マンガ版GXしか知らない遊戯王プレイヤーが、アニメ版GX世界に跳ばされた話。なお使えるカードはロボトミー縛りの模様 作:黒月天星
という訳で、次回は明後日投稿になります。……毎日は、ちょっとしんどいです。
今回もあとがきで幻想体の紹介と印象を乗せておきますので宜しければどうぞ!
十代対万丈目。この二人の戦いは原作において二度行われている。
一度目は時期こそ不明だが授業中の実技として。二度目は確か、留学していたカイザーこと丸藤亮が帰還したことを祝ったデュエル大会の決勝戦においてだ。
しかし、今回のこれはどちらのケースにも当てはまらない。となるとこれは原作で描写されなかった戦いか? しかし時期的にどうもちぐはぐなような。
まあこれが何度目の戦いかは分からないが、原作キャラ同士の戦いとなれば見ごたえがあることは間違いない。デッキの内容を見れば多少の推測は出来るかもしれないし、自分の実技テストまでまだ時間があるようだ。それまでじっくりと見させてもらおう。
俺が観客席に移動すると、見れば近くに翔や三沢の姿があった。あちらもまだテストまで間があるようだな。俺はそんなことを気楽に考えながら、二人のデュエルを見守ることにした。
「どうなっているんだ?」
俺はついそんな事を呟く。何故なら、二人のデュエルは俺の想像していたものと大分違う展開を見せていたからだ。
「万丈目がVWXYZを使うなんて聞いたことないぞ。『光と闇の竜』はどうしたんだ?」
現在万丈目のフィールド上に居るのは、出すのに専用の構築が必要とされる強力モンスターVWXYZ。五体のモンスターを合体させて召喚するという中々にロマンあふれるモンスターだ。俺には向かないけどな。
しかし原作では、万丈目の使うデッキはドラゴン主体のデッキだった。機械族とのシナジーもなさそうだし、いくら何でもデッキが違いすぎる。
万丈目はVWXYZにより十代の場にプレッシャーをかけていくが、十代はその猛攻を巧みに凌いでいく。そして、
「俺は手札二枚をコストに『進化する翼』を使用。『進化する翼』によりハネクリボーが進化」
おっ! さっき購買で買ったパックのカードか。さっそくデッキに投入していたらしい。
進化したハネクリボーの効果によりVWXYZは破壊。その攻撃力分のダメージを与え、返しのターンでがら空きになった万丈目にE・HEROフェザーマンのダイレクトアタックが決まり、見事十代の勝利となった。
戦いの流れは大きく異なっていたが、十代が勝ったという事はこれは十代対万丈目戦の一戦目という事になるのだろうか?
その後また予想外なことに、十代のラーイエローに昇格というアナウンスが流れた。おいおいどうなっているんだ!? またもや話が変わってきたぞ!
周りは十代の昇格という発表に賛辞の声を送っているが、俺は内心頭の中で考えがグルグルと渦巻いていた。
……まさかこれがディーの言っていた、俺という異分子が周りに影響を与えた結果と言うんじゃないだろうな?
ただでさえどんどん話の展開が変わってきているというのに、これ以上変わったら本気で先の予想がつかなくなる。ディーとしては予測がつかなくて面白がるかも知れないが、俺としてはある程度は原作知識を活かして進めたいところだ。
そうやって悶々としていると、次の対戦グループが発表される。そこで自分の名前が挙がったので、頭を振って悩みをひとまずあとにおく。今は目の前の一戦に集中しなくては。だというのに、
久城遊児 対 丸藤翔
こんな対戦カードが決まった。何でお前なんだよ翔っ!?
「え~っと。さっきぶりだね久城君」
「……ああ。そうだな」
ますます頭が痛い状況になってきたが、悩む間もなく対戦フィールドに移動することに。反対側には翔がデュエルディスクを装着して構えている。
隣のフィールドではまた別の組がデュエルを行っているようで、先ほどから立体映像が激しく動き回っているな。
「頑張れよ~っ! 翔! 遊児!」
「アニキィ……こういう時は僕だけを応援してくださいっすよ」
観客席に戻った十代からのエールに、翔はどこかガックリした感じで返す。まあ無理もないか。翔からしてみれば、俺は実技テストのライバルだ。自分ではなくライバルを応援されては立つ瀬がないだろう。
しかしどうしたものか。本来翔が誰と戦うはずだったかは知らないが、間違いなく俺ではない。つまり俺という異分子がもうこんな所にまで影響を与えている訳だ。そして本来の流れで翔が勝つのか負けるのかも分からない。まあ原作キャラだし勝っていた可能性の方が高いが。
だけどこれは月一テストだ。この結果次第で俺も翔も多少はこれからに影響が出る。仮に本来翔が勝つ流れだった場合、俺が勝ったらその流れを壊すことになる。ただでさえ今俺の知っている話からずれてきているのに、これ以上変わったらどうなることか。
俺はどうすれば良い? 勝つべきか? 負けるべきなのか? そう思い悩んでいると、
「同じレッド寮だから当たるかもって思ってたけど、本当に当たっちゃうなんて。……でも、アニキはラーイエローに昇格する。僕だって負けてられないんだ。だから、僕も本気で行くよっ!」
翔はどこか覚悟を決めた顔でデュエルディスクを展開し、俺に向かって闘志を燃やす。……そうか。そうだよな。俺はこんな時に何を考えていたんだか。
俺はバカだ。勝つべきか負けるべきかだって? そんなもの勝てる保証もないのに考えるべきことじゃない。戦う前からそんな事を考えるだなんて傲慢にもほどがあるって話だ。
流れだってこの時点じゃよく分からない。俺が関わることでなお読めなくなるかもしれない。それでも、目の前の覚悟を決めた相手に対してこんな煮え切らない態度じゃ失礼ってものだ。ディーが見たらさぞ今の俺を笑うだろう。だから、
「ああ良いとも。俺もこんな所で負けるつもりは無いんでね。全力でやり合おうぜっ!」
俺も戦意を漲らせながらデュエルディスクを展開する。常時こんなテンションは得意じゃないのだけど、相手がそれだけの本気で来るのならそれに合わせないとな。この前のディーとの勝負もこんな感じだったし。
「では各自構えて……試験開始!!」
審判役の先生が定位置に付き、実技試験開始を宣言する。では、こちらもお決まりの言葉で始めよう。
「「デュエル!!」」
遊児 LP4000
翔 LP4000
「先手は俺がもらうぞ。……ドロー!」
引いた瞬間、慣れ親しんだカタカタと歯の鳴る音が聞こえてきた。……いきなりか。じゃあ、頼むぜ罪善さん!
「俺は『幻想体 たった一つの罪と何百もの善』を守備表示で召喚だ」
俺の場に、どこか神々しくも恐ろしげな頭蓋骨が出現する。……
たった一つの罪と何百もの善 星1 ATK300 DEF200 天使族 光
「ひぇ~っ!? が、骸骨っ!?」
「
出現した罪善さんを見て、観客席がざわつき始める。やはり珍しいらしい。まあ珍しいだけなら大丈夫だとディーは言っていたが……大丈夫だよな?
クリクリ~!
「うお~すっげ~っ! どうした相棒? あのカードに何か感じるのか?」
何かハネクリボーが反応している。うちの罪善さんも精霊だからな。その辺りで感じたことがあるのかもしれない。十代に感づかれたらややこしくなりそうだな。
「長い名前なんで、俺は罪善さんと呼んでいるよ。罪善さんの効果発動! このカードは1ターンに1度、自分の手札か自分フィールドのモンスター、どちらかの数×300LPを回復できる。俺は手札の数を選択する」
罪善さんから光が溢れだし、俺の身体を包み込んでLPを回復させる。ありがとう罪善さん。
遊児 LP4000→5500
「いきなりLPが5500に!」
「次だ。俺は手札から魔法カード『幻想体脱走』を発動! LP1000をコストに、自分フィールドの幻想体を1体選択し、そのカードより二つまでレベルの高い幻想体をデッキから攻撃表示で特殊召喚する。俺はデッキから『幻想体 三鳥 罰鳥』を攻撃表示で特殊召喚!」
遊児 LP5500→4500
俺がデッキから呼び出したのは、手に乗るサイズの白い小鳥。だが何故か腹部だけ、純白ではなく血のような赤い模様をしている。
罰鳥 星2 ATK100 DEF100 鳥獣族 風
「可愛い~!」
罰鳥が出るなり観客の女性陣からそんな声が響く。……見た目によらず結構能力エグイよコイツ。
「えっ!? 骸骨の次は小鳥? しかも攻撃力100を攻撃表示って」
「ちなみに『幻想体脱走』を使ったターンは相手に戦闘ダメージを与えられない。まあ1ターン目だから関係はないけどな。そして罰鳥の効果発動! 場に出た時、クリフォトカウンターを4つ乗せる」
罰鳥 CC4
「俺はカードを2枚伏せてターンエンドだ。そして罰鳥は効果により、自分のターンエンドごとにクリフォトカウンターを1つ失う」
罰鳥 CC4→CC3
「アッハッハ! 何だアレは! たかだか攻撃力100のモンスターを攻撃表示で場に出すなんて、流石はオシリスレッド。落ちこぼれらしい戦術だなっ!」
「そうだそうだ! 雑魚モンスターはさっさと引っ込めっ!」
観客席からヤジが飛んでくる。……あれは青色の制服だからオベリスクブルーの生徒だな。カードを攻撃力だけでしか見ないとは、勉強不足という奴じゃないか?
しかしそんなのがエリートとは、マンガでは明日香や万丈目、カイザーがそうだったからレベルが高いと思っていたが、エリートと言ってもピンキリだったかな?
「待たせたな丸藤君。そっちのターンだ。……周りのヤジは気にするなよ! 俺は今の手札からこの手が良いと判断してコイツを出した。油断しないことだ」
「う、うん。僕のターン。ドロー! よし! 僕は手札から魔法カード『融合』を発動! 僕は手札のスチームロイドとジャイロイドを融合して『スチームジャイロイド』を攻撃表示で融合召喚だ!」
フィールドに現れたのは、大きなプロペラの付いた機関車のようなモンスター。……やるな。いきなり攻めに来たか!
スチームジャイロイド ATK2200
「さらに僕は手札から『ジェット・ロイド』を攻撃表示で召喚! バトルだ! ジェット・ロイドでたった一つの罪と何百もの善に攻撃!」
ジェット・ロイド ATK1200
続いてフィールドに現れたのは、赤い戦闘機のようなモンスター。そしてそのモンスターのジェットから吹き出す熱気が罪善さんに襲い掛かる。……だけど防御用のカードくらい用意してあるぞ!
「リバースカードオープン! 『幻想体 3月27日のシェルター』を発動。効果により1ターンに1度、自分のモンスター1体を選択。俺は罪善さんを選択する!」
突如として現れた避難シェルターが罪善さんを覆い、ジェット・ロイドの攻撃を弾き返す。
「効果により選択したモンスターはこのターン戦闘で破壊されず、受ける戦闘ダメージも0。そしてシェルター以外の効果を受けない。……まあ攻撃できないデメリットがあるけど、それも相手ターンなら関係はないな」
「な、なら罰鳥の方だ。スチームジャイロイドで罰鳥を攻撃! 『ハリケーン・スモーク』!」
技名と共にスチームジャイロイドが大量の煙を噴出して近づき、死角から罰鳥に強襲をかける。
なるほど。罪善さんを破壊できずダメージも与えられないならこっちを狙うのは分かる。だけどな……
「罰鳥が攻撃を受ける時、俺への戦闘ダメージは0となる。そして、自分を攻撃したモンスターに罰を与える!」
スチームジャイロイドの攻撃は罰鳥に直撃した。しかしその瞬間、罰鳥の腹部の赤い模様が体中に広がり、
それはくちばしだった。自らの身体を裂いてまで広がる大きな大きなくちばし。そのくちばしは瞬く間にスチームジャイロイドよりも大きくなり、一口でかみ砕くとそのままもろとも消滅してしまう。
「えっ……あっ!?」
その光景に翔は驚きを隠せず、観客席も少しショッキングだったかヤジが収まる。俺も事前にディーから聞いてなかったら固まってたかもな。あと女性陣には少し気の毒だったかもしれない。
「罰鳥は自分が攻撃された時、そのモンスターを破壊する。触るな危険って奴だ。……言ったろ?
さあ。まだまだ勝負はこれからだぜ。
てなわけで、実技テストの相手は翔君でした。
ちょっとこの時期にしては翔君が前向きというか積極的になっていますが、それもまた遊児が現れたことによる影響の一つだと思っていただければ。自分で思っている以上に人一人の影響というのは大きいのです。
以下、幻想体の説明と印象です。
『幻想体 たった一つの罪と何百もの善』
星1 ATK300 DEF200 天使族 光
効果
①1ターンに1度発動出来る。自身のフィールド上のカードの数×300のLPを回復する。
②1ターンに1度発動出来る。自分の手札の枚数×300のLPを回復する。
③このカードの①、②の効果は1ターンにどちらか1つしか使用できない。
④このカードが戦闘を行ったバトルフェイズ終了時、このカードにPEカウンターを1個乗せる。
⑤??????(??が出ている時のみ使用可能)
みんな大好き罪善さん! 描写自体は作中で語られているのに、ちゃんと召喚されたのは今回が初。
必ず最初に選ぶことになる幻想体。凄い名前と見た目のくせして善の塊。お世話を失敗してもほとんど怒らないので新人の教育には最適! 罪善イズゴッド!
⑤の効果は遊児本人も不明。ただ妙な空欄があるぐらいの認識。??が最悪顕現した場合の最終兵器。やっぱり罪善イズゴッド!
『幻想体 三鳥 罰鳥』
星2 ATK100 DEF100 鳥獣族 風
効果
①このカードの召喚、特殊召喚、リバース時、このカードにクリフォトカウンターを4個乗せる。
②このカードが戦闘を行ったバトルフェイズ終了時、このカードにPEカウンターを2個乗せる。
③このカードは直接攻撃が出来る。
④このカードが攻撃を受けた時、こちらが受けるダメージは0になる。そのダメージステップ終了時、戦闘を行った相手モンスターを破壊する。
⑤自分のターン終了時、カードに乗っているクリフォトカウンターを1つ取り除く。
⑥自分のターン終了時、このカードにクリフォトカウンターが乗っていない場合、フィールド上の最も攻撃力の高いモンスターを破壊する。その後このカードにクリフォトカウンターを4個乗せる。
三鳥は独自名称。可愛い小鳥。脱走常習犯。職員がパニックを起こすと、どこからともなくやってきてつつきまわす。
パニックは収まるけれど、普通に肉体ダメージも入るので防具なしだと割と大怪我。下手に攻撃しようものならほぼ即死級の反撃をしてくる始末。諦めてつつかれよう。
『幻想体 3月27日のシェルター』
永続罠
効果
①1ターンに1度発動可能。自分フィールド上のモンスターを1体選択する。そのモンスターはエンドフェイズまで攻撃宣言が行えず、戦闘で破壊されず、受ける戦闘ダメージが0になり、このカード以外の効果を受けない。
②効果を発動したターンのエンドフェイズ時、自分フィールド上のモンスターを1体選択し、クリフォトカウンターを全て取り除く。又は2000ダメージを受ける。
鉄壁のシェルター。「地球で一番安全な場所」が売り文句。ただし長く使っていると、他の幻想体のクリフォトカウンターが減っていく。外を凄まじく危険な場所に変えることで、相対的にシェルターを「地球で一番安全な場所」にするというトンデモ発想! 使いすぎに注意。