マンガ版GXしか知らない遊戯王プレイヤーが、アニメ版GX世界に跳ばされた話。なお使えるカードはロボトミー縛りの模様   作:黒月天星

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 注意! 今回独自設定タグがかなり仕事します。

 タニヤのデッキはあくまで想像の物です。なので流石にそれは無いだろうという内容かもしれませんが、シミュレーションということで寛大な心でお許しいただければ幸いです。

 また、あとがきに今回使った幻想体の簡単なデータと所感を載せておきます。興味があればご一読ください。


遊児対タニヤ その三 変わる拳

 遊児 LP300 手札0 モンスター 幸せなテディ 魔法・罠 エンサイクロペディア 伏せ1

 タニヤ LP2400 手札1 モンスター0 魔法・罠 アマゾネスの死闘場 伏せ2

 

 

 

 正直戦況は微妙だ。俺の手札は0。LPもギリギリだ。掠り傷でも終わりかねないし、相手の場にはモンスター同士の戦闘の度に互いのLPを削りあう死闘場がある。

 

 つけ入る隙があるとすれば、今タニヤの場にはモンスターが居ないという事。直接攻撃であれば死闘場の効果は発動せず、一方的に殴り勝つことが出来る。

 

 だが、タニヤが伏せているあの2枚のカード。あれが気になる。

 

「どうした? お前のターンだ」

『ああ。じゃあ行くぞ。ドローっ!』

 

 え~いどのみち今は引かなきゃ始まらない。俺は気合を入れてドローする。……これはっ!

 

『まだ俺はツキに見放されちゃいないみたいだぜ。俺は永続魔法『幻想体 古い信念と約束』を発動!』

 

 俺の場に一抱えほどある大きな丸い水晶が出現する。水晶には上下に爬虫類のような何かがしがみついていて、上部の爬虫類から鎖が三本伸びて上から吊り下げられている。

 

『古い信念と約束の効果。場のPEカウンターを3つ取り除くことで俺はカードを1枚ドローする。そしてこの効果は1ターンに2度まで使用できるため、俺はテディに乗っているPEカウンターを全て使って2枚ドローっ!』

 

 幸せなテディ PE6→3→0

 

 ギリギリの状態でこの2枚ドローは大きい。ちなみにこれは永続魔法なので、PEカウンターさえあれば次のターンも使えるという優れモノだ。……まあ効果を使ったターンの終了時にコイントスをして、外れたら破壊される上に自分の手札を1枚捨てなきゃいけないけどな。

 

 エンサイクロペディアの効果で殺人者を復活させるという手もあったけど、アイツはターン終了時に互いのプレイヤーにダメージを与えるからな。このターンで決められなきゃ自滅してしまう。

 

 俺は2枚に増えた手札を見て、まだ勝機はあるとキッとタニヤを見据える。

 

「何か良いカードを引いたようだな。良いだろう。来るが良い」

『言われなくとも。俺は手札から『幻想体 小さな魔女 レティシア』を守備表示で召喚』

 

 レティシア DEF600

 

 俺の場に現れたのは、赤を基調としたフリフリのドレスを纏った少女。……ただ、

 

『が、頑張るよ!』

『我が運び手よ。我が生け贄が潜入中は出るなと言っていなかったか? さっさと戻ろう』

『あっ! そうだったの!』

 

 普通にあれって映像じゃなくて本物のレティシアだよな。ネクを抱きかかえているし。ただ出たは良いけど慌てて口元を押さえて喋ってないアピールしてる。

 

『……もう良いよレティシア。雪の女王や罪善さんも前に見られてるし、ここまできたら今更だ』

『そうなの? じゃあこのままでいる!』

『私としては面倒だから戻りたいのだがな』

 

 精霊が味方してくれるというのは以前の事でもうセブンスターズにはバレているし、なら今更一人二人増えた所でそこまで変わらないだろう。

 

 そう言うとレティシアは嬉しそうに、ネクは若干嫌そうにその場に残る。

 

 そしてタニヤの反応はと言うと……あっ! ちょこっとだけ微笑ましいものを見るような目をしてる。やっぱり精霊が見えるようだ。

 

『続けて行くぞ! 俺は手札から永続魔法『幻想体 ラ・ルナ』をレティシアを対象にして発動! ラ・ルナトークンを攻撃表示で特殊召喚し、ラ・ルナ本体にはクリフォトカウンターを3つ乗せる』

 

 ラ・ルナトークン ATK2200

 ラ・ルナ CC3

 

 次に現れたのは古いピアノ。上には火の消えた黒いキャンドルが乗せられ、物騒なことにピアノの脚には黒く変色した人の頭部らしきものが転がっている。

 

 そしてその傍らには、薔薇のような装飾のあしらわれた黒いドレスを着た老婦人が、蛇を象った柄の杖をついて椅子に腰掛けている。

 

 う~む。カードの絵柄でもそうだったけどよく分からんな。多分ピアノがラ・ルナで老婦人がトークンなんだと思うけど。

 

『すご~い! ピアノだ!』

 

 対象となったレティシアが老婦人に促されて椅子に座り、ピアノの鍵盤にそっと指をかける。対象にしたモンスターは攻撃できなくなるが、元々レティシアを攻撃に参加させようとは思っていないから問題ないな。

 

 さて。準備は整った。あとはタニヤの伏せカード次第。

 

『バトルフェイズ。俺はラ・ルナトークンでダイレクトアタック』

 

 レティシアがポロンポロンと演奏を始めると同時に、傍らに腰掛けていた老婦人がそっと鳥を模した仮面を被って場に躍り出る。……いやあんたも仮面かいっ!? 俺も含めて仮面キャラ多いなっ!?

 

 しかしこう見えてラ・ルナトークンの攻撃力は2200。直撃すればタニヤもただでは済まない。さあどう出る?

 

「罠発動! 『リビングデッドの呼び声』。この効果で墓地のアマゾネスの剣士を攻撃表示で特殊召喚する」

 

 くっ!? やっぱり迎撃用のカードを伏せていたか。簡単に蘇生できるリビングデッドは使いやすいからな。厄介な効果を持つ剣士が再び場に舞い戻る。

 

「どうした? 攻撃してこないのか?」

『したら反射でやられるだろうが! 俺は攻撃せずにバトルフェイズを終了。メインフェイズ2。……ふっ! だけど、俺がただやられっぱなしで終わると思うなよ。ここで俺はテディを守備表示に変更し、レティシアの効果発動!』

『は~い! プレゼントだよ! 喜んでくれると良いな』

 

 レティシアは赤いハート形の何かを取り出すと、それがふわりと浮かび上がってアマゾネスの剣士の上に止まる。

 

『相手モンスター1体を指定し、互いのプレイヤーは1000LP回復するか、1枚ずつドローする。俺は回復効果を選択!』

 

 遊児 LP300→1300

 タニヤ LP2400→3400

 

 この効果は相手モンスターが居ないと使えない。やたら死闘場の効果にこだわっているタニヤの事だから、効果でモンスターの特殊召喚を狙ってくると踏んでいたらドンピシャだ。

 

「やるな。追いつめられていたライフに余裕を持たせてきたか」

『ああ。これでもうしばらくは耐えられる。そしてターン終了時、古い信念と約束の効果でコイントスを行う。……よっと』

 

 俺はディスクに備え付けられているコインを弾き、そのまま手の甲でキャッチする。出たのは……表。

 

 水晶が一度青く光輝いたかと思うと、そのまま黄金色に変化する。成功というエフェクトだ。

 

 ラ・ルナ CC3→2

 

 さらにラ・ルナの効果によりクリフォトカウンターが1つ減り、これで本当にターンを終了する。……さあ。仕切り直しだ。

 

 

 

 

「私のターン。ドロー。……LPを回復してきたのは驚いたが、それだけでいつまで保つかな? 私は手札から『アマゾネスペット(タイガー)』を攻撃表示で召喚。そして効果により、場のアマゾネスと名の付くモンスターの数×400攻撃力が上がる。勿論自身も含めるので場のアマゾネスは2枚。よって攻撃力800アップだ」

 

 アマゾネスペット虎 ATK1100→1900

 

 むっ!? 攻め手を増やしてきたか! おまけにあの虎は、場に居る限り他のアマゾネスに攻撃できなくなるという効果がある。まあ自分から剣士に攻撃したくはないが、それでも選択肢が狭まるのはキツイ。

 

「まだだ。私は手札から魔法カード『アマゾネスの呪詛師』を発動! これにより、ターン終了時まで私のアマゾネスモンスター1体と、相手モンスター1体の元々の攻撃力を入れ替える。私が選択するのはラ・ルナトークンと、アマゾネスペット虎」

 

 げっ!? ここで攻撃力入れ替えかよ。

 

 ラ・ルナトークン ATK2200→1100

 アマゾネスペット虎 ATK1900→3000

 

 あくまで入れ替わるのは()()()攻撃力。なので虎は入れ替わった後に自身の効果で攻撃力が追加され、攻撃力が3000まで跳ね上がる。

 

「多少LPが回復しようが、ならそのLPごと削り切るのみ。行くぞ。アマゾネスペット虎でラ・ルナトークンに攻撃。『密林の王牙』っ!」

 

 技名と共に虎がラ・ルナトークンに飛びかかる。これが決まれば敗北必至。だが、

 

『させるかっ! 罠発動『階層移動』。これは幻想体モンスターが攻撃対象になった時発動可能! そのモンスターを手札に戻してレベルが1つ上か下の幻想体モンスターを代わりに呼び出すか、攻撃対象を場の別の幻想体に移し替えることが出来る。俺は2つ目の効果を発動! 幸せなテディに攻撃を移し替える』

 

 ラ・ルナトークンに攻撃が決まる直前、横からテディが割り込んで虎の攻撃を受け止める。しかし守備表示ではテディに破壊耐性は無く、そのまま弾き飛ばされて破壊されてしまった。済まないテディ。

 

「ギリギリで躱したか。だが……アマゾネスの死闘場の効果発動! 私は当然ライフを支払う」

『……良いだろう。俺もここはライフを支払う』

 

 守ってばかりでは勝てない。なら、余裕のあるうちに少しでも削る。

 

 遊児 LP1300→1200→1100

 タニヤ LP3400→3300→3200

 

 ライフを払うと同時に俺達の分身が殴り合いを繰り広げる。だが、

 

「ぐふぅっ!? ……良いねぇ。さっきの気の抜けた拳とはまるで別物。今のは重く良い一撃だった」

『いてて……そいつはどうも』

 

 そう言いながらタニヤはニヤリと獰猛な笑みを浮かべて軽く口の端を拭う。

 

 なんか分身の動きが変わった気がする。前のターンと比べてアグレッシブになったというか。ライフの変動は同じなのになんだろうなこの差は。

 

「だがまだ私の攻撃は残っている。アマゾネスの剣士で、ラ・ルナトークンに攻撃……っ!?」

 

 タニヤは目の前の光景に一瞬言葉をなくす。何故なら、

 

『……ごめんなさいなの。私の()()()()()()()()()以上、その子は攻撃しちゃいけないの。それでも攻撃しようとするなら……私の()()が許さないの』

 

 アマゾネスの剣士は()()()()()()()()()()()()()()()

 

 下手人は彼女の贈ったプレゼント。……いや、正確に言えばその中で眠っていたレティシアの友達。

 

 虹色の六本の脚に、大鳥のように多数の目を持つ蜘蛛のような怪物。それが歯をむき出しにしてアマゾネスの剣士に襲い掛かり、瞬く間にその脚で切り裂いていたのだ。

 

『立体映像だと初めて見たけど……アレホントに友達かレティシア?』

『うん! そうだよ! 私のお友達。まだまだ沢山居るよ!』

 

 なんと!? どこか友達を自慢するようにニコニコ笑うレティシアの事を、俺は初めてほんのちょっとだけおっかないと思った。レティシアのリスクレベルがHE(真ん中)なのってこれが原因かもな。

 

 レティシアの友達……プレゼントトークンは、効果発動後俺の場に攻撃表示で特殊召喚される。結構見た目えぐいけどこれで味方なんだよな。

 

 プレゼントトークン 星4 ATK1400

 

「……ふっ。なるほどな。愛らしい姿に油断した私のミスという事か。……だが、このままでは終わらない。私はここでリバースカードオープン! 永続罠『アマゾネスの意地』。この効果により、私は再びアマゾネスの剣士を墓地から蘇生する」

 

 これで三度目となるアマゾネスの剣士の登場。……ここまで来れば俺にだって大体は察しが付く。

 

『なあ。タニヤ。お前のデッキ……()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()?』

 




 これまで精霊としてはよく出ても、地味にカードとしては初登場のレティシアとその友達でした。

 あとアマゾネスの意地は本来このタイミングより後に実装されるカードですがアマゾネス繋がりで早めに持っていたということでどうか一つ。

 次回も三日後投稿予定です。




 以下、幻想体の能力と所感となります。


『幻想体 小さな魔女 レティシア』

 星4 ATK800 DEF600 魔法使い 地

 効果
 ①このカードが戦闘を行ったバトルフェイズ終了時、このカードにPEカウンターを3個乗せる。
 ②1ターンに1度発動可能。相手フィールド上の表側表示モンスター1体を選択し、互いにLPを1000回復、またはカードを1枚ドローする。
 ③②の効果で選択されたカードは、二度目のコントローラーのターンまでに攻撃宣言を行うと破壊され、自分フィールドにプレゼントトークン(星4 ATK1400 DEF900 昆虫族 地)1体を特殊召喚する。


 別名小さな魔女とも呼ばれる少女。愛らしく可愛らしい、幼女と少女の境目辺りの姿をしている。

 性質はとにかく善。とても良い子。ただし自分がそれなりに力を持つ幻想体であるということを微妙に理解していない節がある。

 人の笑顔にとても敏感であり、どこまでも善意で周りを笑顔にしようと行動する。ただその方法がちょっとアレなのが大問題。彼女の友達は必ずしも善性ではないのだから。

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