マンガ版GXしか知らない遊戯王プレイヤーが、アニメ版GX世界に跳ばされた話。なお使えるカードはロボトミー縛りの模様   作:黒月天星

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 注意! 独自設定タグがかなり仕事します。

 今回は少し短めです。


入団試験 遊児対ダークネス その一

 あれよあれよと言う間に、俺とダークネスのデュエルの準備が整えられていく。

 

 洞窟内のやや広まった場所に移動すると、戦いやすいようにか壁伝いに照明がぽつぽつと灯る。……へぇ~。この洞窟そんな仕掛けまで有ったのか。

 

 以前墓守達の世界に行くはめになった遺跡の近く。そこにひっそりとあるこの洞窟。最初に大徳寺先生に教わった時はそんな馬鹿なと思ったが、見た目こそただの洞窟だけど色々仕掛けが施されているのは間違いないみたいだ。

 

 デュエルしやすいようにわざわざ他の奴らは場所を空けてくれる始末。皆して俺という新参者の実力を知りたいってか? ……正直そこまで強くないよ俺。幻想体達が強いだけなんだよ。カードパワー頼りだよ。

 

 しかしもうやるしかない。俺は静かに深呼吸をし、多少なりとも気持ちを落ち着けてデュエルディスクを構える。

 

 見たら反対側では対戦相手、ダークネスはとっくに準備万端だ。ディスクを構えたまま悠然と佇んでいる。……怖ぇ~。絶対修羅場の一つや二つ潜ってるよあの人……ん? あれは?

 

 一瞬ダークネスの胸元に、照明の光が反射して何か光った気がしたが……。

 

『ではこれより、ダークネスとバランサーの闇のデュエルを始める。この戦いに異議のある者は在るか?』

 

 おっといけない。今はこっちに集中だ。両者が準備が整ったと見たのか、声だけの影丸理事長が最終確認をとってきた。だが、それに誰も異議を唱えるものは居ない。……()()()()()()

 

「異議ありっ! ……一つ物申してもよろしいでしょうか?」

『何だ?』

「デュエル自体は大いに結構。これからそれなりに長い付き合いになる以上、互いの実力を知るためには必要でしょう。……だが()()()()()()ということであれば、俺はこの戦いに応じるつもりは毛頭ありませんね」

 

 デュエルとは楽しむためのものだ。ゲームで命のやり取りなんて冗談じゃないっ! と言うか正直怖い。逃げれるもんなら逃げたいね。しかしそれをこのまま言っても聞き入れてくれそうにないのがここに集った闇のデュエリストの方々。

 

 なので表向きの理由として、明日決戦なのに身体に負担のかかる闇のデュエルをしている場合じゃないとか、そもそも個人的に闇のデュエルは互いに辛いから嫌いだとか色々まくし立ててやった。……後半はただの愚痴になっていたが気にしないように。

 

 だがまあ結果として、何とか普通のデュエルという形に落ち着いた。……あまりに不甲斐ない内容であればそのまま闇に沈めるぞと釘を刺されたけどな。

 

 

 

 

『では改めて、これよりダークネスとバランサーのデュエルを行う』

「ああ。よろしく頼む」

 

 一応戦う前に挨拶をと思ったのだが、普通にスルーされてしまった。……まあ良いさ。ここまで来たらあとはもう、デッキ(仲間)を信じて挑むのみ。

 

 

「「デュエル!!」」

 

 

 遊児 LP4000

 ダークネス LP4000

 

「私が先攻だ。ドロー」

 

 さて。ダークネスはどんな手で来るか。コードネームのように闇属性主体とかかな?

 

「私は『真紅眼の(レッドアイズ)飛竜(ワイバーン)』を攻撃表示で召喚! カードを2枚伏せ、ターンエンドだ」

 

 真紅眼の飛竜 ATK1800

 

 ダークネスの場に、黒い甲殻を纏った細身の飛竜が立体映像(ソリッドビジョン)で出現する。

 

 なぬっ!? レッドアイズ? こりゃまた厄介な奴が来たな。

 

 原作無印で、主人公武藤遊戯の親友兼ライバルの城之内克也のエースモンスター『真紅眼の(レッドアイズ)黒竜(ブラックドラゴン)』を中心としたカテゴリであり、十年以上前のカードでありながら今でも時折サポート系カードが追加されるほどの根強い人気がある。

 

 特徴としてはとにかく種類が豊富で、どれを主軸に据えるかによって動きが全然変わるからデッキが読みづらい。こっちはどう動いたものか。

 

「では俺のターン。ドロー。俺は手札から『幻想体 死んだ蝶の葬儀』を攻撃表示で召喚。そして召喚時に効果でこのカードにクリフォトカウンターを2つ乗せる」

 

 死んだ蝶の葬儀 ATK1500 CC2

 

 葬儀さんは場に出たものの俺を見向きもしない。それもそのはず。あれはただの立体映像だ。

 

 葬儀さんに限らないが、カードの精霊の事はなるべく秘密にしておくよう事前に話し合い、幻想体の皆は潜入中は緊急時以外は出てこないように頼んである。セブンスターズの中に大徳寺先生以外にも精霊が見える奴が居ないとも限らないからな。

 

『……幻想体(アブノーマリティ)だと?』

「ほう。見たことのないカードだな」

 

 おっ! 表情までは分からないが、向こうも驚いているみたいだな。カテゴリだけでも知っているのとまったく知らないのでは情報量に大きな差がある。その点ではこっちが少し有利かね。

 

「死んだ蝶の葬儀の効果発動。1ターンに1度、相手フィールドの表側モンスター全ての攻撃力、守備力を500下げることが出来る」

 

 葬儀さんが抱えていた棺桶を開き、そこから大量の白い蝶が溢れ出て真紅眼の飛竜に纏わりつく。

 

 真紅眼の飛竜 ATK1800→1300 DEF1600→1100

 

「飛竜の攻撃力が!?」

「ではバトルだ。死んだ蝶の葬儀で、真紅眼の飛竜に攻撃!」

 

 葬儀さんはゆっくりと腕を伸ばして指を銃のように伸ばすと、そのまま見えない弾丸を放って飛竜を攻撃、破壊する。

 

 ダークネス LP4000→3800

 

 やるな。ダメージによる痛みはないとは言え衝撃ぐらいはある筈なのに、こいつまるで意にも介さない。どこ吹く風で立っている。

 

「戦闘を行ったことで死んだ蝶の葬儀の効果発動。バトルフェイズ終了時、このカードにPEカウンターを3個乗せる。そして俺もカードを2枚伏せてターンエンドだ。さらにエンドフェイズ時に、死んだ蝶の葬儀のクリフォトカウンターを1つ取り除く」

 

 死んだ蝶の葬儀 PE3 CC2→1

 

 ふぅ。最初は互いに様子見ってとこか。

 

 今のターンの攻防。ダークネスの伏せたカードがどちらもブラフだとはあまり思えない。おそらく奴は飛竜を()()()破壊させたと見た。

 

 飛竜は墓地に居ることで使える効果があるから、多少ダメージを受けても早めに墓地に送っておいたほうが良いと判断したんだろう。……まあそれに乗ってこっちも、早めに葬儀さんに戦闘を行わせてPEカウンターを乗せたわけだが。

 

 さて。問題は次のターンだ。ダークネスはどう動くか。

 

 

 

 

 遊児 LP4000 手札3 モンスター 死んだ蝶の葬儀 魔法・罠 伏せ2

 ダークネス LP3800 手札3 モンスター0 魔法・罠 伏せ2

 

「私のターン。ドロー! ……聴こえるぞ。我が手札から響く黒竜の咆哮が。私は手札から『黒竜の雛』を守備表示で召喚」

 

 黒竜の雛 DEF500

 

 どこか厨二臭いセリフと共に召喚されたのは一つの真っ赤な卵。そしてその卵が内側からピシピシと音を立てて割れたかと思うと、中から先ほどの飛竜にもどこか似た小さな黒竜が顔を出す。

 

 このタイミングで来たってことは……手札にアレがあるな!

 

「そして私は手札から魔法カード『スタンピング・クラッシュ』を発動! 自分フィールドにドラゴン族が存在する時に発動でき、フィールドの魔法・罠を1枚破壊し、そのコントローラーに500ダメージを与える。お前から見て右側のカードを破壊させてもらう」

「ぐっ!?」

 

 遊児 LP4000→3500

 

 巨大な竜の脚が俺の伏せカードの片方、『幻想体 テレジア』を踏みつぶして破壊し、さらにその風圧が俺に襲い掛かる。わざわざスピードの速いサイクロンじゃなくてダメージを与えるスタンピング・クラッシュってことは……バーン軸寄りか?

 

「それくらいで倒れてくれるなよ。ここからが本番だ! 私は黒竜の雛の効果発動っ!」

 

 そう。これがまだ残っていた。黒竜の雛が一声大きく鳴くと、そのまま光の粒子となって舞い上がる。……そして、

 

「場の黒竜の雛を墓地に送ることで、手札から『真紅眼の黒竜』を特殊召喚する。出でよっ! レッドアイズっ!」

 

 真紅眼の黒竜 ATK2400

 

 光の粒子が突如燃え上がって形を成し、その炎の中から大きく成長した黒竜がその姿を現す。先ほどの飛竜と同じく細身ではあれど、その真紅の瞳から出る圧は飛竜の比じゃない。

 

 そして、口元から僅かに火の粉を散らしながら俺を睨みつける真紅眼を見て、そんな場合じゃないって分かってはいるものの俺はつい見惚れてしまった。原作を読んでいた身としてはちょっと感動だな。

 

「まだだ! まだ終わらん! 私はそこで永続罠『リビングデッドの呼び声』を黒竜の雛を対象に発動!」

 

 ダークネスの場に再び黒竜の雛が出現する。このタイミングで飛竜じゃなくて雛を出すってことは……まさか!?

 

「そして黒竜の雛の効果を再び発動! 墓地に送ることで、()()()()、真紅眼の黒竜を攻撃表示で特殊召喚する!」

 

 それは先ほどの繰り返し。光の粒子となった黒竜の雛が、炎と共に再構成されて急成長し揃って雄叫びを上げる。

 

 

 

 

 ……おいおい。真紅眼2体とはやってくれるなダークネス。流石はセブンスターズの一人ってか? だが、こっちもただ負けるわけにはいかないんでね。きっちり挑ませてもらうぜ。

 

 俺に向けて圧を放ってくる真紅眼2体に対し、俺は仮面の下で不敵に笑った。

 




 久しぶりに遊児のデュエル回となりました。久々なのでデッキの回し方をちょっと忘れてました。

 セブンスターズの拠点については完全に独自設定です。作中でも最初に全員集まったっきり細かく描写されてなく、理事長なら秘密基地的なノリで島にこっそり造ってるだろという想像の結果です。

 次回はまた三日後投稿予定です。

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