは、アタシの婚約者(モノ)なんだから。

こんなところフラフラしている暇があったら、アタシの機嫌でも取りなさいよ」

 

「待て。いつ俺がお前のものになった?」

 

「っ!? そ、……そんなのっ」

 

この1ヶ月間このキャラになりきってプレイしていたのだ。

自然と口調が変わり高圧的な物言いに切り替わる。

 

だがおかしい。このキャラは見たことがない。

金色の髪に澄んだ赤い瞳。その性格を表すように釣り目がちだが、それがまた彼女の雰囲気に良く似合っている。

所々に金をあしらった白いドレスは、そのボディラインをくっきりと浮かび上がらせていた。

たわわな胸とは逆に女性らしく縊れた腰。よくよく見れば臍の形までわかりそうな程に薄いドレスである。

現実の俺であるならば股間でも抑えながらけしからんもっとやれ状態であっただろう。

しかし、今の俺は“おれのかんがえたさいきょうのいけめん”なのだ。そんな醜態を曝すわけにはいかない。

 

腕を組んで女の顔を見下げると、ぱっと頬に赤を散らした女は視線を泳がせた後にきっと俺を睨み上げた。

 

「アンタ、このアタシにあんなコトして責任取らないつもり!?」

 

「あんなコト……?」

 

「はああ!? アンタもしかして忘れたんじゃないでしょうね!!」

 

「……記憶にないな」

 

「っ!! ふ、ふざけ……ないでよ」

 

そもそも俺はこの女を知らない。

存在自体記憶にないのにナニをしようというのだろうか。冤罪だめ絶対。

いくら罪作りなほどに美しい女であったとしても、実際に罪を作るのは良くないと思う。

そうして女の顔を見ると、丸く目を見開いた後ふるふると体を震わせ始めた。

その仕草に、女性経験が無いに等しい俺の背中に嫌な汗が流れる。

 

ぽろり、と滑らかな頬に透明な雫が伝った。

 

「う……」

 

嗚咽が、女の唇から零れ始める。

不味いと脳が思う前に、俺の体は動いていたのだ。

 

レア度も入手難易度も極まっている防具の外套が、俺の動きに合わせてふわりと揺れる。

ノリで作った黒い手袋をはめた手でその頬に触れると、女は再びその赤い瞳を見開いた。

 

透明な膜が張られた瑞々しい瞳は、この世のものとは思えないほどに美しい。

現実の俺であったならば即落ち確定だっただろう。だが、このキャラの目を通して見ることで心を乱されることはなかった。

 

「……なによ。アンタ……なんなのよ。

アタシに、アタシだけに恥かかせようっていうの」

 

先ほどの剣幕を忘れたようにぼそぼそと呟いた女の言葉を、残念ながら俺は何一つ理解することは出来なかったのである。

 

 

 

―続く―




ざっくりとした主人公視点でした。
次はこの“女”の視点を書くつもりなので主人公のことや、女との関係、そして主人公の国のことなどが明かされる予定です。
何気にこのような小説を書くのは初なので、お見苦しい点が多々あるかもです。
何かありましたらスナック感覚でコメントを頂けると励みにもなります!
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