マンガ版GXしか知らない遊戯王プレイヤーが、アニメ版GX世界に跳ばされた話。なお使えるカードはロボトミー縛りの模様 作:黒月天星
闇に集う者達と一人の代理
『時……ここに満ちた』
暗い洞窟内に、重々しい声が響き渡る。
そこに集うのは
そのくせ者達に曲がりなりにも命を下すこの声の主からもまた、ここに居ないとは言え声だけで分かる圧を感じさせる。
『一人足らぬようだが……まあ良かろう。お前達の力が我に約束し、運命のカードを運ぶ。先陣を切る者は誰か?』
「私が行こう」
『……ダークネスか』
声に真っ先に応えたのは、黒いコートに同色の仮面を着けた男。片腕に着けたデュエルディスクを掲げ、表情こそ仮面で隠されているものの、その闘志は隠されることなく周囲に広まっていく。
『よかろう。だがその前に……
いよいよ出立という所で、姿を見せないその声が響くと、洞窟内の一部にパッと光がどこからともなく浴びせられる。
そこに居たのは、ここに集った者達とは別のもう一人の何者か。黒き外套と帽子に、鳥の嘴を模したペストマスクを被った男が少しせりあがった岩場に腰掛けていた。
『何者だ?』
『……これは失礼した。先ほどからここに居たのだが、誰も触れないので一足先に話がいっているものとばかり。……では、自己紹介をさせていただこう』
男はサッと岩場から降りると、軽く身なりを正して優雅に一礼する。
『俺の名はバランサー。ここに居ない
◆◇◆◇◆◇◆◇
だあぁぁっ!? 何でこんなことになったかなぁもうっ!?
バランサー……改め俺久城遊児は、内心顔を覆ってそこらを転げまわりたい気持ちでいっぱいだった。
目の前に居る奴らが皆してこちらを見つめている。どいつもこいつも明らかに強そう……というか濃い面子ばかりだ。コードネームアムナエルこと大徳寺先生の
こんな奴らとこれから顔を突き合わせていかなきゃいけないかと思うと全く気が重い。と言ってもそれもこれも、俺がつい気の迷いでこんなことを引き受けちゃったことが原因なんだけどな
俺は数日前の大徳寺先生との話を思い出していた。
あの時、俺は特待生寮の地下にて大徳寺先生から話を聞いていた。……あの廃寮ときたら以前来た場所以外にも隠し部屋やら隠し通路やらが幾つもあって、大徳寺先生も全てを把握している訳ではないらしい。そこはそんな隠し部屋の一つだった。
そこで大徳寺先生から語られたのは、学園の地下に存在するという三幻魔のカードや、それを狙うセブンスターズという者達の事だった。……まあ先生自身もその一員らしいが。
しかし三幻魔とはまた厄介なものが出てきたもんだ。実際に元の世界でもあったが、あれは専用構築をしないと扱いが難しいものだった。
ただし一度出たらどれもかなりのパワーを誇り、特にその三枚を素材とする融合モンスター『混沌幻魔アーミタイル』は、攻撃力が自分のターンだけとはいえ10000まで跳ね上がるという圧倒的ロマン性能で人気があった。
姿も明らかに無印の三幻神を意識していたし、出るとしたら重要な立ち位置だとは思っていたがこんな所で出るとは。おまけに世に出るだけで世界に影響を与えるレベルとか、ほんとに神のカードに近いものになっている。
「つまり、大徳寺先生はその自分を含めたセブンスターズに対抗させるために十代達にあんな真似をしていたと? それはいくらなんでも」
「……許されるはずのないことだということは分かっている。だが、セブンスターズは私を含めて皆闇のデュエルに精通している。そのために多少危険であっても、早急に十代や君を闇のデュエルに耐えられるように育てる必要があった。それに……問題はセブンスターズだけではない。その裏に控えている者が問題なのだ」
いつものにゃも語尾に付けずに真面目な口調で続ける大徳寺先生。それによると、セブンスターズを操っている者の名は影丸。なんとこの学園の理事長だという。
その影丸理事長はもう百歳を超えるほどの高齢で、三幻魔の力を使って疑似不老不死になろうと目論んでいるらしい。だがそれには三幻魔のカードと大量のエネルギー……それも特にデュエリストの闘志が必要になる。
「この度のセブンスターズの件も、影丸理事長からすれば
そもそも三幻魔のカードを封じている七精門とかいう封印は、デュエルで勝たなくても理事長は緊急用の合鍵を持っていて最悪自力でこじ開けられるという。あとは溜まったデュエリストの闘志を、直接デュエルで三幻魔を使用することで注ぎ込めば完全に覚醒する。
つまり三幻魔を守るためには、セブンスターズの迎撃及び理事長を何とかする必要がある。だが、
「……私は、正直迷ってしまったのだ。今でこそ影丸理事長は三幻魔を解き放つという悪行を成そうとしてはいるが、それは結局自らの延命のため。生きたいと願うこと自体は悪ではない。……特に自らの身体を捨ててでも生き延びようとした私がそれを咎める資格はない。それに、影丸理事長には研究に協力してもらった恩もある」
「だからって放っておくつもりですか?」
「いいやっ! ……だからこそ、私は高いデュエルの腕と精霊の力を併せ持った者を探していた。理事長を、そして私を止めてくれる者を」
要するに大徳寺先生は、恩義と倫理の板挟みになっていたわけだ。……ということであれば、
「大徳寺先生。……失礼しますっ!」
「何を……あたっ!?」
俺は先に断りを入れて、とりあえず大徳寺先生の頭にチョップを叩き込む。先生に暴力を振るうのはいただけないが、それくらいの事をしたということで甘んじて受けてほしい。
頭を押さえながら驚いてぼ~っとしている大徳寺先生に向けて、俺はふんっと鼻を鳴らす。
「ひとまずこれで
三幻魔に復活でもされたら世界がヤバい。そうなったらこの学園で卒業どころの話ではない。十代が居ればおそらく最終的に丸く収まるとは思うが、それにしたって俺がここに居る以上どんなズレが出てもおかしくない。ならば、
「そんな物騒なことは早めに何とかするに限りますからね。こちらとしても出来る限り協力しますとも。まずは……情報収集からですね」
こうなったらやったろうじゃないの。直接どうにかは無理にしても、ギリギリ安全圏から皆をサポートして三幻魔を何とかしようじゃないか。目指せ! 影の立役者ってか!
……で、色々あって現在こうなった。
だってしょうがないだろっ!? 大徳寺先生の身体はとっくのとうにボロボロで、本人曰く余命はもう半年保つかどうか。おまけに全力でデュエルをすればさらに寿命が縮むというどっかの元世界チャンプみたいな状態だというのだから性質が悪い。
本人は既に覚悟完了しているみたいだが、俺個人としては長生きしてほしい。一応この学園に来て最初に会った人だし、なんだかんだ付き合いのある先生だしな。
そんな大徳寺先生だが、困ったことにセブンスターズとして既にメンバー入りしている。今さら辞めますというのは無理っぽいし、そんなことをすれば怪しまれる。
かと言って闇のデュエルをする奴らの近くに居たら、それこそデュエルしなくても寿命が縮みかねない。ということで俺が選んだのがこの代理作戦だった訳だが……いや無理があるだろっ! あの時の俺を殴ってでも止めたい。だけどあのまま放っておくのもなぁ。
それを知ったディーなんかやけにノリノリで、『良いねぇ面白くなってきた! じゃあこれはほんの差し入れさ。お気に入りの役者には応援なり花束なり渡すものだからね』とかなんとか言って、この服を渡してきたし。
以前カードで見た『ペスト医師』の服装らしく、着けているだけで軽い認識阻害とちょっとした闇への耐性が付くと言うが、イマイチディーのことだから不安なんだよな。
『アムナエルの代理だと? ……奴からはそんな話は聞かされておらぬが』
『あくまで一時的なものですから。アムナエルは体調が思わしくなく、自身の番に備えて養生するとの事。書状もこちらに預かっています』
俺はあくまで事も無げにそう言うと、懐から大徳寺先生の書いた手紙を取り出す。一応素の話し方だと即身元がバレる可能性もあるし、代理として認められるまでは誤魔化したいのでちょっと優雅系の謎多き人物って感じでキャラを作っているが……大丈夫かこれ? 妙な痛い奴だって思われてないよね?
声……多分理事長は少しの間沈黙する。他のセブンスターズの面々も押し黙ったままだ。どうやらこちらを見定めているらしいな。それから少しして、
『…………ふむ。ならば……ダークネス』
「心得た」
その言葉に、さっき最初に号令に応じた男がずいっと前に出る。あれっ!? この流れ……どうにも嫌な予感がするんだが。
『アムナエルの代理よ。バランサーと言ったな。代理と言うならば、ここでこのダークネスと戦いそれに値する力を見せるが良い。出来ぬというのであればここで闇に吞まれ、明日から始まる決戦の礎となるが良い』
げ~っ!? 噓だろっ!? 入団テストがあるなんて聞いてないぞ。ダークネスは無言でディスクを構えているし、他の奴らも明らかに観戦ムードだ。
いや、ほんとに何でこんなことになっちゃったかなぁもうっ!
如何だったでしょうか? 色々と説明不足な点がありますが、詳しい説明は少し先になります。次は話の流れ的にダークネス戦です。お楽しみに。
ちなみに現在のアンケートはこの話で終了となります。
次回は三日後投稿予定です。