マンガ版GXしか知らない遊戯王プレイヤーが、アニメ版GX世界に跳ばされた話。なお使えるカードはロボトミー縛りの模様   作:黒月天星

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 一部前章接続話のシーンがあります。


十代対ダークネス そして明かされるダークネスの素顔

 

 早くっ! 早くっ!

 

 俺は森から出たがらない大鳥をどうにか拝み倒し(あんまりしつこいから罰鳥に一回突かれながらも)、火山まで急いで乗っけてもらい罪善さんの先導の下に頂上を目指した。そして、

 

「見つけたっ!」

 

 やっと火口付近に遠目に人影が見えてそうポツリと洩らし、そこからはひとまず隠れて様子を見ながら近づいていく。そこに居たのは……。

 

「思った通りダークネスか。そして相手は十代……って、何であいつらまで居るんだっ!?」

 

 デュエルしている二人の他に、光る丸い球体に閉じ込められている翔と隼人。そして何故か明日香まで十代の傍にいる。……一体どうなってんだこの状況?

 

 グルルルルゥ。

 

 大鳥が何故か()()()()()()()()()()()()()唸っている。瞳こそまだ赤じゃなく黄色のままだけど……向こうに何かあるのだろうか?

 

「大鳥。何か居るのか?」

 

 大鳥は無言で頷く。よくよく目を凝らしてみると、どうやら小さな()()()()が二、三羽飛んでいるのが見えた。ここらへんにコウモリなんか居たっけか?

 

「大丈夫だよ大鳥。ただのコウモリだ。気になるのかもしれないが、今は少しだけ静かにしていてくれ。十代達に気づかれる」

 

 そう言うと大鳥は、まだ何か警戒しながらも唸り声を抑える。……ありがとうな。

 

 そうして隠れながら様子を探っていると、デュエル中の二人の会話から大体の状況が掴めてきた。ダークネスは十代が闇のデュエルを受けるよう、翔と隼人を人質にしたらしい。十代が逃げたり負けたり時間経過で火口に真っ逆さまという奴だ。

 

 あと明日香も鍵を持っているから狙われたのかと思ったが、こちらはただ近くに居たから巻き込まれただけのようだった。こんな時間に十代に何の用だったのか。

 

 しかしどうしたものか。幻想体の誰かの力を借りれば翔達を助けることは多分出来なくはない。友達が捕まっているのを見過ごすというのは個人的に嫌だしな。だが、おそらく放っておいてもアニメ的な流れなら二人は無事救助される。むしろ下手に手を出した方が却って危ないかもしれない。

 

 どうすれば良いかと悩んでいると、

 

「わぁっ!? 助けてアニキっ!」

 

 気づけば二人が閉じ込められている光の球が一部崩れかかっていた。……え~い悩んでいる暇はないっ!

 

「昨日に続いて今日もだけど、頼むっ! 雪の女王」

『またか……こんな熱い中に妾を呼び出すとは不敬な奴め』

 

 予想していた通り、実体化した雪の女王はご立腹だった。そりゃあ昨日はまだ自身に降りかかる火の粉を払うためってこともあっただろうけど、今回は完全に俺の我がままだもんな。だけど、

 

「緊急事態なんだっ! ()()()()()()()()()あとで何でもするから……お願いしますっ!」

 

 放っておいて解決するなら良いけど、ここで助けなくて万が一のことがあったら一生後悔する。ならば下げれる頭は下げるべしだ。

 

「わ、わああっ!?」

 

 遂に翔がバランスを崩して球から落っこちる。十代が走り出すが間に合うかどうかギリギリだ。

 

「雪の女王っ!」

『…………良かろう。後で貢物を用意せよ。……はあっ!』

 

 そこからの行動は素早かった。

 

 雪の女王は気合を込めて剣を地面に勢いよく突き立てる。するとそこから強烈な冷気が噴出し、瞬く間にグツグツ煮えたぎる溶岩を凍らせた。……水蒸気爆発とかはもう考えないぞ。今はそれより翔達だ。

 

 確認すると、落ちたのは翔ではなくその身代わりとなった十代だったが、溶岩にダイブする直前に何とか凍らせることが出来たみたいだ。背中を強かに打ち付けていたが、ハネクリボーが咄嗟に光の膜で衝撃を弱めていたみたいだし元気そうだ。

 

 しかしホッとしたのも束の間、

 

「……横槍を入れるとは、何のつもりだ()()()()()?」

 

 まあバレるよな。ダークネスが俺達が隠れている辺りをじっと見ている。

 

 出来れば十代達にはもうしばらく姿を見せたくなかったんだが……仕方ないか。それにダークネスにも言ってやりたいことはあるしな。この際だ。

 

 俺は仮面を被り、ゆっくりと岩陰から進み出た。雪の女王と大鳥、罪善さんは留守番だ。カードに戻ってもらうという手もあるが、いざという時それでは素早い対応に困るので実体化したままだな。

 

『それはこっちのセリフだダークネス。関係のない奴を巻き込むとはどういう了見だっ!』

 

 ダークネスのみならず、ここに居る皆の視線が俺に集中する。

 

『人質をとって鍵の守り手を呼び出すまでは俺も百歩譲って認めよう。手荒ではあるけど十代が仲間を見捨てるはずもないしな。だが、こうしてデュエルが始まった以上、もう人質の意味はないはず。解放してやれ。これでもまだごねるっていうのなら……俺も黙っちゃいられない』

 

 俺がスパイ活動をしているのは、被害を最小限に抑えるためでもある。鍵の守り手が闇のデュエルをして傷つくだけでも正直嫌だってのに、それ以外の奴まで手を出すんじゃないよっ!

 

 そこで俺は十代、そして溶岩が凍ったことでゆっくりと降りてくる翔や隼人、明日香をチラリと見てからダークネスに向き直り、デュエルディスクを取り出して構える。

 

バランサー(均衡をとる人)の名の通り、()()()()()()十代に手を貸させてもらうが……どうするかね?』

 

 

 

 少しの間周囲を沈黙が支配した。

 

 ……誰かなんか言ってよっ! いや分かるけどさ。いきなり現れた新たなセブンスターズらしき変な奴が、突然こんなこと言って仲間割れを始めたらそりゃあ戸惑うさ。

 

 仕方ないじゃないかっ! ついドサクサで文句の一つも言いたくなったんだってっ!

 

 実際この後の行動はダークネス次第だったりする。もしこれだけ言って尚人質を取ろうというのなら、俺は全力でそれを止めるしその分十代に協力する。

 

 だけど出来ればそれはしたくない。一応スパイだからね。表向きは向こうの立ち位置だから、敵対行為はマズいわけだ。……そして、ダークネスの出した結論は、

 

「……良かろう。お前には借りがある。ここはお前の顔を立てて鍵の守り手以外は見逃そう」

『そうしてくれるなら助かるな。ほらっ! そこの二人。こんな所に居たら十代の邪魔になるのではないか? 早く移動したまえ』

「えっ!? ……う、うん」

「分かったんだな!」

 

 俺はダークネスが折れてくれたことに内心ホッとしながら、改めてちょっと口調を作りつつ翔と隼人を明日香の居る辺りに移動させる。ここならぎりぎり勝負の余波を受けな……いや、ちょっと受けるか。しかし人数は固まってくれた方が万が一の時に対応しやすいしな。

 

「なあ! そこの……バランサーだっけか? この氷お前がやってくれたんだろ? 敵なのかもだけど……ありがとうな」

『助けたのはこちらの都合なので礼は要らない。さっ。デュエルを続行したまえ』

 

 十代は礼を言いながら元の場所に戻っていく。ホントに礼は要らないんだよ。仕方ないとはいえ闇のデュエルなんかに巻き込んだのはこっちなんだから。

 

 

 

 

 そして結論だけ言うと、激戦ではあったが最終的にこのデュエルは十代が勝利した。そこは流石主人公といった所だ。さっきも俺が助けなくても十代なら何とかなったかもしれないな。

 

 だが問題はその後だ。勝った十代だが闇のデュエルのダメージが大きくそのまま倒れてしまい、負けたダークネスに至っては、

 

「ぐ、ぐあああっ!?」

 

 ライフが0になった瞬間、何か黒い靄が身体……特に仮面の辺りから抜け出たかと思うと崩れ落ち、そのままここに居る全員が光に包まれて山の麓へと跳ばされる。ここに来た時と同様に、戦いが終わったら自動的に移動するようになっていたようだな。

 

「十代っ!? 十代っ!」

「アニキっ!」

 

 明日香達が一斉に倒れ伏す十代に駆け寄る。十代は身体のあちこちにデュエルでの怪我を負っているが、見た所命に別状はなさそうだ。ちゃんと治療すれば問題ないとして、問題なのはダークネスの方だな。

 

 俺は倒れているダークネスに近づく。……反応がない。まさか倒れた時に打ち所でも悪かったか? 抱き起こそうとして、よく見たら普段から着けていたダークネスの仮面が無くなっていることに気づく。

 

 そしてその仮面の下の素顔を見た時、

 

『……嘘だろ。なんでこいつがここに?』

 

 そう本当にポツリと漏らした言葉を、他の誰かに聞かれなかったのはある意味幸運だった。それぐらいダークネスを名乗っていた者の正体は衝撃的だったのだ。

 

 俺が少しだけ呆然としていると、そこで明日香が十代の近くに落ちていたカードを拾い上げる。何だあれ?

 

「これが、ダークネスの魂」

 

 ……ん!? 今ちょっと聞き逃せない言葉が出たんだけど。魂がなんだって? 慌てて詰め寄ろうとすると、明日香達は警戒するように俺に向けて構える。

 

『まあそう警戒するな。こちらに今の所戦う意志は無い。そのカードがダークネスの魂というのはどういうことだ?』

 

 明日香は警戒を解かずにだが教えてくれた。ダークネスが提示した闇のデュエル。それは敗者の魂がカードに封印される物だったと。

 

 まったくなんてデュエル吹っ掛けてんだダークネスの奴はっ!? おまけにそれで自分が封印されてちゃ世話ないぜ。まあスパイとしては初戦は順調と言えなくもないけどな。

 

 とにかく、魂が封印されているにしても身体の方をこんな所に放置しておくわけにはいかない。こっちで連れ帰るか、学園側に引き渡すかの二択だな。……いや連れ帰るのは正直キツいか。学園側なら医療設備とかあるから何とかなりそうだしそっちにしよう。

 

『……事情は理解した。そういう事ならダークネスの魂と身柄はそちらに預けよう。目を覚ますようであれば尋問でもするが良い』

「待ってっ! ……貴方は一体何者なの? 口ぶりからすると貴方もセブンスターズみたいだけど、何故私達を助けたの?」

 

 俺が立ち去ろうとすると、明日香は逃がすまいと食い下がってくる。少しでも情報を得ようってか?

 

 遠くの空を見ると少しずつ明るくなっている。もう少ししたら夜が明けるのだろう。早いとこさっきの場所に待たせている罪善さんたちと合流しなくちゃいけない。

 

『バランサー。ただの代理だ。それと、今回はたまたまお前達を助ける形になっただけの事。次会う時は敵同士だろうな。……では、さらばだっ!』

 

 そう言い残して素早く身を翻す俺。

 

 実を言うと、さっき遠目にこちらに向かってくる一団が見えた。おそらくあれは他の鍵の守り手達だ。……下手にここで鉢合わせたら俺もデュエルを挑まれかねないからな。さっさと逃げるに限る。

 

 俺を追おうにも、倒れている十代やダークネスが居る以上そちらを放ってはおけないはずだ。実際その予想は当たり、駆けだした俺を追ってくるものは居なかった。

 

 

 

 

 その後なんとか他の皆と合流し、十代達と鉢合わせしないよう遠回りして自分の部屋に帰宅した。途中大鳥と森で別れる時、なにやらキイキイとコウモリの鳴き声がしていたが何なんだろうか?

 

 だけど初戦からこんな激戦じゃ先が思いやられるぜ。あと少なくとも先生を抜いても五人は居るんだぞ。

 

「しかし……なんでダークネスなんて名乗っていたんだろうなぁ。()()()()()は」

 

 ダークネスの素顔。マンガ版でも重要人物として登場した者のまさかの配役に、俺はますます頭が痛くなるのだった。

 





 もう少しでカイザーや万丈目達と戦うハメになった遊児でした。……まあそれはそれで闘志を燃やしていたでしょうが。

 次回私用により投稿が少し遅れます。
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