マンガ版GXしか知らない遊戯王プレイヤーが、アニメ版GX世界に跳ばされた話。なお使えるカードはロボトミー縛りの模様 作:黒月天星
そんなに読んでくださる方がいらっしゃることに感謝感謝です!
次も投稿は明後日になりそうですが、これからもどうぞよろしくお願いします!
遊児 LP4500 モンスター 罪善さん 魔法・罠 シェルター 伏せ1 手札2
翔 LP4000 モンスター ジェット・ロイド 魔法・罠 無し 手札2
罰鳥のカウンターでスチームジャイロイドを破壊したが……何やら翔の様子がおかしいな。
「……やっぱり駄目だったんだ。……僕なんかじゃ、アニキみたいには」
ポツリポツリと聞こえるその言葉に、どうやら翔が今の攻防で戦意を失いかけていると感じる。だが、
「頑張れ翔! まだ一回失敗しただけだろ。勝負はこれからだぜ!」
観客席の十代の声が翔を叱咤する。仮にもテストなので口出しは良くないと思うのだが、こういった激励にどこか心が温かくなるのも事実だ。試験官もあくまで応援だと判断してか黙認しているし、俺もここで口を挟むほど無粋じゃない。
「そ、そうだよね。うん。僕はまだ負けてない!」
「ああその通りだ。それで次はどうする? まだそちらのターンだぞ丸藤君。ちなみに幻想体が戦闘したバトルフェイズ終了時、そのカードにPEカウンターが乗る」
罪善さん PE1
戦意を何とか取り戻した翔に、俺はさりげなく手を進めるよう進言する。
「……僕はメインフェイズ2に、手札からカードを2枚伏せてターンエンドだ」
おっと。
翔 LP4000 モンスター ジェット・ロイド 魔法・罠 伏せ2 手札0
「ターンエンド時に、3月27日のシェルターの効果だ。このカードの効果を使ったターンのエンドフェイズ時、自分フィールドの幻想体1体のクリフォトカウンターを全て取り除くか、又は2000ダメージを受ける。……俺の場には取り除くカウンターは無いので、2000ダメージを選択だ」
遊児 LP4500→2500
「……は。はっはっは。オイ見ろよ! アイツ明らかなプレミスをしやがった! さっき罰鳥をカードで護っていれば、カウンターを払ってダメージを受けることもなかったのになぁ!」
また観客席からヤジが飛んできた。そっちは立ち直らなくて良いってのに。……正直この手は俺も少し悩んだんだよな。
罰鳥のクリフォトカウンターが無い時のエンドフェイズ時、フィールドの最も攻撃力の高いカードを破壊する。シェルターと合わせれば、相手のジェット・ロイドを破壊することも可能だったろう。
さて。この選択がどう響くか。
「俺のターン。ドロー! 罪善さんの効果発動! 手札の数×300、合計900のLPを回復する。そして更に永続罠『幻想体 テレジア』を発動!」
罪善さんが光り輝くのと同時に、俺の場に小さなバレリーナの人形の乗ったオルゴールが出現する。
「このカードは、“LPを回復する効果が発動した時”発動できる罠カード。LPを500回復し、フィールドの魔法・罠カードを1枚破壊する。俺から見て右側の伏せカードを破壊だ」
オルゴールが回り始め、その音が俺の身体を癒すと共に翔の伏せカードを破壊する。
「うっ! 『魔法の筒』が!?」
やはり攻撃反応型の罠があったか。だけどこの場合
遊児 LP2500→3000→3900
「やるな。たった一つの罪と何百もの善を残したのは、相手が伏せカードを出してきた場合に確実に除去するため。おまけに3月27日のシェルターで受けたダメージもほぼ回復している」
観客席の三沢が冷静に分析しているな。流石原作で十代を苦しめた男。
「……そして俺は手札から魔法カード『人ならざるモノからのギフト』を発動! 手札の『幻想体 巨木の樹液』を捨て、デッキから3枚ドローする。そしてその中に星2以下の幻想体があれば、特殊召喚が出来る」
「な、なにその効果。インチキだ!」
確かに強いけど、これはちょっと賭けの要素が強い。1枚も幻想体と名の付くカードを引けなければ、それまでの手札と一緒に全て捨てることになる。失敗したら一転して大ピンチだ。
このデッキは大半が幻想体だが、名前に幻想体と入っていないものも僅かにある。それを引くんじゃないかと少しドキドキしながらドローし、目当ての物を引いて少しホッとする。
「来たぜ! 俺はドローした『幻想体 宇宙の欠片』を攻撃表示で特殊召喚。次に俺は手札からフィールド魔法、ロボトミーコーポレーションを発動! このカードが場にある限り、幻想体を召喚する際の生け贄が一つ減る」
フィールドが変化し、生命の樹を模した施設が顕現する。……へえ~! 立体映像だとこんな感じになるのか。俺が今いるのは、上から見たら一番上部の辺りかね?
「そして、俺は罪善さんを生け贄に捧げ、手札から『幻想体 魔法少女 憎しみの女王』を攻撃表示で召喚だ!」
消える罪善さんの代わりに手札から現れたのは、ディーとの最初のデュエルでフィニッシャーとなったカード。……やはりカードの絵柄通り可愛らしい。これが何で憎しみの女王なんて物騒な名前で呼ばれているのか実に不思議だ。
憎しみの女王 ATK2300
「か、かっわいい~っ!」
おい翔君。仮にも戦っている相手にそんな声を出すのはどうかと思うけどな。……可愛いのは否定しないが。
パチンっ!
うおっ! 今一瞬憎しみの女王がこっちに向けてウインクしなかったかっ!? まさか罪善さんと同じ……いや待て。今はデュエルに集中だ。
「……はっ!? 危なかった。こんな可愛いモンスターを出して僕をメロメロにしようだなんて、なんて奴だ久城君」
「いや、それは狙っていなかったんだけど。メロメロになったのは丸藤君が勝手に」
「だけどそうはいかないぞ。リバースカードオープン! 『リミッター解除』!」
えっ!? ここで?
「このカードの効果により、ターン終了時までジェット・ロイドの攻撃力は倍になる。これで憎しみの女王ちゃんの攻撃力を上回るよ」
ジェット・ロイド ATK1200→2400
「……それは良いんだが、どうしてこのタイミングで使ったんだ? こっちのモンスターが攻撃する時に使えば、そのままカウンターでダメージを与えられたのに?」
「えっ!? ……それは、その……」
翔はそこでちょっと顔を赤くして押し黙る。……その様子だとテンパって間違えたな。まあどのみちそれでもまだ足りないが。
「俺は手札から装備魔法『幻想体 行動矯正』を発動して憎しみの女王に装備。このカードを装備したモンスターは攻撃力が1000上がり、代わりに守備力が1000下がる」
中央に白い瞳の絵が描かれた黒い円盤状の物体が、憎しみの女王の胸元に装着される。すると憎しみの女王がどことなくきりっとした表情になる。
憎しみの女王 ATK2300→3300 DEF2300→1300
「攻撃力3300っ!?」
「バトルだっ! 憎しみの女王で、ジェット・ロイドに攻撃!」
攻撃宣言と共に、憎しみの女王がそのキラキラしたステッキを構える。すると、ステッキから星型のエネルギー弾が飛び出してジェット・ロイドに直撃、そのままボンっという音を立てて爆発させた。可愛い見た目の割に恐ろしい攻撃だな。
翔 LP4000→3100
「くっ!? だけど、まだLPは残ってる。もう一体の攻撃を受けても耐えきれる!」
「ここで憎しみの女王の効果発動! 相手を戦闘で破壊した時カードを1枚ドローする。そのカードが幻想体モンスターだった場合、攻撃力を500アップしてもう一度攻撃が出来る」
そこで俺はデッキトップに手を伸ばす。その瞬間、憎しみの女王の詠唱と共に持っていたステッキが浮かび上がり、持ち主が構えると同時に前方にハートの模様の魔法陣が幾重にも展開される。
これは砲身だ。これから放たれるであろう特大の一撃の。そしてその引き金は俺のドロー次第。
「ドローっ! ……俺の引いたカードは『幻想体 今日は恥ずかしがり屋』。よって、憎しみの女王は攻撃力をアップしてもう一度攻撃が出来る。憎しみの女王で翔にダイレクトアタックっ!」
「う、うわあああっ!」
ステッキから放たれたビーム砲は魔法陣を一つ通るごとに強大になり、遂には身の丈ほどになって翔を飲み込みLPを削り取った。
翔 LP3100→0
デュエル終了。遊児WIN!
デュエルが終わり、俺達は他のまだデュエル中の生徒の邪魔にならないよう静かに壁際まで移動する。
「試験終了。お疲れ様。見事なデュエルだった。次のグループが始まるまでまだ少し時間がある。ここで他のデュエルを観戦するのも良いし、すぐに退出しても良い」
「はい。ありがとうございます!」
一礼すると、試験官はそのまま去っていった。次の準備もあるのだろう。……さて。残る問題は。
「…………はぁ」
横でどんよりとしたオーラを醸し出している翔をどうしたものか。
「丸藤君。……勝った俺が言う事ではないかもしれないけど、そう落ち込まないで欲しい」
「……うぅ。僕なんてどうせ底辺なんだ。干からびかけたミミズの方がまだマシかも。もうダメダメだよ~っ」
何か無茶苦茶言ってる。早いところ十代か三沢、もしくは同室のコアラ……前田隼人だったか? とにかくその辺りに励ましてもらいたいところだが、いつまで経ってもやってこない。人が多くて手間取っているのかもな。
「たった3ターンで倒されちゃったし、結局僕は自力で1ダメージも与えられなかった。やっぱり僕は弱いんだ。……こんなんじゃ、お兄さんに認めてもらうのなんて」
後の方の呟きは、意図して出したものではないようだった。翔の兄はあのカイザー。原作でも凄まじい実力を見せつけたからな。兄弟としてはコンプレックスの一つもあるのだろう。だが、
「君は弱いというか、ただプレイングミスが多いだけじゃないかな? 現にさっきのデュエルだって、そうだったし」
「リミッター解除のこと? だけどあれを使っても結局」
「いや、俺の言いたいのはその前。折角ジェット・ロイドがあったのに、手札を全伏せしてしまったろ? あれさえなかったらまだ勝負は分からなかった」
「えっ!? どういう事?」
翔は本気で分からないようだ? もしや効果テキストをよく読んでいないのだろうか。
「ジェット・ロイドは攻撃を受ける時、手札から罠を発動することが出来る。あの時魔法の筒を敢えて伏せずに手札に持っていれば、テレジアの効果で破壊することが出来ず、憎しみの女王の攻撃を跳ね返すことも出来ただろうに」
もちろんその後リミッター解除の効果でジェット・ロイドは破壊されるため、手札0でフィールドがら空きという危機的状況には変わりなかったが、それでも大ダメージを与えた上で次のドローに繋げることは出来た。
攻撃力1200のジェット・ロイドを、手札の罠を警戒してわざわざ効果で破壊しに動くのはあんまりないだろうしな。俺が罰鳥を攻撃表示で出したのと同じ。低攻撃力のモンスターを、敢えて攻撃しないという判断を下せる者は意外と居ない。
「ジェット・ロイドにそんな効果が。……僕、いざって言う時になるとあがっちゃって。時々テキストの内容を忘れてしまうんだ」
「他のもそうだけど、時間がある時は落ち着いて効果をよく読むこと。そうすれば少しは活路が開けるかもしれない。……とまあ偉そうに言ったけど、俺もよくテキストを読み間違えてひどい目に遭うんだけどな。幻想体ときたら複雑な効果ばっかりでさ」
「……うん。ありがとう久城君。なんだか話してたら、少しだけ気分が楽になった気がするよ」
それは良かった。……さりげなく罪善さんが、翔に向かって何か光を当てていたことは見なかったことにしよう。
それから少しして、十代が翔を励ましに来たのを見届けると、俺は静かに自室に戻った。なんだかんだ負けた相手から励まされるっていうのはきついだろうし、やはりこういうのはアニキの仕事だと思うしな。
その日の夜、部屋で明日の準備をしていると、外まで響くような大声で翔が喜んでいた。どうやら十代がオシリスレッドに残る決断をしたらしい。結局ラーイエローに上がって原作からずれるという展開はなくなったようだ。十代には悪いが少しだけホッとする。
しかし、今日は予想外のことが多すぎた。
「まず万丈目の使うデッキが違う。十代も主力のはずのジ・アースは結局使わなかったし、あわやラーイエローに昇格だ。翔とデュエルすることにもなったし……ディー。本当に原作通りに進んでいるのか?」
『勿論さ! 君が居ることで多少の差異はあるけど、基本的には原作通りに進んでいるとも!』
本当かよ!? どうにもその多少の差異っていうのが気になる。
カタカタ。カタカタ。
罪善さんがどこか落ち着かせるようにこちらを見ている。ありがとうな。……そう言えば、ふと今日の憎しみの女王のことが気になり、試しにこんなことを聞いてみる。
「なあディー? 以前幻想体の大半は精霊化できるって言ってたよな。今罪善さんみたいに自分で出てこれそうな奴っているのか?」
『そうだねぇ。……自力でも何とかなりそうなのが数枚。と言ってもカードを媒介にして、あくまで君の周りに出てこれるってだけだけど。何なら呼んでみる?』
「今は良いよ。テストが終わったばかりで疲れてるしな。それにどうせ自分で出てくるんだろ?」
『そりゃあ気が向いたら出てくるんじゃないかな。
ディーはまた意味深なことを言うが、やっと罪善さんの顔を夜中見ても驚かなくなってきた所だからな。今またそんなのがまとめてやってきたら心臓に悪い。せめて来るなら比較的落ち着いた奴に来て欲しいところだ。
数日後。筆記テストの答案が戻ってきたのだが、結果は酷いものだった。俺としたことが慌てていて、途中から解答がずれていたのだ。
ずれた部分がほとんど正解だっただけにとても悔しい。……次からはディーに何言われても早めに寝てやるからなっ!
慌ててるとついやっちゃうんですよね。今回の遊児は、時間さえあれば見直しをして解答の違和感に気づけたという話でした。
あと万丈目達への違和感は……まだ今は自分の知る原作とずれつつあるという認識ですかね。原作そのものが違うとは流石に気づいていません。
以下、今回出てきた幻想体の説明と印象です。
『幻想体 テレジア』
永続罠
効果
①LPを回復する効果が発動した時に発動可能。1ターンに1度、500LPを回復し、フィールドの魔法・罠を1枚破壊する。
②エンドフェイズ時、フィールド上のクリフォトカウンターかPEカウンターを1つ取り除くか、このカードを破壊する。
聞いてるだけで癒されるオルゴール。ただし使いすぎると逆にパニックを起こすので注意。音楽系はみんなしてそんな感じ。
名前だけ出たものは割愛という事で。