厨二王になったらハーレムができました   作:片翼

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後に“永久なる王(エターナル・キング)”として語り継がれるその男の名は、アーテル。
人間が覚醒を迎える時期(ししゅんき)に名付けられた“2つ名”と“HN”は、今も尚あらゆる意味で健在であった。
かっこいいHNを探そうとネット検索し、厨二語彙集なるものから選び抜いたその名の意味は“(アーテル)”。歴史深くミステリアスな響きが美しいラテン語である。
名付け親と同じ病気に罹患している人間ならば、そのノリが理解出来るだろう。
そしてその病気を見事克服した人間ならば、この後に待ち受ける“報い”の苦しみがどれほどのものかを理解することが出来るだろう。もしくは、過去の自分を彷彿とさせ、蘇る過去(いたみ)に頭を抱えることになるかもしれない。

気を付けて欲しい。
この物語の主人公は紛れもなく“厨二病”患者である。
彼の者の言動によって精神的苦痛が生じても、こちらは責任を取ることが出来ない。
何故ならばこれを書き記すこと自体が、諸刃の剣となっているのだから。

そして、人々は彼の物語をこう呼ぶ。
“黒”の歴史書。通称―――



黒歴史 ( アーテル・ヒストリア )

 

その国は、人類が初めて統一した国となった。

 

まだ神と人間が共存し、時には敵対していた時代のことである。

人間は神の力を借りながら、文明を開化させていた。

段々と豊かになっていく暮らしの中で、人間たちは争い奪うことを憶えた。

そうして、それぞれの国で生きていた人間たちは、領土や金、食料を求めて他国へと侵略を開始する。

それは人間だけの戦ではなかった。自らが加護する国を荒らされた神の逆鱗に触れたのだ。

 

人間が始めた争いは、神々をも巻き込み、広がって行った。

彼らはこの時代をこう呼ぶ―――暗黒の時代と。

 

だが時代を覆った暗黒は1人の英雄を呼んだ。

荒れ狂う時代(あんこく)を切り開いたのは“たった1人の男”であった。

 

その者は、智を以て智を下し、武を以て武を破壊した。

慈悲無きその鉄槌は、人間のみならず神をも打ち砕いたのだ。

 

やがて全てがその男に膝を付いた時、その時代は終わりを告げたのである。

 

 

男は神と人間に命じ数多の国を1つに纏め、徹底的に整えた。

そうして、彼好みに創り上げられた国は世界で一番美しい国として語り継がれることになる。

 

怒り猛り、いがみ合っていた神々はこぞって男に永久の加護と祝福を与えた。

憎み合い、殺し合っていた民たちはこぞって男に永遠の忠誠と従属を誓った。

 

それは淡い花が舞い散る、春の日であった。

漸く玉座に腰を下ろした男は、唯一無二の王となる。

 

「ああ、なんて……アタシ好みの男なのかしら」

 

それは金星が撃ち落された瞬間であったことを、この時はまだ誰も知る由もなかったのだ。

 

「ふふっ、素敵だわ。

アタシの宇宙(そら)に輝く銀河のような髪に、アタシの宝石(コレクション)に似た瞳。

欲しいわ。アタシ、アレが欲しい。これまでの男と違って退屈しなさそうなんですもの」

 

謳うように、瞳を輝かせて呟いた少女は人間ではない。

天空の女神であり、金星を、美を、戦いを司る貴き女神の1柱であった。

強い力を持つ女神であるが、その性格は苛烈の一言に限る。

気に入ったものは必ず手に入れなければ気が済まない反面、飽きたり興を削がれればあっさりと殺されるのだ。その惨たらしい死に様に、人間たちは恐れ戦いていた。

 

「うふふふ。楽しみだわ。

アタシの美しさに酔いしれるアレの顔は、それは美しいのでしょうね」

 

色付いた唇が熱い吐息を吐く。

自分の美しさに屈服する男を想像すると、体に熱が走り疼いた。

白い肌に熱が差していくのを感じ、眉を下げた女神は堪らずといった様子で服を脱ぎ捨てたのであった。

 

この女神は奔放そのものである。

あっけらかんとした溌剌さは彼女が司る豊穣そのものであるが、気に入れば妻帯者であろうがなんだろうが自分の閨へと引き摺り込む悪癖があった。

 

所詮男など自分が飽きるまでの玩具に過ぎない。だから手っ取り早くまず体を堕としてしまえば良いのだ。男の性とは愚かなもので、己の体で魅了してしまえば決して逆らわない。むしろ彼女が何も言わずとも、勝手に全てを捨てて彼女の前に犬のように跪く。愛と美の象徴とも呼べる彼女にとって、そんなことは朝飯前のことであった。

 

「さあて。さっさとあの王サマを虜にしちゃいましょ。

そうすればこの国も、お金も宝石も、ぜーんぶアタシへの貢ものとなるわ」

 

肌が透けて見えるほどに薄いネグリジェを白い肌に纏うと、弾むような足取りでその女は歩き出した。

 

 

 

 

 

時刻は深夜。人間が眠り神が動き出す時間である。

整備された家々を灯篭の明かりが薄ぼんやりと照らしていた。

数多の国々に顔を出していた女神であるが、この国の美しさを特に気に入っていた。

その証拠に、彼女は目的地に直接降り立つのではなく、敢えて国の入り口から入って行ったのである。

彼女の姿をみとめた門番たちは、ただ黙し頭を垂れるのみだ。

“この国の民には決して手を出さないこと”を誓わされている女神は、兵士たちを一瞥して通り過ぎる。

 

彼の者がいるであろう社まで真直ぐに伸びる広い道へと出る。

道の両端には敷き詰められた砂利と、植えられた低木が綺麗な花を咲かせていた。

 

ずうっと歩いていくと、眼前に鮮やかな朱色が現れる。

大鳥居というらしいそれは、まるで俗世から王を切り離すようにそこに佇んでいた。

女神もまた神に名を連ねるものであるので、中へと入ることは容易いこと。

薄いレースの裾を揺らし女神は鳥居をくぐった。

 

此処まで国の姿を明記すれば、大体想像がついているだろう。

この国は“神国”日本をモチーフとしたつくりとなっており、実に時代にそぐわない装いとなっている。

これは、王(の中の人間)が特に力を入れたものだが、この辺りについてはどうせ後に本人が熱弁を振るうだろうから、此処では省略させてもらおう。

 

「……奴は、こっちね」

 

細い気配を女神の力で探知すると、いそいそとそちらへと向かう。

広い造りをした社の中心部に身を滑らせると、女神はぴたりと足を止めた。

 

「え、うそ……。いない……?」

 

確かに気配を感じた部屋には、その姿はない。

これまた広い畳の間には御簾が下ろされ、その奥に几帳や屏風がある。如何にも平安時代を彷彿とさせるつくりとなっていた。恐ろしいほどに景観が整えられているが、時代は全く無視をしているらしい。

肘置き“脇息”や漆の文机の真ん中にふかふかとした座布団が置かれている。

 

しんと静まり返った室内に、女神は眉を顰めた。

折角こうして自分が訪れたというのにも関わらず出迎えもない。それどころか不在などとは、なんという不敬だろうと、勝手に押し掛けたにも関わらず彼女のボルテージは上がっていく一方だ。

 

「腹立つわねえ、消し去ってあげましょうか」

 

苛立ちを抑えもせず唇を噛み締めた女神は、唸るようにそう呟いた。

 

「……こんな夜更けに、誰かと思えば。納得だな」

 

ため息交じりの声が1つ、彼女しかいない筈の部屋に落ちた。

静かな夜を思わせる声に女神は目を吊り上げて振り返る。

だがその勢いも男の姿を映した途端に萎んだ。

そこには、女神とは真逆の“黒”の気を纏う王があった。

まるで覗き込む全てのものを呑み込む、深淵の如き恐怖。

アーテルという男が持つ言い知れぬ威圧感に気圧される自分を叱咤すると、女神は再び彼を睨み付け声を上げる。

 

 

「アンタねえ!!」

 

「夜更けだと言っただろう。

少しは静かに話せ」

 

部屋の入口のすぐ傍に凭れたそれは、腕を組み静かに女神を見据えた。

その鋭い眼差しに一瞬息を詰まらせた女神は、詰め寄ろうとしていた言葉を飲み込む。

他人の言葉になど耳を貸すことをしらない女神が、男の言葉を飲み込んだのだ。当の彼女は全く自覚はなかったのだが。

 

「それで、何の用だ」

 

黒の着流しに鮮やかな女物の打掛を羽織った男、アーテルはそう言って女神を見下げた。

じりりと行燈の火が揺れて、部屋の陰影をぼやかせる。

 

「こんな夜更けに、女が訪ねて来る意味がわからない程初心なのかしら?」

 

「……お前は、女神だろう」

 

「ふふ。“女”神だからよ。

アタシのようなイイ女の相手させてあげるって言ってんの。

これ以上ない光栄でしょう?」

 

女神は男の着流しの上から胸をなぞると、顔を見上げた。

煌びやかな美貌が、妖しい色を帯びていく。

 

「……」

 

「ねえ、」

 

つま先を伸ばして、顔を近づける。

高身長に“設定”されたアーテルの顔には到底届くことはなかったが、男のツボを心得ていると言わんばかりの仕草であった。

アーテルはため息を落とすと、顎でとある方を指し示す。

それがどういう意味かを理解している女神は、やったとばかりに顔を綻ばせた。

 

 

 

―続く?―




如何でしたでしょうか!
第三者から見るとこんな感じです。
次は主人公視点となりますので温度差がはっきりするかと思います。

次の更新は…早くて1週間後ぐらいですああ引き籠りたい……。
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