マンガ版GXしか知らない遊戯王プレイヤーが、アニメ版GX世界に跳ばされた話。なお使えるカードはロボトミー縛りの模様   作:黒月天星

111 / 235
 注意! この話では、カードの能力は基本アニメ版に準拠します。

 また、遊児はデュエルリンクスはやっていません。


遊児対タニヤ その一 拳を交えて

 俺達はいつもセブンスターズの集合場所に使っている洞窟の広間まで移動した。

 

 あの闘技場で戦っても良かったが、万が一にもデュエルがエキサイトし過ぎてぶっ壊すなんてことになったら目も当てられないからだ。あれ以上予定を伸ばして生徒を働かせられない。

 

「先に言っておくが、もちろんこれはダークネスのしたような闇のデュエルなどではない。負けた所で魂を封印されるということもない。そもそも魂など要らぬしな。……お前は欲しいが」

『婿にはならないぞっ! だが闇のデュエルじゃないと聞いて安心したよ。これで心置きなくタニヤ。お前に勝つことが出来る』

「言ってくれるな。だが、男とはそれくらい強気の方が私の好みだ」

 

 開始前から軽く言葉のジャブを交わしあい、互いに位置についてデュエルディスクを展開する。

 

 大虎のバースはタニヤの後ろで丸くなりながら、グルルとこちらに向けて唸り声を上げている。怖っ!? だけど、前に大鳥に睨まれた時に比べたらまだ比較的マシだいっ! 俺は腹に力を入れてその視線を受け止める。

 

「バースに臆さぬその胆力は良し。ではデュエルを始める前に……ここに戦いの行方を左右する二つのデッキがある」

 

 その言葉通り、タニヤは両手に一つずつデッキを持ってこちらに見せてくる。

 

「一つは“知恵”のデッキ。一つは“勇気”のデッキ。どちらでも好きな方を選ぶが良い」

『戦うデッキを選ばせてくれるという訳か。面白い』

 

 さて。どちらと戦うか。正直知恵比べというのはどのデッキでも大なり小なりやっている。それなのにわざわざそう言うということは、かなりテクニカルなデッキと見た。

 

 対して勇気というのはどうにも想像がつかない。……折角の純粋な腕試しのデュエルだ。タニヤの事を知るためにもこちらの方にするか。

 

 俺が勇気のデッキを選ぶと、タニヤはよろしいと一言デッキをディスクにセットする。

 

 さあて。スパイとしては少しでも情報収集をしたいところだが、それはそれこれはこれだ。今はしっかりとデュエルを楽しもうじゃないか。

 

 

 

 

「『デュエル!!』」

 

 

 遊児 LP4000

 タニヤ LP4000

 

『先攻は俺が貰うぞ……ドロー!』

 

 俺は引いたカードと手札を確認する。初手としては中々に悪くない。序盤からガンガン圧力を掛けさせてもらうか。

 

『俺はフィールド魔法『ロボトミーコーポレーション』を発動!』

 

 周囲に逆さまの生命の樹を模した施設が展開される。召喚の負担軽減と、毎ターンサーチが出来るこれが最序盤からあるのは結構大きい。

 

「いきなりダークネスとの戦いで使ったカードか」

『なら効果も当然知っているよな? 俺はロボトミーコーポレーションの効果により、幻想体の生け贄を一つ減らすことが出来る。よって星5の『幻想体 シャーデンフロイデ』を守備表示でそのまま召喚。そしてクリフォトカウンターを2つ乗せる』

 

 シャーデンフロイデ DEF2200 CC2

 

 俺の場に現れたのは、大きな黒い鋼鉄の箱のような何かだった。二つのレンズのようなものがそれぞれ左上と右下の隅についている。

 

 そして正面中央には手のひらサイズの鍵穴があって、その中から灰色の眼のようなものがギョロギョロと辺りを見渡している。

 

 ギョロ!

 

 おっと。今一瞬こっちを見たぞアイツ。なんか目を合わせたらヤバそうなので素早く目を逸らす。ずっと向こうを向いててくれよ。

 

『俺はさらにカードを2枚伏せ、ターンエンドだ』

 

 フィールド魔法合わせて3枚の魔法・罠は出し過ぎかと思ったが、最悪大嵐か何かで一掃されるとしても1枚はフリーチェーン出来る。初手としてはこんなもんだろう。

 

「私のターン。ドロー。初手から守備力の高いモンスターで守りに入ったか。だがこのデッキ相手ではそれは失策だな。私は手札から『アマゾネスの剣士』を攻撃表示で召喚!」

 

 アマゾネスの剣士 ATK1500

 

 タニヤの場に現れたのは、一振りの剣を構えた筋骨隆々のアマゾネス。……マズいな。剣士は確かにシャーデンフロイデとは()()()()()。だが、

 

『ここでシャーデンフロイデの効果発動。1ターンに1度、相手がモンスターを召喚、反転召喚、特殊召喚した時、相手に800のダメージを与える。くらえっ!』

 

 召喚された剣士とシャーデンフロイデの視線が交錯する。その瞬間、シャーデンフロイデに変化が起こった。下部が赤黒い肉塊に覆われ、そこから血と錆に塗れたアームが生えてきたのだ。……お前箱なのに動けるんかいっ!?

 

 そしてガシャガシャと音を立てながらタニヤに詰め寄り、アームの一本を振りかぶって叩きつける。

 

「ぬぅっ!?」

 

 タニヤ LP4000→3200

 

『先制パンチはこっちが貰ったぜ』

「まさか召喚時にダメージを与えてくるとはな。だが勝負はこれからだ。まずは……この邪魔くさいフィールドを誇り高きアマゾネス達の戦いの場にするとしよう。私は手札からフィールド魔法『アマゾネスの死闘場』を発動!」

 

 げっ!? フィールド魔法の()()()だと。……マズイっ!

 

 現代ではルール改定されているが、この時代のルール上においてフィールド魔法は常に1枚のみ。つまり既にフィールド魔法が出ている状態で追加で出された場合、()()()()()()()()()()()()()

 

 タニヤの場から巨大な檻が展開されて俺達を囲い込んでいく。そしてその展開にこちらの施設が巻き込まれ、ロボトミーコーポレーションが破壊される。

 

『うぐっ!? ……ロボトミーコーポレーションの効果。破壊された時、場の幻想体に乗っているクリフォトカウンター、PEカウンターを全て取り除く』

 

 シャーデンフロイデ CC2→0

 

 参ったな。ロボトミーコーポレーションが破壊されたのは当然キツいけど、効果で強制的にカウンターも取っ払われるから嫌なんだよな。PEカウンターは元々ないからまだ良いとして、シャーデンフロイデのCC0の効果はデメリットしかないからな。

 

 あと何だこのフィールド魔法は? こんなカード有ったっけ? アニメオリジナルカードか?

 

「アマゾネスの死闘場は、モンスターとの絆を互いの魂をかけて証明する神聖な場だ。発動した時、互いのLPを600回復する」

 

 遊児 LP4000→4600

 タニヤ LP3200→3800

 

『こっちまで回復してくれるとはな。しかし、絆を魂をかけて証明するとはまた大仰な言い回しだな』

「お前には分からないかもしれないが、デュエルとはアマゾネス一族にとって神聖なものだ。戦う際には互いの全身全霊を……いや、それをも超えたものを出してぶつかり合わなければならない。そしてそれはプレイヤーもモンスターも同じなのだ」

 

 よく分からないが、つまりは互いに本気でぶつかり合おうってことか? なら俺は基本的にいつも本気だぜ。あと多分十代も。

 

「さあ行くぞ! 私はアマゾネスの剣士で、シャーデンフロイデに攻撃っ!」

『そりゃまあそう来るだろうな。仕方ない。迎え撃てシャーデンフロイデ』

 

 敢えて攻撃力の低いアマゾネスの剣士の側から仕掛けてきた。剣で叩きつけるように切りつけるが、シャーデンフロイデは箱の側面から高速回転する丸鋸を展開して迎撃。振り下ろされた剣は火花を散らしながら弾き飛ばされる。

 

「シャーデンフロイデは守備表示。よってアマゾネスの剣士は破壊されない。……そしてアマゾネスの剣士の効果発動! このカードの戦闘で発生する自分への戦闘ダメージは、()()()()()()()()()()

『ぐわっ!?』

 

 遊児 LP4600→3900

 

 弾き飛ばされた剣がそのまま俺に向かい、俺の腕を掠めて地面に突き刺さる。……衝撃はあるけど俺の身体に傷はついていない。確かにタニヤの言うように闇のデュエルではないな。

 

 しかしアマゾネスの剣士は厄介だ。シャーデンフロイデは場に居続けることで相手の召喚にプレッシャーをかけるのが大きな役割だが、ダメージを強制的に肩代わりさせる剣士が既に場に居るのだから、向こうはこれ以上無理に召喚しなくともよい。

 

 このままジワジワダメージを与えられたらこっちが不利だ。これはどうしたものか。

 

「考えている所悪いが、ここでアマゾネスの死闘場の効果発動! モンスター同士の戦闘後、互いのプレイヤーはLPを100支払うことで、相手プレイヤーに100ダメージを与えることが出来る。私は当然支払う。勿論やるやらないは任意だけど……どうする?」

 

 その言葉と共に、タニヤの場にタニヤそっくりの人影が浮かび上がって拳を構えた。どうやらLPを払うとあれが出てくるらしいな。

 

 つまりこれは、自分のLPを使って相手のLPを削っていくチキンレースか。何も考えずに蛮勇を振るえば自滅。かと言って慎重が過ぎれば相手にペースを持っていかれる。……なるほど。それらを総合的に見ての“勇気”って訳ね。ならば、

 

『良いだろう。俺も100支払って迎え撃つ』

「良い覚悟だ。行くぞ!」

 

 LPを払うと決めると、俺の場にも俺のような人影が浮かび上がる。頼むぞ俺っぽい奴。

 

「はあああっ!」

『うおおおっ!』

 

 互いの人影同士が走り出し、何と互いに顔面目掛けて拳を繰り出した。そして、

 

「ぬぅっ!? 中々に良いパンチを持ってるじゃない」

『あたっ!?』

 

 互いに拳が直撃したのと同時に、()()()()衝撃が走った。見るとタニヤの方も何かに殴られたかのように軽く頭を振りながらニヤリと笑う。……これはまさか!?

 

「モンスターだけに戦わせちゃ悪いからね。死闘場の効果でダメージが発生すると、プレイヤーの同じ箇所にもダメージが入る」

 

 遊児 LP3900→3800→3700

 タニヤ LP3800→3700→3600

 

 タニヤはガツンと自身の拳をぶつけ合い、そのままデュエルディスクを構え直した。

 

『シャーデンフロイデの効果。戦闘を行ったバトルフェイズ終了時、このカードにPEカウンターを3つ乗せる』

 

 シャーデンフロイデ PE3

 

「私はカードを2枚伏せてターンエンド。痛みの恐怖に打ち勝ち、勇気をもって勝利を掴む! それがこの勇気のデッキ。……さあ。拳で語り合おうじゃないか」

 

 マジか……急にリアルファイトが始まっちゃったんだけど。

 




 遊児はもっとデュエルマッスルを鍛えるべきでした。まあ素の身体能力は割と高いのですが……どうしてもガチの方々と比べるとね。

 あとさりげなく今回ロボトミーコーポレーションの最後の効果が出ています。……と言っても匂わせていた様に基本デメリット効果ですが。

 次回は明後日投稿予定です。

 最後に、また今回出た幻想体の能力と所感を下の方に載せておきますので興味のある方はどうぞ。




『幻想体 シャーデンフロイデ』

 星5 ATK1800 DEF2200 機械族 闇

 効果
 ①このカードの召喚、特殊召喚、リバース時、このカードにクリフォトカウンターを2個乗せる。
 ②このカードが戦闘を行ったバトルフェイズ終了時、このカードにPEカウンターを3個乗せる。
 ③1ターンに1度、相手がモンスターを召喚、特殊召喚、反転召喚した時、相手プレイヤーに800ダメージを与える。
 ④自分のフィールドにモンスターが召喚、特殊召喚、反転召喚される度、このカードに乗っているクリフォトカウンターを1つ取り除く。
 ⑤自分のターン終了時、このカードにクリフォトカウンターが乗っていない場合、このカードを破壊する。

 視線を合わせると機嫌を悪くする初見殺しの幻想体。約5秒以上画面に映し続けているだけで機嫌を悪くするため実況者殺しの異名もある。

 挙動的にどこかヘルパーに近いものがあるが、ヘルパーの方が(お掃除モードに入ってさえいなければ)可愛い。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。