マンガ版GXしか知らない遊戯王プレイヤーが、アニメ版GX世界に跳ばされた話。なお使えるカードはロボトミー縛りの模様 作:黒月天星
今回で対ダークネス戦は終わります。
デュエルにて何かしらルール的に間違っていたり、描写がおかしいなと感じた時は、優しくかつ正確に知らせていただけたら幸いです。
遊児 LP200 手札0 モンスター 雪の女王 魔法・罠 ロボトミーコーポレーション 異界の肖像
ダークネス LP2800 手札0 モンスター 真紅眼の闇竜 真紅眼の黒竜 魔法・罠 リビングデッドの呼び声
『俺のターン』
『……ほぅ! この状況になっても諦めぬか。アムナエルの代理よ』
俺がそっとデッキに指をかけると、どこか不思議なものに対するような理事長の声が響き渡る。
確かにそうだよな。この圧倒的不利な状況じゃ、諦めてしまってもおかしくはない。実際これが普通のデュエルなら素直に降参することもあり得た。……でもな、
『生憎と、負けられない戦いになってしまいましたのでね。だけどまだデッキにカードが残っている限り、まだLPが残っている限り……そして、
少なくとも、十代や万丈目ならこんな程度では屈さない。なら俺も負けが決まるまで戦い続けるのみ。この劣勢を逆転すべく、俺は勢いよくカードを引く。……これはっ!
『俺はロボトミーコーポレーションの効果発動! スタンバイフェイズ時、デッキから3枚めくり、幻想体のカードがあれば手札に加えることが出来る。……俺は『幻想体 魔法少女 貪欲の王』を手札に加え、残りはデッキに戻してシャッフルする』
「そんなモンスター1枚で何が出来る?」
ダークネスの言うように、確かにこれだけでは無理だろうな。しかし、まだ俺の手は伸びるぜ。
『さらに俺は魔法カード『人ならざるモノからのギフト』を発動! 手札の幻想体を1枚捨てて代わりに3枚ドローし、そのドローしたカードから幻想体を1枚公開しなければならない。そこで幻想体が無ければ手札を全て捨てる。ドロー』
毎回この瞬間は緊張する。低い確率だが引けない場合もあるからだ。この状況で引けなかったら今度こそ敗色濃厚。だが引いた3枚の中に幻想体が、それも良いカードが来てくれたことにホッと胸を撫でおろす。……この手なら上手くすれば。
『俺は引いたカードから『幻想体 たった一つの罪と何百もの善』を公開! そしてさらに公開したカードが星2以下なら特殊召喚出来る。頼むぞ罪善さん!』
たった一つの罪と何百もの善 DEF200 星1
俺の場に光り輝く頭蓋骨こと罪善さんが姿を現す。……一瞬こっちをチラッと見てきたからあれは本物だな。うん。罪善さんはあれでかなり心配性だから、この状況を緊急事態だと考えて出てきてくれたんだろう。
さあ。ここからは順番が大事だぞ。
『続けて俺は手札から『幻想体 魔弾の射手』を攻撃表示で召喚し、クリフォトカウンターを3つ乗せる。魔弾の射手は星5だが、ロボトミーコーポレーションの効果により生け贄は必要ない』
魔弾の射手 ATK2000 星5 CC3
さらに呼び出したのは人型の影のような幻想体で、黒い軍服のような服の上に青いクロークを纏っている。服から伸びる手足や顔は黒い靄に覆われ、常時陽炎のように揺らめいていてその姿は定かじゃない。
だが、その中で2つだけはっきりとしたものがある。黒い陽炎の中で青く光る鋭いまなざしと、その肩に掛けている身の丈ほどあるマスケット銃だ。
『罪善さんの効果発動! 1ターンに1度俺の手札、あるいは場のカードの数×300LPを回復する。俺は場のモンスターの数を選択。300×5で1500回復だ』
カタカタ!
罪善さんが効果の発動と同時に優しい光を放ち、洞窟内を明るく照らす。この光はカードの数値上だけでなく、本当に精神を落ち着かせて癒す力があるからな。回復量はあまり多くないが使っておくに越したことは無い。
遊児 LP200→1700
「グッ!? グオアァァ」
「こ、この光はっ!?」
何だ? 何故か目の前のダークネスが頭を押さえて苦しんでいる。この野郎頭痛持ちか何かか? あと何か周囲のセブンスターズの誰かがやけに驚いているが……まあ今は目の前のデュエルに集中だ。
「グアアァ…………はぁ……はぁ」
ようやく頭痛が落ち着いたのか、ダークネスが軽く頭を振って呼吸を落ち着ける。……やっぱりこんな闇のデュエルをしてるから体調不良なんじゃないか?
『……さて、どうやら落ち着いたようなので最後に尋ねたい。今からでもこの闇のデュエルを止めるつもりはないか? 勿論負けたら何かしらヤバいというのは分かる。なら同時に
「はぁ……断る。私が弱っているから情けをかけるというならお門違いだ。そもそも盤面は私の方が有利。手札0の状況からここまで持ち直したのは驚いたが、それでも私の真紅眼の闇竜には及ばぬ」
ダークネスは今の今まで頭を抱えていたのにも関わらずさらっと返す。この強情厨二仮面めっ! 結局こうなるのかよ! ……仕方ない。覚悟を決めるか。
『ならば……行くぞっ! 俺は魔弾の射手の効果発動! このターン魔弾の射手は攻撃が出来なくなる代わり、フィールドのPEカウンターを3つ、あるいは1000ポイントのライフを払うことで、場のカードを1枚破壊することが出来る。俺は雪の女王のPEカウンターを3つ使う!』
「なんだとっ!?」
雪の女王 PE3→0
魔弾の射手はゆっくりと銃を両手で構え、何故か明後日の方向にピタリと狙いを定める。それと同時に銃口の先に、ブンっと音を立てて魔法陣のようなものが四重に展開される。
『当然対象は……真紅眼の闇竜! 吹き飛べっ!』
その瞬間、口元こそ見えないが魔弾の射手がニヤリと嗤った気がした。
バンっという発砲音と共に、放たれた銃弾はわざと俺に見えるギリギリの速度で動き、そのまま不規則な軌道を描いて闇竜の頭部に直撃する。
闇竜はぐらりと体勢を崩し、そのまま地面に倒れ込んで消滅した。……いや普通に撃てよ!? わざわざ曲射すんな!
魔弾の射手 CC3→2
「闇竜がっ!?」
『効果発動後、魔弾の射手のクリフォトカウンターが1つ減る。もう一発行くぞっ! 魔弾の射手は、1ターンに2度までこの効果を使える。今度はLPを1000払って効果発動!』
遊児 LP1700→700
魔弾の射手 CC2→1
もう一度発射音が響く中、今度は弾丸は黒竜の顎を打ち抜いて撃破する。消費がデカいが良い仕事するな魔弾の射手。
ダークネスは目の前の光景が信じられないのか呆然としている。……それじゃあこれでダメ押しだ。
『バトルフェ……なっ!?』
バトルフェイズに入ろうと瞬間、雪の女王が
『バトルフェイズ! 雪の女王で、ダークネスにダイレクトアタック。くらえっ!』
「ぐおおっ!?」
ダークネス LP2800→900
慌てて宣言すると、間髪入れずに雪の女王が剣で一閃し、ダークネスは流石にたまらず片膝を突く。
『ふんっ! それで良い。これにて先ほどの不敬は無かったことにしてやろう。妾の寛大さにむせび泣くが良いわ』
攻撃が終わってこちらの場に戻る雪の女王だが、やり返したからかちょっとだけスッキリした感じだった。……あんまり尾を引かないタイプのようで何よりだ。
これにて互いのLPは1000を切った。……
「ぐっ!? ぬうぅ」
ダークネスはフラフラになりながらも立ち上がる。ダメージが実体化する闇のデュエルである以上、向こうも相当キツイ筈なのになんて奴だ。こっちはもういっぱいいっぱいだってのに。
『俺はこれでバトルフェイズを終了する。……おいっ! 聞いているんだろう影丸理事長っ! これ以上はどちらが勝とうが負けようが負担が大きすぎる。今すぐ闇のデュエルを中止しろっ! 仮にも部下と、これから部下になるかもしれない者を見殺しにする気かっ!?』
俺は半ば怒鳴りつけるようにどこかで聞いているであろう理事長に話しかける。流石にここまで来たらもう敬語を使うつもりもない。約定をいきなり反故にした上、入団テストで部下を使い潰すような奴相手にそんな義理は無いからな。
だというのに、どうしてか理事長からの反応がない。……おのれ無視する気か。ならこっちにも考えがあるぞ。
「さあ。早くターンエンドするが良い。レッドアイズ達は破壊されたが、お前のLPも僅か100。闇のデュエルはまだこれからだ」
『……いや。これで終わりだ。出来ればもっと穏便に済ませたかったんだが……仕方ないな』
ダークネスはこんな状態だというのにまだまだやる気十分だ。実際次のドローで、何か俺のLPを直接削るカードでも引けたら勝利は向こうに転がり込むし、ギリギリまで勝負は分からない。
だが悪いな。もうお前のターンは来させない。
『俺はこれでターンを終了。そこで魔弾の射手の効果が発動! ターン終了時にこのカードのクリフォトカウンターを1つ取り除く』
魔弾の射手 CC1→0
その瞬間、魔弾の射手が何もない天井に向けて銃を構えた。
「……? 何を」
『魔弾の射手の効果。ターン終了時にクリフォトカウンターが0の時、
ダークネスのLPは900。俺は100。つまりこの状態で同時に1000ダメージを受ければ、
「……!? 貴様っ!? まさか最初からこれを狙ってっ!?」
『悪いな。勝負はここまでだ。互いに降参という手が使えない以上、
俺の合図と共に放たれた二発の弾丸は、それぞれが時間差を不規則な軌道と共に埋めて同時に俺達を貫いた。
遊児 LP700→0
ダークネス LP900→0
遊児対ダークネス 両者LP0によりドロー。
という訳で、最後はやや強引なやり方になりましたがダークネス戦終了です。明日決戦なのに予想外に体力を消耗するハメになった遊児とダークネスでした。
闇のデュエルを引き分けにすれば良い云々は完全に独自設定です。無印のドーマ編やファイブディーズの地縛神との戦いでも、引き分けや中断の場合は負けた時のデメリットが発動しなかったことから、引き分けは両者負けではないという理屈です。
次回は三日後投稿予定です。
今回もこの話で登場した幻想体のデータと所見を載せておきます。宜しければどうぞ。
『幻想体 魔弾の射手』
星5 ATK2000 DEF1700 悪魔族 闇
効果
①このカードの召喚、特殊召喚、リバース時、このカードにクリフォトカウンターを3個乗せる。
②このカードが戦闘を行ったバトルフェイズ終了時、このカードにPEカウンターを3個乗せる。
③フィールド上のPEカウンターを3つ取り除く、またはライフを1000ポイント支払うことで、フィールド上のカード1枚を破壊する。その後このカードのクリフォトカウンターを1つ取り除く。この効果を使う場合、このターンこのカードは攻撃できない。この効果は1ターンに2度まで使用できる。
④自分のターン終了時、カードに乗っているクリフォトカウンターを1つ取り除く。
⑤自分のターン終了時、このカードにクリフォトカウンターが乗っていない場合、互いのプレイヤーは1000ダメージを受ける。その後このカードにクリフォトカウンターを3個乗せる。
悪魔に魂を売り渡した……というより、自分が悪魔に成り果てた狙撃手。
悪魔との契約で、何にでも当たるが最終的に自分の愛する者を撃ち殺す銃と弾丸を手に入れた射手が行ったのは、最初に自分の愛する者を殺すというものだった。
結果残ったのは、愛する者が居ないことでデメリットの無くなった必中の銃と弾丸。そしてただ自らの衝動のままに引き金を引く射手のみ。
凄まじく有能だけどバックボーンがとんでもない射手。仕事はきっちり行うが、頼みすぎると悪意を持って故意に暴発させる危険人物。